スタ☆レビ根本要、配信ライブに警鐘!? コロナ禍ライブ事情に何思う
INTERVIEW

根本要


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年07月24日

読了時間:約10分

 40周年イヤーに突入したスターダスト☆レビューが7月22日、通算42枚目となるアルバム『年中模索』をリリース。アルバムは昨年リリースされた「うしみつジャンボリー」、2020年1月にリリースされた「ちょうどいい幸せ」、6月にアルバムリリースに先駆け配信された「偶然の再会」など今のスタ☆レビを感じられる全12曲を収録。MusicVoiceではアルバムについてのインタビューを実施。前編後編の2部構成で届ける。前編はコロナ禍により窮地に立たされている音楽、エンタメ業界について、配信ライブに警鐘を鳴らしたいと唱える根本要(Vo.Gt)に今の思いを聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

ミュージシャンがそこに酔い始めると危ない

根本要

――自粛という言葉が出た時、どんな気持ちになりましたか。

 自粛がまるで強制のように語られるようになり、何をやっていいのか何をしちゃいけないのか、特にライブハウスが叩かれ出した時には、こりゃエンタメ業界は大変な状況になるぞ、と思いましたね。僕らはレコーディングの最中で当面のライブはなかったけど。“自粛警察”と呼ばれるものまで出てきて、居心地の悪さは感じました。

――自粛期間中にはどんなことをされていたんですか。

 ずっとイベンターの方たちに電話を掛けていたんです。イベンターというのは各地域ごとにアーティスト達のライブを取り仕切ってくれる会社なんだけど。何を話していたかというと、僕らエンターテインメント業界は夢や希望を売っているんだから「何月までのライブは中止です」ではなく「何月からはライブを再開します!」という宣言をできないかってことなんです。でも、当時はまだ野球もサッカーも開催出来ていない状況だったので、みんな「その宣言はまだ難しい…」と。なら配信とかどうなんだ、とかね。

――試行錯誤されていて。

 ACPC(コンサートプロモーターズ協会)という全国のコンサートを束ねている団体があって、その理事と呼ばれる人たちと年齢も近くて仲が良いので色々と提案させてもらいました。余談なんだけど、僕は電話しながら歩く癖があるみたいで、自宅にいたのにスマホの歩数計を見たら5000歩も歩いていた(笑)。

――普通に外出しているとき並みに歩かれてますね(笑)。さて、その中でどんな考えが生まれたのでしょうか。

 多くの団体が国に支援を求める中、僕はまず音楽業界がひとつに纏まるべきだと思いました。そして、ミュージシャンはまだ多少の余力はあるけど、PAや照明などのライブスタッフは全く仕事がない。まずはそこから支援すべきだなと。

 もちろん国の支援は大事だけど、やっぱりミュージシャンやアーティスト自らが動かないとダメだと思ったんです。そういう団体をミュージシャンが作って、さらに直接ファンにも働きかける、その方が浸透度も高くなりますよね。企業色や事務所の力関係で何かが動くより、やっぱりミュージシャン自身がファンの人達に訴えて、音楽業界全体を支援できるような団体が必要なんです。

――その活動のひとつが杉山清貴さん、KANさん、馬場俊英さんと一緒に6月に行われた配信ライブ『スタッフ応援ライブHELP! 4人はアイテル』だったんですね。スタッフ支援という愛のある企画で感銘を受けました。

 まだ、それぐらいしか出来ていないんだけどね。僕らミュージシャンにとって一番近くにいるスタッフは照明やPAなんです。彼らは一本一本の仕事でお金をもらっていて、僕らがステージに立たない限り仕事が出来ないんです。

――ちなみに根本さんは配信ライブというものに対して、どのように考えていますか。

 怒られるかもしれないけど、僕は配信ライブについて早めに警鐘を鳴らしておきたいと思っています。配信ライブのチケットはおそらく平均3000円ぐらいで、ライブチケットに比べたら割安だと思うんだけど、やっぱり高いですよ。もちろん会場代や配信のシステム費用は必要ですけど、通常のライブと比べると警備もいらないし、最終的には視聴者側のシステムに委ねているので、自己責任になってしまう部分もあるんです。

 僕らは生でやる時は、座席の近い遠いはあるけど、そこにいる2000人のお客さんに同じように楽しんでもらえるように努力します。でも、配信だと意識するのはカメラだけ。皆さんもテレビで観るのとそんなに変わらないですよね。

 だけど、拍手が聴こえない(笑)。これは大問題です。やっぱり配信にはライブで感じる充実感が少ないんです。なのに収益はそこそこ見込める。ソールドアウトもないし、全国どこからでも観られる。これは僕の持論なんですけど、アーティストはちょっと貧乏なくらいがいいんです(笑)。身の丈にあった収益の方が次も頑張れるし、身の丈にあった活動の方が音楽を楽しくやれるんです。例えば、1年に一度のライブで1億円収益があるからといっても、僕なら「1回100万円の収益で100回ライブをやらせて欲しい」と提案するでしょう。それこそがライブバンドとして活動している僕らの気概です。

――ファン心理としては多くライブをやっていただける方が嬉しいです。

 杉山君たちとやった『スタッフ応援ライブHELP! 4人はアイテル』は、ありがたいことに5000人ぐらいの方が観てくれて、1000万円くらい収益があったんですけど、僕らの規模だと一回のライブで1000万も入ってくるなんてなかなかないです。ミュージシャンがそこに酔い始めると危ないなと思っていて…。僕は今こそミュージシャンが「配信ライブじゃ物足りない!」って声をあげるべきだと思うし、皆さんもチケット代を見て「これ、高すぎるんじゃない?」と監視して欲しいんですよね。僕としては配信も含めつつ、ミュージシャンにとってのライブの重要性を今は声高に伝えたいです。

スタ☆レビの功績とは

根本要

――テレビもそうなんですけど、配信ライブの難点はそれぞれのシステムに依存してしまう、音もリスナーのシステムに委ねられるというのは、ミュージシャン側としてもネックなのでは、と思いました。やっぱり皆さん音にも拘っていると思うので。

 でもお客さんの音へのこだわりは少ないでしょうね。まずは観ることが中心でスマホのスピーカーで聴いている人も十分な人もいるでしょうね。正直配信でもある程度の音で聴いて欲しい気持ちはあるけど、まぁ今は聴き手に任せるしかないんでしょうね。それでも生の音の優位性というのも実はあって、昔、放送大学で音響について話している番組があって観てたんだけど、人はある程度大きな音を浴びると身体を活性化させてくれる物質が出るんですって。それはヘッドフォンでは出ないみたいで、ライブには人を高揚させるものがあるんだ、と番組を観て改めて思いました。

――科学的にも立証されているんですね。

 そうみたいですね。僕に言わせればライブというのはお客さんと作っていくもの。僕はいつもお客さんと会話しながらステージを作っています。さらに言えば、今そこにいるお客さんは今しか集まらないんです。仮に同じ人が集まったとしても、同じ僕らが心情でやるライブなんてなくて、ライブに一回たりとも同じものはないんです。だから、今の瞬間とか気持ちを大事に伝えようとするんでしょうね。配信ライブはそれぞれが家で、部屋で、或いはお酒飲みながらとか色んな楽しみ方を出来るから、これからもどんどん広がっていくと思うんだけど、僕らにとってライブを配信するってどういうことなのかをちゃんと理解していかないと、音楽自体がどうでもいい状態になっていってしまう気がしています。

――その中で8月30日に日比谷野外大音楽堂でライブ『こんなご時世、バラードでござーる』が行われます。

 スタレビが考えるのは、やっぱりお客さんあってのライブ。今回はガイドラインに従って半分のお客さんでやる予定です。さすがに半分といえど、みんなでわーっとやるのはまだ早いかなと、一応バラード中心で聴かせたいなと思っています。もちろんバラード以外の曲もやるつもりですが、それでも久しぶりのライブ、みんなと楽しみたいからダジャレも交えて『こんなご時世、バラードでござーる』にしたんです。ご存知NECの「バザールでござーる」のパロディだけど、著作権とかもスタッフに確認してもらって使わせてもらってます。感謝です。

――皆さんの反応が楽しみですね。

 お客さんの前でやるのは2月以来なので、本当に楽しみなんですけど。ただ心配なのはコロナの影響ですね。まだ普通にライブが出来ない中、ガイドラインに従ってとはいえ、バッシングもあるはずです。僕はすごく打たれ弱いんです。ライブが終わった後とかたまにエゴサーチするんだけど、どう伝わったかが不安でしょうがないんです。観てくれた人とかの批判的な意見はほとんどないんだけど、全然関係ないことでのバッシングとか見つけるとものすごくシュンとします(笑)。とはいっても、僕らの音楽を楽しんでくれてる人にちゃんと届いているのがわかれば、それで満足は出来ますけどね。

――打たれ弱いとわかっているなかで、エゴサーチできる根本さんはやっぱりすごいなと思います。でも、有名になるとそれは避けられませんよね?

 この前、ある取材で「なぜ売れたくないのか」と聞かれたんだけど、改めて”売れる”ということを考えてみて、自分なりに答えが見えたんです。それは、音楽にとって一定以上の知名度が出てくると、実は音楽以外のものも取り上げられるんですね。例えばルックスやポリシー、私生活が上積みされていくことで更に知名度が上がり、時に一番大事な音楽が二の次になっちゃったりする。それは僕には必要がないなと思ったんです。

 勝手な意見だけど、たとえば自分から好みの音楽を探したり、売れてる売れてない関係なく好きな音楽を突き詰めたり聴いたりする純粋な音楽ファンというのはそんなに多くないような気がするんです。だからバブルの時代、90年代にポンポンとミリオンセールスが出てたけど、僕はそれをあまり羨ましいとは思わなかった。僕たちは100万枚なんて超えたことないけど、もしそんなことが起こったらそれは危険水域になると感じています。売れている人を揶揄するつもりはないけど、とにかく売れ方というのはコントロール出来ないんです。

――でも、スタ☆レビの曲は皆さん知っていて記憶に残っています。

 ありがたいことに、純粋な音楽ファンの中にとどまっていますからね(笑)。スタ☆レビの誇れる功績だと思っています。売れてなかった曲達を30年掛けてしつこく聴いてもらった甲斐があります(笑)。そういう曲がヒット曲であるかの如く、語られているとしたら、それこそが僕らの凄さかもしれないですね。
 実は30周年の頃から何となく、僕らを取り上げてくれるところが多くなったんです。正直、”継続は力なり”という言葉に何の意味も感じてなかったけど、気がついたら自分たちもその恩恵に預かってた。まぁ力が付いてるかは疑問ですが(笑)。

――40年間バンドをやりつづけるというのは、簡単なことではないですよね。

 僕はそんなに大変なことだと思ってはいないんです。だってメンバーが「解散しよう」と言わないだけですから。おそらく解散をしてしまったバンドは、やめるという選択肢を乗り越える術がなかっただけだと思います。僕らだって悔しい思いをするときはありますけど、それを乗り越える頭は持っていますし、強い思いがあるから続けられるんだと思います。その強い思いとは”スタレビが好き”とか”スタレビでまだ面白い音が作れる”いう単純な思いです。

 ただ一番危ないのは、メンバーが抜けるという状態です。一人が抜けて解散する時もあれば、続く場合もあるんだけど、僕らは後者でした。94年にメンバーが辞めたときに、昔から「メンバーチェンジをするときは解散するときです」と話していて、これでウチも終わったなぁと思いましたから。

――でも、解散はせずに今も精力的に活動されています。

 『楽団』というアルバムのレコーディング中だったんだけど、初代キーボードの三谷くんがスタジオから神妙な面持ちで出てきて、「バンドを抜けたい」という言葉を聞いたときは冗談かと思ったんです。その後何日もみんなで話し合ったけど彼の思いは変わらず、結局スタッフやメンバーの意思でバンドは続けていくことになったんだけど。バンドというのは複数の人の意思によって動いていくものだけど、どこかで「あれ、俺が思っているものとは違うな」って思えば意見の対立や亀裂も当たり前のように出てくるものだからね

――40年続けられた要因はなんだったのでしょうか。

 裏腹なことを言うけど「バンドだから」(笑)。まずは経済的なところで、バンドだからどこに行っても演奏出来たし仕事にもなった。特にデビューの頃ね、全然仕事がない時にとりあえずどこかのライブハウスで演奏させてもらった。これがもしソロだったらバックバンドをつけなきゃいけないし、リハもやらなきゃライブも出来ない。それだけでずいぶん経費もかかる。僕らは自分たちでライブハウスに行って、演奏して帰ってくればいいだけのこと。

 当時はレコードだけど、本当に売れなかった。でもありがたいことに、やればやるほどライブに来るお客さんは増えてきたんだ。だから自信も持てたし、解散する理由もなくやれていたと思う。それは40年経っても変わらない。まだまだ新しいものを作り出していこうという気持ちがあるから、これからもやっていけると感じています。

(7月25日正午公開予定の後編に続く)

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