DedachiKenta、映画「アイ・キャン・オンリー・イマジン」で感じた赦すことの大切さ
INTERVIEW

DedachiKenta

映画「アイ・キャン・オンリー・イマジン」で感じた赦すことの大切さ


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年10月18日

読了時間:約9分

 シンガーソングライターのDedachiKentaが、11月13日に日本で公開される映画『アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌』の日本版エンディング・テーマ曲「アイ・キャン・オンリー・イマジンfeat. 小坂忠」を、映画公開に先駆け9月16日に配信リリース。映画は2018年にアメリカで公開され大ヒットを記録。ストーリーはクリスチャン・ソングとしてヒットしたロックバンド・MercyMeの「I Can Only Imagine」が誕生する過程を描いた作品。インタビューでは、ワーシップソングと共に育ったDedachiKentaにその魅力を聞くとともに、シンガーソングライターの小坂忠をフィーチャリングした今作の制作背景、アーティストとしての展望など話を聞いた。【取材=村上順一】

教会音楽が身近にあった

『アイ・キャン・オンリー・イマジン〜明日へつなぐ歌』

――映画『アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌』日本公開版エンディング・テーマ曲を担当することが決まっていかがでしたか。

 びっくりしました。映画のテーマ曲ということもそうなんですけど、原曲の「I Can Only Imagine」を知っていたというのもあって。すごくコネクションを感じましたし、嬉しかったです。僕も教会で育ったので、自分のルーツに関係しているものが出来たらいいなという思いもありました。

――ワーシップソング(教会音楽)に興味を持たれたきっかけは?

 父親が牧師なので、家には讃美歌の本も沢山ありました。生まれた時からそばにあったので、音楽といえばワーシップみたいな感じでした。

――逆にそのほかの音楽に触れたきっかけはどんなものだったのでしょうか。

 中学生の時にiPodを手に入れた時でした。ポップスってこういう曲なんだって。当時はテレビも家では観ていなかったので、友達が聴いているような音楽は全然知らなくて。両親が聴いていたのもワーシップが多くて、たまにビートルズが流れるくらいでしたから。

――そのポップスに触れて、当時印象的だったのはどんなアーティストでしたか。

 エド・シーランやアデル、テイラー・スウィフトが印象的でした。僕は2歳上の姉がいるんですけど、その影響も大きかったです。

――MercyMe(米・バンド)の「I Can Only Imagine」は2001年にリリースされた曲で、ほぼDedachiさんと生まれた年が近いのですが、この曲を最初に聴いた時のことは覚えていますか。

 最初に聴いた時のことは覚えていないんですけど、僕が気づいた時にはみんな教会で歌っていて、僕の中に自然とあった曲というイメージです。MercyMeというバンドの曲だってことも当時は知らなかったんです。

――この曲はクリスチャン・ソングとしては、異例のヒットソングになったのですが、この曲の特色、凄みはどこにあると思っていますか。

 讃美歌の特徴とも言える繰り返しが多いところです。ほぼ同じメロディで2〜3回繰り返すんですけど、覚えやすくてすぐに聴いて歌えるというメリットがあります。僕はこの曲の歌詞もすごく好きでなんです。タイトルを訳すと「想像することしか出来ない」となりますが、それは自分が天国に行ったらどう感じるのか、という内容なんです。こういう歌詞は讃美歌でもけっこう珍しくて、それをポップロックバンドのMercyMeが歌ったというのも新しかったんじゃないかなと思います。

想像がキーワード

小坂忠

――今回は日本語詞になっていますが、どのような制作スタイルだったのでしょうか。

 日本語詞は小坂忠さんと相談しながらつくって行きました。「想像」をキーワードに書いてみたら良いんじゃないか、と話してくださって。そのキーワード自体がテーマになっています。

――小坂さんとコラボされることになった経緯はどんなものだったのでしょうか。

 日本でミュージシャンとして活躍されているのはもちろんなんですけど、忠さんは牧師でもあるので、この曲にとって、すごく意味のあるものになると思ったんです。原曲の歌詞を理解した上で、多くの人に伝わるような表現にしたかったので。

――このお話しを聞くとすごく意味深いコラボなのですが、この背景を知らないと異色ですよね。

 僕と忠さんとは歳もずいぶん離れているので、確かにそうかもしれないです。今回ご一緒させていただいて、亡くなった祖父と似ているところがあったんです。祖父はよく手品を見せてくれました。たいてい失敗してなかなか成功しないんですけど(笑)。忠さんがスタジオで手品を見せてくれたのがすごく祖父を思い出させてくれて。

――私も一度取材させていただいたことがあるのですが、小坂さんはすごくキャリアがある方なのにフランクに接してくださるんですよね。小坂さんからどんな事をこのコラボで学びましたか。

 本当にフランクに接してくださるんです。その謙虚さに触れて、僕もこれから先そういった姿勢でいたいと思いましたし、50歳以上も離れた年下のミュージシャンと真摯に向き合ってくださる懐の深さに感動しました。

――歌詞で特に気に入っている部分は?

 特に好きなのは最後の<I can only imagine その愛に気がついた その日から>です。この部分がこの曲の心臓だと思っています。映画でも赦すことから始まり、愛を感じることが出来て、生きる喜びを知る、それを感じることができたので。

――ミュージックビデオも小坂さんと一緒に撮影されたとのことですが、いかがでしたか。

 見つめ合って歌うシーンがあったんですけど、そこが特に緊張しました。忠さんはお顔から優しさが滲み出ていて癒されましたし、撮影もすごく楽しかったです。撮影が終わるとまた手品を披露してくれました(笑)。

世界中で音楽をやれるようなシンガー

――映画「アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌」を観て、どんなシーンが印象的でしたか。

 父親と息子のストーリーという点では、僕は父とは良い関係を築けているので、この映画を観て新しい視点を知ることが出来ました。僕が経験していない人生だったので刺激的で、父と仲良く出来ていることは幸せなことなんだなって。それを感じられるシーンが中盤にあるんですけど、2人の関係が修復していくところが特に感動しました。赦すことの大切さにあらためて気づかされましたね。

『アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌』(C) 2018 IMAGINE Rights, LLC. All Rights Reserved.

――ミュージシャンとしての発見はありました?

 レコード会社の人たちから曲やライブのパフォーマンスについて指摘されるシーンは印象的でした。それは僕にも関係していることで、それを受け入れることも時には大事だなと思いましたし、マネージャー含め良いチーム、支えてくれるスタッフがいることもすごく大事だなと感じました。

――私はこの映画を観て、目的、意志を持った音楽というのは、エネルギーがすごいなと感じたのですが、Dedachiさんが思う“良い音楽”とはどんなものですか。

 自分が経験したことや、言葉にできなかった気持ちなどを表現してくれる曲が良いなと思います。

――共感ですね。

 はい。僕が昨年リリースした1stアルバム『Rocket Science』では、人生の深さみたいなものを歌っていたんですけど、聴いてくれる人に共感してもらえるにはどうしたらいいかを考えました。仮に歌っている内容が暗かったとしても、最終的にはハッピーに繋がるように書いています。

――そのスタンスは音楽をつくり始めた頃からあったのでしょうか。

 ありました。僕自身もハッピーにしてくれるような曲が好きなので、僕もつくるなら聴いてくれた人をハッピーに出来る音楽がいいなと思っていました。

――ご自身が助けられた曲とかありますか。

 沢山あるんですけど、讃美歌とか自分のルーツにある音楽はそういった感覚があります。すごく頭の中がクリアになって落ち着けるんです。

――音楽はヒーリング効果もありますよね。今、ご自身が音楽をつくる時に一番大切にしていることは?

『アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌』(C) 2018 IMAGINE Rights, LLC. All Rights Reserved.

 このコロナ禍で大変な状況になっている人が沢山いると思います。僕はアメリカの大学に在籍しているんですが、いまだに戻れないですし、オンラインで授業を受けている状態なんです。それもあって、聴いてくれる人を励ませるような音楽をつくりたい、という思いは強くなってきていますね。

――イマジンというところで、想像力というのが浮かび上がります。近年、想像力の低下が嘆かれているのですが、Dedachiさんはどう感じていますか。

 テクノロジーの発達で、考えなくてもすぐに答えに辿り着けるようになってしまったことが原因かなと思います。ちょうど今回の制作でも忠さんと想像力について話していました。忠さんは「想像することの素晴らしさを忘れてる感じがする」と仰っていて。

 その中で面白かったのが、今はアプリのナビゲーションで目的地まですぐに着けるけど、昔は紙の地図で自分でルートを考えて目的地に向かった、というお話しをされていて。答えがわかってしまうとその過程は考えなくなってしまう、クリエイティブに答えを導き出すことができない、そういう時代になってしまっていると自分自身感じています。

――間違いが起きにくい反面、考える力がどんどん低下している危機感もあります。音楽はそんな想像力を掻き立ててくれるものだと改めて思いました。さて、レコーディングはいかがでしたか。

 忠さんの歌を録るときはスタジオに立ち会わせてもらったんですけど、その力強さと深みに圧倒されました。僕はこのコロナ禍ということもあり、自宅でレコーディングしました。サウンドトリートメントされていない部屋で録ったので大変でした。エンジニアさんが持ってきてくれたマイクの性能が良くて色んな音が入ってきちゃうんです。なんとかうまく録ってもらいましたが(笑)。

 アレンジに関しても、イントロから声を重ねて、ホーリーな感じ、教会で歌っている感じを出したいと考えました。オリジナルとサウンドは変わりましたが、讃美歌のような雰囲気は残したかったんです。イントロのハーモニーなどはバッハの時代の音楽理論が役に立ちましたね。

――理論は知っていた方が幅が広がりますね。

 そうですね。今回は大学で習っていたことを応用して。でも、理論だけで曲をつくるとあまり面白くないものが出来てしまうと思っていて。ソウルフル、音楽には魂が必要なんです。理論を知っていても魂がなかったら、人には伝わらないので、意思や目的が大事だなと思います。

――最後に、シンガーとしての展望を教えて下さい。

 ハッピーになれる音楽を届けたい、小坂忠さんのように謙虚な姿勢をずっと持ち続けたいというのがある中で、日本だけではなく世界中で音楽をやれるようなシンガーを目指したいです。それと、自分の胸の中にあることを曲にして表現するためには、自分自身をピュアにしておかなければいけないと思っているので、それらを忘れずに頑張っていきたいですね。

(おわり)

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