INTERVIEW

山本千尋

挑戦だった等身大。
香取慎吾や佐藤二朗から学んだ役者の心得


記者:木村武雄

撮影:山本千尋

掲載:20年09月17日

読了時間:約5分

 女優の山本千尋が、香取慎吾主演×三谷幸喜脚本のAmazon Originalドラマシリーズ『誰かが、見ている』(9月18日配信開始)に出演する。奇想天外な行動を取る舎人真一(演・香取慎吾)を、壁穴から覗き見てひっそりと楽しむ隣人・粕谷次郎(演・佐藤二朗)の娘・あかねを演じる。世界ジュニア武術選手権大会で2度の優勝経験がある山本。これまでは武術を生かした役柄が多かったが、今回演じるのはごく普通の女子大生で、新たな挑戦とも言える。芝居は当初、「畑違いで不安もあった」という山本が楽しさを覚えこの道に進んでいくという決意を新たにしたところに巡り合えた三谷作品。自身にとってどのような体験となったのか。そして、共演者の背中から学んだこととは何か。【取材=木村武雄】

父・粕谷次郎役を演じる佐藤二朗と、娘・あかね役の山本千尋

引き出された新たな自分

 「私は型にはまると言いますか、一度決めて役に入ると抜け出すのに時間がかかる。でも香取さんや佐藤さんは器用に切り替えられて。三谷さんがその場でリクエストしたことも柔軟に対応できる。それを間近で見られて大変勉強になりました。そこを課題にこれから取り組んでいきたいです」

 武術太極拳選手として世界ジュニア武術選手権大会で優勝経験がある。中国武術は小さい頃から習っていた。その能力はアクションでも活かされるようになった。

 『ウルトラマンジード』では、武術を駆使して敵と戦った。『下忍 青い影』では忍びとしてセリフがほとんどないなかで圧倒的な存在感を放ち、鬼気迫る殺陣を披露した。時代劇に限らず現代劇で見る山本はどちらかと言えば「強い女性像」だ。しかし今回はごく普通の女子大生。求められたのは「普段よりも幼く、大学に入ったばかりの天真爛漫な女性」。役作りで三谷氏に引き出されたのは等身大の「自分」だ。

 「昔の自分を思い出しているかのような懐かしい気持ちで演じました。役作りをしたというよりも、三谷さんと一緒にあかねちゃんを探していった感覚です。お芝居をしていくなかで『あかねはこうやって成長させていこう』とか『あかねだったらこう言いそうだよね』と沢山のヒントを下さって。私が家に帰って家族といるときのような生意気さやナチュラルな感じを引き出して下さったと思います」

山本千尋

山本千尋

 これまでの役柄とは異なる等身大の自分。「普段がこれぐらいのテンションなので撮影が終わるたびに体力を使っちゃって。アクションシーンよりも大変だと思いながら撮影をしていました」と無邪気に笑む。天真爛漫なあかねに重なる。

 撮影前、三谷氏からは冗談を交えて「世界チャンピオンのスキルがあるのに活かせない役でごめんね」と言われたそうだ。普段とは異なる役柄に加え、観客を入れてのシットコム。更には、香取慎吾や佐藤二朗といった名俳優との共演に緊張もあったはずだ。三谷氏は一瞬で山本の内面を見抜いたようだ。「私が体を動かすと緊張が解けるというのを察してくれまして『普通の女の子と思っていたのに実は動きがキレキレだというようなアクションはできる?』と言って下さって、1話と2話は台本にはなかったんですけど小さいアクションシーンをやらせて頂きました」

 機敏な動きや足蹴りのような仕草はそうした“はからい”があった。

学びと転機

 「新世代アクション女優」として注目を集める。目標に掲げるのは「ハリウッドでアクションに臨みたい」。その思いは今も変わらない。しかし本作ではその肩書きを脱いだ。改めて感じたのは「お芝居は面白い」そして、新たな目標。「今回は小さいアクションが入りましたがそれを一切封印してお芝居をしてみたい」

 「夢よりも目標を掲げたいと思っています。今回三谷さんと仕事をさせて頂いて新しい目標が生まれました。もちろんハリウッドにも行きたい。その大きな目標に近づけるためにも小さな目標をコツコツとクリアしていきたいと思っています。今回初めてのコメディでしたのでもう一度挑戦したい。そして三谷さんとまたご一緒したい」

山本千尋

山本千尋

 山本は14年6月公開の映画『太秦ライムライト』で本格的に女優の道に進んだ。もちろん彼女にとっては転機と言える作品だ。ヒロイン・伊賀さつきを演じた彼女は、バイプレイヤーで主演を務めた福本清三の背中に学んだ。

 「この世界に入りたいと思ったきっかけの作品でした。5万回斬られた男とも言われる福本清三さんは普段、影で支えている俳優さんですが、この作品では主演。福本さんの撮影現場の姿や生き様を間近で見させて頂いたことが今に活きています。準備を充実させたいとか、スタッフさんへの気遣いとか、言葉にしない福本さんの優しさを最初の現場で見させて頂いたのは私にとってありがたいことでした」

 舞台挨拶などでも場を盛り上げる姿が印象的だ。取材中も柔らかい口調でにこやか。「自分自身」というあかねの“天真爛漫”さは、彼女の根にある周囲への気遣いと福本の教え、そして根からの優しさで出来ているのかもしれない。

 福本から学びがあったように、本作にも学びがあった。そして、それは後に転機だったと言えることだろう。

 「ワンシチュエーションですので、舎人さんのお芝居パートでも反対側にいる私たちの部屋では、台詞はないですがサイレントでお芝居をしています。それは三谷さんがお客さんの世界観を壊したくないからという考えでした。それは貴重な経験となりました」

 そして共演者の背中からも影響を受けた。

 「佐藤さんはアドリブされる方のように見えますが、実は台本は誰よりもメモ書きがびっしり。自分の引き出しを沢山作って、そのうえで計算されてアドリブをされている。誰かとお芝居するというのはこういうことなんだと感じました。香取さんはクールな方ですが誰よりも細やかに気遣いされている方でした。差し入れやプレゼント、絵を描かれるので絵をプレゼントされたり、手を差し伸べることも。さらっと気配りされる姿は勉強になりました」

山本千尋

山本千尋

 「柔軟に対応できるようになりたい」冒頭に述べた役作りへの課題。大局を見れば、アクションだけでなくナチュラルな役どころを経験したことによって、柔軟さ、芝居の幅は広がったはずだ。笑顔で紡ぐ『誰かが、見ている』は、山本にとっては新たな役者人生を紡ぐ物語。多くの笑顔、多くの経験、そして多くの学びを得て、力強く蹴り出し前へ進む。

(おわり)

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