INTERVIEW

TRI4TH「自分たちでは成しえない音」目指した新境地とは


TRI4TH

記者:小池直也

掲載:20年09月05日

読了時間:約11分

 5人組ジャズバンドのTRI4THが8月19日に「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)」の配信を開始した。この作品は10月7日にリリースされるメジャー3rdアルバム『Turn On The Light』に先駆けて発表されたもので、SANABAGUN.からラッパー・岩間俊樹がフィーチャーされている。先日は配信ライブ「Turn On The LIVE vol.1」を行い、コロナ禍の逆境にあっても挑戦を諦めない姿勢が垣間見えた。配信シングルと新作アルバム、今感じていることについてTRI4THの5人に話を聞いた。【取材=小池直也】

繋がってるんだと感じた「Turn On The LIVE vol.1」

――バンドとしての自粛期間の様子はいかがでしたか。

伊藤隆郎 自粛期間は5人が集まった制作やライブはできなかったので、それぞれが自宅でリモートセッションや「ジャズなラジオ体操 (Radio Exercise#1 Jazz Ver )」という動画のレコーディングなどしてました。外に出られなかったり、運動不足が続いたりするなかで楽しんでもらいたいという気持ちがあったんです。僕たち自身も家から出られないなかで、何かエンタテインメントをアウトプットできたらなと。

 実際、日常が戻ってきていないので落ち込んでないわけではありません。ただこの状況が長く続くだろうし落胆しても無駄ですから、いかに新しいものを作り出すかに気持ちを向けていく方がポジティブじゃないですか。そこに5人がアイデアを出し合って乗り切れればいいと思うんです。

――個人としては、それぞれどうですか?

伊藤隆郎 音楽的なところだと音楽スタジオも空いていなかったので、電子ドラムを導入してリハーサルやセッションをしたり。慣れないパソコンを使って、レコーディングもできるようになったので進歩できたなと思っています。あとは時間があったので、DIYでひたすら自分が着たい服を作ってました。

関谷友貴 YouTube Lveを自宅から発信して「ファンの皆さんと自宅から繋がる」をコンセプトに、チャットを使って1曲を仕上げるという企画を週2回、今も続けています。登録者数も1000人を越えました。

竹内大輔 僕もYouTubeを始めました。家だとできることは限られますが、Instagramでリクエストを募ってメドレーで演奏したり。普段自分がやらないような曲も来るので、色々な曲を弾く機会が増えました。それによって表現力が上がっていればいいなと思ってます。

藤田淳之介 TRI4THのホーン隊は恵まれていて、自宅で音を出せる環境ですから、自分の音のみ多重録音でアンサンブルしてネットに上げたり、トランペットを始めたので、その練習時間に当てたりしてました。それでTRI4THのナンバーを吹けるようになったのが嬉しいです。

織田祐亮 僕は基本的な奏法を見直す期間でしたね。マウスピースを当てる位置が横にずれていたんですけど、真ん中に変えました。時間がないとできないことなので、緊急事態宣言中にできて良かったです。あと、蕎麦を打ってました。ネット通販でそば打ちセットを注文して、だいぶ上手く打てるようになりました。蕎麦屋をやれるんじゃないかと思ったり(笑)。

――先日に開催した配信ライブ「Turn On The LIVE vol.1」の手ごたえは?

織田祐亮 お客さんが会場にいないライブが初めてだったので、当然ながらレスポンスが返ってこないんですよ。ただ開演30分前に「見てますよ」「踊ろうぜ!」などのコメントを頂いて、つながってるんだと感じました。ライブ中にも隆郎さんがモニターを見て、コメントに反応したりして。久しぶりにライブでコミュニケーションをとれたのは励みになりました。

藤田淳之介 僕は自粛期間、落ち込んで「音楽って要るのか?」と思ってました。ミュージシャンなら誰しも「これから何をしていけばいいんだろう」と考えたと思います。それを経て配信ライブができたのは良かったです。どこまで伝わるかという心配はありましたが、チャットやSNSでのつぶやきで「ライブを体感できた」「元気をもらえました」というレスポンスも多くて、まだやれることがあるんだと。

――配信ならではの苦労みたいなものもあったんでしょうか。

竹内大輔 こちらとしては普段通り演奏するように心掛けたというか、自然とそうなりましたね。配信で意識する部分とそうじゃない部分をリハーサルでも詰めていきました。後から見返してみると「こういう角度で録ってくれたんだ」とか「こういう音で録れてたんだ」と驚きがありました。あとは何度も観れるのも利点だなと感じます。この形でできることを生の良さとは別に追求することもできるのではと思いました。

関谷友貴 確かに配信でしかできないことがあるなと感じました。メンバーが円になって向き合いながら演奏したんですけど、それは生のライブではできない陣形だしカメラワークもそう。ピアノやドラムの手元が見えるのも配信ならではです。これからもっと面白いアイデアが生まれて、ハイブリッドな感じになっていくかもしれません。

伊藤隆郎 セットリストや音楽的なことについてはディスカッションを重ねています。あとは当日のカメラリハが初めてで、それが新鮮でしたね。たくさんあるカメラに対してどうアプローチすれば面白い画になるのか、ということは当日にならないとわからなくて、本番ギリギリまで試行錯誤していました。

TRI4THらしさがないと客演の意味がない

――配信シングル「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)」についても教えてください。どの様に着想され、岩間さんにオファーされたのでしょう?

伊藤隆郎 今回はメジャーに移籍してから3枚目のアルバムになります。前作と前々作は5人だけで完結させていたのですが、3枚目はホップ・ステップ・ジャンプのジャンプに当たると思いで、ボーカリストやラッパーを客演に迎えることができたらというのが最初にありました。

 スタッフとの話し合いのなかで挙がったのがSANABAGUN.でした。彼らも僕たちが大事にしているルードな部分を持ちつつ、不良の音楽を体現している点で共通点があるのかなと。もちろん彼らのことは知っていましたし、音楽を改めて聴かせてもらってカッコいいなと思っていたので、お互い共鳴できるものがあるならご一緒したいとミーティングの機会を持ちました。その話し合いの結果、今回は岩間くんがひとりで参加してもらうことになったんです。

――その話し合いについて、もう少し詳しく教えていただけますか。

伊藤隆郎 今年の頭に僕と織田、高岩遼くんと岩間くんの4人で話しました。そこでは冗談の様な本気の様なアイデアが出たんです。僕からは「SANABAGUN.の全員とコラボしたい」と提案して、8対5の13人でと思ったのですが、それはあまりに無謀だったので却下になりました(笑)。

織田祐亮 SANABAGUN.は個人的にもともと好きなバンドで、僕らもヒップホップを演奏するのは初めてだったので、どういう楽曲にするのか、というもありました。岩間さんとのディスカッションから、TRI4THの音楽をどう落とし込んでいこうかと相当メンバーで話し合いました。結果的に普段の岩間さんとは違う新しい印象になっていて、面白いものができたと感じています。

関谷友貴 やっぱりTRI4THらしさを出さないと、岩間さんに客演してもらった意味がないですから。そういう意味でヒップホップだけど生演奏にこだわって切り貼りをせず、一発録りでレコーディングしたのが良かったんじゃないかなと。

藤田淳之介 ソロも含めて一発で録りました。一応、僕がもう1回録ったものもあるんですが、それは採用されませんでしたね(笑)。

――リリックについては何かやりとりがあったのでしょうか。

伊藤隆郎 ラップの部分については岩間さんにおまかせしています。何度かメンバーにもヒアリングしてもらいました。僕たちは来年で結成15周年になるんですけど、色々な歴史のなか辞めたメンバーもいて、それで今がある。そういう気持ちも代弁してもらえたら嬉しいな、と伝えました。岩間さんからも「それぞれが思うTRI4THをひと言で」と質問してくれて、それも踏まえたリリックにしてくれたんです。

竹内大輔 具体的な文字で伝えたので、それをどの様に組み立ててくれたか気になっていましたが、できたものを聴いて単純に感動しました。TRI4THを知っている人にとっては納得のいくリリックになっています。知らない人にも興味がわく内容で嬉しかったです。

関谷友貴 やっぱり言葉のパワーがありました。このトラックにリリックが乗ったら、こんな化学反応が起きるのか1+1が10にも100にもなるというのを感じました。

――実際のビートはサックスとトランペットのリフが印象的なものになっていました。

藤田淳之介 普通のヒップホップはここまで大きくホーンが出てないです。場面が変わる時に入ったり消えたりすることが多いので。でも「ホーンが主メロでもいいんじゃないか?」と考えて、ラップと共存できる点を探しながら、何度もメロディを作り直しました。ホーンだけ聴いても楽しめるというバランスに落ち着くことができたかなと。

――これからリリースされるアルバム『Turn On The Light』にも通じる題名になっていますが、これについては?

伊藤隆郎 アルバムのタイトルは最後に付けました。全体でボーカリストとして招くのは岩間さんだけなんです。だから「The Light」は全体を象徴する1曲になるだろうと。それをコンセプチュアルに伝えるためのキーワードを考えていたら、「The Light」という言葉をアルバムタイトルに含むものにしたら面白いんじゃないかなとイメージが浮かんだんです。

自分たちだけでは成しえない音

――では「For The Loser feat.KEMURI HORNS」についてもお聞きします。どのような経緯でKEMURI HORNSと一緒にやることになったのでしょうか。

伊藤隆郎 この曲はもともと“歌もの”ではなくて「サビだけシャウトして自分たちらしい曲に出来たら」という着想からスタートしています。その中で僕と織田がキャッチボールしながら「自分たちらしさのあるJ-POPにどこまでできるか」を追及していきました。最初にAメロが出来て、その後に出来たBメロのホーンと歌との掛け合いのセクションでKEMURIに吹いて欲しいなと。

 自分たちだけで完成させることできますが、色々なアーティストをお招きするということもコンセプトとして掲げているアルバムですからね。僕らも大事にしているスカの要素を持っていて、トップランナーとして走り続けているKEMURI HORNSに入っていただければ、より華やかになると思いお誘いしました。

――藤田さんは、自分たち以外のホーンが入っていかがでしたか。

藤田淳之介 リハを1回やらせていただいて、その後に本番だったのですが音圧がすごかったです。僕たちもホーンバンドとしては最小限の人数でサウンドを追求してきたつもりですが、音の説得力がすごくて。さすがエネルギーを伝えることに特化してきた方達ですね。おかげさまで自分たちだけでは成しえないサウンドが作れました。

伊藤隆郎 KEMURIはボーカリストがいるバンドなので僕らと共演する機会はあまりないですが、歌に寄り添うホーンが印象的でした。やはり歌と一緒に生きてきた方たちなので、ボーカルに対する考え方について勉強になりましたね。

織田祐亮 僕らは普段ホーンが主旋律を演奏するのでメロディやアドリブのソロに重きを置いていましたが、ホーンセクションになると考え方が変わります。今回は5人のホーンがいるので、それぞれが好きに演奏したらカッコよくはなりません。それをどう整理するかをKEMURIの先輩方に教えていただきました。あと、面白い試みとしてAメロはTRI4THの2人、BメロはKEMURIの3人、サビで全員が合流するというアレンジにしています。

――竹内さんと関谷さんは後ろから見ていて、いかがでしたか。

竹内大輔 最初は僕ら5人で演奏していた曲だったので、歌もホーンも入らないところはピアノでバンプっぽく弾いたりもしていたんです。でもホーンに加わっていただいて、どの楽器も良いバランスで聴けるようになった気がしました。

関谷友貴 僕はベースを始めた頃にKEMURIのコピーバンドをやっていたんですよ。去年、東京スカパラダイスオーケストラさんのライブイベントにKEMURIさんも出演されていて、20年経って改めて聴いたサウンドが懐かしかったです。今回の楽曲はAメロがTRI4THのサウンドで、Bメロは明らかにKEMURIのサウンド。それを聴いて改めてレジェンドだなと思い感動しました。いつかライブでこの曲を披露するのが楽しみです。

伊藤隆郎 あと、誰も触れてくれないんですけど、この曲はすごく頑張って歌いました(笑)。めちゃくちゃ頑張って作詞して、歌ったということだけは伝えたいです。

――さて、続いてリリースされるアルバム『Turn On The Light』の聴きどころもお聞きしたいです。

伊藤隆郎 世の中が大変な時期が続いてますけども、このアルバムを聴いて少しでも元気になってもらえたらと1曲1曲作りました。フィーチャリングでラッパーやKEMURIのホーンセクションを迎えた以外にも、The Poguesの「Fiesta」のカバーやジャズの名曲「Moanin’」をスカのテイストを織り込んでやりました。

 10曲目に収録した「Sailing day」は自分たちらしさ、ポップさで今のTRI4THとしてうまく表現できたんじゃないかなと思います。今まで表現できなかった音楽性と咀嚼できているスカやロックンロールを全部自分たちの色として表現することができた1枚です。最初から最後まで聴いて、また1曲目に戻ってもらうところまで聴いてもらえれば、こんな仕掛けを作ったんだと感じてもらえると思います。

――ありがとうございます。最後にこれからの展望などあれば。

伊藤隆郎 リリースをして2〜3カ月後にはツアーで全国を回るのが、僕らのルーティンでした。今回もそれを目標としてやってきましたが、まだツアーの予定も組めていません。これまでとは違う動きになっているんですけど、納得のいく作品ができたので、たくさんの人にこのCDを家で楽しんでもらえたらと思います。この状況が落ち着いた頃には、ライブハウスでこのアルバムの進化、一番伝えたいことを伝えられるはずです。僕たちも心が折れないように頑張って続けていきます。

(おわり)

作品情報

先行配信第一弾「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)
2020年8月19日より配信中
https://smer.lnk.to/U24gx3go

先行配信第二弾「For the Loser feat.KEMURI HORNS」
2020年9月16日配信

アルバム『Turn On The Light』
2020年10月7日発売
「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)」「For The Loser feat.KEMURI HORNS」ほか全11曲収録予定。
初回生産限定盤には2019年11月にマイナビBLITZ赤坂で行われたワンマンLIVE映像のBDを収録。
■初回生産限定盤(CD+BD)デジパック仕様:4,000円(税込)
■通常盤(CDのみ):3,100円(税込)

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