INTERVIEW

安斉かれん「音楽は呼吸のようなもの」“ギャルマインド”で貫く人生の道


安斉かれん

記者:平吉賢治

掲載:20年09月17日

読了時間:約8分

 安斉かれんが16日、ニューシングル「GAL-TRAP」をサブスクリプション音楽ストリーミングサービス限定リリース。前作「僕らは強くなれる。」が『2020年夏季高校野球 都道府県別大会』のテーマソングに抜擢されるなど注目を浴びる彼女の新作は、ギャルが仕掛ける「罠(トラップ)」という意味と、HIP-HOPから派生したジャンル「TRAP」という2つの意味が込められたこれまでと一味違う作品。自身が作曲、プロデュースにも初参加した「GAL-TRAP」に込められた想いを聞くとともに、彼女の音楽へのスタンスや人生観について語ってもらった。【取材=平吉賢治】

名前のない感情や時間“曖昧な世界”を作品に

「GAL-TRAP」ジャケ写

――(テレビ朝日系ドラマ)『M 愛すべき人がいて』の放送が終了しましたが、安斉さんにとってどんな体験でしたか。

 一生できない体験をさせて頂きました。お金では買えない経験です。

――撮影中はさぞかしお忙しかったと思われます。安斉さんがデビューしたての頃の体験などが活きたと感じる部分もある?

 いつも楽しいんですけど、忙しくなってきて悩むことが減ったし、デビュー当時に比べて自分のことについて立ち止まって考えることがなくなりました。「やるしかない!」みたいな。デビュー当時も、毎日のようにレッスンをしていたので、目の前にあることを頑張っていると、1日が終わる感じでした。それでも、今より自分と向き合う時間がたくさんあったので色々考え過ぎたりしていたのですが…今は、毎日何かしらのやるべきことがあってありがたいです。

――デビュー当時に培った、ある種の基礎体力が今に活きている部分もあるのですね。さて、今作はプロデュース初参加ですが、これまでの作品とは別種の安斉さんの表情が感じられる楽曲という印象がありました。

 ずっと作詞をさせて頂いていたんですけど、今回は初めて作曲にも参加させて頂きました。ずっと作曲をしたいと言っていたんですけど、この曲はスタジオで即興で歌ったりして「楽しく作ろう!」みたいな感じで、一気に1日で作ったんです。

――楽曲を聴くと安斉さんの口笛などがサンプリングされているところがありますが、あのアプローチはどのような着想からでしょうか。

 この曲は今までと違って歌詞が曖昧なんです。これまでは確証のある内容が多かったんですが、今作は「これ」というものがあるというより、全体的に曖昧な歌詞になっているんです。例えば、昼間めっちゃ頑張っている自分と、夜になって一人になった時に落ち込んでいるわけでも悲しいわけでもないのにフワフワ考えている時、そういう時間や感情って名前がないなと思うんです。この曲はそういう時間の歌なんです。例えば沈黙が怖いから口笛を吹いてみたりとか、鼻歌を歌ったり爪を鳴らしてみたりとか。

――なるほど。その「名前のない感情と時間」を表したサンプリングの音なのですね。

 そうです。色々あるんですけど、歌詞にできないからこそトラックにして表現しようと思ったんです。そういう意味でも全部が曖昧なので、歌詞も確証がない内容なので夜とかに聴いて「それな~!」という感じで聴いて頂けたら嬉しいです(笑)。

――歌詞の内容がはっきり理解できるものもいいですけど、個人的にはこういった抽象的な感覚で、はっきり表せないものを音楽にしたものは心地よいと感じます。感じたまま受けてほしいような感じ?

 そうです。歌詞全体は “曖昧”というのがあるので、それぞれの解釈で受け取ってもらえたらと思います!

――安斉さんにとって“曖昧”というのはどういった感覚でしょうか。

 フワフワかなって感じです。世界って正解がないじゃないですか?

――あえて正解を求めないほうがいいという感覚?

 そう。わかったようなフリもしたくない。それは歌詞の一番最初に出てくる部分でもあるんです。最初にほぼ言っているんです。けっこう重要なところです。

――なるほど。では作曲面についてですが、具体的にはどのように作ったのでしょうか。

 夜にチルって聴ける曲みたいなテーマはありました。仮歌は、考え過ぎず、その場のテンションを大事に。それが全てです(笑)。その場で歌って、その時にしか出ないメロディを歌って作ったんです。

――そのスタイルは作曲面のみならず?

 確かにそうかもしれません。いいのか悪いのかわからないですけど、けっこう全て直感で生きているタイプなので(笑)。その時々の感情を歌いたいなと思ったんです。

――まず直感があって、でもその後に色々と考えて行動したりするけど、結局は最初の直感が正しかったりすることがありますよね。

 めっちゃわかります。本当に直感って大事ですよね。

――“直感”とは何なのでしょうね?

 難しい(笑)。でも好きになる人とかも直感だったり、言いたいことも全部直感だったり…それこそ答えはないのかもしれません!

――「経験が導き出す最初の答えが直感」、という解釈もあるみたいです。

 確かにそれはあるかもしれないですね!

――今作の歌詞も、安斉さんの直感的な感情が表れているのではないかと思うんです。安斉さんはジャズがお好きとのことですが、ある種のそのジャズの要素が出ているのではないかとも感じます。

 なるほど! 確かに、吹奏楽をやっていた時は耳コピしてサックスを吹いていましたし。バンドでやっているのに勝手に自分のパートをアレンジをして怒られたりとかしてたので(笑)。自由なのはあるかもしれないです。

――それが今も活きているのではないかと思います。自然体の安斉さんが出ている楽曲なのではないかと。

 自然と経験が出ているのかもしれません。だから人生色んなことを経験したいです! そうしたら直感力が強くなりますね(笑)。人生色んな経験をしないとダメなんだなって本当に最近思いますし。例えば「海外に行きたい」という子供の親が海外に行ったことない人だったら「危ないからやめなさい!」と言うかも知れない。でも、海外に行った経験のある親だったら「行ってらっしゃい!」と言えることもありますよね。それって人としてのキャパじゃないかな?って思うんです。それを広げていかないと成長できないんじゃないかなと思いました。

――確かに経験は自他ともにキャパシティを広げますね。

 そうそう! 経験があると、イエスともノーとも言えるけど、経験がないとどっちも言い切れないというか。だから一回は何でも挑んだ方がいいんです!

――それこそ今作ではサウンド面でも新たな挑みを感じました。HIP HOP、トラップ、チルアウト調というか。

 ジャンルも色々やっていきたいんです。いろいろ知っていればそこから新しいものが生まれるかもしれないし。

――「GAL-TRAP」というタイトルに込められた想いは?

 “トラップ”だから騙しているわけではないんですけど、今は何がギャルだとか定義がないじゃないですか? 

――確かに、以前のインタビューで「ギャルはマインド」と仰っていましたね。

 そう。不安を抱えている内面があったとしても、それを隠すわけではなく武装をするという感じで、例えば、私だったら金髪が好きだからそうしてテンションを上げたり。人それぞれスタイルは違うかもしれないですけど、そういうことをすることによって不安とかがあっても自分と周りを固めておけば最強なんです。自分の好きな格好をしていれば自信が出てくるんです。ギャルってチャラく思われがちですけど、芯はあるよみたいな(笑)。

――ギャルはどの時代でも“盛る”という特徴があると感じるのですが、その真意が今仰ったことかと。

 “盛る”というのも今は時代的に、金髪でバッツバツの付けまつ毛じゃないとギャルじゃないわけでもなくて、黒髪でもそれが好きで自分に自信が持てるんだったら「それでいいじゃん」という。だからギャルはマインドなんです!

音楽だけはずっと続いていること

――今作のミュージックビデオは、大きなテディベアに包まれたりするシーンが印象的ですが、これまでのMVとは雰囲気がガラッと変わりましたね。

 全然違う感じになりましたね。あの大きいクマちゃんは自分の分身みたいなもので、大人と子供の間、昼間の自分と夜一人になった自分を表現しているんです。クマちゃんに囲まれている場面は安心しているんです。これは夜一人になった時の甘えが出ている自分で、他の場面では戦闘モードの普段のお昼の自分なんです。まだ守られている自分から戦闘モードにいこうとするけど「行かなくていいよ」って引っ張られるシーンがあるんですけど、それって「大人になろうとしている子供」と「ならなくていいよ」というのを表現しているんです。そういう「大人と子供の間」というのは年齢関係ないなと思うんです。その引っ張り合いの繰り返し、ループだと思うんです。

――それは安斉さんより年上、年下の方にも当てはまることではないかと思います。

 そうなんです! 何歳からが大人だとかないと思うし。20歳って大人だけど、20歳になってみたら全然大人じゃなかったし。そういうのが人生ずっと続いていくんじゃないかなと思います。

――なるほど。ちなみに最近インスピレーションを受けた音楽はありますか。

 けっこう色んなのを聴いているんですけど、最近は歌詞よりもメロディを先に好きになることが多いんです。

――以前のインタビューで「音楽をずっと好きでいたい」と仰っていましたが、安斉さんにとって音楽はどういったものでしょうか。

 私は飽き性なところがあったりするんですけど、音楽だけはずっと続いているから…「呼吸」みたいなものかも! 例えば、誰かに相談する前にまず歌詞を書いたりするし、悩む前に音楽を聴いてリセットするし。音楽は呼吸のようにずっと続いている必要不可欠なものです。

――ところで、『a-nation online 2020』の出演が控えていますが(取材時点)、本格的なライブとしては自身初ですね。どんな心境で挑みますか。

 考えすぎちゃうと緊張してしまうので直感でいきます!

――ちなみに、昔は顔を出さずに出演していたこともあるそうですが、その時はあまりプレッシャーなどはなかった?

 なかったですね! 今回は無観客なんですけど、初めての生バンドでやらせて頂くので楽しみです。

――最後に、これから安斉さんはアーティストとしてどんなスタンスで活動していきたいですか。

 「安斉かれんはこれ」というような軸みたいなのはまだいらないなと思っていて。これからもしかしたらそういうのが出てくるのかもしれないですけど、縛られたくないから何事も最初から「嫌だ」って思わないで一回はやって、合わなかったら合わなかったでいいし。色んなことに柔軟に挑戦していけたらいいなって思ってます!

(おわり)

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