INTERVIEW

斉藤壮馬「柔軟さがこの3年で出てきた」シンガーとしての変化に迫る


斉藤壮馬

記者:村上順一

掲載:20年09月04日

読了時間:約11分

 声優でシンガーの斉藤壮馬が8月19日、配信シングル「Summerholic!」をリリースした。今作は“季節のうつろい”、“世界の終わりのその先”をテーマと した 『in bloom』シリーズとして第2章をスタートさせた斉藤壮馬が6月の「ペトリコール」を皮切りに、3曲連続配信の第2弾となる楽曲。ストレートなロックチューンで爽快な夏をイメージさせてくれるナンバーに仕上がった。インタビューでは、作詞・作曲を手がける斉藤壮馬の音楽変遷に触れながら、「ペトリコール」、「Summerholic!」、第3弾の「パレット」について楽曲に込めた想い、こだわったところなど楽曲の魅力に迫り、これからの展望など話を聞いた。【取材=村上順一】

中学生の時の音楽の向き合い方が、今の自分のベースになっている

「ペトリコール」ジャケ写

――音楽の原体験はどんなものだったのでしょうか。

 子どもの頃から歌うことが好きでした。両親が運転している車の中で流れていた音楽のイメージが強くて、母がビートルズや松任谷由美さん、父が聴いていた矢沢永吉さんや浜田省吾さん、井上陽水さんが流れていました。家庭の事情で車に乗ることが多くて、主に音楽は車中で聴くのが僕の文化の一つとしてありました。

 小学生の時はカセットテープにマイベストを作って移動中に掛けてもらっていたのを覚えています。その時はポルノグラフィティさん、スピッツさんなど聴いていました。

――中学時代はどのような音楽体験を?

 中学生になってサブカルに詳しい友達ができて、それまでJ-POPが主流だったところに、パンクやアングラの存在を知りました。その時は「こんなにも魅力的なものがあるのか」と、衝撃を受けて、中学1年生から自分の意思で音楽を聴くということが芽生えたのを強烈に覚えています。そこから洋楽を聴き始めて、ちょうどロックンロールリバイバル世代だったこともあり、ザ・リバティーンズやザ・ストロークス、ブロックパーティなどを聴き始めて、王道のバンドに嵌っていきました。

 記憶に残っているのは友達から1枚のMDをもらったんですけど、最初の2曲がU2、その後にザ・ローリング・ストーンズ、エマーソン・レイク・アンド・パーマー、マリリンマンソン、あとは筋肉少女帯さんというラインアップでした。

――面白いバランスのMDですね。

 そうなんです。自分から調べて詳しくなっていく聴き方と、友達を中心とした大人たちが教えてくれるようなディープな世界という、2つの軸で音楽を聴いていました。その時はあまりJ-POPは聞いていなかったんです。“中学生あるある”だと思うんですけど、みんなが知らないようなアーティストを知っているのが、カッコいいみたいな風潮がありました(笑)。

 地元にあった自分が信頼できるセンスが良いCDショップに自転車で行って、ジャケ買いをして家で聴いて、「おおっ! これカッコいいな」と音楽に触れる日々でした。中学生の時の音楽との向き合い方が、今の自分のベースになっていると思います。

――ルーツは中学生時代にありですね。良い青春時代を過ごされていたのが伝わってきます。

 あまりキラキラしている感じではなく、焦燥感のある青春時代でしたけど(笑)。中学時代はパンク寄りのバンドをやっていて、ザ・スターリンとか演奏してました。バンドで初めてコピーしたのはT・レックスの「Get It On」で、僕はギターボーカルだったのですが、誰もコーラスが歌えないという理由で却下になり、自分たちで曲を書こうとなって。もともと僕とその友人はオリジナル曲をやりたかったんです。その時の音楽性はアーケイド・ファイアやスマッシング・パンプキンズのようなインディー感のある感じでした。

――ロックな青春時代でしたね。さて、今回『in bloom』シリーズとして3曲連続リリースとなっていますが、どの曲もジャンルは違う幅広さを感じさせますが、外せない軸みたいなものはあったのでしょうか。

 しいて言うならグッドメロディというのは軸にありました。キャッチーで心に残るサビ、「ぺトリコール」なら印象的なサックスのリフとか、そういったところを大事にしていたと思います。おっしゃっていただいたようにこの3曲は統一感がないんです。『in bloom』シリーズと謳っていますが3部作という括りでもなくて。

 もともとは6月にシングルとしてリリースする予定で、表題曲が「ぺトリコール」で雨の3部作として雨に纏わるシングルになる予定でした。でも、配信になることに決まって、いくつか完成していた曲の中に「Summerholic!」と「パレット」があって、どの曲も季節を感じさせる曲だと思い、「季節」というのも軸にありました。

――「ぺトリコール」はそのサックスのリフも印象的なのですが、普通は要所に入れることが多い中で、雨の音が終始入っているのも大胆だなと思いました。

 (笑)。それは僕も思いました。最初いろいろ試してみて、この曲の雰囲気だとずっと入っている方がいいなとなって。歌詞に<この季節の中に 閉じ込められたの>とあるんですけど、雨の中に歌の主人公が佇んでいるようなイメージが音からも伝わればいいなと思いました。この曲のメロディはポップな感じだと思うんですけど、サックスのリフが調性から少し外れていたり、アート・リンゼイ的なノイジーなギターだったり、音楽的には挑戦的な仕上がりになったと思います。

――エンディングもフェードアウトしそうな雰囲気ですが、カットアウトするのも印象的でした。

 フェードアウトは考えたんですけど、普通かなと思って。急な幕切れが訪れると、聴いてくれた人はどんな気持ちになるのかなと思ったんです。心地よいループが続いている中で、急に終わったりすると、こちらが気持ちの準備をしていないので引っかかるじゃないですか。その状態をこの曲でも作り出したいなと思ったんです。

――すごく引っかかりました。歌詞も多角的に捉えられて面白いですよね。
 
 「ぺトリコール」は主人公の気持ちで見るのか、周りの人の立場で見るのかで印象が変わる曲だと思います。正解というものはなくて、自分の曲はエンタメなので、いろんな形で楽しんでもらいたいと思っています。

乾杯のSEに込められられた想い

「Summerholic!」ジャケ写

――配信リリース第2弾の「Summerholic!」はストレートなロックナンバーですが、この曲はどのような思いで制作されていたのでしょうか。

 新しいことに挑戦していこうと思っていました。例えば第二章の1曲目を「Summerholic!」にして、「ここから新しいことをやっていきます」というのはわかりやすいと思うんですけど、「ぺトリコール」のような曲を一発目に持ってきたことで、ここからこういう曲を提示していく、ひねくれていきたいという意思表示でした。

 それで、「ぺトリコール」を一発目に出せたので、次の曲はわかりやすい方が逆にひねくれているのではと思いました(笑)。コロナ禍でおうちにいて気が滅入る人もいるんじゃないかなと思っていたので、底抜けに明るい曲調、サマーチューンにしたいなと思ったんです。最初のリフは好き勝手にギターを弾いていたら出てきたフレーズで、そこに自分の好きなコード進行をはめてみたら、すごくハマって。

――歌はどんなイメージで歌われたのでしょうか。

 自分としては洋楽的なニュアンスもある楽曲だなと思っていて、英語っぽく聞こえるような歌い方に挑戦しました。この曲は僕の中ではザ・クリブスとザ・リバティーンズが混ざっているようなイメージなんです。そこに<明日の準備と摂生倫理と睡眠不足と>という歌詞のところは『おジャ魔女どれみ』の発想を取り入れています。

――いろんな要素が入っているんですね。

 はい。自分が聴いていてウキウキするような、言葉のチョイスを意図的に取り入れてみたり。この曲は今まで自分が作ってきた曲の中では、一ひねりしかしていないので、素直な曲になったんじゃないかなと思います。ひねくれてるとしたらこんなに晴れているから絶対外には出ない、というところだけですから。それがこの曲の主人公にとって贅沢な夏の1日なんです(笑)。

――歌詞に<幽霊だってはしゃいじゃいそうだよね>の幽霊という言葉が、この曲調の中でなかなかパンチがあるなと思いました。

 皆さん、すごくそこを気にしてくださるんですけど、僕は割と普通の概念で使っているんです。幽霊がはしゃいでしまうくらい、すごくぴーかんという情景が伝わるんじゃないかなと思いました。僕は幽霊という漢字のイメージと視覚的なデザインが好きなのと、あと韻も踏みやすかったんです。自分でもすごく気に入っている歌詞の部分でもあります。

 この歌詞は歩いている時に「今日はぴーかんの夏晴れだな」と思ったところから、生まれました。メロディにも合うし、もう歌い出しはこれだなって。なので、ここはひねりというよりは、僕の中では夏晴れを丁寧に説明した感じなんです(笑)。

――ちなみに壮馬さんは幽霊は見たことはありますか?

 これがないんです。なかなか見たいと思っている人のところに来ないみたいで(笑)。ちなみにMVでは乾杯するシーンがあるんですけど、僕一人しか映っていないので、「誰と乾杯しているんだ?」という疑問が残るんです。もしかしたら幽霊なのでは?と、撮影した後に気付きました(笑)。

――乾杯の時にビールを注ぐ音が入っていますけど、あれはレコーディングスタジオでその場で録音されたのでしょうか。

 いえ、あれはサンプリング素材であったものを使用しています。あの音は最初入れる予定ではなかったと思うんです。完成したものを聴かせていただいたら入っていて、めちゃくちゃいいなと思いました。ライブが通常通りにできるようになったら、ビールでなくてもいいんですけど、会場でみんなと乾杯したいという、ライブを想定したアレンジでもあります。みんなと乾杯を共有できる日が来るのが、すごく楽しみなんです。

声優とアーティストどちらも自分の表現の一つだと思えることが出来てきた

――第3弾の「パレット」は、マイナー系のロックサウンドですね。

 この曲は「ペトリコール」以前の楽曲の雰囲気に近いものがあると思います。「ペトリコール」が梅雨の時期、「Summerholic!」が夏と考えると「パレット」は夏の終わりから秋の始まりにかけてを歌いたいと思いました。

 僕は秋が一番好きな季節なんですけど、夏と秋の狭間に感じるような感傷的な気持ちに合う曲にしたいと思いました。その中で、わかりやすいディストーションの掛かったギターで弾くような曲がやりたいなと思ったんです。イントロは自分の手癖だったりするんですけど、これは王道中の王道みたいな感じでいいなと思って。

――この曲にはどのようなこだわりが詰まっていますか。

 その中で低音を強く出したい、というのもありました。 すごく低音を出しているので、ぜひ皆さんの環境が許す限り大きな音量で聴いてもらいたいです(笑)。ギターも高音域を弾くというよりも、低音のロングトーンとかチョーキングなどで、感情の塊みたいなものを表現したいと思ったので、それらをリクエストしてアレンジしていただきました。そこに中高音域のボーカルを乗せることによって、轟音+エモーショナルなボーカルを目指しました。夏が終わる切なさを音として表現したかったんです。

――「パレット」というタイトルには、どのような想いが込められているのでしょうか。

 過去に「デラシネ」という曲があるんですけど、そこでパレットという言葉は使っていて、色彩というテーマがもともと僕は好きなんです。この「パレット」で歌われているのは、色がない透明な世界、色を失ってしまった世界というイメージなんです。それが徐々に主人公の感情の色に染まっていく。その時の感情で色づいていく世界というのが、自分の中にイメージとしてあって、それを端的に表現するとパレットかなと思いました。画家の方にとってパレットは、その人特有のもでもあって、自分の見方でしか色付けることが出来ない感情がパレットなんだ、というメッセージを込めています。

――『in bloom』シリーズのテーマにある「季節のうつろい」「世界の終わりのその先」、にも通じる感覚がありますね。

 自分がどういう眼差しで、その先を見ていくのかというのはあります。この曲は終末観がありますけど、『in bloom』シリーズの先に繋がっていく曲なんじゃないかなと思います。

――さて、シンガーデビューから3年が経ちましたが、ご自身の歌はどのように変化したとご自身では感じていますか。

 2ndシングルの「ヒカリ断ツ雨/夜明けはまだ」ぐらいまで、しっかりと歌わなければという意識が強かったんです。3rdシングルの「デート」から自分で曲を書くようになりまして、良い意味でラフといいますか、曲のメッセージを伝えきるだけではない歌い方を、意図的にチョイスするようになったのかなと思います。

 「Summerholic!」でも、<しゃーない さらばホリデイ>のところはキャラソンチックな歌い方になっていたりするんですけど、歌手活動を始めた頃は声優とアーティストの棲み分けをきっちりしていたと思うんです。でも、最近はどちらも自分の表現の一つだと思えることが出来てきたので、分けているという感覚はなくなってきていて、曲ごとにハマるものをチョイスしていく柔軟さが、この3年で出てきたのかなと思います。

――レコーディングで欠かせないものはありますか。

 のど飴です。ペットボトルの水に喉飴を溶かして飲んでいて、給水用のドリンクと分けています。これは仕事をしていくなかで、自然とそうなっていったんです。例えばのど飴を舐めていて、急にレコーディングになったときに、そののど飴は捨てるか、どこかに置いておかなければいけないじゃないですか。それが嫌だったので、溶かして飲むようになったんです。あと服装は、体を締め付けすぎないもの、というのは心掛けています。

――レコーディングとライブとでは、臨む姿勢は変わりますか。

 変わります。レコーディングはこれまで存在していないものを生み出す作業なので、マイクにどういう状態で声が乗るのか、それはライブとも芝居をしている時とも違うんです。これは今の僕の課題の一つなんですけど、どういう方法を選択すれば一番良い音が録れるのか、というのを模索していて。最近、機材の勉強も始めたのでエンジニアさんとかにマイクのことを聞いたりしています。

――色々と試行錯誤されているんですね。最後にファンの方へメッセージをお願いします。

 世界が大変な状況の中、『in bloom』シリーズとして3曲リリースさせていただけて幸せです。世界の終わりをずっと歌ってきた自分が、その先をどういう形で描いていけるのか、まだ自分自身も未知数ではあるのですが、すでに僕はその先もいくつかプランを考えていますので、それを皆さんの元へお届けできるように、日々楽しみながら生活していきたいと思います。自分なりのペースで頑張っていきたいと思いますので、皆さんと一緒に歩んで行かせていただきましたら幸いです。これからも斉藤壮馬をよろしくお願いします!

(おわり)

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