saji「何気ない日常の瞬間がドラマチック」新譜に込めたメッセージ
INTERVIEW

saji

「何気ない日常の瞬間がドラマチック」新譜に込めたメッセージ


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年11月27日

読了時間:約10分

 北海道出身の3人組バンドsajiが11月25日、「瞬間ドラマチック」をリリースした。2019年7月にバンド名をphatmans after schoolから、自分たちの人生を自分たちで掬(すく)うという意味を込めsajiに改名。今作「瞬間ドラマチック」は、池袋を舞台に描かれたオリジナル長編アニメーション映画『君は彼方』の主題歌で、爽快なロックチューンに仕上がった。カップリングの「アオイノウタ」は、TOKYO MX・BS11 他で放送中の歴史バラエティ「戦国炒飯TV」新エンディングテーマに起用。そして3曲目にはsajiに改名後初のクリスマスソング「ベルが鳴ったら」を収録した。インタビューでは、「瞬間ドラマチック」の制作背景から、楽曲に込めた想い、これからの展望をヨシダタクミ(Vo.Gt)、ユタニシンヤ(Gt)、ヤマザキヨシミツ(Ba)の3人に話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

アニメ映画『君は彼方』から青色を感じた

「瞬間ドラマチック」通常盤ジャケ写

――バンドを結成して今年の12月で10周年なんですよね。

ヨシダタクミ 僕とヨッシーが組んだのが2010年の12月なのでもうすぐ10年なんですけど、周りに言われるまで全然気づいてなくて。厳密にはいつバンドを組んだかもわからないから、結成記念日もないんです(笑)。でも、10年というのは素直に嬉しいです。

――10年続くというのはすごいですよね。間もなく10年を迎えるsajiのニューシングル「瞬間ドラマチック」のジャケ写、今は冬ですけどめちゃくちゃ夏ですね。

ヨシダタクミ 映画『君は彼方』の季節が夏なんです。季節感はリアルタイムではなく映画の世界観に合わせた形にしました。

――このジャケがこの季節にCDシャップに並ぶのを想像すると面白いですね。

ヨシダタクミ 他のアーティストは冬を意識したものをリリースしてくると思うので、面白いですよね。

ヨシダタクミ

――さて、映画のどの部分をフォーカスして楽曲を作ろうと?

ヨシダタクミ まず台本を頂きまして、そこでこの主人公たちは今まさに10代の子たちなんだなという印象を受け、作品から青色を感じました。その青はシンプルに色の青、青春などの青さ、精神的な青さなど色々なんです。その未熟さがありながらも突き抜けていくような、炭酸が弾ける様な疾走感みたいなものも感じました。そのフラッシュアイデアを大切にしようと思って、仮タイトルも「青」にしていたんです。曲は青いイメージを持って、歌詞は原作を深掘りしていくようなものにしたかったんです。僕は先に詞を書くことが多いんですけど、今回は曲と歌詞が同時に2軸で動いていた感覚もあります。

――その「青」という仮タイトルから「瞬間ドラマチック」になった経緯は?

ヨシダタクミ 大人になると思い出というのは、旅行に行くとか自ら作りに行かないと出来ないと感じています。でも、青春時代を懐古してみると、思い出を作ろうと思っていなかったのに、結果良い思い出になっているんですよ。映画の主人公も何気ない日常の瞬間がドラマチックになっていて、この一瞬がドラマなんだよということを伝えたいと思いつけました。もちろん僕らもそういう時代がありましたし、いまだにヨッシー(ヤマザキ)とユタニとも当時の話はしますし、その瞬間瞬間が思い出になっていたんですよね。僕とユタニは噴水があるところで、ただ足をつけて話していたこともありました。

ユタニシンヤ いま自分も全く同じことを思い出してた(笑)。

――なんですかそれ(笑)。

ヨシダタクミ (笑)。なんでもないことが思い出で、ヨッシーとも学生時代に楽しかったことをよく話しますから。それこそ、スーパーでウナギを買ってヨッシーの家に突撃して、ご飯を炊いておいてもらって2人で食べて帰った思い出とか。

ヤマザキヨシミツ その日が土用の丑の日だったんです。

――確かに学生時代はなんでもないことでも鮮明に覚えているんですよね。ところで、ユタニさんとヤマザキさんも台本は読まれますか。

ユタニシンヤ 僕は今回タクミと同じタイミングで台本を読ませていただいて、すごくイメージしやすい作品だなと思いました。僕もタクミと同じように爽快感みたいなものを感じました。なのでギターフレーズもタクミと僕のイメージがリンクしていたので、すごく作りやすかったです。

――ユタニさんが今作で注目してほしいポイントは?

ユタニシンヤ ギターソロですね。「瞬間ドラマチック」に関しては流れるようなギターソロというのを意識して作ったので、そこに注目してもらえると嬉しいです。

――楽器や機材など新しい試みはありましたか。

ユタニシンヤ 今回Addictone Custom Guitarsというメーカーのギターをお借りしてレコーディングしました。アンプやエフェクター類はこれまでと変更はないです。

ユタニシンヤ

――ヤマザキさんは新しい試みはありました?

ヤマザキヨシミツ 楽器や機材はいつも通りです。プレイとしては2番で雰囲気を変えたいと思ってフレーズを変えているんですけど、スピード感やうねりがある中で、2番のAセクションでパーカッシブなフレーズを盛り込んだのはこだわりです。

――ヤマザキさんはタイアップ作品がある場合、台本読んでイメージを固めて考える感じですか。

ヤマザキヨシミツ 僕はタイアップ系の作品はまずタクミが解釈したものに対して、アプローチすることが多いです。

――ヨシダさんからベースラインをリクエストすることも?

ヨシダタクミ 僕からリクエストすることはないです。確かに僕が思い描いているものがあることはあるんですけど、それに固執すればするほど他の人のアレンジが受け入れづらくなってくると感じていて、良い意味で自分だけで作り込まないようにしています。

ヤマザキヨシミツ バンドを始めた当初は好き勝手にやっていたんですけど、最近歌モノをやっていて楽しいと思えるポイントが出てきました。それは、歌がグンと伸びる瞬間にベースで押し出せるようなフレーズを弾けた時に、手応えを感じるようになって。そこを意識してベースのアレンジをしています。

――ちなみにヤマザキさんがベースという楽器を選んだきっかけは?

ヤマザキヨシミツ 学校の文化祭で友達がベースを弾いていたんですけど、その時に弾かせてもらって。ギターも弾いたんですけど、弦を沢山押さえるのが大変だと感じたので、特に好きというわけでもなかったんですけどベースになって。もともと音楽は好きだったので弾いているうちに楽器って楽しいなと思えるようになって。

ヤマザキヨシミツ

――ヨシダさんは歌うということについて、今どのように考えていますか。

ヨシダタクミ 後輩からも歌についてはよく相談を受けるんですけど、話を聞いているとアンサンブルの中の歌という感じで、みんな歌を一旦別のくくりに入れるんですけど、僕からすると歌も楽器の一つなんです。

――確かに歌とオケは別々に捉えてしまいがちです。

ヨシダタクミ “歌う”ということは楽器と同じ表現方法の一つだと思っていて、マイクを変えれば声質は変わりますし、コンディションによっても声は変わりますから。僕は新曲を録る度に歌が上手くなりたいと思いながらレコーディングに臨んでいます。歌が上手ければ売れるとは思っていないんですけど、ただ歌が上手くなりたいと意識しながら歌い続けることで、歌詞によりリンク出来るようになると思っているんです。なので、毎回こなれて歌わないように心掛けています。前作から今作に掛けても限界を超えたい、と常に思っていて。

――常に更新し続けているんですね。

ヨシダタクミ 今回の曲、サビがめちゃくちゃ高いんですけど、普段のレコーディングより倍のテイクを録りました。その時限界を超えたものをベストテイクしてあげるので、声が死ぬくらいの勢いで録っています。面白いものであの時限界だと思っていたものが1年後には普通に歌えたりするので、そうすると歌を更新出来ているなと感じます。

2021年は期待値を高め、会えるような活動を

「瞬間ドラマチック」初回限定盤ジャケ写

――カップリングの「アオイノウタ」はライブで楽しみな曲ですね。

ヨシダタクミ この曲は「瞬間ドラマチック」とは方向性が違うものを書いていて、それもあって青さという部分は共通しています。この曲は「戦国炒飯TV」のタイアップが決まって、先方からカッコいい曲を下さいとリクエストを頂いたので、バンド色を強く打ち出そうと思いました。シンセを極力鳴らさずにユタニをフィーチャーしてギターやリズムで構築したいなと。

――前回のインタビューでユタニさんが「ノリがよい曲をやりたい」とリクエストしてましたが、もしかしてこの曲がコミットした感じも?

ユタニシンヤ いや、それがこれじゃないんですよ(笑)。

ヨシダタクミ たぶん入るとしたら次のアルバムになるんじゃないかなと思います。

――楽しみです。「アオイノウタ」ギター、イントロからカッコいいですよね。

ユタニシンヤ この曲は若い子たちにコピーしてもらいたいと考えながらアレンジしました。耳に残るフレーズにしたいなと思ったんです。

ヤマザキヨシミツ 「瞬間ドラマチック」は自分が得意なものを入れたという感じなんですけど、この「アオイノウタ」は新しい感じになったなと思っていて、レコーディングも苦戦しました。リズムが変わっていくんですけど、そこに合わせてリズムを生み出していくのが難しいんです。フレーズ自体はそんなに難しくないので、一人で弾く分には問題ないと思うんですけど。

ヨシダタクミ 歌うにあたってこの曲の起点はドラムではなくベースにしたんです。なので、自分(ベース)が起点になっている事を理解しないとぐちゃぐちゃになってしまうと思います。アンサンブルとは何か、というところで勉強になる曲になったんじゃないかなと。

――タイトルは「アオイノウタ」ですけど、このタイトルにした意図は?

ヨシダタクミ このシングルを「青」というイメージにしたかったんです。それで「青」の使い方を考えて最初は小説の始まりのような口語にしようと思ったんですけど、「瞬間ドラマチック」とのバランスが取れなかったので、カタカナにしようと思って。それで、前に「孤独の歌」、前作で「ハナビノウタ」という曲もあったので、「〜歌」シリーズにするのも面白いなと思いました。まあ、続くかはわからないんですけど。

――“ユタニノウタ”が生まれる可能性もありますね。

ヨシダタクミ それはないでしょうね(笑)。

ユタニシンヤ それは僕が個人的に作る曲です(笑)。

――是非、スピンオフでお願いします(笑)。さて、もう一曲の「ベルが鳴ったら」はクリスマスソングですが、曲調は疾走感があって、セオリーにとらわれないクリスマスソングで。

ヨシダタクミ この曲は季節とか関係なく作っていました。夏でも冬でもハマるように楽曲のベースは作っていたので、クリスマスソングにしようと思いました。僕はクリスマスと聞くと子供の頃を思い出すんです。子供のときクリスマスは「こんなに素敵なんだ」と思っていた気持ち、を思い出して書いていて。クリスマスに限らず冬の曲は幼い時の記憶で書いているので、登場人物に子供が多いんです。

――今以上にすごくキラキラした思い出が子供の時にはありますよね。

ヨシダタクミ その中でもサンタクロースの存在が大きいと思うんです。僕の場合は、父が「自分がサンタクロースだ」と明かしてきたので、割と早い段階でサンタがいないことを知ってしまうんですけど(笑)。でも、それを信じられるというのがすごく素敵だなと感じているので、夢のような曲にしたいなと思って。

――皆さんのお気に入りのクリスマスソングは?

ユタニシンヤ 僕はB'zさんの「いつかのメリークリスマス」です。もうこれは名曲です。

ヤマザキヨシミツ 難しいですね。パッと思いついたのは映画『ホーム・アローン』のテーマ曲なんですけど。

――映画にクリスマス感はありますけど、イレギュラーな選曲で(笑)。

ヨシダタクミ 僕はポール・マッカートニーの「ワンダフル・クリスマスタイム」です。携帯の着うたが設定できた時もこの曲にしていたくらい、10年以上この曲が好きなんです。有名な曲なので色んな人がカバーしているんですけど、それも全部集めてましたから。自分が好きな曲のそのアーティストの解釈を知るのが楽しくて。

――それ面白いですね。最後に2021年はどんなことに挑戦したいですか。

ヨシダタクミ 今年は楽曲制作に没頭出来た1年でした。なので、この1年が制作期間だったとしたら、来年からはそれらをお披露目する期間にしたいと思っています。バンドはライブとお客さんあってのものだと思っているので、皆さんの期待値を高めた上で会えるような活動をしていきたいです。

(おわり)

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