INTERVIEW

文音、心にいつもあるのは父・長渕剛の音楽「やっぱり元気もらえます」


「いけいけ!バカオンナ~我が道を行け~」が本格的なコメディー初挑戦となった文音。

記者:鴇田 崇

掲載:20年07月30日

読了時間:約8分

 「白鳥麗子でございます!」(講談社)などで知られる鈴木由美子の同名漫画で、講談社「Kiss」誌上で連載された人気原作を実写映画化した『いけいけ!バカオンナ~我が道を行け~』が、7月31日(金)より公開となる。本作は主人公・杉山結子と彼女の女友だちの友情を描いた自伝的作品ではあるが、物語の舞台を原作のバブル時代から現代に置き換え、恋愛をはじめ、仕事、友情など山積みの問題とともに日常を生きねばならない現代アラサー女子たちのリアルを描いた物語が展開していく。涙と笑い、感動と共感のエピソードが満載で、あるあるとうなずく人もいるはずだ。

 その主人公でアラサー女子・杉山結子を、映画での本格的なコメディー初挑戦となった女優・文音が熱演している。結子は、外ではイケイケ女を気取っているが、私生活では地味で質素な生活を送る“超”のつく見栄っ張り女子だが、文音が命を与えることでより人間的なキャラクターとしてスクリーンに登場する。「女同士の友情って生きる上ですごく重要だと思うんです。だから生きていく道が違っても自分からその友情を保つ努力もしないといけないと思います」と語る文音が、本作で女性に届けたいメッセージとは? そして彼女の心の中に常にある父・長渕剛の名曲とは? さまざまな話を聞いた【取材・撮影=鴇田崇】

「いけいけ!バカオンナ~我が道を行け~」で杉山結子を演じた文音(C)鈴木由美子・講談社/ネスト

役に没頭することは「わたし自身を探す旅」

――タイトルがなかなか強烈ではありますが、その実はパワフルな女性応援ムービーでもありますよね。

 女の子あるあるなので、とにかく女の子であればわかるはずって思います(笑)。ストーリー、セリフ、すべてにおいて絶対共感できるので、それが誇張と言うか、デフォルメされて映画になっている感じなんですよね。

――あるあるで言うと、お気に入りのシーンはどこですか?

 冒頭にベッドにドーン! となるシーンがあるじゃないですか。あれは絶対みんなそうだと思うんです(笑)。家の中で結子はジャージを“イン”していますが、わたしも寝る時そうなんですよね。お腹が冷えるので。だから共感だらけですよね。そういうシーンを探すことも楽しいと思います。

――あるあるだけでなく、同性・同世代へのメッセージもありました。

 自分が、自分自身でいられる友だちというのものは、本当に少ないと思うんですよね。男性の場合はわからないですが、女の子には映画で描いているような表と裏の顔があって、裏を見せられる友だちは本当に貴重な存在って、わたしは思っています。そういう友だちがもしもいたら、ぜひ離さないで大切にしてほしいんです。女同士の友情って生きる上ですごく重要だと思うんです。だから生きていく道が違っても自分からその友情を保つ努力もしないといけないと思います。

――気の置けない友人という存在ですよね。

 映画の中にすごくいいセリフがあって、幸司君という男の子が言うんです。「一生親友でいるっていうことは、何かあった時に支えてあげられる存在なんじゃないの?」って。恋愛の良し悪しを指摘するのではなく、何かあった時、失敗した時に、ただそこにいてあげることが本当の友だちっていう意味なんですけど、すっごくいいセリフだなと思いました。そういう友だちがいたら絶対放しちゃダメなんです。

――女優業の話ですが、こういうメッセージを自分自身で伝えたいために、この仕事を始めたのでしょうか?

 メッセージを伝えるために始めたわけではないです。作品ひとつ残すということは、わたし自身がその作品に込められたメッセージに心を打たれているからです。常に良い作品と出会い、自分の心が打たれ、役に没頭することは、わたし自身を探す旅みたいなものなんですよね。結果、わたしが心を打たれたように、その作品をご覧になられた方々が同じように心を打たれる。そんな女優になりたいです。

――目指す最初のきっかけは何だったのでしょうか?

 東映撮影所の中にあった演劇のワークショップに通っていたのですが、そこで初めてお芝居をした時に役柄に入り込み、表現をするということを教わりました。その時、自分ではないのにブワーッと涙が出てきた瞬間に、「え?芝居って何?」って思ったんです。自分じゃない感情がそこで生まれた時、めちゃくちゃ面白いなって。自分じゃない人間になれるのかって、それがただ楽しかったんです。それが最初でした。だから自分が何かメッセージを伝えたいという想いで始めたわけではなくて、他人になれることが面白いという感じだったので、そこまで考えていなかったですね。

――その感情を演技でコントロールして、さまざまなメッセージを発信できますよね。

 感情を自由にコントロールできるレベルまで行ければいいのですが、それはなかなか難しい作業ですね。ただ、それをコントロールしようとすることは、ひとつの面白さではあります。できなくてもそれをし続けなくてはいけない職業だと思うので、それは俳優業の面白いところだとは思いますね。

――正解が見えにくいので、難しい作業ではありますよね。

 でも、役柄には寄り添っていきたいし、常にその演じる役柄の味方ではいたいと思っているんです。そこの感情に自分を合わせていくというか、重ね合わせていくという作業は、めちゃくちゃ大変で毎回毎回が挑戦ですが、でもそれがすごく楽しいんです。

文音

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元気もらえる「明日へ向かって」

――音楽の話なのですが、たとえば仕事の時は必ずこれを聴く! ような勝負曲みたいなものはあったりしますか?

 勝負曲…は持ち合わせていないです。ただ、心にいつもある音楽という意味では、父親の曲になりますね。いつも一番元気をもらえる曲が「明日へ向かって」という曲なのですが、やっぱり元気もらえます。友だちの重要性を歌っている曲で、“俺にはかけがいのない いかしたNice My Friends!”という歌詞があるのですが、明日へ向かって歩いて行こうぜ!っていうシンプルでパワフルなメッセージなので、聴くと元気が出ますよね。

――本当にそうですよね。エネルギーをもらえるような楽曲です。

 父の曲は素晴らしい曲がたくさんあるので、どれも選びきれない魅力があると思いますが、わたしの中での一番は「明日へ向かって」という曲なんです。男の人と女の人で好きになる曲のタイプは違うかも知れませんね。

――長渕さんの選曲はないだろうと勝手に思っていたので、意外でした。

 そんなことないですよ(笑)。ちょっと元気がないなという時に聴くと、ああ頑張らないとなって、明日へ向かわないとって思いますよ。原点みたいなところに父親の曲があるから、勝負曲みたいなものがわたしにはないのかも知れませんね。とはいえ、B'zさん、Dragon Ashさんも好きだし、青春時代に聴いていた音楽は父の曲以外にもたくさんありますよ。

――それこそ「いけいけ!バカオンナ」が連載されていた時代ですよね。

 そうですね。好きなんですよ、あの時代、90年代が。ザ・ブルーハーツも好きだし、映画もあの時代の作品がすごく好きで、90年代は音楽も映画もすごくいい作品がたくさんあった時代のような気がしています。

 それこそ先日、父がコラボしていましたが、AIさんも大好きでよく聴いていました。本当に大好きでよく聴いていたので、今回父とAIさんがコラボしたのは、本当にうれしかったです。

――父親が偉大なミュージシャンということに、いつ気づいたのですか?

 それはなかったんです。わたしには生まれた時から父親が長渕剛なので、それがもう当たり前の生活なんです。確かに、それはよく聞かれる質問なんですよね。お父さんがビッグだということに、いつ気づいたのかって。答えは「ない」なんです。でも、詞曲を生み出す苦悩をわたしはずっと見てきました。生まれた時からステージを観ているし、それが当たり前なんですよね。子どもの頃からクリエイトすることの懸命さを見て育ったことは少なからず今の自分の仕事に生かされていると感じます。

――今から思うと、ご自身の表現にご両親の影響が出ているなど思うことはありますか?

 作品は観ていたので、自覚するしないに関係ないレベルで影響はあったのかも知れないですね。ドラマでは「とんぼ」、映画では『オルゴール』などを観ていました。自分がプロになってからは最近は観ていないですが、最近再放送で『男はつらいよ 幸福の青い鳥』を観ました。ふたりで出ていて、ふたりとも若かったです(笑)。芝居やセリフ回しが今と全然違う文化というか、特にうちの父親は独特な芝居をするので面白く観ました。あの年代だと個性豊かな芝居もあったので興味深いですよ。

――さて、音楽がそうなように、この映画も働く女性たちの後押しをするような存在になればいいですよね。

 本当にそう思いますね。この映画に出てくるガールズたちはみんなパワフルで、主題歌をAISHAさんという方が手がけているのですが、彼女の曲もパワフルでかわいい曲が多くて、元気が出ますよ。彼女の性格や彼女の声も独特のパッションがあるので、すごいアーティストが登場したと思いました。彼女の曲は今回の映画にすごく合っていましたよね。

――今、この主演作が世に出ていくことに何か思うことはありますか?

 少なからず共感するシーンが、女の子であればひとつは必ずあるはずなので、そこは楽しみにしていてほしいです。今こういうコロナの状況で、わたしも自粛中にいろいろなことを考えました。自分に何ができるだろうとか、こういう時にコメディーの映画を上映していいのだろうかとか、本当に考えたんですよ。

 でも、コロナになってテレビでお笑いがたくさんやっていたように、笑いって必要なんだなってすごく感じました。たくさん大変な思いをしている人は多いと思いますが、こうして笑うと嫌なこととか一瞬だけでも忘れられると思う。だから、そういう空間にしてもらいたいなって思います。

――エンターテインメントでは確かに、お腹はいっぱいにはならないですが、気力や活力、それこそ明日に向けての原動力にはなりますよね。

 本当にそう願います。女子が持つ独特のエネルギーってあって、そのエネルギーが炸裂するから人はそこに感動と笑いが生まれるんだと思うんです。だから映画館に行ったら、マスクはしたまま。大声で笑ってほしいです。恥ずかしがらなくていいですし、そういう空間になってほしい。こんな時だからこそ、笑おうよって。そうなってくれたら、こんなにうれしいことはないです。

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