Thinking Dogs「笑顔になれるものを」今だからこそ音楽で伝えたい想い
INTERVIEW

Thinking Dogs

「笑顔になれるものを」今だからこそ音楽で伝えたい想い


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年09月23日

読了時間:約13分

 Thinking Dogsが23日、9thシングル「Heavenly ideas」をリリース。ブリティッシュロックの雰囲気が漂い疾走感溢れる本作は、TSUBASA(Vo)とJun(Gt)の共作で、2人の作曲した楽曲が収録されるのは前作シングル「SPIRAL」に続いて2度目。乃木坂46の齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波が出演するTBS系ドラマ『映像研には手を出すな!』の主題歌となっており、そのストーリーに基づき、「創造」や「混沌」、「最強の世界」といったコンセプトで制作。「Thinking Dogsならではのロックを表現」したという本作の話題を中心に、メンバーの現在の心境を聞いた。【取材=平吉賢治】

メンバーと密に見つめ直す期間

「Heavenly ideas」通常盤

――コロナ禍という特殊な期間、どのような想いでお過ごしでしょうか。

TSUBASA 正直、最初はライブもすぐできるようになると思っていたんです。でも、そこから現実が見え始めていろいろ延期になって、ちょっと気持ちがついていけない部分もあって。この期間の中で、これからできることをもう一度メンバーとも見つめ直す時間はかなり増えました。楽曲制作はむしろ1曲に割ける時間があると思って「さらにクオリティの高い楽曲を」と、4人でずっと制作だけは続けていました。曲のブラッシュアップやメンバーとの話し合いなど、そういう時間が増えました。

TSUBASA

わちゅ~ コロナ禍の前はライブを意識した曲作りや「ライブでどう盛り上げよう」だったり、全ての中心がライブだったんです。それからこういう時期になって、曲の方向性も「ライブでこういうノリをつくろう」というより、家で聴く方々にアプローチするにはどういう曲を作ればいいのかなとか、生み出すものの根本的な考え方が変わってきたというか。ネガティブではなくポジティブにこの現状を捉えて、どういう風に作っていこうかと密に話し合っていました。

大輝 やっぱりバンドの活動の仕方と曲のテイストなどは考え直したりしました。コロナ禍になってリリースも延期になってライブもできなくなってしまって、バンドとしての稼働がほぼゼロと言っていいくらいの時期がありまして。そういう時にどうにかしてファンの方々に音を届けるかと、めちゃめちゃ模索していました。

――それこそYouTubeではライブやMV以外でのアプローチをされていましたね。

Jun そうなんです。外に出られない状況でもあると思われるので、みなさんが外に出ていると思えるような感覚を味わって頂けたらなと(笑)。

――七輪で色々なものを焼いて食べたりと、確かにその感覚は伝わってきました。給付金で何を買うかという企画も面白かったです。

Jun わりとみんな守りに入っていた企画でしたね(笑)。

TSUBASA 結局使ってなかったりして(笑)。

――(笑)。さて、本作についてまず「Heavenly ideas」というタイトルに込められた想いは?

TSUBASA この曲はドラマ『映像研には手を出すな!』の主題歌と決まってから制作させて頂きました。元のアニメや漫画では、学生時代に好きなことをやりたいけど色んな課題が出てくるという内容があったんです。そこで、自分が高校生くらいの頃のつらいことを何とか乗り越えていく時に、何かぶっ飛んだ面白いことを思い浮かんだら好きなことが何でもできるのになと思っていた時期があって、そういうのをテーマに歌詞に書きました。ただ、「Good ideas」じゃつまらないなと思って(笑)。

――「Good ideas」というタイトル名候補もあった?

TSUBASA “アイディア”というのは思い浮かんでいて。「いいアイディア」というところで面白い組み合わせの単語を探している中で、“Heavenly”って凄く響きがいいなと。“Heavenly ideas”というのは元々ある言葉ではないんですけど、「ぶっ飛んだ思いつき」とかそういう意味合いで使えると思ったのでタイトルにしました。“グッド”だと引きが弱いなというのもあって(笑)。

――なるほど。するとプレイやアレンジ面などにも“Heavenly ideas”が詰め込まれている?

わちゅ~ 今作のアレンジの中心はJunさんなんですけど、けっこうロックで無骨なサウンドですよね。今回は「UKロック」というお題があったんです。UKロックをしっかり通ってこなかったので、まず勉強しつつアウトプットしていく作業から始めました。

――どんなUKロックを聴きましたか。

Jun イギー・ポップさんを聴きました。彼はアメリカ人ですが、UKロックに近いアプローチだと思います。元々僕はヴァン・ヘイレンなどのハードロックを聴いていたので。そのあたりと比べるとUKロックは少し湿り気があるというか、陰な部分も出さなければというところでアレンジ面でもけっこうなやりとりをして今回の形になりました。

TSUBASA Junはどちらかというと、聴くものや引き出しがアメリカンな方なので。

Jun だから最初に出したデモは「乾いているね」みたいな感じでして(笑)。あと、誤解を恐れずに言うと丁寧に弾かないというか、荒々しくいこうと。

わちゅ~ そこは“Heavenly ideas”にも繋がるかもしれないね。出てくるものをそのまま表現するというか。

――ギタープレイを聴くと「攻めている」と感じました。

Jun わりと今まではギターソロで言うと起承転結を考えていたんです。今回は攻め、攻め、という感じで弾かせて頂きました。綺麗に弾かない、何なら2度と弾けないという一期一会のフレーズです。思うがまま一発で録りました。

Jun

――大輝さんの「UKロック」というお題に対してのアプローチは?

大輝 僕もUKロックはそこまで聴いてこなかったんですけど、今回あえてそんなに聴かなかったです(笑)。ドンピシャUKロックというのをやってもいいと思うんですけど、それだとつまらないなというのも若干あって。一応いろいろ聴きましたけど。

――イントロのドラムプレイなどはUKロックではさほどない感じと思われるので、あえてそこまで聴きこまなかったことがよい方に作用したとも感じます。

大輝 その部分はJunとTSUBASAのデモの段階からあったアイディアだったので、「面白いからそのまま取り入れてみるわ」みたいな感じで、どんどんドラムのフレーズを作っていきました。だからよい意味でUKっぽさもあり、「Thinking DogsがやったらUKロックはこうなります」というところも出せたなと思っています。

――個人的に、タンバリンが凄くいい味を出しているなと。

TSUBASA あれは僕がJunさんの部屋でマイクを立ててシャカシャカ振って録ったんです(笑)。

――打ち込みでは絶対に出ないノリのプレイですよね。

TSUBASA 縦のノリとかカチカチに合わせていないんです。ちょっとズレてるところもあるけど、後から直したら面白くなくなっちゃったので、「元の状態のを使おう」と。

わちゅ~ レコーディングの時に初めてパラデータ(この場合タンバリンのみのトラック)で聴いたら「頑張ってるね!」というのが伝わってくるめっちゃ一生懸命なタンバリンで(笑)。曲に凄く馴染むんです。

TSUBASA あれ何テイク録った? 10回いってないよね?

Jun 苦しそうな顔して録ってたよ(笑)。途中でパニックみたいになってて。

TSUBASA Junさん明るく今言ってますけど、その時は僕が「今のどうだった?」って聞いたら「もう1回お願いします」って冷静に言うんですよ。でも楽しくやりました(笑)。

わちゅ~ そういうのもあって、タンバリンに注目して頂けるのは嬉しいです(笑)。

わちゅ~

――UKロックや海外のロックなどのタンバリンのプレイは、いい意味でズレてる場合が多くてそれがグルーヴ感を醸すかと。

TSUBASA けっこう必死にタンバリン振っていました(笑)。

Jun 手にちょっとあざができてたよね(笑)。

TSUBASA 普通に手に持つタイプのではなく、ドラマーがスタンドに立てて叩く方のタンバリンなんです。

――痛そうですね(笑)。やはりそういったパートが入ると楽曲全体のグルーヴも増す?

大輝 「Heavenly ideas」は勢いが大事な曲だと思うので僕もそこを心がけてドラムを録ったんですけど、タンバリンの16分の音が入ると勢いは凄く出るなと思いました。先行配信で聴いてくれたファンの方々からも「タンバリンいいね」という方がけっこういて(笑)。みんな意外とそういう部分も聴いてくださってるんだなと思いました。TSUBASA君の苦労が報われていると思います。

Thinking Dogsならではのロックを表現

「Heavenly ideas」初回盤

――カップリングの「I'm your Devil」はスウィングが印象的と感じましたが、どのようにアレンジが進みましたか。

わちゅ~ カップリングの曲は表題曲が決まってからどういう曲にしようかと相談するんです。「Heavenly ideas」が決まった段階で「今作はどういうシングルにしたい?」という話になった時、Thinking Dogsならではのロックを表現したいというコンセプトになりまして。「I'm your Devil」は元々けっこうロックなアレンジだったけど、みんなで会議している時に出た「ちょっとジャジーでアダルティーなアレンジに変えたら面白そうじゃない?」というアイディアの元、アレンジし直した曲です。

――3曲目「break the mold」は1、2曲目ともテイストの違うアレンジですが、この曲のアレンジは?

Jun これは個人的にはブリティッシュよりもゴリゴリのイメージがあったんです。総指揮はわちゅ~さんが監修して。

わちゅ~ 監修なのか(笑)。

Jun 元々わちゅ~さんはギターを弾いていて、“リフギタリスト”なんです。だからわちゅ~さん監修だと新しいものができるかなと。リフの奥深さを感じました。

――ちなみにJunさんの好きなギターリフは?

Jun 僕はリッチー・ブラックモアのギターリフが最高だと思っています。耳に残るし真似をしたくなるという。

――リッチー・ブラックモアはディープ・パープルやレインボーのギタリストでリフの名手ですよね。彼の弾く好きなリフを一つ挙げるとしたら?

Jun ディープ・パープルの「Burn」です。親指を使って弾くリフなんですけど、そういうスタイルも真似したりしています。

――わちゅ~さんの好きなリフは?

わちゅ~ 僕はメタルをずっと聴いてきたんです。エヴァネッセンスやリンキン・パークから入って、リンプ・ビズキットやドリーム・シアターなどのリフなどが凄く好きです。タイトなリフやヘヴィなものが好きで、「このギタリスト」という絞りはないんですけど、そういうジャンル一帯の曲を聴いていました。

――リフに限らず、TSUBASAさんが強く影響を受けたバンドなどは?

TSUBASA 僕はL’Arc~en~CielさんとかGLAYさんとか、abingdon boys schoolさんやSIAM SHADEさんが好きだったり、ELLEGARDENさんも。洋楽を聴き出したのは遅い方でして。一番影響を受けたのはL’Arc~en~Cielさんです。

大輝 僕はドラムをやり始めた時にSIAM SHADEさんにハマっていまして、ドラマーの淳士さんがめちゃめちゃ好きです。高校の軽音楽部の頃にドラムを始めて、その時の友達が好きな音楽が僕の世代ではないLUNA SEAさんやX JAPANさんなどの往年のビジュアル系のバンドだったんです。だからそのあたりの音楽を聴いて、X JAPANさんをたくさん聴いて「『紅』やろうぜ!」と言ってツインペダルを買わされたけど結局「できません!」と言って諦めたりとか(笑)。

大輝

音楽には精神面を支える力が絶対にある

――Thinking Dogsはアルバムリリースがないのは意図的なのでしょうか。

TSUBASA 意図的ではないです(笑)。もちろん出したいとは思っていまして。もうちょっとバンドとして頑張らないと出せないかなと思うところもあるんです。

――アルバムを出すとしたらコンセプトは?

わちゅ~ すっごい夢が広がる! 9枚シングルを出させて頂いているんですけど、個人的にはシングルの寄せ集めで終わらせたくないなと思っています。出すからには新しいものをどんどん生み出したいという気持ちがあって。それこそコロナ禍の影響もあって、みんなが作ってくる曲も増えてきているので、今みんなが生み出してきた過去の最高の作品たちを入れたいなと。

TSUBASA 1stアルバムは一つもシングルに入っていない曲だけで作るのもいいんじゃない?

わちゅ~ それも新しいよね! シングルカットって言っちゃえばそれでアルバムが一枚出来ちゃうのでそれもアリだと思うんですけど、オリジナルアルバムというのは憧れます。シングルに収録されていないけど僕らが凄く気に入っている曲や色々ストックがあるので夢が広がります…。

Jun メンバーそれぞれのルーツが垣間見えるアルバムになったらいいよね。

――ところで、9月27日にスペシャル配信イベントを予定されていますね。どんなライブになりそうでしょうか。

TSUBASA 今回の楽曲で僕らを知ってくださった方もいるので、ライブはどうしてもやりたいと思っていました。ただ、僕らとしても配信ライブをやるのは初めてだったり、どういう風に見せていったら初めての方もファンの方々も楽しめるようなものになるかというのは、メンバー同士でも考えているところです。今までの生ライブでは見せられなかったようなもの、普段のライブでは見られない角度からの見せ方など、そういう楽しい仕掛けもつくっていきたいなと思っています。生ライブの廉価版みたいのにはしたくなくて。配信ライブだからこそできるというアイディアをどんどん出していけたらなと思います。

――これから新たにチャレンジしていきたいことは?

わちゅ~ 正に今僕らが話していることなんですけど、世の中的にライブをするのが難しい状況になって配信ライブが中心になっていく中で、配信でやるライブを凄く大事にしていきたいというのが一番あります。ヌルッと配信ライブをスタートさせたくないなというのもあって、9月27日の配信ライブはちゃんとしたイベントにしたいというコンセプトをもって今やっています。

 曲作りでは新たに「どういうものが求められているのか」というのを考えながらチャレンジしていきたいです。今の時期はクリエーターの方々が凄く注目される時というか。それこそ最近YouTubeを始めたという方でもいきなり再生回数が伸びたり、少し前までの注目の集め方と違う形になってきているので、色々考えながら生み出していかなきゃなと思っています。

 あとは、「頑張ってやらなきゃ」というよりも「楽しみながらできること」という風でありたいです。僕らも楽しんでいるという感じも伝わったら嬉しいです。今は「楽しさ」が欲しい世の中というか、YouTubeを観たりすると、凄く楽しそうにキャンプや釣りをしているのを観るだけで同じ感覚を共有できるというか。それを観ている側としても感じるので、それを僕らが提供できるといいなと思います。

――注目の集り方が変化してきているというのは時期的にも感じるところです。こういった特殊な時期だからこそ発していきたいメッセージはありますか。

TSUBASA 世の中的に後ろ向きなことばかりが目について、暗い方に負けてしまうのはよくないことだと思うんです。僕らはみなさんに笑顔になれるものをどんどん提供していきたいと思っているし、明るいニュースを届けていきたいと思っているので、楽曲を聴いたり、色んな作品を観たり、小説を読んだり、何か前に進んで行けるきっかけを掴んでいきたいし、みなさんにも掴んでいってほしいなと思います。

――今の世の中に対して思うことは?

大輝 今は情報が蔓延していてどれが正しいかわからないというのもあると思うんです。そこで、自分の目で見て、自分の頭で考えて選ぶ能力が今の時代を生きていく上で必要なのではないかなと思います。コロナ禍で仕事のやり方が変わったり、学生の方々もリモートになったりと、生活スタイルそのものが変わった方が多いと思うんです。変わっていくことは怖いことだし不安も多いと思うんですけど、逆に言ったら変わらないことって何一つないと思うんです。

 時代が変われば常識も変わっていくと思うし、そういう流動的なものだと思うので「変わっていくことを恐れずに順応して楽しんでいこう」くらいの気持ちを持たないと逆に潰れていっちゃうのかなと思うので、難しいことだとは思いますけど精神面を強く持てるようになればなと思います。音楽は色んな方の精神面を支える力が絶対にあると思うので、それを僕達はバンドとしてミュージシャンとして発信できていけたらいいなと思います。

(おわり)

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