6人組バンドのSuchmosが6月10日に、ライブ映像作品Blu-ray&DVD『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』をリリースした。Suchmosは2013年1月に結成された神奈川県で結成されたロックバンドで、YONCE(Vo)、HSU(Ba)、OK(Dr)、TAIKING(Gt)、KCEE(Dj)、TAIHEI(Key) の 6 人編成 。ROCK、JAZZ、HIP HOPなどブラックミュージックにインスパイアされ、バンド名もスキャットのパイオニア、ルイ・アームストロングの愛称であるサッチモから付けられた。

 2016年Honda「VEZEL」のTVCMソングとして起用された「STAY TUNE」で脚光を浴びる。2017年4月に新レーベル『F.C.L.S.(読み:エフシーエルエス)』の発足。2018 年末には『第69回紅白歌合戦』に出場し、お茶の間にそのサウンドを届けた。そして2019年9月8日には、結成当初から公言しつづけてきた、地元・横浜スタジアムでのワンマンライブ『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM』を実現させた。本公演は30000人を動員し、チケットはソールドアウトとなった。 

 『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』はバンド結成時より地元横浜でのライブにこだわり「いつか横浜スタジアムでライブをする」と公言し続けてきた彼らが、その夢の地で実現したステージを収録。9カ月の時を経て、映像作品として届けられる。映像作品には 「YMM」「Miree」といったデビュー当時の楽曲から、代表曲「STAY TUNE」「MINT」「808」など、2019年までのSuchmosのライブの集大成といえる楽曲、アンコール含め全19曲が収録されている。

 約3時間弱に渡るステージは、訪れた3万人の心も身体も震わせた。2013年の結成から約6年で夢を叶え、彼らは今次のステージに向かおうとしている。ターニングポイントになったであろう、この作品から感じられたライブバンドとしての魅力を考察する。

 イントロダクションはYONCEの使用するマイクに接近するカメラワークからの導入。約3万人を動員した横浜スタジアムの全貌へとズームアウトし、ライブが始まる前の緊張感とワクワク感が伝わってくる。

 横浜みなとみらいの頭文字をタイトルにした楽曲「YMM」からのスタートは、Suchmosの心地良いグルーヴをしっかりと感じさせ、通常のロックバンドのエネルギッシュな幕開けとはまた違った、彼らの個性を感じさせてくれた。

 耳に飛び込んでくるサウンドは、フォーカスがしっかりとしており、ライブ感を残しつつも各楽器の音色が分離よく収められている。丁寧に録音されていることが音から感じられ、低音から高音までバランスよく耳に届く。彼らの音に対するこだわりが垣間見れる。可能であれば、できるだけスピーカーを使用して大音量で聴きたいと思わせてくれた。

 メンバーの充実した表情をとらえたカメラワークにも注目したい。特に楽器をプレイする人たちには彼らの演奏する手元が抑えられているので、華麗な演奏スキルを耳だけでなく目でも確認できるのは嬉しいポイントだろう。

 そして、MCも多く収録されているのも、この日ライブに訪れた人はもちろんのこと、悔しくも参加できなかった人たちには嬉しいポイントだろう。このライブに臨む姿勢がストレートに言葉として伝わってくる。特にライブ中盤でメンバーによるMCはそれぞれの想いを汲み取れる、見どころのひとつになっている。

『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』ジャケ写

 ヒット曲「STAY TUNE」のようなダンサブルなナンバーももちろん魅力的だが、「In The Zoo」で見せる陰影を感じさせる曲調も、彼らの造詣の深さを見せてくれる一曲。この日の曇天もこの曲を彩るスパイスとなっていた。音で情景を映し出すという、説得力を同曲から感じさせてくれた。

 日も落ち、夜の横浜スタジアムで奏でられたブルージーな「Hit Me, Thunder」のパフォーマンスも圧巻。9月8日は台風が接近していたこともあり、雨が降る場面もあった。その雨はライトに照らされ、美しい光のオブジェの一部となり、映像を際立たせていたのも印象的。天候の変化を感じられるのは野外ならでは。このステージのストーリーに華を添えていた。

 続いての「Pacific Blues 」でスクリーンに投影された映像は幻想的で、ライブ中盤でのハイライトとなっていた。同曲の佳境では花道の先端でロングギターソロを決めるTAIKING(Gt) 、それに呼応するかのように歌うYONCEの姿。そして、音で会話するメンバーの恍惚の瞬間がしっかりと捉えられていた。

 後半はテンションをさらに上げてくれるナンバーで畳み掛ける。「GAGA 」での楽器隊5人によるヒートアップしていくグルーヴは、「生で体感したい」、「音を浴びたい」と思わせてくれる熱の入った演奏だ。苦楽を共にしたメンバーだからこその迫真力がそこにあった。

 そして、スタジアムが観客によるスマートフォンのライトで埋め尽くされる光の絶景の中、アンコールで登場したYONCEが「ここから見る景色を楽しみしていたんだけど、超最高だった」と話していたように、再びこの映像作品で、我々も“最高の景色”を何度も体感できる。

 思い続ければ夢は叶うことを体現した作品。一丸となってライブを楽しんでいる姿は、彼らがライブバンドだということを、改めて映像から感じさせ、音楽愛に満ちていた時間であった。

 ライブはその人の生き様が出る、嘘をつくことができない、ありのままを照らす鏡のようなものだ。この作品を観れば彼らが真摯に音楽に向き合ってきたことを感じてもらえるはずだ。なぜ、彼らの音楽がこれほどまでに人の心を揺れ動かすのか、その答えの一つがこの作品に詰まっていた。【村上順一】

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