「神はサイコロを振らない」が17日に、メジャーデビュー作でもあるデジタルシングル「泡沫花火」(うたかたはなび)をリリースした。今はもう会えない恋人を想うバラード「夜永唄」でも見られたように、作詞作曲を手掛けるボーカル・柳田周作の描写力が発揮されている。何度も聴くことで変わる物語。分析すると映画のような作りが見えてくる。【木村武雄】

 歌声を表現するとき、様々な比喩が用いられる。柳田周作の歌声には「風」が合う。海辺の街なら潮の匂いを運んでくるように、風は様々な香りを運ぶ。時には冷たさや温かさも伝える。柳田の歌声はそうした「風」の役割を担っているようだ。写実的な歌詞で表現される物語、主人公の心情。それを肌や嗅覚に伝える「風」のような歌声。それは「泡沫花火」にもみられる。

 叶うのか叶わないのか、儚く切ない泡沫の恋を描いたバラード「泡沫花火」。それは、「生温かい風」という歌詞で始まる。

託した思いとは

 「5年が経ちました。このバンドが始まる前、僕はただただ音楽が好きなギター少年でした。それがいつの間にか、マイクを前に歌っていて、気が付けばメンバーがいて。時に笑いながら、時に涙しながらぶつかったりして。不安定な時がないと言えば嘘になる。何度も音楽が嫌いになりそうになったこともあった。でもメンバーと肩を組み、前を進んできたから、なんとか今日この日までバンドを続けて来られています」

 先日開催された無観客配信ライブの終盤。そう語ると「新曲をやって終わりたい」と告げ、歌い始めた。「泡沫花火」。ロック色の強いアッパーな曲もあるが、スローバラードを選んだ。言葉を大切にする彼ららしい選曲だ。

 新型コロナウイルス禍で生活様式は様変わりした。そうしたなかリモートで楽曲制作を進めた。この曲に何を“投影”させたのか。

 ピアノ、そしてストリングスのイントロは「夜永唄」でも見られたが、マイナー調だった「夜永唄」に対し、同じマイナーでも明るめにした「泡沫花火」。同じバラードでも「悲しみ」はない。

 過去と今、未来を行き来する「夜永唄」ではその境目を逆再生音が担った。「泡沫花火」はどうか。シンプルなサウンドは変わらないが、ピアノとストリングスの後ろで鳴るブレイクビーツのSEが、今にも弾けてしまいそうな泡、繊細な心を表現している。

 また、「貴方」を二人称で使用していることや、<煙草の煙が鼻を擽るたび/幼い私を少し背伸びさせる>という表現から、主人公がまだ幼さが残る女性であることをうかがわせる。美しい純朴な心、青春を「泡沫花火」という表現に託したようにも感じる。

「泡沫花火」(うたかたはなび)

展開が変わるC、D、Eメロ

 曲の構成は、Aメロ、Aメロ、Cメロ(サビ)、Aメロ、Bメロ、Cメロ(サビ)、Dメロ、Eメロ、Cメロ(サビ)。

 特徴的なのは、Bメロが2番のみ、Cメロが1番ではピアノ伴奏、2番と最後ではバンドサウンドになっている。そして、場面展開的な役割を果たすDメロに加え、Eメロも存在しているという点だ。柳田は楽曲を一つの「映画」として捉えているように感じられる。

 曲全体を通して聴くと、主人公である女性が、届きそうで届かない男性への淡い恋模様を描いていると捉えられるが、Cメロに意識するとそれが変わってくる。曲が進行するにつれて2人の距離がぐっと近づいているのだ。特に結びのCメロは、それまで主人公目線で描かれていたものが、第三者目線となる。

 美しい歌詞で彩られる情景は1番のピアノ伴奏で描かれていく。やがてバンドサウンドが加わり、高鳴る思いを表現するように主人公の感情が露になっていく。

 それらを起承転結で置き換えると、描写と感情を表現するAメロとBメロ、そしてDメロが「起」「承」にあたり、物語が変わるEメロが「転」、見せ場となるCメロが「結」にあたる。ただ、そのなかでも更に細分化されていて、特に注目したいのが終盤のDメロ、Eメロ、Cメロという流れ。歌詞はこうだ。

<Dメロ>
溶けない魔法の氷が
纏わりついて動き出せないよ
あと一歩さえ踏み出せたなら

<Eメロ>
夏の終わり藍色に染まり
止まないひぐらしに紛れて
声を枯らし名前を呼んでも
貴方は気づかないのでしょう

<Cメロ>
花火が打ち上がるまで
二人寂しさ埋めるように求め合い
実らない果実の種が
心の隅っこで芽生えてる

 それまでピアノとシーケンスというシンプルなサウンド構成だったものが、2番のCメロからバンドサウンドが加わり華やかになる。そして、それがDメロで最高潮に達する。一歩踏み出したい、でも踏み出せない、そんなもどかしい感情の高鳴りを表現している。

 Eメロでは一転、ピアノとストリングに変わり、歌詞からはあきらめにも近い心情がのぞく。静かな音色と歌声が相まって儚く感じる。その流れからのCメロは再びバンドサウンドに。描かれる歌詞は、叶わない恋のように見える。…が、実はそうではない。

 先ほどのCメロだけに注目すると、捉え方が変わる。鍵は、Cメロの2行目だ。

 1番のCメロは<少し離れたとこで見つめていたい>
 結びのCメロは<二人寂しさ埋めるように求め合い>

 「二人」という表現に変わっている。男性の方も恋心を抱いているのではないか、とも捉れる。そして、<実らない果実の種が><心の隅っこで芽生えてる>という言葉が、互いに恋を寄せるも気づかない、という含みになっている。しかもバンドサウンド。希望がのぞく。この楽曲にはそんなマジックが存在する。

まるで映画

 儚いが、しかし美しくもある乙女心を繊細に描き切っている。しかもそれを片側だけの表現に終わらないところも彼の歌詞の特徴だ。柳田はその情景描写を歌、サウンドでうまく使い表現し、写実的な歌詞で脳内に投影させている。

 柳田はこの曲では「叶えられない恋もまた美しい」と歌っているかのようだ。10代なら10代の、20代なら20代にしかできない恋。繊細な心を「泡」に見立てているようにも思える。そして、何度も読み返すことで物語は変わっていく。それは聴く人の状態にも左右される。そして、結びのCメロは、楽曲の登場人物の未来をリスナーに委ねている。

 彼らの楽曲はまるで映画のようだ。映像なくして映像を浮かばせるのは歌詞、楽曲、歌、音に力があってこそ。バンドの力量が試されるバラードを、メジャーデビューの船出に当てていることからも、彼らの楽曲への自信、信頼がのぞく。そして、それを証明させている。

(おわり)

◎…2020年7月17日(金)配信リリース
Digital Single『泡沫花火(読み:うたかたはなび)』
https://umj.lnk.to/kamisai_utakataPR

ほか情報

「夜永唄」 Official Lyric Video

「夜永唄」 THE HOME TAKE

メジャー1stデジタルシングル 「泡沫花火」 Official Lyric Video

◎…神サイ「泡沫花火」配信記念。「限定コメント動画」が貰えるLINE トーク&プロフィールBGMキャンペーン開催中。詳細はこちら
https://www.universal-music.co.jp/kamisai/news/2020-07-17-2/

◎…Streaming Live「理 -kotowari-」の見逃し配信が、新体感ライブ CONNECTで7月31日21時からスタート
https://bit.ly/2CkDizi

プロフィール

福岡発、4人組ロックバンド。
Vocal柳田周作、Guitar吉田喜一 、Bass桐木岳貢、Drums黒川亮介
全作詞作曲を手掛けるリーダー・柳田周作は、宮崎県で生まれ、祖母から買い与えられたアコースティック・ギターを手に、5歳で初めての曲をつくったという、早熟の天才肌。
弾き語りのネット配信に没頭したソロ期を経て、バンド活動に興味を抱くと、進学した福岡の大学で出会った吉田喜一、 桐木岳貢、黒川亮介に声を掛け、
2015 年に「神はサイコロを振らない」を結成。以来、ライブシーンのど真ん中で経験値を積み上げてきた。
2019年にMini Album 『ラムダに対する見解』 2020年2月にMini Album『理』をインディーズリリース。
2020年7月17日にメジャー第一弾デジタルシングル『泡沫花火』をリリース。

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