Rain Drops「僕達の存在の証」バーチャル空間でも感じられる温度や熱量とは
INTERVIEW

Rain Drops

「僕達の存在の証」バーチャル空間でも感じられる温度や熱量とは


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年11月30日

読了時間:約9分

 バーチャルライバーユニットRain Dropsが25日、2ndミニアルバム『オントロジー』をリリース。Rain Dropsはバーチャルライバーグループ「にじさんじ」所属の緑仙、三枝明那、童田明治、鈴木勝、える、ジョー・力一による音楽ジャンルに特化した6人組。5月13日に発売された1stミニアルバム『シナスタジア』がオリコン週間合算アルバムランキング、Billboard JAPAN総合アルバムランキング『Hot Albums』など11冠を獲得。『オントロジー』は哲学用語で“存在論”と訳される言葉。人ではなくAIでもない彼らが、インターネットのバーチャル空間でVTuberとして活動するその“存在”を証明する作品となった。本作の話題を中心にVTuberとしての各々の想いや信念についてメンバーに話を聞いた。【取材=平吉賢治】

メジャーデビュー1st作品の反響

――1stミニアルバム『シナスタジア』の反響は凄かったですね。

緑仙 CDという物としてリリースされるとお爺ちゃんやお婆ちゃんもピンときてくれるんです。過去に万歩計のコラボをさせて頂いた時くらい喜んで頂けました(笑)。「CDかあ!」って凄く喜んでくれまして。

三枝明那 トントンと進行したというのもあって、あまり実感がないかもしれません。だから舞い上がってもいない、という感じです。『シナスタジア』発売からすぐに今作に向けて準備していたので、そういう面では2nd『オントロジー』の反響が楽しみというのもあります。

童田明治 やっぱりお婆ちゃんが喜んでくれて車で『シナスタジア』をニコニコしながら聴いてくれたんです。身近なところだと「お婆ちゃん、童田頑張ったよ!」という気分でした!

鈴木勝 インターネットでの活動があまりわからなくても、TVやCDなどで知って頂いて、今自分達がどういう活動をしているか具体的に見えたというのが凄く嬉しかったです。『シナスタジア』は、にじさんじのグループがCDを出すという形だったと思いますが、今作は「こういう歌を歌う人達が次のCDを出す」という風だと思われるので「その人達をもっと応援したい」と思ってもらえるようなことをやったつもりです。今作の反響が気になって仕方ないです。

える 周りの反響としては11冠獲得というのは貴重だし、ありがたいことだと思います。実感がまだあまりない部分もありますが、周りのリスナーさんや支えてくれたスタッフさん方が「これは凄いことだよ」と言ってくださるから凄いことだなと思うんです。もともと音楽専門でやってきたわけではなく“一般エルフ”なので、機会に恵まれてメジャーデビューしたから凄くありがたいです。『シナスタジア』がきっかけで「えるってこんな声で歌えるんだ」と知った方も増えてそういう反応も見られたのは嬉しかったです。

ジョー・力一 ランキングなどで1位を頂くことはもちろん凄くありがたいと思います。曲がカラオケに入って、ファンの方が「歌ったよ」と、モニターに映し出された曲名を撮ってSNSに上げてくれたりするのが流れてきた時は実感が強いと感じました。

――そんな前作から約半年でリリースの本作は「『存在』をテーマに様々な人間模様を描いた物語」と聞きましたが、哲学的なテーマでもある?

ジョー・力一 6人でテーマを決めて「VTuberってどこにいるんだろう? 僕達が存在しているというのはどういうことなんだろうか?」というのを今回はテーマにしようかと思ったんです。いろいろ話し合っているうちに“存在論”、“オントロジー”という形で「ここにいるってどういうこと?」ということを突き詰める学問もあってと。内容は、歌詞の中で色んな場所や時間帯や季節など、そういうところにいる中で「こういうところにいるよね」というような“日常”というのが結果的に裏コンセプトみたいになったかなと思います。

VTuberとして活動する“存在”を証明するための作品

――本作の印象、内容についてはいかがですか。

緑仙 個人の活動ではあまり明るい楽曲などを歌ったりしないんですけど、Rain Dropsはどちらかというと明るくて。中には暗いものもあるけど、前を向いて希望のあるような歌が多いんです。そういう「Rain Dropsの自分」が前回よりも確立されたと思いました。今回はこの6人でやる時の自分はソロの時とはどう違うのかと、そのあたりが上手になってきたという印象です。

三枝明那 今作で初めて自分で作詞をした「ラブヘイト」という曲ですが、歌にすると思っていたより「そこまで自分のこと書くはずなかった」ということも書いたんです。結果的にその曲を6人で歌ったんですけど、そこを上手く藤林聖子先生が6人で歌うようにチューニングしてくださったので、やはりプロの作家さんは凄いということを実感しました。

童田明治 私は作詞、作曲、編曲をしてくださったじんさんが本当に好きで! 1曲目の「雨言葉」が私メインでということを言ってくださって、最初のパートを頂いたんです。そこをわりとさっぱりとした歌い方をしていたんですけど、感極まって感情を入れたりして「自分もみんなみたく歌に感情を乗せられる人間だったんだな」って思いました(笑)。今回は色んな曲で自分らしい抑揚をつけられたので、自分の歌を一歩強くできたと思いました。

鈴木勝 今作は『シナスタジア』よりも、曲の中で他人が出てくることが多いと思いました。前作は「自分はどういう風にものを捉える」「自分はこういうことが言いたい」ということがけっこう多かったので、一人を考えることが多かったと思います。『オントロジー』は他者の中に見える自分など、それで「自分って何なんだろう」というのが見えてくるような人間模様が1曲1曲にあります。色んな登場人物や季節、関係性がある曲がいっぱい入っていて、全曲そういう共通点があると思います。聴いている方も自分の存在をもう一回考えてもらえるものになっていると思うし「一人じゃないんだな」と思ってもらえるような作品になったと思っています。

える 『オントロジー』は色んな曲構成になっていて、バラードも明るい曲も爽やかな曲も、「これはライブだろう」という曲もいろいろあって耳が楽しいと思うんです。える個人の話だと、みんなの声をよく聴いたこともあってどの曲も歌いやすかったです。前作に比べると歌の光景も見えやすかったりしました。

ジョー・力一 非常に個人的な聞きどころなんですけど、一番下の方で僕の声が薄く鳴っているところがあるんです(笑)。顕著なのは「ミュウ」という曲で。奥下の方で低い声が入っているんです。どの曲でもちょっとずつそういう役回りがまわってきて、つまりは適材適所的な(笑)。役割意識的なものについて、ポジティブな意味でどんどんバリエーションが広がってきた中での僕の低音だったりするんだろうなと思います。かと思えば急に汗をかきながらラップをやってみたり(笑)。そういうところがあるので、ある意味ではチャレンジ的なことに関しては各メンバーが色んな挑戦をしていたり、まだまだ知らない一面もあり、噛めば噛むほど美味いのではないかというところに関しては自信を持っておすすめできる感じがします。

――作詞をされた「ソワレ」にはどんな想いを込めましたか。

ジョー・力一 もともと僕と三枝君の青年2人でという感じで、ラップディーバ的な感じでえるさんにフィーチャリングでお願いしようという枠がまず決まりました。そこからポルカドットスティングレイのウエムラユウキさんにもこのコンセプトをお伝えして曲が出来ました。最初に打ち合わせで浮かんだのは、暑い季節だったのもあり高速道路で車を18時頃に飛ばして、明那にハンドルを任せて僕はスマホで高速道路を抜けた先のご飯屋を探しているみたいな絵なんです。全部歌詞に反映されてはいないですが、ドライブや、そこから街へなだれ込み「ダンスですかね? クラブですかね?」など、打ち合わせでプロデューサーと話をした気がします。

 でも、あまり猥雑な印象にしたくなかったから、ネオンが光る踊れるような所に行くと歌姫のえるさんが待っていた、みたいな。そういう意味では夜の歌というところで詰めていった時に、1日を昼と夜の部にわけて、昼の部が冴えなくても「今日はまだ折り返しだから」「何かあるかもしれない」と言って、どちらかといったら日常の中のちょっとしたイレギュラーに飛び込んでいくみたいな情景描写です。そういう一場面の切り取りを、Rain Dropsの中ではわりとアダルトなメンバー編成でやれたんじゃないかなと思います。

VTuberとしての信念

――VTuberとして大切にしている想いや信念は何かありますか?

緑仙 配信やVTuberというものの捉え方的に、個人的にはイラストや漫画を描いたり歌を歌ったりというのと一緒で、何かしらの表現方法の一つでVTuberというのを僕自身は選択したと思っています。伝えたいことがあって、それをVTuberとしていろいろと表現しています。

三枝明那 僕が心掛けているのは「親しみやすさ」です。VTuberは触れないし、温度も観てくださる方がそれを確かめる手段がないというのは凄く寂しいことだと思うんです。もちろん色んな活動や方針があることを知って頂いた上で、どれだけ視聴者に温度を伝えられるか、熱があることを感じてもらえるかというところで「親しみやすさ」に信念として重きを置いています。

童田明治 私は凄くシンプルに「自分が面白い、楽しい」と感じたことを発信したら絶対楽しいと思っているんです。だから、まずは何をやるにしても「自分が楽しむ」というのを第一にやっています。

鈴木勝 自分は今まで言葉にしたことはなかったんですけど「誠実」かなと思います。VTuberは「自分達はここにいるよ」と言っても本当にいるか証明できないんです。でも普段から嘘をついてばかりだったり適当なことをやってたら、本当に伝えたいことも伝わらなかったり観てもらえなくなっちゃうので、VTuberの活動をする上で誠実というのはより大事にしたいと思っています。温度や気持ち、自分の表現したいものも、まず観て頂ける人がいないと伝えられないし、受け取ってくれる人がいないと成り立たないと思うんです。「そこにいる」と認めて応援してくれている方がいないと活動を続けていけない存在なので、こっちがまず腰を据えて、画面越しでもちゃんと近い距離で「あなたと話がしたいんだ」というのをぶつけていかないと向こうも応えてくれないのかなというのが自分の中にあります。

える えるの信念は「自分らしさ」で、その言葉の中には色んな意味があると思うんです。自分がやりたいことをやる、こういう態度でいること、それらが「自分らしさ」と。VTuberってだんだん人数も増えていっていますが、1期生がデビューした時、VTuberは3Dの方々がほとんどだったんです。える達がデビューした時、いわゆる2Dのモデルの姿だと「それはVTuberじゃない」という人達も多くて。だから、そういう声を聞いているえるは、自分らしさを大事にしていたら「それはVTuberじゃない」と言われることはないかなと思っているんです。

 にじさんじも、100人もいたらやっぱり色んな子がいるんです。歌が専門、ゲームを極める子、ASMRが得意など様々いて、だから「その配信じゃVTuberじゃないだろ」と言われなくなってきたのは、にじさんじが多様性にあふれていて、みんなが「自分らしさ」を大事にしているからなのかなって思います。だから、えるは「自分らしさ」は周りに何か言われても大事にしていきたいと思います。

ジョー・力一 僕は「やりたいことから順番に」というのが長続きのコツかと(笑)。ある種のわがままを通していかないと多分ポキっと折れる時が来るだろうなということを長々やっていてよく思います。でもこれって自由気まま、勝手かと言われたら逆な時もあるんです。やりたいことから順番にやるからには、どんなに下準備に時間がかかっても、やりたいからやらないといけないんです。それを楽しめればいいんじゃないかなと思います。そこにRain Dropsも入っていると思います。

――みなさんそれぞれVTuberとして核となる想いがあるのですね。最後にみなさんにメッセージをお願いします。

三枝明那 僕達がここにいるためにやっていることを僕達なりに表現して、楽曲を書き下ろしてくださった方々にも僕達の想いを汲んで頂いて書いて頂いたので、そんな僕達の存在の証としてこのCDを手にとってもらえたらと思います。そして、同じように「俺って何で生きているんだろう?」「俺ってこの世に存在する意味あるのかな?」など、思う方がいるかもしれませんが、みんな何者でもなくても、何者かになろうとしているそんな姿を見て是非、何かになってほしいと思います。そういうことが本作を通して綴られていると思います。「存在する」ということについて深く掘り下げた7曲となっておりますので、是非聴いて頂きたいと思います。

(おわり)

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