INTERVIEW

本仮屋ユイカ、憧れの芸能界に22年 自身と重ねた役柄 そして音楽の存在


連続ドラマ『マイラブ・マイベイカー』で主演を務める本仮屋ユイカ。音楽は、自身を解き放してくれる存在だという。

記者:木村武雄

掲載:20年07月15日

読了時間:約8分

 女優・本仮屋ユイカ(32)が、連続ドラマ『マイラブ・マイベイカー』(7月10日から順次配信・放送開始)で主演を務める。らくだ著コミック『マイ ベイカー』が原作。明るくて頑張り屋のパン屋の店長役で、新人アルバイト(飯島寛騎)との不器用な恋愛模様を描く。パン屋に憧れてその夢を叶えた主人公に自身を重ねた。憧れの芸能界に22年。ヒロインを演じたNHK連続テレビ小説『ファイト』のテーマソングが流れれば、芝居に必死に食らいついた当時の青春が蘇る。本仮屋にとって音楽とは…。【取材・撮影=木村武雄】

解き放つ音楽、パン作り練習で役柄に近づいた

 「自分を解放してくれる存在です」

 10歳で芸能界入り。TBS系ドラマ『3年B組金八先生』への出演や、NHK連続テレビ小説『ファイト』では主演を務めた。ドラマで使用された主題歌やテーマソングが流れると「必死だった当時に帰れます」。旋律は青春時代の香りを運ぶ。

 自身を型にはめがちで、それを解いてくれるのは音楽の力でもあると語る。

 一方『マイラブ・マイベイカー』では、感情を解き放つ場面もあった。

 「今まで芯の強いキャラクターを演じることが多かったですが、自分のこだわりに対して感情を露わにするというのは初めてでした。職人ならではの物づくりに取り組む真剣さを演じていて楽しかったです」

 新たな一面がのぞく。

 演じるのは、先代から受け継いだパン屋を切り盛りする店長・小岩美々子。

 「彼女は、憧れていたパン屋で働くことを叶え、私も憧れて芸能界に入り、今もこうしてお仕事が出来ています。彼女にとってのパン作りと、私にとっての表現はきっと一緒なんだろうと思いました」

 本仮屋自身、大学在学中に知人の母にパン作りを教わったことはあるが、パン職人を演じることは「思ってもいませんでした」。役作りのため、クランクイン前から専門家指導の下でパン作りを練習。撮影期間中も休憩時間を利用して励んだ。「それでも全然できなくて…」とはにかむが、「難しく大変でしたが、練習することで美々子に近づくことができたと思います」

 美々子はパンに夢中になるあまり周りが見えなくなることもある。それも彼女の魅力だと語る。「パンを愛し、パンを愛してくれる人をすごく愛している。すごく純粋ですし、真っすぐで熱い。だからこそ人が見て分かるようなところも分からないところがあります」

 それを象徴するシーンがある。バイトの北が良かれと思ってパンにアレンジを加えるが、美々子は激昂する。「彼女にとっては、自分の作ったそのパンを愛してくださっているお客さんがいる。それは、自分が生きている証し、意味だといえるほど大切なもの。だからあれほどの気持ちが溢れたんだと思います」

 パンに情熱を注ぐ美々子だが、愛くるしさもある。印象的なのは酒に酔い薫に身を預けるシーン。「北くんへの信頼があのシーンが伺えると思います」。普段酒を飲まない本仮屋は「本当に酔っぱらうんです」と楽しんで演じた。「どこに足を置くか、転ぶかは計算しないで全部飯島さん任せ。飯島さんが抱え損ねると頭を打つ。それだけ体を預けていました。生傷もありましたし、本気でした」と笑顔で振り返る。酒に酔うシーンは撮影現場も和み、キャストやスタッフとの距離も縮まるといい「あのシーンは好きです」

 パンのことには実直で感情も露にするが、恋愛となると「好きなのに気持ちを伝えられない」と一歩踏み出せないでいる。

 「出てくるパンは可愛いですし、後半になるにつれて恋愛の糸が絡まってきます。前半と後半とでは物語の色が変わります。“ムズキュン”と聞いた時はピンときませんでしたが、予告を見て確かにするなと。もどかしく、ときめくシーンが満載です。ぜひ楽しんでください」

 インタビューでは音楽について聞いた。ここからは一問一答。

本仮屋ユイカ

本仮屋ユイカ

曲の世界を想像して優越感に

――ドライイーストを計量する薫に、美々子が「その1グラムのなかにどれだけのイースト菌がいると思う」と問うシーンがあります。そのセリフからも美々子の強いこだわりを感じましたが、本仮屋さんの1グラムも譲れないこだわりは?

 実は、小さなこだわりを沢山持っているんです。例えば、(水筒を指して)これには白湯を入れていますが少し熱めが好きですし、今座布団を敷いていますがそれがないと落ち着かない。そうしたたくさんあるこだわりのなかで1グラムとなると…なるべく本当のことを言うようにしています。それは演技でも取材でも打ち合わせでも。

 例えば明るいシーンがあって、みんながイメージしている明るさに今日の自分が達していない、でも頑張れば達せられるとき、その頑張りは本当の気持ちなのか、本当の衝動なのか、というのは自分に問うています。「ユイカ、それ嘘をついていない?」「ユイカ、本当にそんな顔する?」「本当にそういう気持ちで歩いた?」と。嘘をつかないように心掛けています。

 嘘じゃないと思っても、人はそういうフリをしたり、合わせてしまうことは沢山あると思います。なるべく真心を込めたいと思っていますので、そういうところでの正直さはこだわりたいです。

――ということは結構、自問自答はされている。

 しています。自問自答なら良いですが、ネガティブの方に向かったらただただ自分を責めることになりますから、それは気を付けるようにしています。「どうすればできるの」はまだポジティブですが、「なんでできなかったの」「また出来なかったの」「この間もできなかったじゃん」は自分を追い込むだけ。そうならないように客観的に見るようにしています。

――気持ちを切り替えるアイテムとして音楽もありそうですが、過去には徳永英明さんやCHEMISTRYのPVに出演されていました。

 やっぱり音のなかでの演技は普段と全然違います。音ならではのタイミングやリアクションが求められますので、音優先のなかでの表現はとても新鮮ですし、難しいです。

――普段から音楽を?

 電車や歩いている時によく聴きます。一番頼るのは、朝起きて今日は一歩も歩きたくないという時です。すごくお気に入りの曲をかけて「この曲が終わるときにはベッドから出るぞ!」とテーマソングとしてかけています(笑)。ファンの方に言われて気づいたんですが、男性アーティストが好きなようなんです。ですので男性のアーティストを聴く機会は多いと思います。

――男性アーティストの曲が好む理由は何かあるのですか。

 男性が女性の事を歌っているのが好きなんです。男性目線で女の人を想像して書いた曲を聴いて、その女性を想像したり、演じたりするのが楽しい。こんなに純粋に思って下さる方が世の中にはいるのかと思ってその女性になり切って良い気分になったりしています(笑)。

――となるとバラード系が多い?

 何でも聴きます。それと踊れる曲が好きです。踊るようなメロディラインやリズムが好きで家でも踊っています!

――そういえばYouTube(ユイカのラジオ)でも披露されていましたね。家でも明るい方なんですね。

 本当にそうですね(笑)。家でも自分では真剣に生きているつもりですが、周囲からは変な人と思われているかもしれないです(笑)。

――実直さと愛くるしさはどこか美々子にも通じますね。曲に惹かれる要素は歌詞、それともメロディ?

 私は言葉が大好きなんです。ですので歌詞に惹かれますが、この言葉は分からないけどこのリズムが好き、この音階の変わり目が好きなどもあるのでどちらも好きです。

――曲を細かく聴かれているんですね。

 そうですね。話したり読むことが好きですが、音と言葉のハマり方が気持ち良いもの、且つ自分に対して勇気や幸せにしてくれる言葉でしたら、一気に好きになります。

必死に頑張っていた青春時代に帰れる

――劇中では美々子が「パンが渡った時点でお客さんのもの」と言う場面がありますが、音楽にもそういう考えがあります。リリースあるいはライブで披露した時点でお客さんのもの、曲の解釈は様々あっていいと。役者はいかがですか。

 舞台ですと一緒に作って下さっている感覚はあります。観客の方の視線によってテンションは上がりますし、笑い声でより楽しくなります。でも映像作品だと、お客さんに渡っている実感がわかない時もあります。その実感は放送した時点ではなく感想を頂いた時点で初めて感じるかもしれないです。

 『Love or Not』(2017年、dTV・FOD)という恋愛をテーマにした連続ドラマに出演させて頂いた時にイベントをやりました。ドラマの感謝祭という形でしたが、その時に私たちだけのものでは全然ないんだなと知りました。撮って流しているだけだと実感が湧かないのですが、実際に楽しんで愛して下さっている方を目の前にしたときにそれを凄く感じました。私たち以上に、このキャラクターの仕草やこのシーンのこういう演出が良かったというのは知り尽くして、愛し尽くしている皆さんを見ると私たちのものではないんだなと思います。ですので私の場合は、アーティストの方よりもずっとずっと遅いかもしれないです。

 どこまでも自分たちのもの思っている節もあって。でも映像も芝居もエンターテインメントの一つ。作り手だけでなくお客さんが入って下さった、観て下さったことで完成すると思います。

――役者としての音楽の聴き方はいかがですか。

 私は音楽に影響されやすい一面もあって。イギリスの喜劇作家、アラン・エイクボーンさんの舞台『とりあえず、お父さん』(2015年)でジニィという役を演じました。それはコメディでしたが、愛する人がいるというお話でしたので、毎朝会場の駐車場が見えたら、ディズニーの「ア・ホール・ニュー・ワールド」をかけていました。ディズニーの音楽は無条件でテンションがあがるので、作品の世界に入れる、テンションが保てるという使い方はしています。

――本仮屋さんは10歳でデビューされて芸能生活22年です。これまで助けられた音楽は?

 連続ドラマで撮り切りではなく放送しながらの場合は、主題歌がいつも心の支えになっています。特に朝ドラ(連続テレビ小説『ファイト』2005年)で榊原大さんが作曲されたテーマソングは木戸優の応援歌でしたが、本仮屋ユイカとしても励まされ助けられました。ドラマの音楽はバラエティでも使用されることが多く、ふとした時にそれが流れると一瞬にしてあの高校時代、必死に頑張っていた当時の自分に戻ります。

――ということは原点に帰れる曲?

 そうかもしれないです。でも原点に帰るという意味では、海援隊の「贈る言葉」(『3年B組金八先生』第6シリーズ主題歌2001年)だと思います。青春ソングであり原点です。

――音楽はどういう存在ですか。

 自分を解放してくれる存在です。音楽をやっている方とお芝居するとすごく面白くて、皆さんご自分のリズムの中で表現することに慣れているので、いわゆるお芝居のタイミングではないお芝居をされる。それはすごく刺激になります。音楽自体もそういう力を持っていて、私は結構、型にはめやすく自分を縛りがちな性格ですので、それを解放してくれるのが音楽の力だと思っています。

本仮屋ユイカ

(おわり)

ヘアメイク:平林輝之(Allure)
スタイリング:ナカイマサコ ワンピース43,000円 (ROOM211) イヤリング22,000円 チャーム13,000円ともに(アガット) サンダル12,000円(ダイアナ/ダイアナ 銀座本店)

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