ALI、岡崎体育、OKAMOTO’Sが5日、『THE FIRST TAKE FES vol.1』に出演し、パフォーマンスした。

 都内の某ライブハウス。ステージのバックグラウンドは白一色。照明は極めてフラットかつクリアな明るさのままキープされ、華美なセットやスモーク等の特効も一切無い。

 下手前方のステップを上って、ALIが、岡崎体育が、そしてOKAMOTO’Sがステージに立つ。すると、静謐な空間に独特な空気が張り詰める。その様子はさながらドキュメンタリーのようでありながら、ミニマルアートのようでもある――。

 『THE FIRST TAKE FES vol.1』は、YouTubeで187万人の登録者数を誇る、アーティストによる一度限りのパフォーマンスを鮮明に切り取る音楽チャンネル「THE FIRST TAKE」のコンセプトを踏襲した記念すべき第一回目の“フェス”だった。

 “フェス”と銘打たれてはいるが、現地にオーディエンスはいない。入場から退場までの一部始終を収める映像は複数台の定点カメラで、音声は高感度のコンデンサーマイクで収録され、追加の撮り直しもオーバーダブ(追加録音)も一切ない、言わば“一発撮り”である。

 「1アーティストにつき2曲を披露」という以外、パフォーマンスや演出、選曲についてのルールも特に設けられていない。YouTube配信のための最適解として16:9のバランスで設営された白いステージのみという環境の下、全ての判断はアーティスト各々に委ねられている。

 また、『THE FIRST TAKE FES vol.1』は、未だ収束の見えないコロナ禍の只中における“フェス”でもある。結論から言えば、3組のアーティストによる2曲の選曲とそのパフォーマンスは、自ずとそれぞれが辿ってきたこれまでの活動のヒストリー、現在の胸中、さらにはオーディエンスへのメッセージが反映される格好となった。

ALI

ALI

 トップバッターはALI。LEO(Vo)、KAHADIO(Dr)、YU(Sax)、LUTHFI(Ba)、ALEX(Per)、JIN(Key)、CESAR(Gt)というメンバー全員が、日本、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカなど様々な国をルーツに持つ、東京・渋谷発の多国籍ファンク&ヒップホップバンドである。

 ステージに立つと彼らは思い思いに軽くサウンドチェックを行う。黒のセットアップで統一された彼らの姿はこの時点で絵になっている。ミュージックビデオのほとんどがモノクロ映像のALIは、白いステージとの相性も抜群に良い。

 LEOが語り始める。「いま、こんな時代なんで。本当は世界中、たくさんの人の前で、たくさんの素晴らしい景色を、一緒に作ったり、見たかったんですが…とりあえず、いま出来ることを一生懸命、一生懸命やりたいと思います」

 そしてバンドが咆哮を上げた。1曲目は昨年11月にデビューした彼らの1stシングル「Wild Side」。TVアニメ「BEASTARS」のオープニングテーマで、現在の彼らにとって名刺替りとも言えるジャジーなナンバーだ。

 高い演奏力に裏打ちされたタイトなグルーヴのなか、サポートの2MCを左右に従えたLEOのヴォーカルが吠える。セクシーに、獰猛に、ウィスパーとシャウトも巧みに操り、折れないアティチュードを歌い上げていく。<all I was Taking about was music,and that’s called jazz!>というリリックを高らかに叫ぶと、2曲目の「Better Days」へ。

 ここでサポートは2MCから女性コーラスと入れ替わる。すると、何と冒頭でラッパーのGOMESSが、さらに中盤からは荘子it(Dos Monos)がゲストとして登場したのだ。「Better Days」のレコーディング版ではDos Monosがフィーチャーされているのだが、GOMESSと荘子itという布陣はこの『THE FIRST TAKE FES vol.1』でこそ実現した豪華かつレアな顔合わせだ。

 実際、GOMESSと荘子itはこのステージが初共演だという。GOMESSの激しさ。荘子itの力強さ。三者のソウルフルなケミストリーがクールにピークを迎えて、ALIのステージは幕を閉じた。

セットリスト

M1.「Wild Side」
M2.「Better Days」

岡崎体育

岡崎体育

 2組目は岡崎体育。自らが標榜する“BASIN TECHNO”のロゴがプリントされたジャージで登場すると、軽く身体ほぐし水を口に含むと手元のノートブックに目をやる。そして一呼吸ののち、ヘッドフォンを着けると彼はトラックをスタートさせた。

 四つ打ちのビートから展開されるダンサブルな1曲目はその名も「YES」。岡崎がこの日のために用意した新曲だった。歌いそうで歌わないまま絶妙なタイミングで送られるカメラ目線。途中、ヘッドフォンのLRを変えてみるがまた戻す(戻すんかい)。

 <YES>というリリック一発のみを放ち、シンバルと共に終了(終わるんかい)。定点カメラのサイドアングルを逆手に取ることでオーディエンスを楽しませるという、“BASIN TECHNO”面目躍如の周到なニューチューンと頭脳プレイが冴え渡った。

 ここでMCと共にアコースティックギターのサポートが登場。まだMC中の岡崎の言葉を遮ってイントロが聴こえてくる。「自分のタイミングで始められなかったですけどね、聴いてください、「エクレア」という曲です」。

 ファーストアルバムに収録されている「エクレア」は、岡崎がブレイク以前の日々の心情を詞曲に込めた、彼にとって大切な、そして彼のファンのみならず多くの音楽リスナーから強く支持されている重要なナンバーである。

 今回はオリジナルのオルタナティヴなアレンジとは異なる、ギターのコードストロークと岡崎自身のハープによるアコースティックなバージョンである。

 序盤の<もう+-×÷の次元じゃない気がする>といいサビの<いい曲といい歌はいい人といい場所で>、<いい曲はいい人と共に>といい、リリックの幾つもの言葉が現在の世相とオーバーラップする。

 「メジャーデビューして4年。いろんな人に支えられて音楽活動をしているので、頭の中に、友達とか、家族とか、応援している人の顔を浮かべながら歌ってみました――想像し過ぎて頭がそっちに行き過ぎて、いきなり歌詞を間違えるっていう」

 熱の籠もったパフォーマンスの後、そう言って岡崎は笑った。

セットリスト

M1.「YES」
M2.「エクレア」

OKAMOTO’S

OKAMOTO’S

トリを飾るのはOKAMOTO’S。オカモトショウ(VO)、オカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)と共に、ステージにはサポートキーボードとしてBRIAN SHINSEKAIの姿が。直近のレコーディングに参加していた彼をフィーチャーした5人体制による初のステージである。

「どうですか意気込みは」(ハマ・オカモト)。
「11年目の第一歩って感じだな」(オカモトレイジ)。
「本当はお客さん前にやりたかったですけどね。この5人のやつを何の予告もせずに」(ハマ・オカモト)
「でも形に残るっていうのもいいことだよね。初めて新曲をやるっていうのもね」(オカモトショウ)

ハマ・オカモトのベースラインにBRIAN SHINSEKAIとオカモトコウキのコーラスが乗る。この日が初パフォーマンスとなったこの「Welcome My Friend」は、8月26日にリリースされたばかりの6曲入り新作EPの表題曲で、テレビアニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のエンディングテーマとして、すでに海外で人気を博しているナンバーだ。

言うまでも無くOKAMOTO’Sのプレイはスピーディーな演奏もたまらないが、このミディアムテンポのグルーヴに、言わば“ベテランの風格”にも似た頼もしさを見たのは、おそらく筆者だけではないはずだ。さらにアメリカンロックを想起させるアレンジやキーボードの効果的な作用から、彼らが切り拓いた新境地のサウンドである。

<Welcome My Friend , Let’s get to work>というリリックからは新たなOKAMOTO’Sと新たなリスナーとの出会いのための言葉だろう。そして<君越しに見る世界が/ほんの少し/ほんの少し/輝きを見せるんだ>、<Show must go on, I just need you, more than ever>といったリリックからは、予想外の世相のなかで11年目を迎えたメンバー同士の絆と、オーディエンスの存在へのメッセージを強く感じさせる。“誓い”の一曲のようだ。

「初披露のものがずっと残るっていいね」。演奏後、オカモトレイジの言葉に一同が頷く。

2曲目は「NO MORE MUSIC」。この2017年リリースにされた7枚目のアルバムの表題曲は、オカモトショウ曰く、「音楽が何よりも大事な四人が奏でる「音楽って必要ですか?」という曲。自分たちの核のひとつにある曲」である。未曾有の時代、“不要不急”という言葉で全てのカルチャーとエンタテインメントの存在意義が問われた昨今だからこそ、やはりこの曲もまた新たな意味をもってオーディエンスの心に響いたはずだ。

セットリスト

M1.「Welcome My Friend」
M2.「NO MORE MUSIC」

 ALIはメジャーデビューして1年目。岡崎体育は「30歳までの悲願」に掲げていたさいたまスーパーアリーナ公演を昨年に終え、OKAMOTO’Sもデビュー10周年を記念した日本武道館公演を盛況のうちに収め、それぞれ新章を目前にしてのコロナ禍となった。

 終演後の彼に話を聞くと、思い思いの言葉が返ってきた。

 「『良いライブを撮ろう』というスタッフの“圧”がもの凄かった(笑)。「Wild side」を送ることで、「ALIは元気だよ。これからもよろしく」とみんなに伝えたかった。そして「Better Days」には、より良い未来への願いを込めました(LEO(ALI))

「たまアリを終えた後、制作や楽曲提供のみに活動をシフトしようかと考えていた時期もあった。でも、ライブができないと、ライブが恋しくなった。プロのミュージシャンとしての、エンターテイナーとしての岡崎体育のプライドを再確認したフェスとなりました」(岡崎体育)

「『白壁で全てをさらけ出してください』というライブだった。緊張したけど、楽しかった。どんな状況でも自分たちの芯は揺らがない。いま、この2曲がプレイできてよかった」(オカモトショウ(OKAMOTO’S))

 「今回のようなエキサイティングな機会は、これからさらに求められるんじゃないかと思う」(オカモトコウキ(OKAMOTO’S))

 「世界中が同じように不安な時こそ、ポテンシャルや真価が問われる。だから気持ちをしっかりしておかないと。僕らが元気を見せられることがまず大事なのかなと」(ハマ・オカモト(OKAMOTO’S))

 「コロナがあろうかなかろうが健康第一。俺らの音楽が何かの力になればうれしい」(オカモトレイジ(OKAMOTO’S))

 9月5日当日の配信時は、定刻の20時ジャストになるとスタートした2分前のカウントダウンからコメント欄が早くも活気づいた。

 本編中のリアルタイム視聴者数はMAX時で14000人超えを記録。コメントは英語を主に多国語でも多数寄せられていた。海外からのアクセスも多い「THE FIRST TAKE」の特性が、この『THE FIRST TAKE FES vol.1』でも同じように反映されていた。

 最後に、全ての収録は全キャスト・スタッフへの検温実施、マスクやフェスガードの装着、ソーシャルディスタンスやステージ上でのアクリル板の設置など、徹底した感染予防対策のもとで行われたことをレポートしておきたい。さらに、全てのパフォーマンスが、たしかに撮り直し無し・一発勝負の記録であることも、あらためて記しておく。

 トータルタイム、37分。凝縮された時間のなかでプレミアムな緊張感を届けた『THE FIRST TAKE FES vol.1』。早くも次回の開催に期待が募る。【TEXT:MASAKI UCHIDA】

この記事の写真

記事タグ

コメントを書く(ユーザー登録不要)