大矢梨華子「格好悪いところも格好良くできるシンガーに」新天地で目指す夢
INTERVIEW

大矢梨華子


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年08月26日

読了時間:約10分

 元ベイビーレイズJAPANの大矢梨華子が8月5日、1stミニアルバム『一恋一会』(読み:いちごいちえ)をリリースした。6年間活動したアイドルユニット・ベイビーレイズJAPANが2018年9月に解散し、約2カ月後にソロシンガーとして新宿ReNYのステージに立った。その後、楽曲作りを開始し、ロックバンドTHEラブ人間のプロデュースのもと『一恋一会』を完成させた。自身が始めて1人で作詞作曲に挑戦した「僕はまだ恋を知らない」や、普段のサポートメンバーでもある梅津拓也(ex.忘れらんねえよ)との共同制作楽曲「僕はまだ大人になれない」、 金田康平との共作の「恋ってなんなんでしょね?」など“アーティスト・大矢梨華子”が詰まった5曲を収録した。インタビューでは、シンガーとして活動するまでの軌跡を振り返りながら『一恋一会』の楽曲に込めた想いを聞いた。【取材=村上順一】

ベビレ以外での自分が想像できなかった

――『一恋一会』というタイトルには、どのような想いが込められていますか。

 ソロとして活動して1年半、一人ひとりの出会いを大切にしてきました。ソロになってからほとんどが初めての方でその出会いを大切していこう、長くしていこう、一期一会の出会いを大切しようと思いました。その1年半の集大成を表すためには、このタイトルがいいなって。恋と言う言葉が入っているけど、5曲に作詞作曲に携わっていく中で、曲を作るときのテーマはラブソングでした。恋愛だけでなく、ファンや家族や友達など、いろんな形のラブソング表現してみたい、その気持ちを込めたいと思いました。

――そうだったんですね。2018年にベイビーレイズJAPANが解散してから、一人でもシンガーとして歌っていきたい、という思いはもともと強かったのでしょうか?

 解散ライブが終わるまでは一切考えていなかったんです。ライブを終えた後に「やっぱり歌いたい!」と思いました。大変なのは分かっているけど、事務所の方に相談したら、同じチームの方が「やってみよう」と、そこからソロシンガーの旅が始まりました。その時に相談していなかったら、普通の大矢梨華子として過ごしていたと思うので、勇気を出してお話して良かったと思いました。

――モデル業をやっていた可能性は?

 それもなかったと思います。おそらく歌手になると決めなかったら、全く違う職業を探しても面白いかなと思っていましたから。グループが解散したときに、お世話になっていた平成ノブシコブシの徳井さんが「ステージのスポットライトは癖になるよ。あとファンの歓声を求めるのはやめられない」とお話ししてくださって。アイドルを卒業した後も、この世界に戻って来る方が多いのは、そのせいもあるみたいなんです。私は活動中必死だったので、その感覚は全然わからなかったんですけど、ベビレの活動がいざ終わって見ると、徳井さんの言ったとおり「あのライトを浴びたい、ファンの皆さんの声を聞きたい」と思いました。

――一人の歌い手として再スタートを切ったわけですが、アイドルをもう一度やろうとは思わなかったんですか。

 ベビレ以外での自分が想像できなかったんです。もともとグループ時代も他のアイドルグループと交流がそんなにあったわけでもなくて、その中で仲が良かったPASSPO☆が同じく解散してしまい、メンバーそれぞれが旅立っていくなかで、自分がもう1回アイドルというわけにはいかなかったんです。あんなにバランスがいいグループはなかなかないし、また新たなグループに入るより、大矢梨華子として活動した方がファンの方も納得してくださるのかなって。

 あと、私自身もどこまでできるのか試したい、という感覚もありました。一人でやることに意味があると思いましたから。ベビレが解散した2カ月後には、よく出演させていただいていた新宿ReNYのステージに一人で立てることになりました。自分で出たいと言ったのに、いざステージに立つと足が震えました。何度も立っているステージ、楽しみの気持ちが勝つライブだったはずのに、一人だとこんなにステージが広いんだ、と緊張することがわかって。

大矢梨華子

大矢梨華子

自分が言いたいことを歌にしたい

――今までとは責任感のベクトルが違いますよね。どのような気持ちでソロ活動は始まりましたか。

 せっかくやるなら自分が言いたいことを歌にしたいと思いました。まず作詞から始めて共作したり、去年夏に「僕はまだ恋を知らない」という曲で初めて1人で作詞作曲にも挑戦しました。グループとソロでは全てが変わってきて、ソロになると周りからは23歳として普通の大人の対応になります。今まで恵まれた環境だったんだなと改めて感じました。

 普段はしっかりとした大人だけど、曲を作る部分では正論しか書けなくなってしまうというのが嫌で、あえてしっかりした大人ではなく、がむしゃら感や葛藤、不安や寂しさを書いていきたいと思いました。シンガーになって1年半、まだまだ新人で大人になりたくないですし、まだなれないかなと。

――作詞・作曲をして大変だったところはどんなところでした?

 作曲をすると言っても、何の知識もないまま始めたんです。弾ける楽器もなかったので、始めるならギターが良いかなと思いました。コードもG、D、C、Emの4つしか弾けなくて、頑張っても2つ足して6つのコードくらいで…。頭の中で「こういう曲を作りたい」とイメージがあっても、それをギターで表現できなくて、壁にぶつかった部分でした。

――コードのバリエーションが少ないと、いろいろと制約が出来てしまいますよね。

 そうなんです。もっとオシャレな響きにしたいのに、それにはどういうコードを押さえれば良いんだろうって。でも共作させていただくと、こういうコードが広がりがあるんだと勉強になりました。あとは適当にギターを鳴らしながら「このコードいいな」と感覚で作ったりしているんですけど、コードの名前がわからないから、バンドメンバーにうまく伝えられなくて困りました。きっと暗号みたいだったので、皆さん大変だったと思います。

――でも実戦でやっているので、成長が早いですよね。

 自信をもってCDを出せるのは、支えてくださる人がいるという、ありがたい環境があるからなんです。もうダメだと心が折れかけたこともあるけど、大きな折れ方はしていないのは不幸中の幸いです。立つ前も、やっている時も、ライブが終わってもプレッシャーに負けて、小さいですけどポキポキ心はいつも折れているんです(笑)。

――その度に立ち上がってきたんですね。さて、1曲目の「僕はまだ恋を知らない」は友人の話から広げたみたいですね。

 大きなテーマは去年夏に作って友達に聞いた話と、全て実体験を盛り込んでいます。1日のなかで起きた5分や数秒のことが曲になっていることもあるんです。その中で私らしさを取り入れています。ギターや、好きなラジオ、夢で会えたら、銀杏BOYZさんなど、私らしい格好悪いが、格好いいになればいいなって。

――同曲のMVにはモデルの江野沢愛美さんが出演されています。デートしているようなビデオですよね。

 イメージは回想シーンなんです。リアルの時間ではなくて、不格好だけど、過去をひきずっている男の子を表現しているんです。その男の子はいつも彼女、“君”のことを思い出すと笑顔で、悲しい顔は思い出せない、というものなんです。私と愛美とは高校の同級生ということもあり、長い付き合いで、いつも笑顔で明るくて、この曲の“君”にぴったりなんじゃないかなと思いました。

――そう思って観ると、走馬灯のような感覚もありますよね。ディレクターとして大矢さんも参加されていますね。

 打ち合わせから、撮影当日も現場にいきました。撮り終わった後の工程も見たかったので。1日撮って、スマホでも撮って、何十時間ある動画をこれを入れて下さいってリクエストしたりしました。良くも悪くもこだわっちゃうんです。改めてこんな風にMVを作っているんだと知りましたし、勉強になりました。自身をもって届けたいと思ったので、最初から最後まで見届けて、友達ならではの表情も妥協せずに収めました。このMVは愛美の可愛さが伝わればいいなと思いながらディレクションしました。

――もしかして、どこかのシーンに大矢さんが出演したりしてますか。

 それが出ていないんですよね。1日撮影についていたので、もしかしたらエキストラぐらい呼ばれるかなと思ったけど、びっくりするぐらい誰も呼んでくれなくてこの日はずっと助手をしていました(笑)。

――「僕はまだ大人になれない」という曲も2曲目に入っていますが、「僕はまだ」シリーズはこれからも続きますか。

 このシリーズはここに入っていないだけでまだまだあるんです。これをどこで終わらせるかは実は悩んでいて…。やりだしたのはいいけど、ファンの方も似たようなタイトルに、「あの曲なんだっけ」と困惑しているんです(笑)。これからも続けようと思っているんですけど、メジャーデビューできた時が、このシリーズのやめ時かなと思っていますけど、今はまだ自由に曲が作れるので、どうなるかはわからないんです。

大矢梨華子

大矢梨華子

格好悪いを格好良いにできたら

――「何億光年」はエモーショナルな1曲です。「また必ず会いましょう」という言葉から、出来た歌詞とのことですが、この言葉はもしかしてベビレと関係ありますか。

 はい。ベビレのラストライブで、ファンの方に 一人ずつお礼のメッセージを届けました。そのときの言葉をそのまま歌詞に入れました。<あなたとわたしを なぞって星座にしよう>という歌詞があるのですが、このあなたと私は両方私で、過去と現在の私を表しています。

――タイトルも「何億光年」とスケール感が大きいですよね。

 この曲はTHE抱きしめるズの篠崎(大河)さんと作りました。篠崎さんが作る世界観が好きで、共作をお願いしました。「何億光年」というタイトルは、曲が完成して最後に篠崎さんが付けてくださいました。一緒にスタジオで作ったんですけど、篠崎さんのエッセンスをいれていただきました。完成してみて、私が歌っていも新しい私が見える、新しいステージにまた連れて行ってくれる曲を作ってくださったなと思います。

――お手紙のようにファンへの想いが入っている歌詞なんですね。

 そうなんです。「何億光年」はまだライブで披露できていないので、早く皆さんに生で聴いていただきたいです。

――「恋ってなんなんでしょね?」の「なんなんでしょね」はもしかして大矢さんの口癖?

 なんでわかるんですか! そうなんです。「恋ってなんなんでしょね」ということを打ち合わせでも言ったりしていて(笑)。それで、これが口癖というお話をしたら、共作していただいた THEラブ人間の金田(康平)さんが「これで行こう」と。曲の中でもコーラスで<なんなんなんなん>と歌っていて、皆さんは<ななななな>と歌っていると思っている人もいるみたいなんですけど、<なんなんなんなん>が正解です(笑)。

――「恋ってなんなんでしょね?」と、アルバムが恋の疑問形で終わるのも面白いなと思いました。

 歌詞も頭から具体的なことを書いていて、<何万回だって出会ってくれるかな>とまで言っているのに、最後に<恋ってなんなんでしょね?>と終わるのが、私の第二章のテーマなのかなと思ったり。

――次章への伏線になっているんですね。出だしの<正直言うとね 全然、顔がタイプじゃないの>という歌詞はパンチがあります(笑)。

 歌詞を書いているときに、思っていることを箇条書きにしてスタジオに持っていって、金田さんに見ていただきました。この曲は女の子目線で、初めて私というフレーズを出したんですけど、大矢梨華子を赤裸々に歌いたいと思い、このタイトルにしたんです。箇条書きに書いてあったのが、顔がタイプではないというフレーズでした。それで金田さんが「これでいこう」って(笑)。マイナスな言葉から入っているんですけど、これがもしかしたら“大矢節”になるのかなと思いました。

――この5曲で精神的な成長がありますね。照れ臭くて私と言えなかったけれど、最後は私と言えていたり。

 そうなんです。初めては歌詞を書くこと、自分の言いたいことを言うのが照れ臭くて、それを歌に乗せるのは少し羞恥心がありました。でも、3曲目の「コールドムーン」で殻が向けた感覚があります。こういう曲も大矢梨華子なので、歌詞としても成長していると思います。

――最初はアップテンポな曲で照れ隠しみたいな。最後に、大矢さんがいま目指すシンガー像は?

 『一恋一会』を改めて皆さんの手元に届く前に聴き直しました。びっくりするぐらい真っすぐで不格好だったんですけど、それも私らしいなと思いました。そこがライブを通して格好良いに変わっていけばいいなって。僕はまだ恋をしらない、これだけ恋ってなんだろう? と全力で言う人も少ないと思うんです。それを伝えられたらアーティストとして成長していけると思います。内面の赤裸々の格好悪いところすらも、最終的にライブで格好良くすることができるシンガーになりたいです。

大矢梨華子

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(おわり)

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