神はサイコロを振らない「革命を起こしていく」新譜から伝わるバンドの姿勢
INTERVIEW

神はサイコロを振らない

「革命を起こしていく」新譜から伝わるバンドの姿勢


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年12月05日

読了時間:約11分

 ロックバンド・神はサイコロを振らないが11月27日、1st Digital EP『文化的特異点』をリリースした。柳田周作(Vo)吉田喜一(Gt)桐木岳貢(Ba)黒川亮介(Dr)の4人編成。7月にリリースされたデジタルシングル「泡沫花火」でメジャーデビュー。今作『文化的特異点』には「泡沫花火」、映画『リトル・サブカル・ウォーズ 〜ヴィレヴァン!の逆襲〜』の主題歌「目蓋」、7月のオンラインライヴで初披露した「パーフェクト・ルーキーズ」などアッパーチューンからバラード曲まで全7曲を収録。インタビューでは『文化的特異点』に込めた想い、楽曲の世界観の秘密、2021年の展望など柳田周作に話を聞いた。【取材=村上順一】

いままでにいなかったタイプで革命を起こしていく

『文化的特異点』ジャケ写

――デビューして約4カ月、メジャーの空気感はいかがですか。

 なかなかライブやツアーができずにお客さんと触れ合う機会もなく、僕らがいま空中で動いているみたいな感覚があります。生の反響があるわけではないので、まだ実感が湧いていないというか。『ミュージックステーション』やYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』などに出演させて頂いたこともあり激動の1年でしたが、やっぱりロックバンドとしてライブがしたかったというのがあります。

 でも、今年末に『COUNTDOWN JAPAN 20/21』と『RADIO CRAZY』に初めて出演が決まって、そこでメジャーデビュー後、初めてお客さんと会えるんですけど、本当に決まってよかったです。そこで改めてやっと僕らの音楽を届けられるなと本当の意味で実感できるのかなと期待しています。

――そういったある種の逆境や変化を曲に落とし込むこともあり、今までとは違う楽曲が出来たりも?

 そうなんです。今作で凄くディープな「遺言状」という曲も、コロナ禍があって世の中の空気がネガティブな方向に行ったなかで生まれた曲でした。反面、「パーフェクト・ルーキーズ」という凄くポジティブな曲も出来て。僕らは今年「夜永唄」で反響があったんですけど、本来ならロックバンドに出会わなかったような方々も凄くメッセージやコメントをくださって、よくも悪くもめちゃくちゃ音楽に世界中が触れた年だったんじゃないかなと感じています。

――神サイはこの状況を好転に持っていったバンドだと思います。今作のタイトル『文化的特異点』には、いまおっしゃったような意味も含まれている?

 まさにこの『文化的特異点』というワードがいまの自分達だと思って決めました。ライブハウスで戦ってきた人達からすると、僕らもそう言われていますが、SNSがきっかけで、という盛り上がり方はよく思わない人もいたりするかもしれないです。でも音楽は作っていかにたくさんの人が聴いてくれるに限るというか、聴いてもらえないと作った意味がないと思っています。本来ならロックというジャンルに触れなかった人達にいま広められているなら、それは一つの革命だと思いますし。僕らもいままでにいなかったタイプで革命を起こしていくみたいな。

――とはいえ神サイはライブハウスを大事にしているバンドだと思っているので、どんなやり方をしても説得力は違いますよね。

 ありがとうございます。大阪にMUSEというライブハウスがあるんですけど、そこで毎年『心斎橋を刻め』という新年のイベントに出ていたんです。来年はこんな状況で初めて出られなくて...。MUSEの方は「神サイを呼べなくてめちゃくちゃ悔しい」と言ってくれて。1年くらい期間が空いて会えなかった中でもいまだにこういう風に愛してくれる人がライブハウスにいるんだなって。

 余談なんですけど僕らが3年くらい前に自主制作の期間があって、その期間は初めて自分達4人だけで活動するので何もわからないんです。お金もないしグッズも作れないしツアーもまわれないしと。そういう時に福岡のQueblickというライブハウスの代表の方が「1回これでグッズ作ってツアーまわれ」と言ってくれて、その費用を貸していただいたんです。

――バンドに何か可能性を感じていただけたんでしょうね。

 そういう男の中の男みたいな人がライブハウスには多くて。僕らはそこに育てられたし救われてきたので、ハングリー精神などをいまだに持ち続けていられるのもライブハウスで戦ってきたからなんです。今年1年恩返しができなかったぶん、ちょっとずつ状況がよくなってライブができるようになったら恩返しがしたいです。

――さて神サイの音楽を聴いて映画や小説のようでもあり、興味深ったのですが柳田さんがどんな映画が好きなのか気になりました。

 ライブが終わった後メンバーとレンタルショップでDVDを借りて観ていた時期がありました。バンドのみんなそれぞれキャラクターが違って好みに性格が出ているんですけど、ドラムの黒川は世界観の広いアクションものやサスペンスもの、僕とベース桐木は決まって邦画の鬱っぽいテーマを好んで借りていました。そこが彼との唯一の共通点なんですけど(笑)。

――唯一なんですか(笑)。その中でもお気に入りは?

 『リリイ・シュシュのすべて』『ヒミズ』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などです。ドロドロしていて救いようのない、ある意味、非日常を感じられた作品です。普通に生活をしている中でそんなにどんより暗い話ってなかなかないし、これらの作品は自分の中では衝撃でした。

――ちなみに宇宙やSFは好きなんですか。

 SFは好きです。一番好きな映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』かもしれないです。観た時は本当に衝撃で、いまだに何度でも観れちゃうくらい好きです。いまSF的なものを題材とした曲を書いていて、神サイにとってのターニングポイント、分岐点となりそうな楽曲が出来つつあるんです。キャッチーでアッパーな曲なんですけど、早く世に出したいなと。

――楽しみです。私の中で本作で浮かんだテーマが“憂鬱”だったりするんです。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のような作品と何か合致したというか。

 もしかしたら、感覚的にそれに影響を受けているのかわかりませんが、ある時期から、本来のロックバンドのライブって最初はアッパーで盛り上がって中盤にバラードをもってきて最後盛り上げて終わるという感じだったんですけど、それこそ『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のような絶望に叩き込んで「何が起きたの?」というライブをし始めた時期がありまして。

 「夜永唄」が出来たのは2017年くらいなんですけど、それを初披露したライブでこの曲を最後に演奏したんですけど、それが凄く心地よくて。「ありがとうございました」もなく暗転したままステージ袖に消えていくみたいな。なのでもう拍手も起きないんです。そうなると次に出るバンドはめちゃくちゃやりづらいじゃないですか? 

――やりづらそうです(笑)。

 凄く仲良しなバンドのユアネスなのにそんな感じでバトンを渡してしまいまして(笑)。雰囲気などを作り込むのはけっこう好きかもしれません。

――するとアルバムの曲順も相当こだわるのでは?

 こだわります。今作を作り始めたのは夏だったんですけど、EPを作る予定もなく、とにかく楽曲を作っていこうという流れでした。「パーフェクト・ルーキーズ」は夏にはレコーディングが終わっていて、最後に出来たのが「遺言状」なんです。新鮮味もあって、自分の全てを表現した楽曲だなと思い、当初「遺言状」を1曲目にしていました。ただ、そうなることでこのEP自体が真っ黒に染まってしまう。

――EPのカラーはだいぶ変わりますね。

 結果1曲目になった「パーフェクト・ルーキーズ」は、前向きでわかりやすくて開けた楽曲というのはこれまでそんなになかったので、これを1曲目にもってくるというのは新しい神サイを提示したい、というものでした。メジャーデビューして1st EPというのを意識しました。

神サイはこの4人であるべき

――「パーフェクト・ルーキーズ」の歌詞の頭で<Dmさえも知らずに>と出てきますが、それが面白いなと思いました。

 そこは最初、Dmではなかったんですけど、響きも当時あまりよくなくて「どうしよう」と思っていた時に、この楽曲で使われているコードがDmが多いなと思って(笑)。

――そういった曲の要素が歌詞などに反映することはけっこうあるのでしょうか。例えば「導火線」という曲はギターのイントロの感じが導火線の上を火花が走るというイメージが浮かんだのですが。

 それは嬉しいです。でもこの曲はそこからついたタイトルではないんです。アレンジが先で歌詞を最後につけたんですけど、僕の中で着火する“火”のイメージでした。歌詞はバンド活動をしていく中で、すごく頑張っている人がいると、誰かがそれについていけなくなる時期が必ず来るんです。そういう時ケツを叩いてあげられるのってメンバーしかいないと思うんです。そこは僕らの中でどうにか完結するべきだ、というのを神サイはずっとやってきたんです。

 あまりそういうメンバーに対して「やっていくぞ」みたいなのを楽曲にしていくのはあまり聞いたことないなと思って。他のバンドでもメンバー同士の仲のよさを伝える歌詞はいままでもあるかもしれないけど、メンバーを鼓舞した楽曲というのは中々ないので、結成5年目のタイミングで「ここからお前ら行くぞ」みたいなこういうケツ叩く楽曲ってけっこう面白いなと。

――バンド解散の危機などもあったのでしょうか。

 1回危ない時はありました。その時は自主でやっていく直前くらいだったので、そうなった時もケツを叩くのはメンバーでした。今の4人じゃないとダメだったんです。各々がその道に非常に長けている人間なわけでもないし、僕が超絶歌が上手いわけでもない、圧倒的なソングライターでもないというか。

――自分自身に厳しいんですね。

 みんな「別に僕なんて」みたいな風に思っているんですけど、その集合体だからいまの神サイの表現やバンドの色が出ているのでこの絶妙なバランスを崩したくないというのもあるし、このまま4人で這い上がっていくべきだなと、そう思えるのは色々と苦楽を共にしてきたからこそだと思います。メンバーチェンジをするバンドもいますけど、神サイはこの4人であるべきだと思います。

――「遺言状」でも<たかが人間一人消えたって 大概誰も気づかないし>という歌詞がありますが、そういった点も出ている部分もあるんですよね?

 そうなんです。本当に何でこんな自分に凄く力を貸してくれる人達がいて、いまの神サイが、ここまできているというのは全部運だと思うんです。僕らよりもカッコいい曲を作っているバンドはたくさんいるし、「何でこの人達が売れていないの?」という人達がたくさんいる中で、僕らがいまここまでこれているのは間違いなくスタッフさんやマネージャーさん、ファンの方々のおかげなんです。自分自身は全く大したことないよというのはずっと思っているし、たぶんこれからも変わらないんだろうなと。

みんなに「ありがとう」を伝えに行きたい

――楽しみです。さて、「目蓋」の歌詞にある<「憂鬱は一過性のもんさ」>という部分は誰かに言われた言葉ですか。

 僕が言ってあげた言葉なんです。励まし方がわからないと言いますか、どういう風にこの人をポジティブな方向に持っていけるかという中で、「憂鬱はいつかは楽しい気持ちになれるよ」としか言えなくて…。だから当時その人に言ってあげていた言葉だったりそういう心情を表しつつも、逆にそれを言われて向こうはどう思っていたんだろうなとか、「目蓋」は色々その時期を全部落とし込んだ楽曲なんです。これを聴くと当時を思い出してちょっと苦しくなります。

――これは映画『リトル・サブカル・ウォーズ ~ヴィレヴァン!の逆襲~』の主題歌で、そこともリンクしているのでしょうか。

 一応書き下ろしではあるんですけど、監督はこの曲を聴いて「全部エンディングが浮かんだ」と仰ってくれていて。映画自体はドタバタの青春コメディみたいな感じなんですけど、そこと真逆にいるような内側、生活を綴ったような楽曲が監督は「絶対これでいきたい」と熱い言葉をくださいまして。狙ったミスマッチというか。ドラマシリーズは忘れらんねえよさんが主題歌なんですけど、あえてそこで神サイの「目蓋」が監督の中で刺さったみたいで。

――神サイはピアノが効果的に入りますが、柳田さんにとってピアノはどういうものでしょう?

 ピアノが入っている楽曲が出来始めてからの話ですが、いままではギターでコードを鳴らして楽曲を作るというやり方をしていたんです。ある時からピアノで一回楽曲を作ってみようと思った時期がありました。するとギターでコードを鳴らして出てくるメロディとは全く違うメロディが出てくるんです。ピアノから「泡沫花火」も「目蓋」も生まれたし、ポンポンと楽曲が出来て。ピアノで曲を作り出して限界値がまた広がっていったというか。そこは今後もどんどん活かしていきたいという気持ちもありつつ、ロックバンドとしてのギターサウンドの楽曲も作っていきたいというのがあります。

――「泡沫花火」の『THE FIRST TAKE』のバージョンの動画の方のピアノはどなたが弾いているんですか。

 小林岳五郎さんです。歌に全力を注げました。バンドサウンドではない土台の上での歌だったので、また違った表現もできたし本当に気持ちよかったです。アレンジはほぼ30分スタジオに入って出来上がったもので1回合わせたら「もうこれでよくないですか?」というくらいですごかったです。

――でも一発録りということで緊張感もありますよね?

 はい。人生で最も緊張したのが『THE FIRST TAKE』です。でもあの緊張感をまた味わいたいなと思っていて、また出れたら嬉しいです。

――では最後に、2021年は神サイはどんな姿を見せていきたいですか。

 今年1年ライブができなくて、やっと2020年の締めくくりとして『COUNTDOWN JAPAN 20/21』と『RADIO CRAZY』が決まって、2021年は2020年で神サイを知ってくれた人に会いに行きたい、という思いが大きいです。東名阪だけではなく、いろんな場所にも行きたいし、どこまで広がっているんだろうというのも実際に肌で感じたいです。そしてみんなに「ありがとう」を伝えに行きたいです。

(おわり)

作品情報

1stデジタルEP『文化的特異点』
2020/11/27 DIGITAL RELEASE

神はサイコロを振らない「文化的特異点」セルフライナーノーツ掲載ページ


「パーフェクト・ルーキーズ」「導火線」「遺言状」のリリックビデオ三部作を”神はサイコロを振らない YouTubeチャンネル”にて毎週金曜日21:00よりプレミア公開することが決定。

ライブ情報

【COUNTDOWN JAPAN 20/21】
日程:12月27日(日)~31日(木)※28日(月)を除く
会場:幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
※神はサイコロを振らないは12月27日に出演
http://countdownjapan.jp/
【FM802 ROCK FESTIVAL “RADIO CRAZY”】
日程:12月26日(土)~28日(月)
会場:インテックス大阪
※神はサイコロを振らないは12月28日に出演
公式サイト:https://radiocrazy.fm/

最新情報

◆12月5日「YouTube Music Weekend」参加

◆アニメ『ワールドトリガー』2ndシーズン<エンディングテーマ>に
神はサイコロを振らないの新曲「未来永劫」が決定
2021年1月9日(土)スタート

この記事の写真

記事タグ

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事