KREVA「もっと初めてのことに出会いたい」三浦大知とともに見た新たな希望
INTERVIEW

KREVA

「もっと初めてのことに出会いたい」三浦大知とともに見た新たな希望


記者:榑林史章

撮影:

掲載:20年12月11日

読了時間:約11分

 KREVAが23日、ニューシングル「Fall in Love Again feat. 三浦大知」をリリース。同曲は、以前から交流のあるKREVAと三浦大知が、それぞれのツアーが無期限延期になったことを受け、現状を話し合う中で制作。男女のラブソングに重ねながら「いつかまたライブで会える日が必ず来る」という、ファンや仲間へのメッセージが込められた。KREVAの<どんなに辛くても死んじゃダメ>というフレーズが胸に突き刺さる楽曲。KREVAは、このフレーズにどんな思いを込めたのか、また三浦大知との制作はどんなものなのか、KREVA流のコミュニケーション術とは。KREVAの今の気持ちを聞いた。【取材=榑林史章】

メッセージとエンタメのバランス

「Fall in Love Again feat. 三浦大知」CDジャケ写

――今作は非常にメロウでありながら、KREVAさんのラップの出だしの<どんなに辛くても死んじゃダメ>というフレーズが、ものすごくインパクトがありました。こういうメッセージのあるパンチラインを言うには責任感も伴うわけですが、KREVAさんの中にきっと強い意志と義務感みたいなものがあって、こういうフレーズを書いたと思われますが。

 ああ、確かに。今ソロになって16年目ですけど、その途中くらいから責任感みたいなものは、だいぶ増してきていることを自分でも感じています。ヘタなことは言えないな、じゃないですけど。時代的にもファンのみなさんと繋がりやすくなったことで、より顔がより見えるようになってきて。自分のことを応援してくれる人たちはこういう人たちだと分かってくるたびに、なおかつ自分が年齢を重ねていくにつれ、責任感が増していることは間違いないです。言葉を言う時の重さとか、そういうことを分かった上で、1行目は<死んじゃダメ>って言いたいなと思ったんです。

 最近アメリカのアーティストのYouTubeライブとかいろいろ見ているんですけど、曲を作っている人たちの話の10回に1回くらいは心の話が出て来るんです。こういうことがあったらこうしようとか、こういう世の中だけどこうしようとか。今はそうやって世界的に、心のケアみたいなものが大事になっているタイミングだと感じていたんです。だから<死んじゃダメ>というのは、自分的にもずっと言ってきたことだし、今強く感じていたことでもあったので、スパッと最初の1行目でこの言葉を言いたいなと思いました。

――日本は、そういう心のケアが遅れていると聞きます。

 そうですね。あと去年末にツアーをやっていて、ファンクラブの方とミート&グリートで話す機会があって、そこでふと思ったんだけど……ライブって、近しい人が命を断つような辛いことがあった人と、その横に今人生最高に楽しいですと言っている人が、同居している世界なんだと思ったんです。でも、どちらの方も俺のライブを見に来てくれているわけで、その状況で何か言えることがあるんじゃないかと思いました。絶対に死ぬのはダメだと単に言うことだけじゃなく、きれいな楽しい曲の中でそういうことも言えるし、そういう曲で面白いことも出来るのが、自分なのかなと思うところがあって。それが影響している部分もありますね。

――それはメッセージとエンターテインメントのバランスの取り方だと思われますね。

 ああ、まさにそれです!

――KREVAさんの曲はそのバランスが絶妙で、その最たるものが今回の「Fall in Love Again feat. 三浦大知」だなと思いました。

 そうやって言葉にしてもらえるとありがたいですね。

――その三浦さんが歌うDメロは、歌詞も含めて非常に刺さるものがありました。

 そのパートの歌詞は大ちゃん(三浦大知)が書いてくれているんですけど<あの日には戻らないよ>と書いていて、それがすごく良いなと思います。2009年に初めて一緒に「Your Love feat.KREVA」を作った時は、少年が歌っているような感じがまだ残っていたんですけど、今では大ちゃんもお子さんがいて父親ですから。俺が言うと何だか偉そうですけど、人間としてすごく成長したところが、この1行に出ているなって思います。

――<戻れない>ではなく、<戻らない>と言っているのがミソですね。

 そこに強い意思を感じますよね。この曲をいろんなアーティストさんに聴いてもらって、リアクション動画を撮ったんですけど、アーティストのみなさんも、ちゃんと大サビがあることによってJ-POPさと言うか、最後に大きな流れが来る構成になっていて良いですよねと言ってもらえて。まさにエンターテインメントですね。

KREVAと三浦大知の味とは

KREVA×三浦大知

――メッセージのKREVAさんとエンタメの三浦さんがかけ合わさった極上の曲と言えますね。ただ美味しいものと美味しいものを合わすだけでは、より美味しくなるとは限らないわけで、KREVAさんと三浦さんの間には、それぞれを上手く繋ぐスパイスのようなものがあるのではないかと思います。お2人ならではの、そういうものに心当たりはありますか?

 一つ俺と大ちゃんが、決定的に違うところがあって。良いものを作ろうという意識はお互いに強いけど、俺はライブの外側と言うか、どういう風にライトに照らされるとか、そこまでのこだわりはないんです。提案してもらって、じゃあこうしようという感じです。でも大ちゃんは、その部分をガッツリとコントロールしている人なんです。逆に大ちゃんの音楽や歌詞の言葉は、全部を大ちゃんが書いているわけではなくて。でも俺はその部分、音や言葉に関しては徹底的にこだわりたい。同じ良いものを作りたいという志は持っているけど、山を登る道が違うと言うか。だから価値観の違いでバッティングすることがほとんとないです。2人とも見ているものは同じなんだけど視点が違っていて、そのことをお互い理解しているというのが大きいと思います。

――お互いの味を引き立て合っているということですね。

 そうですね。あと大ちゃんが、圧倒的に良い人だから、ぜんぜん意見がぶつからないです。11~12年の付き合いのうち何時間一緒に過ごしたかは分からないけど、こっちが「え?」ってなる空気を出した時間が1秒しかないんです(笑)。

――11~12年の中でたった1秒ですか(笑)!

 そう。例えば「ちょっとここ片付けろよ」とか、そういうことも含めて「え?」ってなる時って誰でもあるじゃないですか。「そういう風に言うんだ?」とか。でも三浦大知は、そう思わせた時間が1秒しかない。

――ちなみにその1秒はどういうタイミングだったんですか?

 ライムスターの宇多丸さんと俺と大ちゃんの3人で飲んでいて、最大級に酔っ払った時です。3軒目くらいになった時に、大ちゃんがウトウトし始めていて、「大ちゃん」って声をかけたら「おお!」って一瞬タメ口で返して来たという(笑)。

――でも、それも酔っ払ってのことですからね(笑)。話を「Fall in Love Again feat. 三浦大知」のサウンド面に移しますが、70年代初頭の懐かしいソウルミュージックの感じがありました。今の時代を残すという部分では、もっと最先端のサウンド感という方法論もあったと思いますが、あえてこういう音と言うのは、意識としてどういうものがあったんでしょうか?

 今、主流とまではいかないけど、こういう感じのビートを作っているクリエイターの間では、いかにサウンドを汚せるかということが流行っているんです。だからどちらかと言うと、こういうほうが先端に近いと思います。最先端と言うとエッジーで先鋭的なものをイメージすると思うけど、今はどうやって音を汚せるかなんです。

――汚すと言うのは、音をアナログっぽいものにするということですね。

 曇らせると言うか。わざとカセットテープに録ったり、古い機材に通したり、それをエミュレートしたテープっぽい音になるプラグインを使うとか。そういうものが、すごく流行っているんです。それで言うと、こういう音のほうが時代の流れには合っている気がします。俺がこの曲で使ったプラグインも、サンプルパックという形で売られているもので、基本的に汚れがかかっている音がたくさん入っていました。汚れた音を最終的に良い音として製品にするみたいなことが、今のメインの流れのような気がします。

映像に興味。いずれはMV監督も?

「Fall in Love Again feat. 三浦大知」配信ジャケ写

――またMVを拝見しまして、最後は可愛らしく終わりますね。ハートの池があって、気球に乗って飛んで行く。

 レコーディングの合間に大ちゃんとMVのアイデア出しをしたんですけど、歌詞にも<距離感>という言葉が出てくるように、2020年のキーワードのひとつとしてディスタンスがあるなと思って。ディスタンスというテーマを大喜多正毅監督に投げて、撮っていただきました。2人の距離感は変わらず、視覚効果とか圧縮効果みたいなもので、世の中の見え方が変わっていくという映像です。でもテクニックだけに頼るのではなく、最後は居た場所から物理的に離れよう、離れるなら思い切り良くということで、大ちゃんを地上に残して俺は空へ。普通なら2人が並んで終わるものだけど、俺は飛んで行くというのが面白いですよね。

――気球に乗る経験は、なかなかないですよね。

 人生初で、すごく良い経験したね。本当は、高いところは大嫌いなんですけど、気球はまったく揺れなくてぜんぜん怖くなかったです。ただ着陸時の衝撃がすごくて。ズド~ンという感じ。風まかせだから着陸ポイントもすごく曖昧で、だいたいこのあたりという感じだったから、最終的に土手の手前の藪の中に突っ込んで着地しました(笑)。

――YouTubeもやっていたり、908FESをオンラインで開催したりしていましたが、MVも含めて映像の分野にも意識が広がっていたりしますか?

 そうですね。映像も音と同じで編集によって自分のリズムが出せるから、すごく面白いです。カメラとかガジェットももともと興味があって、好きな世界ではあるので。それを今年に始められて良かったです。YouTubeは始めてまだ1年も経っていないですけど、だいぶ出来るようになってきたので、これからもっと成長出来れば良いなと思っています。後は、今回の「Fall in Love Again feat. 三浦大知」や「タンポポ feat. ZORN」のMVもそうですけど、クオリティの高い映像を撮ってもらえたり、プロのカメラマンさんに格好よく写真を撮ってもらったり、最終アウトプットでクオリティの高いものが待っていてくれるから、あくまでもその助けになるようなものとして、自分も楽しめるアウトプットを積極的にやっていきたいなと思っています。

――いずれはMV監督とか。

 誰かから頼まれたらやりたいですね。

――自分のMVではなくて?

 自分のものとなると、視点が変わってコントロールが上手くいかないと思うんです。俺のシーンだけやたらと長いとか(笑)。でも、例えばインストの曲を作ったとしたら、映像もあったほうが説得力は増すと思うので、そういうものはやれるかもしれないですね

KREVA流コミュニケーション術

――あと今回のシングルもそうですが、KREVAさんは数多くのコラボを経験していて、最近で言えば石川さゆりさん、PUNPEEさん、ZORNさんなど、相手の年齢もジャンルも様々で、きっと人とのコミュニケーションに長けている部分があるのだと思います。以前、20歳くらいの専門学生と話をした時に、大人との接し方が上手くいかないとか、人とのコミュニケーションが苦手だという人が多かったのですが、人と交わる時の何か心構えとかアドバイスはありますか?

 参考になるか分からないですけど、自分は今公開中の映画『461個のおべんとう』に出させてもらって、映画の現場はいつもの音楽の現場とは違うから、会ったことのなかったタイプの人と接することもあるんです。そこで意識していなかったけどやっていたのは、朝早く現場に入っていきなり自分から一つ話題を振るということです。主演のイノッチ(井ノ原快彦)に言われて思い出したんだけど、おはようございますの後に、いきなり「台風って一個一個名前があるの知ってます?」って話を振ったことがあったらしくて。

――いきなり台風の話ですか(笑)?

 話題は何でも良いんです。その時は、たまたま俺が興味を持って調べていたのが台風だっただけで、でもそこからみんなが台風や天気にまつわる話をしてくれて、話題がつきることなく会話が続いたんです。だから黙っているよりは、自分が興味を持っていることを、自分から一つポンッて投げることも、コミュニケーション術としてあるんじゃないかと思います。

――声をかけてもらうのを待つのではなく、自分から話題を提供すると。なるほど、ありがとうございます。

 いえいえ。でもあの時は、イノッチの他にエレキコミックのやついいちろうさんもいたんですけど、あの2人とだと一生話していられますね(笑)。そういう話で言うと、シングルに収録している「タンポポ feat. ZORN」のZORNや、7月に参加した「夢追い人 feat. KREVA」のPUNPEEとか、彼らはうちのスタジオにくると、ヒップホップの話とか、ずっと何かしら話しているんです。でもそうやって人と話すのは大事なことで、今となってはすごく貴重なことだなということを感じた1年でもありました。

――では最後に2020年、KREVAさんにとってどんな年でしたか?

 2020年は、この年齢になって初めてのことが、まだこんなにあるんだと思った年でした。気球に乗ったのもそうだし。ちゃんと勉強してきたつもりだけど、本当に初めて聞く言葉と出会ったり。「何これ!」っていうことが、まだあるんだなって。映像も始められたりとか。そういう初めてがたくさんあったので、その中で成長させられる部分は2021年に成長させていきたいし、もっと初めてのことに出会いたいですね。オワコンとかの意味で死ぬって使いますけど、そう思うとまだまだぜんぜん死ねないです。自分の興味のあるものにしっかりアプローチして、しがみつけるものにはしがみついてやっていきたいと思います。

(おわり)

作品情報

KREVA

New Single「Fall in Love Again feat. 三浦大知」
2020年12月23日発売
【完全生産限定盤 A】CD+DVD/スペシャルブック仕様 VIZL-1837 5908円 + 税
【完全生産限定盤 B】CD/スペシャルブック仕様 VIZL-1838 1908円 + 税

<CD収録内容>

1. Fall in Love Again feat. 三浦大知
2. タンポポ feat. ZORN
3. Fall in Love Again feat. 三浦大知(Inst.) 4. タンポポ feat. ZORN(Inst.)

<DVD収録内容> ※完全生産限定盤 A のみに付属

1. KREVA Streaming Live「1( マルイチ)」at Billboard Live TOKYO 2020.6.24
2. Fall in Love Again feat. 三浦大知(Music Video)
3. タンポポ feat. ZORN(Music Video)
4. Fall in Love Again feat. 三浦大知(Making)
5. タンポポ feat. ZORN(Making)

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