LEGO BIG MORL「まだまだ俺らはイケる」新体制で魅せた進化
INTERVIEW

LEGO BIG MORL

「まだまだ俺らはイケる」新体制で魅せた進化


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年09月16日

読了時間:約11分

 ロックバンドのLEGO BIG MORLが16日、7枚目となるアルバム『気配』をリリース。昨年9月にドラムのアサカワヒロが脱退し、3人でリスタートを切った。今作『気配』は新体制となって初の音源。先行配信されている「火のない所の煙が僕さ」「天使くんと悪魔ちゃん」、表題曲の「気配」を含む全7曲を収録し、これまでのLEGO BIG MORLとは一味違ったサウンドに仕上がった。インタビューでは3人になっての今の心境、コロナ禍で変化した事、今作の制作背景など話を聞いた。【取材=村上順一】

一度更地になったような感覚

『気配』ジャケ写

――ドラムのアサカワさんが脱退して、3人体制で約1年が経ちますが、当時を改めて振り返るといかがですか。

タナカヒロキ バタバタしてしまった脱退でした。夏に話し合って考え抜いた結論でした。冷静に整理できていた感情ではないんです。僕はポジティブな方に切り替えようとしていました。メンバーみんなそうなんでしょうけど、僕はそのスピードをとにかく早めたかったんですよ。

カナタタケヒロ 彼から脱退の話を聞いていたわけではなかったんです。でも、脱退について考えていたことはあるのかなと、感じていた部分はありました。なので、その覚悟は僕の中ではあったと思います。もちろん悲しかったし驚きというのは隠せなかったんですけど、バンドの大木、要がいなくなるというのはサウンドも変わるだろう、という不安もありました。僕も切り替えは早かった方で、サポートドラマーに頼んだり、自分たちで波を作っていけた昨年の後半でした。

ヤマモトシンタロウ 僕はリズム隊ということもあって、ダイ(アサカワ)ちゃんとはすごく仲が良かったんです。この4人でやっていきたい、僕はこの4人じゃなければ、という思いも強かったですから。なので脱退はすごくショックなことではあったんですけど、次のライブも決まってましたし、そこからパワーもらって3人での活動に前向きになれたんです。

 知り合いのバンドが解散したり、休止したりしていても僕らはそうならない自信があったんです。それは揺るぎないものであると同時に、それがなくなった時に10年やってきたことが崩れるんじゃないか、という恐怖はありました。メンバーがやめてしまうなら、ここで本気で考えなければいけないなと初めて思いました。もちろんこれまでも、ヒロキの事故や、バンド自体のテンション感が悪い時期はあったんですけど、それでも、僕はバンドが終わるとは思ったことがなかったですから。

――この3人でやっていこうと決心されたわけですが、新しいドラマーを入れるという発想にはならなかった?

ヤマモトシンタロウ そのアイデアは3人ともなかったです。

タナカヒロキ この先もよっぽどのことがない限り正式メンバーとして入れることはないと思います。

――さて、3月以降の生活はどんな感じったのでしょうか。それぞれ、考えていたことなど教えてください。

カナタタケヒロ ライブが出来ないので、その時に自分たちが出来ることは曲作りでした。3月頃からアルバムを発表したいという目標があったので、メンバー一丸となって進めることができたんです。時間があったからこそケツを叩き合ってといいますか、制作のスピードがすごく早くなって。どんどん歌詞もアレンジも上がってくるし、アイデアがすごく飛び交った半年間で、僕はすごく充実した日々を過ごせました。ライブができないので肉体的な欲求を埋めることはできなかったんですけど。

タナカヒロキ キンタ(カナタタケヒロ)も言ってましたけど、ライブができないということ以外は、実は良かったことも多かったんです。淘汰されていく時代なのかなとも考えたりもしましたが、メンバー同士が密接になることだったり、今できることを能動的に動く工夫を始めたり、ミーティングも会わなくても出来たり、分担しているところをもっと研ぎ澄ませる時間があったり、一度更地になったような感覚もあります。平時に戻ったときも残っていられるような工夫、いま僕らがやっている『LEGO TV』もそのひとつです。

ヤマモトシンタロウ 大切なものがハッキリしてきた感覚がありました。メンバーひとり一人の責任感が増したと思いましたし、すごく音楽に集中できた期間でした。ドラムがいなくても自宅で音楽が作れる環境下ではあったので、良かった部分もありました。

――その中でこれからどんな姿を皆さんに見せていきたいと思っていますか。

タナカヒロキ 今、この3人での活動が良い感じなんです。青臭い言い方かもしれないですけど、すごく絆を感じています。そこは今僕らもすごく信じているところで、それがみんなに届かないわけがない、と信じていて。今作『気配』に関してはそれがモチベーションのひとつになってました。でも、この先何がモチベーションになっていくんだろ?

――通常でしたら、この作品を全国ツアーなどで生で届けにいくことが、それになるんでしょうけど…。

タナカヒロキ 確かに。でもいま僕らは個人事務所で、音楽制作とライブをやっていればいいというだけではなくなっていて、大変なところもあるけれど楽しめているところもありますね。メンバーとスタッフがちゃんとご飯が食べられるようにしていく感じ、それがモチベーションになっていて、楽しいです。

自分たちの根底にある何かを追い求めた

――さて、アルバム『気配』が完成しましたが、どんなコンセプトはあったのでしょうか。

ヤマモトシンタロウ ガチガチにコンセプトを決めてはなかったです。3人での初めての音源で模索しながらの制作でした。制作途中から生ドラムにしないことに決めたんですけど、それが3人での意思表示になったと思うんです。人に対してメッセージを届けたい、というよりもLEGO BIG MORLとして出す音として、どんなものがカッコよいのか、というのがずっと根底にありました。

カナタタケヒロ 自分たちだけで動いているからこそ、自分たちが納得できるものを念頭に置いていました。自分たちを大きく見せなければいけない、ライブでこういう表現をしたら盛り上がるだろうな、とかそういうことを考えていたわけではないんです。自分たちの根底にある何かを追い求めて、それを見つけることができたアルバムになったと思います。

――楽曲の制作スタイルにも変化はあったのでしょうか?

タナカヒロキ 大きな変化はなくて、より自分たちの役割が細分化できたんじゃないかなと。作詞、作曲、トラック制作の3つがあって、4人の時はその境目が曖昧だった部分もあるんです。スタジオに入って調整する感じでしたが、自粛期間はスタジオに入れなかったので、そこがハッキリと明瞭化したんです。

――その中で色んなアレンジャーと制作されていますが、この人選は?

タナカヒロキ シンタロウと僕が一緒にやってみたい方をお誘いして。僕は辻村有記と安原兵衛さんで、シンタロウがTomi Yoさんでした。

ヤマモトシンタロウ 辻村有記とは彼のバンドが解散してから、「機会があったら一緒にやろうよ」と話していたんです。Tomi Yoさんとは個人的に違う仕事でご一緒させていただいた時に、自分たちの曲をアレンジしてもらいたい、と思ったのがきっかけでした。今回はバンドサウンドにこだわったわけではないので、バンドへの固定観念に捉われていない方と作業したかったので、そこは重要なポイントでした。

――確かにサウンドを聴けばそれが伝わってきます。さて1曲目は「取捨選択」ですが、重いタイトルの曲を頭にもってきたのが印象的でした。

タナカヒロキ 実はタイトルが決まる前から、この曲が1曲目だということは決まっていたんです。3人になって初めての音源ということ、コロナ禍というのは無視できないことじゃないですか。そこを匂わせるくらいなら真正面から書いたほうが良いなと思って。アルバムタイトルが『気配』なんですけど、「取捨選択」は実像が見えるくらい書きました。

――振り切った歌詞になりましたよね。

タナカヒロキ 僕もこの期間色々考えたんですけど、バンドを10何年もやってきて、今マーケティングや客層がどうのこうの言っているほうがダサいなと思って。自分が好きなことをやるほうがカッコいいんじゃないかって。それがファンのためになるんじゃないかなと思ったんです。なので、歌詞はすごく素直に書けたと思います。

――この曲をどういう意識で歌おうと思われました。

カナタタケヒロ ここまで言葉を選ばす、感情剥き出しの肉体的な歌詞を見て、サビでどのくらい力強いサウンドになるかというのが、この曲のポイントだと思いました。<選んでは捨て残ったもの>という言葉はすごくエモーショナルで、力の限り歌おうと思いました。自分に嘘をついていないということが、この歌詞から伝わってきました。

――<骨であなたとわかるなら>というフレーズもありますけど、この表現はびっくりしました。

カナタタケヒロ 確かにここは僕もどう消化しようか、どんなテンションで歌うか悩んだところではありました。

タナカヒロキ 僕が骨とか血が好きなんでしょうね(笑)。

カナタタケヒロ それはわかる(笑)。

ヤマモトシンタロウ この歌詞が結構早い段階からあって、ここから「気配」というタイトルに繋がった部分もありました。このアルバムの歌詞は自分が共感できるものが多かったんです。過去一番作りながら共感していたかもしれないです。

――ジャケットの写真はカナタさんが裸で撮影されたとのことですが、もしかしてこの<服も髪も肌もいらない>というのに掛かってたりします?

カナタタケヒロ それは思いつかなかった(笑)。でも、ちゃんと脇の毛も剃りましたから。

タナカヒロキ 「気配」という言葉からこのジャケ写になったので、そこは関係なかったんですけど、今度からそう言おうかな(笑)。

――3曲目の「気配」はアルバムタイトルにもなっている曲ですが、この曲が生まれた背景はどんな感じだったのでしょうか。

ヤマモトシンタロウ これはキンタが弾き語りで作ってきた曲で、10曲くらい同時に届いた中の1曲です。多種多様な曲があって、全然良くない曲もあったんですけど(笑)。その中で一番響いたのが「気配」のデモでした。キンタ発信で曲を作るというのをここ最近やっているんですけど、メロディが響いたということで、これを完成させようとなって。キンタさんから出てくるリズムとして珍しかったというのもあって、自分がやりたいアレンジともマッチしたと思っています。そこで辻村有記にアレンジで入ってもらってさらに曲が良くなって。

――「火のない所の煙が僕さ」から「気配」に吐息から繋がっているのも面白いですね。

タナカヒロキ これは辻村マジックです。「火のない所の煙が僕さ」も辻村がアレンジしてもらったので、彼がそういう流れにしてくれて。「火のない所の煙が僕さ」は吐息を入れる予定はなかったんです。

カナタタケヒロ 僕がこの曲のテイクでため息混じりの吐息が出てしまったと思うんです。それを残してくれていて(笑)。

タナカヒロキ そこからまた息を吸って、<ため息でも息をしてよ>と「気配」に入るのは素晴らしかったです。

――歌詞はどのように制作されたんですか。

タナカヒロキ もうメロディを聴いて、すぐに言葉が出てきました。仮歌詞からそんなに変わっていないんです。この曲の大きなテーマとして、メンバーの脱退やコロナがあったので、その事を歌っているんです。テーマに添って、自分にある言葉の引き出しから紡いで行った感じで、スムーズに書けました。

――タイトルもスムーズに決まって?

タナカヒロキ いえ、タイトルは最後までなかなか決まらなくて。アルバムのタイトルが決まってから、この曲のタイトルも決まった感じなんです。決まるまでの仮タイトルは「おしゃ」でしたから。

――サウンドのイメージには合ってますね。続いての「XXX(turkey)」これは何て読むんですか。

タナカヒロキ これはカッコの方に書いてあるturkeyです。“XXX”はボーリングのストライクを取った時の表記なんです。この仮タイトルは「トワイライト」だったんですけど、なにがって感じですよね(笑)。

まだまだ俺らはイケる

――それぞれ、お気に入りの楽曲を教えていただいてもいいですか。

ヤマモトシンタロウ アルバムの最後に収録されている「HOW TO」は初めてアコースティックギターからアプローチして、アンセム調の歌を作りたいと思いました。人と会えない分、誰かの声が聞きたくなったと言いますか。

カナタタケヒロ この「HOW TO」はシンタロウがすごい意志を持って制作していたのを覚えています。それもあって僕もメロディに対してそのイメージを受け継いだ感じはあります。

ヤマモトシンタロウ 僕の中では完成形へのイメージはすごくありました。この曲のベースはシンセベースなんですけど、初めて生のベースを弾かなかったんです。やっぱりバンドというものに捉われたくないというのが出たんじゃないかなと思います。

――タナカさんのお気に入りの曲は?

タナカヒロキ 「天使くんと悪魔ちゃん」のギターです。いつもはギブソンのSGを使っているんですけど、今回はフェンダーのギターを使ったんです。本当に珍しくて、フェンダー系のギターの弦交換のやり方もあまりわかっていないくらい(笑)。サウンド的に、SGよりも鋭い感じになったなと思っています。この曲は歌とギターで引っ張っている感じもあります。繊細な曲が多い中で、この曲は勢いでいけたので、すごく楽しかったです。あと、ギターソロの終わりが、B’zのTAK MATSUMOTOさんっぽく終われたのが、個人的な満足ポイントです。

――この曲の歌詞で<ベぇらべぇらべらしょっしょい>とあるのですが、これって、関西の百舌鳥八幡宮のお祭りである掛け声ですよね?

タナカヒロキ これはキンタが、仮歌で適当に入れていたんですけど、僕もこれ何?って聞いたら、百舌鳥八幡宮だと教えてもらって。ちょうど僕もそういう、一見意味のなさそうな言葉を入れたかったんです。なので、これを活かそうと、そのまま入れました。

――カナタさんのお気に入りポイントは?

カナタタケヒロ 僕も「天使くんと悪魔ちゃん」です。この曲は最初Aメロがちゃんと決まってなかったんです。なんかフワフワしていたので、ヒロキに歌詞を書いてもらって、この言葉を見てLEGO史上1番早口な曲にしてやろう、と思ったんです。そこにヒトリエが頭に浮かんできて。彼らの音楽ってすごい早口じゃないですか。それを俺たちがやったらどうなるんだろうと。挑戦が詰まった一曲になりました。この勢いから、僕の中で祭りがイメージとして出てきて、<ベぇらべぇらべらしょっしょい>というワードが出てきたのもあると思うんです。

――地元愛がありますよね。

カナタタケヒロ 僕の地元の堺のみんなも喜んでくれるんじゃないかなって。ヒロキがこの言葉を拾ってくれたのも嬉しかったです。

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

ヤマモトシンタロウ 去年はバンドが終わるんじゃないか、というところまで行きました。その時にはこんな素晴らしいアルバムができるなんて、全然想像もしていなかった。最初にバンドという固定観念を無くしたいと話しましたが、一人ではこんな作品は絶対できなかったと思います。ピンチをチャンスに変える、というのは言葉で言うのは簡単なんですけど、それができたと思うんです。まだまだ俺らはイケると思ったので、これからも応援宜しくお願いします。

(おわり)

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