坂口健太郎

 『家政婦のミタ』、『〇〇妻』、『同期のサクラ』の制作チームの最新作『35歳の少女』(すべて日本テレビ系)が、現在放送中だ。

 同作は、10歳の時に事故に遭い、25年後に目を覚ました“35歳の少女”時岡望美の成長を描く。心は10歳だが、体は35歳という難役に挑むのは、『〇〇妻』以来5年ぶりの民放連続ドラマ主演となる柴咲コウ。脚本を担当した遊川和彦氏との再タッグでも注目を集めている。

 「21世紀はきっと、戦争も差別もなくなり、世界中の人がうちの家族みたいに幸せに暮らしている」――。

 そんな未来を信じていた10歳の望美。しかし、彼女が眠っている間に訪れた21世紀には、さまざまなことが起こった。現実世界では今年、誰もが予想だにしなかった新型コロナウイルスの流行もあり、世の中は混乱している。彼女が描いたような幸せな未来とは言うことができない。

 作中でも、望美を取り巻いていた幸せな環境は、180度変わっている。優しく美人な母・多恵(演・鈴木保奈美)は、25年の時を経て、白髪頭の冷酷な女性に。可愛い妹の愛美(演・橋本愛)は、刺々しいアラサー女性に。優秀な営業マンで、家族想いだった父・進次(演・田中哲司)に至っては、多恵と離婚し新しい家庭を築いていた。

 そして、望美の初恋相手・広瀬結人(演・坂口健太郎)は、小学校の教師となったが、ある事件をきっかけに退職。その事件については未だ明かされていないが、優しかった少年は、25年の時を経て、やさぐれた大人になっていた。

 望美のことを思い、25年前のように仲の良い家族を演じていた進次ら3人。しかし、結人だけが、「今はお前が夢見てたような未来じゃない。温暖化やら差別やら原発やら、いっぱい問題があるのに、そういうことには目をつぶって、みんな自分が得することばかり考えているんだよ」と望美に現実を突きつけたのだ。

 一見思いやりのない男にも見えるが、ただ冷たいだけではない。これが、遊川脚本に登場する青年に通ずる部分だ。結人の、ある意味で周りくどい優しさは、2017年に放送されたドラマ『過保護のカホコ』で竹内涼真が演じた麦野初に通じる部分を感じる。

 『過保護のカホコ』は、箱入り娘の根本加穂子(演・高畑充希)が、児童養護施設で育った初と出会い、恋をすることで自立をしていく姿が描かれている。初も、物語の序盤では、「大事なことが分かってないんだよ」などと言いながら加穂子を罵る。しかし、加穂子の純粋さに影響を受け、初も素直な心を取り戻していくのだ。

 望美と結人も、この2人の関係性と通じる部分があるように感じる。結人もきっと、初と同じように苦しんだ過去があり、そのせいで世の中を斜めに見ているのではないか。だが、歪んでいるようで歪み切れていない。自分と対極にいる存在に、時折イライラしながらも、心の奥底にある優しさが顔を出し、手助けをしてしまう。むしろ、悲しみを知っているからこそ、本当の意味で相手に優しく寄り添えるのかもしれない。彼らを見ていると、そんなことを感じる。

 10月17日放送の2話では、娘を35歳の女性らしくしなくては…と焦る多恵に、萎縮してしまう望美の姿が描かれていた。だが結人は、お子様ランチを頼む望美を見ては微笑み、子供っぽい服を選んでも肯定してあげる。「無理に大人になる必要なんてない」と言う彼は、なんやかんや言いながらも、望美の成長の手助けをしていくはずだ。そして、結人自身も、成長とともに失ってしまいがちな純粋さを持っている望美に、影響を受けていくのではなかろうか。今後の展開にも注目したい。

この記事の写真

記事タグ

コメントを書く(ユーザー登録不要)