Wakana「音楽を届けることをやめてはいけない」コロナ禍で再確認した信念
INTERVIEW

Wakana

「音楽を届けることをやめてはいけない」コロナ禍で再確認した信念


記者:編集部

撮影:

掲載:20年12月12日

読了時間:約12分

 Wakanaが9日、カバーアルバム『Wakana Covers ~Anime Classics~』をリリースした。多彩なアニメ楽曲をストリングスとピアノによるクラシカルなアレンジで歌った作品で、『紅の豚』や『魔女の宅急便』などのスタジオジブリ作品の楽曲や、『言の葉の庭』や『天気の子』といった新海誠監督作品の楽曲などをカバー。各楽曲に対する思い入れや自身のアニメに関する思い出、そしてコロナ禍で感じたことなどを聞いた。【取材=榑林史章】

曲への思いと作品への思いを感じて欲しい

Wakana

――今作にジブリ映画の楽曲が多いのはWakanaさんらしいですね。

 はい。私、ジブリ映画が大好きですからね。私のYouTube公式チャンネルでは、今回のアルバムには未収録のジブリのカバーもたくさん公開しているので、それもYouTubeならではのものとして楽しんでいただければ嬉しいです。でも良い曲がいっぱいあるので、選ぶのが本当に大変でした。

――『紅の豚』の「時には昔の話を」は、加藤登紀子さんが歌ったニュアンスが非常に印象的で、きっとすごく歌うのが難しかっただろうと思います。この曲は、Wakanaさん自身はどういったイメージを持って歌ったのですか?

 今回は選曲の時点で全曲自宅で仮歌を取って、どのように歌うのか曲と歌詞を解釈して自分なりに歌い方を構築しました。「時には昔の話を」は、息づかいを消すような、語りかけるような歌い方をしてみたいと思いました。人はしゃべる時に息継ぎのことまで考えないものですけど、よりドラマチックに語りたい時は、息を潜めるような感じになるんです。そういうイメージを持って、よりドラマチックに言葉を伝えられるように歌いました。今までのように「歌い上げるぞ!」ではなく、歌い上げるのを我慢して丁寧に歌うことを意識しています。

――MVの最後にレトロな写真になるシーンがありますが、この曲自体、おばあちゃんになってから若い頃を思い出しているといった雰囲気がありますよね。

 そうですね。MVでの私は、昔を思い出しながら写真を撮ってもらっている女優という設定です。レコーディングでも、年齢よりもっと大人のイメージで歌いました。でも加藤登紀子さんがこの曲を歌われた時は、まだ40代だったそうです。

――40代であの渋みを出されていたのは驚きですね。

 すごく格好いいですよね。MVの監督も「この曲を歌う気持ちに年齢は関係無い」とおっしゃっていて。「今のWakanaさんに出来る表現でやりましょう」と言ってくださったので、MVは私なりの曲に対する思いを伝えようと思って撮っていただきました。

――他にも『千と千尋の神隠し』の「いのちの名前」や『となりのトトロ』の「風のとおり道」などジブリ映画の楽曲を収録していますが、ジブリの歌の魅力はどんなところにあると思いますか?

 視覚と聴覚で楽しませてくれるところは、一つあると思います。「いのちの名前」は『千と千尋の神隠し』の「あの夏へ」というインスト曲に歌詞が付いたもので。『千と千尋の神隠し』は、千尋が引っ越しをして新しい場所で不思議な体験をするお話で、最後にその記憶が全部なくなるんですね。でも「あの夏へ」を聴くと、その記憶が全部甦りそうな気持ちになります。このインスト曲が、千尋がどんどん忘れそうになっていた自分の名前を、思い出すシーンに流れることからも、ジブリ作品は曲と作品とのリンクをとても大切にされているんだなと実感します。音楽と映像が一緒になって記憶に刻み込まれる、ジブリ映画にとって音楽はとても大切な関係だと思います。

――その映画や曲のファンにとっては原曲が最高点で、それをカバーするというのは、原曲の魅力と自分の表現とのバランスなど、いろいろなことを意識しなければいけないと思いますけど、そこはいかがでしたか?

 以前ならネガティブなこともすごく考えたと思いますけど、今回は悩みながらも、結果的に迷いを打ち消すことが出来ました。例えば『魔女の宅急便』の「やさしさに包まれたなら」は、ユーミンさんのお声があってこそだと思うし、それを超えることは出来ない。でもだからこそ、私は自分の歌としてみなさんに届けたいと思いました。今回歌わせていただいた曲は私にとっても、原曲ファンのみなさんと同じようにずっと心の中にある大切なものです。だからこそ、心を込めて大事に歌おうと思いました。

 それに「やさしさに包まれたなら」は『魔女の宅急便』の最後に流れるのですが、みんなの願いが叶ってキキも新しい場所で自分の居場所を見つける素敵なシーンなんですね。私は、そのシーンを胸に抱きながら歌わせていただきました。私の曲への思いと作品への思いを、感じてもらえたら嬉しいです。

「愛にできることはまだあるかい」を無骨に表現

Wakana

――また、新海誠監督作品の楽曲も収録されていて、『言の葉の庭』の「Rain」は選曲が絶妙だと思いました。主人公の男の子の気持ちが表れた曲で、原曲を歌った秦基博さんの声で成立している曲ですが、Wakanaさんの声で聴くとどこか女性側の視点も感じられて、これはこれで良いなと思いました。

 ありがとうございます。「自分だったらこう歌いたい」という思いがあって、自然と女性の感じが出たのだと思います。実際に男っぽく歌おうと思ったわけではなかったですし、「Rain」という曲と真剣に向き合った結果、自然と自分の性別になったのだと思います。

――映画のシーンともぴったり合った歌詞が良いですね。

 「Rain」は歌詞を読み解くことに、すごく時間をかけました。正直すべてを理解出来たわけではないですけど、私の解釈では、気持ちをさらけ出しているように感じたんです。それをアレンジの兼松衆さんにお話したら、兼松さんは男性側の目線で「すごく格好つけているんじゃないか」とおっしゃっていて。男の子の気持ちは、私が思っていた以上に繊細で、「なるほど、そうなんだ!」と意外な発見があって、歌詞を読み解くことの面白さをより実感しました。この経験から男性目線の歌詞により興味が湧いて、もっとたくさんの男性目線の歌詞を解剖してみたいなと思いました。

――もともと映画『言の葉の庭』も好きだったんですか?

 映像の緻密さが好きで、作中に出てくる新宿御苑にも行ったほどです。『言の葉の庭』は雨がすごくきれいに描かれていて、新海さんは空の描き方がとても美しい方だと思います。ああいう映像が描けるのは本当にすごいです。『天気の子』を映画館で見た時は、本当に空を飛んでいるように感じられました。そういう映像での感動があるからこそ、音楽がより胸に響くのだと思いますね。

――『天気の子』の「愛にできることはまだあるかい」も収録していて、この曲のメッセージは時代を越えて、今聴いてこそ訴えかけてくるものがあるなと思いました。

 そうですね。今は感情を伝え合うのが苦手な人が多いと思うし、そういう時代だからこそ響く歌だとも思います。顔と顔を付き合わせるのではない、文字による心の交換というものもある世界だからこそ、野田さんの言葉がすごく刺さりますね。

――Wakanaさんの歌は、終盤ですごく力強くエモーショナルに歌われているのが印象的です。そういう部分は、意識されていたんですか?

 実は、自分の中で考えていた歌い方が前もってあったんですけど、急遽それを全部なくして、その場の気持ちで歌ったところああいった表現になりました。前もって構築していたものでは、ちょっとあざとくなってしまうんじゃないかと思って。この曲はあざとさよりも、その時に出た歌い方そのままの生っぽい感じを出したいと思ったんです。

 それにいざ本番になって自分がその場でどう構築するのか、自分でもすごく興味がありました。きっと無骨にしたかったのだと思います。7分ある長い曲で本番はすごく集中したので疲れましたけど、その分すごく楽しかったです。レコーディング後は気が抜けて、話しかけられても生返事でしばらくボ~ッとしていました。

――あらかじめ構築したものを一度壊して、初期衝動で歌った。そこには、歌い手としての矜持が表れているのかもしれませんね。

 ありがとうございます。「愛にできることはまだあるかい」は、序盤から中盤にかけて感情を我慢しているんですけど、その我慢の中にもちゃんと段階があって。最後にドンと行きたいところに行き着くまでを、しっかり噛みしめたくて。歌詞は冷静に読むと涙が出るくらいだから、自分の思いを一個ずつ込めて噛みしめていくと、気持ちがぐちゃぐちゃになるんですね。でも、そのぐちゃぐちゃな感情をそのまま、ボロボロになりながら歌おうと思いました。不格好でもかまわない、無骨に行こうと。

――ラストには、白鳥英美子さんの「夢のゆくえ」を収録。これは映画『ドラえもん のび太のドラビアンナイト』の曲とのことで、武田鉄矢さんの作詞なんですね。

 そうなんです。武田さんは、1980年の映画第1作『のび太の恐竜』から『のび太の宇宙小戦争』や『のび太の日本誕生』など、ドラえもんの映画シリーズの主題歌を数多く書かれていて、歌詞が本当に素晴らしいです。子どもの時には分からなかったですけど、大人になって改めて読むと「何てすごい歌詞だ」と思います。「夢のゆくえ」という曲の持つじんわりとやさしく包んでくれるような雰囲気は、この歌詞からくるものもあるんだなと思いました。もちろん曲と歌声があってこそですけど、子どもながらに好きだと思えたのは、きっと詞、曲、歌声、作品というすべてが一つになっていたからだと思います。

音楽は逃げないし色褪せない

『Wakana Covers ~Anime Classics~』通常盤ジャケ写

――Wakanaさんは『ドラビアンナイト』を、子どもの頃にご覧になって?

 ドラえもんの映画は全部観ているんですけど、この時は幼少期で兄と映画館に行った記憶があります。ドラえもんの映画は毎回最後に何かしらのお別れがあって、「また会いに来るね!」といった感じで終わるのですが、『ドラビアンナイト』は、特に自分の記憶に印象深く刻まれている作品で、この曲を聴くとその場面がまざまざと甦ります。ステイホーム期間中にも見て改めて良い曲だなと実感しましたし、ファンの方のリクエストもたくさんあって。アルバムの収録曲を解禁した時も、「すごく嬉しいです」と言ってくださる方が多くて、みなさんの期待にも応えたいと思ってラストに収録しました。

――他にも『シティーハンター』の「Get Wild」や、『はじめ人間ギャートルズ』の「やつらの足音のバラード」など収録していて幅広いですね。「やつらの足音のバラード」は、子どもの頃に『はじめ人間ギャートルズ』を見た終わりで流れていて、毎回寂しい気持ちになった記憶があります。

 私は、曲はもよく知らずアニメ作品も見たことがなかったので、教えていただいて。マンモスを食べるのが、ゲーム『モンスターハンター』みたいと思いました(笑)。でも「やつらの足音のバラード」は、最初に聴いた印象と曲と向き合って歌い込んでからの印象が、まったく変わった曲でした。歌詞を読むとすごく壮大なことを歌っているんですよね。私が好きな恐竜の名前も出て来るし、それがすごく面白いなと思いました。たくさんのアーティストさんがカバーされていますが、自分なりの解釈をして気持ちを入れるために、レコーディングでは雰囲気作りをしたんです。

――はじめ人間になって毛皮を着たりとか(笑)?

 毛皮は着ませんでしたけど(笑)。部屋を暗くして、座って、やさしくピアノに寄り添う感じで歌いました。

――Wakanaさんとしては今作の制作を通して歌い手として成長することが出来たのではないかと思います。今年は自粛期間などありましたが、決して悪いことばかりでもなかった1年になったかもしれませんね。

 そうですね。今年は3月にライブを開催する予定でしたが、それが来年4月に延期されて。その時はすごく焦りましたし、みんなが楽しみにしてくれていたのに申し訳なくて、私自身も悲しかったのですが、音楽は逃げないし色褪せるものでもないと思って。いつだって自分の気持ちがあれば、みんなに届けることが出来るわけですから、今は今と向き合おうと思うことで、自分自身を納得させることが出来ました。それに生で音楽を届けることの素晴らしさを、より感じることも出来ましたね。私自身もいち音楽ファンとしてライブに行けないことの悔しさを感じましたし、だからこそステージに立つ者として、目の前のお客さんに音楽を届けることを絶対にやめてはいけない、そのためにずっと歌い続けたいと思いました。

 それに自粛期間中にオンラインでボイトレを受けていたんですけど、以前よりも回数を増やして、すごく自分自身と向き合うことが出来ました。いろいろな歌い方がより楽しいなと思えるようになって、その上での制作だったので、今作はとてもチャレンジングな1枚になりました。

――では最後に、今年最悪だった瞬間と最高だった瞬間を教えてください。

 最悪だった瞬間は、マスク不足だった時です。ボーカリストにとってマスクは喉を守るための必需品なのですが、どこを探しても売っていなくて本当に困りました。最終的に自分で作るようになったんですけど、最近は洋服のブランドさんがマスクを出していたりして、気になったものをちょこちょこ買っていたら、気づいたらマスクコレクターみたいになっていました(笑)。

 最高だったのはこのアルバムが出来た瞬間です。マスタリングが終わって、曲間を決めて、みんなで「ヤッター」という感じでガッツポーズを取って、その勢いで焼き肉を食べに行きました。マスタリング中にめちゃくちゃお腹がすいて、グーグー鳴ってしまっていて「これはお肉だな」と(笑)。

(おわり)

プレゼント情報

Twitterフォロー&RTで抽選で1名様にWakanaサイン入りポラロイドプレゼント。

Wakanaサイン入りポラ

【応募方法】

・@musicvoicejpをフォロー
・下記のツイートをRT

https://twitter.com/musicvoicejp/status/1337837368309518337

【応募期間】

・12月13日〜12月20日23時59分まで。

当選された方には、TwitterのDMでご連絡をさせていただきます。

【注意事項】

・Twitterアカウントを非公開にしている場合は、応募対象外となります。
・応募期間中にフォローを取り消された場合は、応募が無効となります。
・落選者へのご連絡はございませんのでご了承ください。
・プレゼントキャンペーンは予告なく変更・中止することがあります。あらかじめご了承ください。
・応募は日本国内にお住まいの方に限らせていただきます。

作品情報

Wakana
『Wakana Covers ~Anime Classics~』
12月9日発売
ビクター
【初回限定盤】CD+DVD+Photobook/VIZL-1830 4500円+税
【通常盤】アルバム/VICL-65447 3000円+税

<収録曲>
1. 時には昔の話を (「紅の豚」より 原曲:加藤登紀子)
2. やさしさに包まれたなら (「魔女の宅急便」より 原曲:荒井由実)
3. Rain (「言の葉の庭」より カバー:秦 基博<原曲:大江千里>)
4. いのちの名前 (「千と千尋の神隠し」より 原曲:木村 弓)
5. やつらの足音のバラード (「はじめ人間ギャートルズ」より 原曲:ちのはじめ)
6. Get Wild (「シティーハンター」より 原曲:TM NETWORK)
7. 風のとおり道 (「となりのトトロ」より 原曲:井上あずみ)
8. 君をのせて (「天空の城ラピュタ」より 原曲:井上あずみ)
9. 愛にできることはまだあるかい (「天気の子」より 原曲:RADWIMPS)
10. 夢のゆくえ (「ドラえもん のび太のドラビアンナイト」より 原曲:白鳥英美子)

<初回限定盤>
・DVD(「時には昔の話を」Music Video & Making、「君をのせて」Studio Acoustic Live)
・フォトブック(40ページ)付き
・三方背スリーブケース仕様

■公演情報

Wakana Anime Classic 2020
12月22日 東京・紀尾井ホール

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