INTERVIEW

三戸なつめ、感傷的な瞬間が「私を成長させる」


三戸なつめ。映画『ロックンロール・ストリップ』では役者としての新境地を見せた。

記者:木村武雄

掲載:20年08月19日

読了時間:約6分

 三戸なつめが、現在公開中の映画『ロックンロール・ストリップ』(木下半太監督)に出演している。作家で俳優の木下半太による同名小説が原作。大阪のストリップ劇場を舞台に、映画監督を夢見る劇団座長が、売れない劇団員たちとともに奇跡のパフォーマンスを繰り広げる物語。三戸は、後藤淳平演じる主人公・木村勇太の妹で、人気ロックバンド「マチルダ」のボーカル・木村朋美役を演じる。愛嬌のある顔立ちで人気の三戸だが、本作では関西弁で巻き舌を使うなどこれまでとは異なる一面を見せている。彼女にとっても特別な作品になりそうだが、自身はどう思っているのか。【取材=木村武雄】

役者・三戸なつめの新境地

 大阪が舞台の本作。出演が決まり「嬉しかった」という三戸は奈良出身。しかしあまりのテンポの速さに驚いたという。「オーディションの時に、監督が勇太役をやって下さってセリフを掛け合ったのですが思ったよりもテンポが早くて。それで練習をしましたが、関西出身のキャストさんが多かったこともあって撮影の時も掛け合いが早くて」。普段はおっとりとした三戸だが「巻き舌の練習もしました」と笑む。

 演じたのは、後藤淳平演じる主人公・木村勇太の妹で、人気ロックバンド「マチルダ」のボーカル・木村朋美役。三戸自身も歌手活動を行っており「自分だからこそ伝えられることがあると思いました」。そんな朋美は、やりたい音楽ができないことを理由にバンドを離れ、地元に帰る。「私はやりたい音楽ができないというわけではありませんが、朋美は勇太にとって芸能界の先輩でもあり兄妹なので、本気で思いを伝えることを意識しました」

 役作りで必ずやっていることがある。それは「セリフの裏側を探る」こと。歌手活動にも重なるという。中田ヤスタカ氏が描く歌詞は三戸を連想させる曲が多い。「私は『なぜ、このワードを使うんだろう』と言葉に引っ掛かるタイプで、曲についてもその言葉の意味を考えます。この作品での勇太に対するセリフも同じで、なぜこういうことを言うんだろうと考えたときに、朋美は“おにい”が好きで、厳しい優しさを持っていると思いました。芸能界の現実を知っていますし、身内だからこそキツく言うんだろうなと」

 それは「クールさ」として役柄に表れた。

 『賭ケグルイ』では黄泉月るな役を好演し、『劇場版ほんとうにあった怖い話2018』(ほんこ怖)の第3話では恐怖におびえる恋人役を熱演した。

 だが、「なかなか火がつかなくて…」と不慣れなたばこを吸うシーンもそうだが、勇太に巻き舌になってキツく叱責する姿はこれまでの役柄としてはあまり見たことがない。愛嬌のある顔立ちが印象的な三戸とは真逆だ。監督自身も「テレビのイメージとは違う」とその演じっぷりに感嘆したそうだ。

 自身も「これまでは私よりも年齢が下の役や、そのキャラクターに寄せたものが多かったので、朋美は演じやすかったです」と振り返る。

 役者としての新境地を見出したとも言えるが、本人は実感がないという。「周りからそう言われることが多くて、確かにこうした役はあまりなかったなと思うぐらいで…でも『三戸なつめ』はこういうこともできる、ということを分かってもらえるような気もします」

 後に、「この作品がターニングポイントだった」と気づくことがある。きっと本作はそれにあたるだろう。

悩んだ時期もあった、「人のため」気持ち切り替え前進

 そんな三戸、改めて朋美への想いを口にした。

 「朋美が置かれていた状況は決して悪くなかったと思います。事務所にもプッシュされていましたし。大好きな歌をやめることをすごく悩んだと思います。でも良い環境をなげうってまで自分のやりたい音楽を貫きたかったんだと思います」

 シンガーソングライターに関わらず、歌手は経験によって歌に深みが増すことがある。きっと朋美もこれを乗り越えた先に良い音楽を作るだろう。映画には描かれていないが、その後の未来が原作には綴られている。原作を読んで撮影に臨んだ三戸もその先の希望を内に秘め演じた。

 「映画には描かれていませんが、原作には朋美のやりたいこと、本質はここなんだと思うシーンがあります。その気持ちを大事に抱えて演じました」

 主人公の勇太は自身の夢を諦めず、そして自分の信念を譲らなかった。朋美もまた、同じ考えを持っていた。三戸にとって譲れないものとは。

 「『自分が自分が』とならないように気を付けています。そう思ったきっかけは、誰かのためにと思っている方が集中できると気づいたからで。20代前半は自分のために頑張ってやってきましたが、だんだん方向が分からなくなってしまって。『私、芸能界にいなくても良いんじゃないか』『なぜ芸能界にいて女優の仕事をやっているんだろう』と悩みました。でも『自分のため』ではなく『誰かのため』と気持ちを切り替えたら気が楽になって集中できるようになったんです」

 そして今は「ファンのため」が一番にあり、前向きに物事に取り組めているという。

 「今は何でも経験したいと思えています。『自分のため』が強く出た時いざやると戸惑ってしまう。でもファンの顔を見るとやっていて良かったと思えますし、ファンの方を笑わせたいとも思えて、それを想像して一生懸命に演じています」

 ファンの顔を想像するが、1年先の「自分」はまったく想像がつかないという。

 「女優活動も始まったばかり。もっと学ぶこともありますし、いまは与えられた役、勝ち取った役に対して誠実にやっていきたいと思っています」

 ファンや視聴者の顔を想像しながら取り組んだ先に見えてくるのは、きっと明るい未来だろう。

三戸なつめ

彼女の根幹「I’ll do my best」

 そして、歌への想いも明かした。過去には「銀杏BOYZが好き」だと語っていたが。

 「音楽は寄り添ってくれるものだと思っています。バスに揺られながら外を見てしんみりして聴くことが多くて、最近は爆弾ジョニーの『イミナシ!』という曲を擦り切れるぐらいリピートしています。感傷的になってウルっとして。そういう感傷的な瞬間がないとレベルアップしないと思っているんです。楽しいだけでは成長しないと思っているんです。自分と向き合ったり、物事を考える時間に音楽を聴いています」

 感情は役者としても、歌手としても表現の養分になる。彼女が16年4月にリリースしたシングルに「I’ll do my best」がある。17年にリリースのアルバム『なつめろ』にも収録されている楽曲だが、三戸が読者モデルとして奈良から上京した当時を彷彿とさせる歌詞が描かれている。彼女自身も過去に、この曲を聴くと当時を思い起こされると話していたが、どこかこの映画に重なる点がある。

 それを指摘され、ハッとした表情を浮かべ、「色々とあるけど、自分なりにベストを尽くそうということも歌っていて、事情は異なるかもしれないですがこの映画に重なるかもしれないですね」

 「I’ll do my best」は自身の転機だったとも過去に語っていた。役者としての新たな境地を見出した本作。偶然にも重なる描かれた内容。何かの暗示にも聞こえる。

 「そう言われてみたらそうかもしれないですね! 気づかなかった! 久々に聴いてみよう!」と笑顔をのぞかせる三戸。

<楽しいことだけじゃ 叶わないこの夢と>
<枕を抱きしめて 今日も眠るのさ>
<Woowow I’ll do my best again.>

 「I’ll do my best」にあるフレーズ。彼女の考えの根幹はここにあるのかもしれない。

(おわり)

『ロックンロール・ストリップ』
8月14日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開

後藤淳平(ジャルジャル)
徳永えり 智順
三戸なつめ 坂口涼太郎 ぎぃ子 町田悠宇
やべきょうすけ/木下ほうか

原作:木下半太「ロックンロール・ストリップ」(小学館文庫刊)
監督・脚本:木下半太
配給:ベストブレーン

https://www.rocknroll-strip.com/

(C)木下半太・小学館/タッチアップエンターテインメント

ヘアメイク:中安優香
スタイリスト:藥澤真澄

ドレス6万4000円/パーミニット(パーミニット perminute.net/)、ピアス6500円/ジェンマ アルス(ジェンマ アルス gemmaalus.com)、シューズ1万3500円/ダイアナ(ダイアナ 銀座本店 03-3573-4005)

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