アイラヴミー「自分を責めすぎる人に届いてほしい」音楽を通して発する想い
INTERVIEW

アイラヴミー

「自分を責めすぎる人に届いてほしい」音楽を通して発する想い


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年10月19日

読了時間:約12分

 3人組バンドのアイラヴミーが9月30日、2ndミニアルバム『そのまんま勇者』をリリースした。本作は先行シングル「ナイフ」「ケンカしようぜ!」「そのまんま勇者」を含む全6曲を収録。アイラヴミーは今年2、3月のNHK『みんなのうた』で放送された「答えを出すのだ」が10代を中心としたリスナーからSNS等で大きな反響を呼び話題となった。さらに、3曲のリミックス曲配信やSpotifyなどのサブスク各プレイリストに選出されるなど、自身のファン以外からも支持を得る事となった。“そのまんま生きる” がテーマとなった本作に込められた想いや現在の心境について、そして「自分らしさを大切に」というアイラヴミーの音楽の核となる部分など、さとうみほの(Vo/Gt)に話を聞いた。【取材=平吉賢治】

自分を責めてしまう方々に届けたい曲

――シングル「答えを出すのだ」リリース時期あたりからコロナ禍となってしまいましたが、その間いかがお過ごしでしたか。

 みんながたいへんな状況ですが、自分と向き合うということに関してはいい時間だと思う部分もあります。何より自分が気づいたのは、コロナ禍になって未来がわからない不安があったんですけど、そもそも今まで未来がわかったことって一度もなくて、未来に対しての不安は常にあったなと思いました。ということは、何が何でも自分の意思や考え方ひとつで未来はつくれるし、未来は自分でつくっていくものだと思いました。

――本作収録曲「答えを出すのだ」は、「自分らしく生きよう」という部分が主軸となるところでしょうか。

 そうです。自分らしく、答えを出すこと、自分に問題を出すことの怖さと…でも、それをやった時の世界の見え方が変わる感じ、未来は自分でつくっていくものという、アイラヴミーの中で初めて未来を意識した曲でもあったかもしれないです。

――本作タイトルトラック「そのまんま勇者」は、どんなことを歌った楽曲でしょうか。

 「そのまんまの自分を生きるってどういうことなのか」と、自分なりの答えを一つ出した曲です。

――歌詞の<この世はいろんな人がいるから 正解だらけで迷っちゃうんだよ>という部分は、どのような想いから出てきたのでしょうか。

 やっぱりバンドをやるとかもそうですけど、自分で何か作品を作って世に出す、自分次第でどこにでも行けるし、どこにも行かないというのがまずありまして。例えば仕事でもそういうのはあると思うんですけど、「もっとこういう曲を作ったら?」とか、「もっとこういう風に生きたらいいんじゃない?」とかアドバイスをしてくれる方はいっぱいいて。どれもその人それぞれの正解だから「そうだね!」と思って、全部やってみるんですけど、なかなか自分に合わなかったり、どれも正解だからと信じ込みすぎると逆に自分の中の「これだ」と信じる気持ちや自分の信念がなんだったのかわからなくなっちゃったことがありまして。

 そうなった時に、正解ってないなと。みんながみんな答えを出していってるだけで、それを頭ではわかっていたつもりでも心ではわかっていなかったみたいで惑わされちゃって…そんな中でポロっと出た歌詞の部分です。

――「そのまんま勇者」の歌詞からもう一点、<強い私も弱い私も 両方私だねって笑える勇気>という部分は非常に大切なことかと感じました。

 そこはこの曲で一番言いたいことかもしれないです。

――逆に、「強い私も弱い私、両方私だと笑うことができない」という場合はなぜだと思いますか。

 弱い自分を受け入れたくないからだと思います。例えば「こんなダメな自分いらない!」って思っちゃうとか。私は「こんな自分、価値なんてない」って思っちゃうこともあるタイプで(笑)。だから自分で自分をいじめちゃう癖があるみたいで、失敗しちゃった時や、もうちょっとできたはずと思った時に「何であなたはみんなみたいに上手にできないの?」とか、みんなと自分を比べちゃって。「そんなできないならそんな自分いらないよ!」と、どうしても自分を責めちゃう時に、強い自分の時だったら胸を張れるんですけど弱い自分になった時も「それも私だよね」って笑えたらいいなと思って書きました。

――そこはアイラヴミーの“ダメンタル三部作”でも肯定していた部分で、そこから発展していると感じます。

 その通りだと思います!

――ダメな自分をさらけ出すのは勇気が要ると思います。さとうさんはダメな自分も受け入れている?

 できません(笑)。できないから曲にして、そうなりたいなという気持ちを作品にしているし、もっと言うと、私に似た悩みを持った方々、自分を責めちゃう方々にこの曲は本当に届けたいです。結局自分を助けることって自分しかできないと思うんです。でも、助けるきっかけ、ちょっとの添え木みたいになれたらすごく幸せで、それが一番やりたいなと思っています。一緒に場所とか生きているところは違うけど、音楽で繋がって一緒に自分を肯定して「こういう自分も自分でいいよね!」って言えたらいいなというのが一番今作では強い想いです。

――聴く方の添え木になっているという部分は、各方面からの反響からうかがえます。特に10代の方などから共感の声が様々な形で多く寄せられています。これを受けてどう感じますか。

 一番届いて欲しいのが「自分を責めすぎちゃう人」なんです。届いたことが言葉になって、感想として私達に返ってきた時に一番「生きててよかった」と思うんです。自分を救うためにまず曲を書いて、それが誰かに聴いてもらって、その誰かが「心が救われました」と言ってくれたことによってこっちが救われるんです。自分のためにやっていたことが誰かのためになるし、誰かのためにやったことが自分のためになるというのを凄く感じる瞬間です。一番幸せな瞬間かもしれないです。

泣きながら試行錯誤した「言葉を伝えやすくする」ということ

――「そのまんま勇者」のMVはアニメーションですが、この着想は?

 最初から「この曲のMVはアニメーション」という気持ちがあったんです。私はアニメが凄く好きでして。アニメからは人間では出せない目の奥の生命力を感じるんです。『僕のヒーローアカデミア』が大好きで、そこからは主人公が周りはできているのに自分だけできてない、でもやってやるんだという時の目の輝き、燃えてる気持ちなど人間では出しきれないところまでアニメーションは描いているのを凄く感じるんです。「そのまんま勇者」は、そういうアニメの命の輝きの要素が必要だと思いました。

 それと、5、6、7月とリミックスを出させて頂いていたんです。この1年を通して凄く誰かとコラボをやりたいと思っていまして。どうしても繋がりづらい時期だからこそ、作品を通して自分が好きだと思った人と繋がっていきたいと強く思った年でもあるんです。「そのまんま勇者」はコラボの最終形にしたくて、アニメーターさんとコラボしたいという気持ちがありました。

――MVをアニメーションにしたのは2つの理由があるのですね。

 みんなとわくわくしたかったんです。不安定な世の中でこっちも不安になっちゃったからもっと楽しいことしたいと思った時に、色んな好きな仲間を巻き込んでゴロゴロってできたら楽しいなと思って(笑)。

――なるほど。ではサウンド面についてですが、今作全体を通してHIP HOPのアプローチを感じます。

 HIP HOPに目覚めました!

――最近のHIP HOPをチェックしたり?

 Spotifyで世界のトップ50のチャートを聴きながら、HIP HOPが多いなと思う中でblackbear(米ミュージシャン)さんに出会いまして。それで「HIP HOPカッコいい!」ってなったんです。あと、ヒプノシスマイクという声優さん達がラップバトルをするものがあって、そういうものからも影響を受けて、ハイハットがチキチキ鳴ってるような最近のHIP HOPが肌に馴染むようになってきまして。それで最初に私もああいうラップみたいなのがしたいと思いました。

――確かにラップのアプローチも感じます。アイラヴミーの曲は言葉が入ってきやすいという印象があるのですが、何か意識している点があるのでしょうか。

 超意識しています! (メジャーデビューミニアルバム)『でも生きている』の時もそうだったんですけど、私はできなさすぎて泣きながら練習しているんです。家で録ったのを聴いて練習してるんですけど、リズムやメロディにひっぱられちゃって。例えばシンバルが鳴る部分に言葉のアクセントが一緒にいっちゃったりするんです。やっぱり喋っている時は言葉が続いているから聞き取りやすいわけで、メロディになると区切っちゃう癖があって。でも言葉を入りやすくするには音符で考えちゃダメだなと思っていて。音符はあくまで目安で、その上でいかに日本語らしく喋るかが大事だなと、そこを意識しています。これが今作では最初はできなくて…泣きながら壁を引っ掻いたり部屋をしっちゃかめっちゃかにしながら練習しました(笑)。

――かなりのご苦労があったと(笑)。言葉を聞き取りやすくするという点でHIP HOPサウンドと相性がよかったのでは?

 そうかもしれません。喋る気持ちで歌いました。

――「ケンカしようぜ!」もHIP HOPアプローチですね。こちらはどんなことを歌った曲でしょうか。

 ケンカっていいなと思いまして。私の場合、人がいると遠慮しちゃうんです。気を遣いすぎちゃって、ちょっとムムッと思ってもこっちが我慢すればいいかと思いがちで。でもよくよく考えると、本当に大切な人やこれから一緒に頑張っていきたい人に対しては、自分の気持ちも知ってほしいし相手の気持ちも知りたいから、本気でぶつかることができるなって。それがケンカだし、より相手がわかることで。「我慢しちゃえばいいや」って気持ちはどうでもいい人にしか起きないと思うんです。どうでもいい人にはケンカを売らないなって(笑)。そう思うとケンカってめちゃくちゃ愛があることかもしれないなと思って。

――「ケンカしようぜ!」のMVはそういった描写と捉えられますね。人形とケンカをするという。

 「何を言っても聞いてくれない彼氏」というのをマネキンに見立てました。この曲を書いた時に、ケンカできない関係とはなんだろうとまず考えまして。やっぱりお互い遠慮し合っているとか、お互い諦めている関係と思った時に、「諦めてる関係」というのは題材としていいなと思ったんです。それで彼氏が何をしても無反応ということでマネキンを用意して。

――なるほど。マネキンだということにまず大きな意味があるのですね。

 でもMVの最後、私がチュッとすると人間に戻るんです。ぶつけ合って仲がちょっと縮まったという感じなんです。あと、Instagramで「あのマネキンに誰か名前をつけてください」と募ったところ、いっぱいみんな案をくれたんです。そうしたら「黒澤」とか「黒崎」とか、「黒」がつく名字と、なぜか「みちお」という名前が多くて(笑)。それで集計の結果、「黒崎みちお」という名前になりました。

――何故かしっくりきますね。

 めちゃくちゃしっくりきます(笑)。

根本が“自分らしくあるか”

『そのまんま勇者』ジャケ写

――アイラヴミーの楽曲はSpotifyのプレイリストや様々なチャートで取り上げられていますが、この点についてどう感じますか。

 「いっぱいの人に届くぞ!」という気持ちなんですけど、自分達の力だけでは届ききらないということは凄く思っていて。プレイリストに入ることによって、リスナーの数などで色んな人に聴いて頂けているなというのがわかったりするので、そういう意味ではアイラヴミーが届けたいと思う層にどんどん近づいているなと肌で感じます。

――本作ではシングルカットされていない2曲が収録されていますが、こだわった点などは?

 「らぶ・ゆー・べいべー」はblackbearさんの影響を凄く受けています。彼の曲を聴いてビート感に言葉が途絶えず出る感じを表したくて、作曲面ではそこを参考しました。HIP HOPの中にロックが混じっているイメージというか、ちょっと重たいビートも入っているイメージで作った曲でもあります。歌詞で言うと、今まで恋愛ソングを書く時に「別れてしまって悲しい」という曲か、「付き合っていてこれからも一緒にいたいね」という、凄くハッピーか悲しいかの両極端しか書いてこなかったので、何か新しいチャレンジがしたいと思って「気持ち離れてしまっているけどそれでも一緒に居続ける二人」という違うテーマから書き出した曲です。

――そのテーマでまた新しい曲を書こうという気もある?

 どうなんでしょう…その関係の中でまた新しい発見があったらまた書きたいですけど、伝えたいことって多くないなと思っていて。本当に少しのことが伝えたいこと、ずっと根本にあるもので、それをどうやって見方を変えて伝えられたらなと思っているので、もしかしたら似たような形になるかもしれないし、違う形になるかもしれないです。

――「はずかしい」はどのようなことを歌ったのでしょうか。

 タイトルは最初に決まっていました。「はずかしい」って、けっこうネガティブワードだなと思った時に、アップテンポで楽しくなっちゃう真逆の楽曲にしたいと思ってこういう曲調にしました。はずかしいっていうのは、最初にビリー・アイリッシュ(米アーティスト)さんを観た時に感じたことで。悪い意味ではなく。私はビリー・アイリッシュさんが大好きなんですけど、ライブ映像を観た時に予測不可能な動きをする方だなと思って。それが格好良かったし、それを自分に置き換えて考えたらめちゃくちゃはずかしくなっちゃったんです。私があれをやったら、はずかしくてできないかもと思った時に「はずかしいことって本当は自分が一番やりたいことと直結してる」と思ったんです。

 高校生の時に「音楽でごはんを食べていきたい」と思った時、友達や先生や親に言うのが凄くはずかしかくてなかなか言い出せなかったんです。「失敗したら、笑われたらどうしよう」と思うはずかしいことって実は自分がやりたいことだし、はずかしいと思えることを全力でやれたらそれが一番格好良いと思うんです。「はずかしいことを思い切ってやっちゃえばいいよ」という曲です。

――なるほど。本作全体を通じてですが、“心の痛み”という部分が共通してあるのではないかと感じます。

 そうですね。

――では、“心の痛み”というのはどういったものがあるのか、そしてそれはどう処理したらいいかという2点についてお伺いします。

 “心の痛み”は、そのままの自分のことを受け入れられないと傷になっちゃうという感じでしょうか…「がんばらなきゃ」「もっとちゃんとしなきゃ」「休むのが怖い」とか、周りと比べて自分をどんどん責めちゃうと、結局は自分が自分を一番傷つけているのかもしれないです。

――確かに「休むのが怖い」という点など、「がんばらなければ」というある種の罪悪感などを感じる方もいるかもしれません。

 休むことって凄く大事なことだと思っていて。休んだ時に何かをインプットできますし。休まないことって、例えば息継ぎしないで泳いでいたらそりゃあ溺れてしまうというか。自分をそういう状況に追い込んじゃうとどんどん傷がつくと思います。思い切って休むと、逆にどんどん先に進めたりするし、長距離走ができると思います。

――とても大切なことですね。さて、アイラヴミーがこれから音楽で発信していきたい想いは?

 今の気持ちで言うと、だんだん自分の中でも変わってきていまして。最初のミニアルバム『でも生きている』を出した時はとにかく生きることに執着していました。そして今作になって“生きる”から発展して、“自分自身を生きる”とか“自分らしく生きる”というのはどういうことなのかを考えて作るようになったので、次回作はたぶんもっと広がっていくと思います。

 世の中との付き合い方だったり、根本的には“生きる”というテーマがあるけど、だからこそもっと視野が広がった人と人との距離感、間柄などにテーマが移ったりしそうな予感が凄くしています。人との関係性の中でどうやってと…やっぱり根本が“自分らしくあるか”なのかなと思います。「自分らしく話す」とか、「本当の優しさとはなんだろう」とか。諦めちゃうことと信じて手放すことの違いだったり、「生きている中で起きていることに対して自分の答えを出していくこと」が一番テーマになってくるかなと思っています。

(おわり)

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