INTERVIEW

北原里英「真価が問われている」卒業から2年、役者としての現在位置


『HERO~2020~』でヒロインを務めた北原里英にインタビュー。

記者:木村武雄

掲載:20年06月17日

読了時間:約8分

 北原里英が、6月19日(金)公開の映画『HERO~2020~』でヒロインを演じる。12年に作・演出の西条みつとし氏主宰の劇団太陽マジックの旗揚げ公演として初演され、昨年再演された舞台の映画化。2年間限定で交際する秘密を抱えた男とその彼女の物語。再演舞台から引き続き主人公の広樹(廣瀬智紀)の恋人・浅美役を演じる。AKB48グループ卒業後は『映画 としまえん』や舞台『「新・幕末純情伝」FAKE NEWS』など話題作への出演が続くが、現在は「役者としての真価が問われている」と気を引き締める。そのなかで本作はどのようなものになるのか。【取材・撮影=木村武雄】

アイドル卒業から2年、真価が問われている

――AKB48グループを卒業して2年が経ちました。アイドル時代と今とでは気持ちに違いはありますか。

 全然違います。色んな意味で大人になりました! というのも仕事面では自分が全てになったというか。グループにいたら自分だけでなく、グループの評価につながるように一生懸命やりますけど、お互いにブレーキをかけてしまうこともある。それが今はない。でも逆に言ったら自分でブレーキをかけたら誰もフォローしてくれないし、結果を出したら自分に返って来る。そういう点での責任感はあります。

――在籍時はグループのキャプテンでしたから責任感はもともと備わっていますね。

 その時に少しずつ芽生えてきたような感じです。でも今は、自分中心に考えていいんだと。

――肩の荷が下りた感じですか。

 どっちかと言ったら今の方がプレッシャーを感じているかもしれないです。今まではグループの力に助けてもらっていたので、それがなくなったことは大きな変化ですね。だけど、それもすごく良いプレッシャーになっています。

――卒業後は映画『映画 としまえん』や舞台『「新・幕末純情伝」 FAKE NEWS』など挑戦作が続いています。こうした作品を経て今のご自身はどういう位置に立っていると思いますか?

 今は自分が試されている時期だなと思っています。卒業した時とは立位置が違い、もう2年が経つのでここからは自分次第だと思いますし、自分自身の真価が問われると思っています。

――では今回の作品はご自身にとってどういうものになりそうですか。

 『HERO』は、「新・幕末純情伝」で演じた沖田総司役というチャレンジとはまた違いますし、「としまえん」のようにホラー初挑戦というわけでもない。ぶっとんだ派手な役ではないからこそ、役者としての真価が問われると思っています。繊細な演技が試される役だったので、より緊張しました。

役作りのきっかけになった『凪待ち』

――今作は、昨年再演された舞台の映画化になります。遡って舞台はいかがでしたか。

 5日間という短い公演でしたが、良い意味で毎日変化することができました。また今回のように舞台からの映画は初めてで、当時は「これで終わりじゃない、また皆とお芝居できるんだ」という気持ちがあって。それ自体も新鮮で、気持ちよく千秋楽を迎えたのを覚えています。

――「自分の中にはない役柄」とも話していました。

 今までは元気な役柄が多くて。でも今回は自分自身の性格からも遠い、奥ゆかしい健気な女の子。ですので、最初は感情もあまり理解できなかったんです。最終的には自分の色も消しすぎず、良い具合に浅美ちゃんと融合できたと思います。

――自分にないものを出していくために参考にしたものはありますか。

 AKB48グループには色々なタイプの子がいたので、ヒントにした部分はあると思います。でも、誰かをモデルにしたというのはないです。稽古中は時間があったので、白石和彌監督の『凪待ち』という映画を観に行きました。感情を爆発させたり、揺さぶられて泣くシーンが何度もあって。その翌日にふと、女の子らしさや奥ゆかしさとかを気にしすぎて内に内に行ってしまっていることに気が付いたんです。それで改めて浅美の感情と向き合って次の日の稽古で思い切って感情を押し出してみたら自分の中で何かが変わりました。なので、役作りという点では『凪待ち』にヒントをもらいました。

――舞台と映画とでは気持ちや見せ方の部分で取り組み方は違いますか? 舞台を通して役柄を十分に理解しての撮影でしたが。

 何かを意識したというよりも、その時に初めて知る感情の方が大きかったです。稽古で沢山言ってきたセリフも、映画の撮影となるとまた難しくて。言い慣れたセリフなのに現場で初めて気づくことが多かったです。また、舞台でのことを映画では忘れることも必要でした。舞台での正解が、映像では必ずしも正解ではないことがいくつもあったんです。発見がたくさんありました。

――西条みつとし監督は、北原さんを「目で演技される方」と評価されていましたが、ご自身はどう思いますか。

 舞台稽古の序盤に、西条さんから「里英ちゃんは、割と映像向きのお芝居だね」と言われたんですよ。たぶん、そうした意味合いで話されていたと思うんです。自分としてはまだまだ課題だと感じていますが、評価していただけて嬉しいです。

北原里英

2度目の共演、廣瀬智紀から引き出されたもの

――廣瀬智紀さんとはいかがでしたか。

 廣瀬さんとは2度目の共演なんです。一度目はAKB48時代に出演した恋愛ドラマ(AKBラブナイト 恋工場)で、その時も恋仲の役でした。ですので、今回も始まる前から気持ちはすんなり入っていけました。

――廣瀬さんの演技は自然体で哀愁漂う感じですね。二度目の共演ですでに下地は出来上がっていたと話していましたが、撮影に入って出てきた感情はありますか。

 舞台稽古から撮影まで通して、フワフワしたところが廣瀬さんの魅力だと思っているんですけど、広樹のモードになるとそのフワフワが無くて、ちゃんと広樹としてそこにいて。そこのギャップに驚きました。すごく真摯に取り組む方だったので、その姿勢が素敵だなと思いました。

――映画全体で印象に残っているシーンは?

 舞台では描かれなかった回想シーンや、広樹と浅美が幸せだった頃のシーンが映画では描かれています。私もそこを観て、広樹と浅美はちゃんと付き合っていたんだなと嬉しく思いました。舞台を観てくれた方もまだ目にしていないシーンだと思うので、是非注目して欲しいポイントではあります。

――映画が舞台っぽいなと思いました。いつもと撮り方が違うなと思ったことは?

 撮り方が違うとは特に感じなかったんですけど、舞台からのキャストさんやスタッフさんとの連帯感が上手く映画に反映されているのかもしれません。

――テンポ感がいいのはそういうことなんですね。

 確かに舞台ならではのテンポ感。特にコメディシーンは何度も稽古して培われたものだと思うので、そこは舞台から映像化の意味があったのではないかと思います。

北原里英

わたしのHERO、大家志津香

――物語にちなんでご自身にとっての「HERO」は?

 AKB48の大家志津香ちゃんです。昔一緒に住んでいたんですよ。嫌な思いをした日があって、我慢できず最寄りの駅でしーちゃんに泣きながら電話したら傘2本持って迎えに来てくれて。迎えに来てくれるだけでも嬉しいけど、傘2本持ってきてくれたしーちゃんを見て「好きやなー」って(笑)。

 それだけじゃなくて、急に決まった代役出演で、泣きながら練習して2日で仕上げて「いざ」という日の朝に「里英頑張ってね」というクッキーを作ってくれたり。し-ちゃんは上京したての私を支えてくれた「HERO」です。

――その大家さんは現在もAKB48で頑張っていますが、その姿を見てどう思いますか。

 しーちゃんは、AKB48として地上波のテレビにちゃんと出て活躍して、そのポジションを自分の力でつかみ取っている所がカッコいいなって思います。

――今頑張れているのは、大家さんのおかげ?

 しーちゃんのお陰だし、今も尊敬しています。

音楽ライター北原里英、イチオシは?

――音楽好きの北原さんに最近ハマっている曲を聞きたいと思います。

 一押しのバンドがあります! 川崎出身の「マカロニえんぴつ」というバンドです。歌詞が現代に合っていて魅力的なんですよ。おすすめポイントを紹介していいですか?

 まずその1、無理に希望を捨てなくても良いんだよというスタンス。

 諦めた振りして諦めていないんですよ。そこがすごく共感できて。私もカッコつけて諦めたフリをするんですよ。でもどこかで絶対に諦めていないんですよ。そこの泥臭さみたいなものが現代風泥臭さなのかな、と。

 その2、曲が短い。

 3分半くらいの曲が多いんです。最近、映画が最後まで見れない若者が多いっていわれているじゃないですか、YouTubeに慣れすぎて2時間集中出来ないって。そうした意味も含めて集中して聴ける尺なのが凄いなと。アルバムも少し遠くに移動するときには聴き切っちゃうくらい。そこも現代に合っていて好きです。でも何より、ボーカルのはっとりさんが書く歌詞の“諦めた振りして、諦めきれていないところ”がすごく好きです。

――分析に説得力がありますね。知ったきっかけは。

 あるオーディションに行った時です。始まる前、今から名前を確認します、名前だけ言うのはつまらないから、好きなアーティストの話をしましょうと言われて。その時、偶然マカロニえんぴつのPVに出たという方がいて知りました。それをきっかけに聴いてみてハマりました。

――最後に改めて見どころを。

 老若男女誰が観ても楽しめる作品だと思います。笑って泣けて明日からまた頑張ろうと思える映画だと思いますので、たくさんの方に観て欲しいなと思います。今、世界全体が新型コロナウイルスという見えない敵と戦っていて、気分も沈みがちですが、そんな中でも誰かのパワーになれる映画だと思っています。これを観たあなたも誰かのHEROになれることを願っています。

北原里英

(おわり)

『HERO~2020~』
6月19日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
<公式HP>
www.mmj-pro.co.jp/hero2020/

<キャスト>
廣瀬智紀 北原里英
小松準弥 前島亜美 小早川俊輔
小築舞衣 中村涼子 米千晴 小槙まこ 加藤玲大 後藤拓斗 双松桃子
飛鳥凛 伊藤裕一 根本正勝 今立進
松尾諭 斎藤工(友情出演)

<スタッフ>
原作:TAIYO MAGIC FILM 第一回公演「HERO」
エグゼクティブプロデューサー:石田誠 中西研二 プロデューサー:村田泰介
脚本・脚本:西条みつとし
配給:ベストブレーン 企画:MMJ 製作:「HERO」~2020~製作委員会

スタイリスト:丸山恵理子(オサレカンパニー)
ヘアメイク:MARVEE、オサレカンパニー

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