安田レイ「人との繋がりを音楽で届けたい」いま考える音楽の役割
INTERVIEW

安田レイ


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年05月27日

読了時間:約11分

 安田レイが27日、14thシングル「through the dark」をリリース。今作は放送中のTVアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』エンディングテーマで話題の楽曲。「光と闇」をテーマに書かれた今作は、3月にリリースした3rdアルバム『Re:I』からのストーリー性を引き継ぎ、新たな安田レイとしてスタートするメッセージ性もあるという。今まさに「人との繋がりが大事」と感じたと話す安田に音楽の在り方について聞くとともに、本作について「新しい扉が開いた」という現在の彼女の心境に迫った。【取材=平吉賢治】

新たな安田レイとしてのスタート

「through the dark」初回盤ジャケ写

――最近お宅ではどのようにお過ごしでしょうか。

 ずっと家に閉じこもって人と会っていないので、電話やSNSでやりとりをしています。みんなと繋がりたい、音楽でみんなに届けたいという気持ちが大きいので、カバー動画などを撮ってTwitterでシェアしたりInstagramライブをしたりと色々楽しんでやっています。やっぱり人との繋がりって大事だなと実感しています。

――ずっと家にいると普段なかなか気づけないことがわかったりしますよね。

 そうなんです。人と会うって今まで当たり前に思っていたけど、これがないと生きていけないなというくらい。

――自粛期間で感じることや体験ならではの曲が生まれたりしそうですね。

 「ネットショッピングがやめられない」というテーマの曲を作ろうと思ったりして(笑)。

――家にずっといるとつい買っちゃいますよね(笑)。さて、今作「through the dark」は昨年からの「安田レイ第二章」の勢いが増し、生身の安田さんがより明瞭に出てきたと感じます。ご自身ではどう感じますか。

 昨年リリースのアルバム『Re:I』からストーリー性があると思います。この曲には「また新たな安田レイとしてスタートする」というメッセージ性もあるんです。今作はTVアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』のEDテーマなんですけど、原作がゲームで初のアニメ化という形だったので、原作の絵がない状態での制作だったんです。プロットを読ませて頂いて、そこから想像するのがいかに難しいのかと知れて面白かったです。

――歌詞はどのように組み立てていったのでしょうか。

 主人公のアイリスは凄く真っ直ぐで嘘がつけなくて「誰かが困っていたら守りたい」という気持ちが強い女性なんです。こんな女性凄く憧れるなと思って、アイリスの目線で歌詞を書いていきたいというところからスタートしました。今回プロデュースしてくださったJeff Miyaharaさんとは初めてご一緒したんです。Jeffさんの楽曲、サウンドからのインスピレーションもあって自分の歌詞を導いてくれたところがあるんです。その2つが合わさって色々浮かんできました。

――軸となるテーマはあった?

 アニメ作品が「光と闇」がテーマで、そのキーワードを使いながらラブソングを作りたいと思いました。ラブソングだけど、ただ「愛してる」とかじゃなくて「2人は凄く遠くにいる」という設定です。アニメの中で光の国と闇の国が存在していて、愛する人が遠くに行って、その人を想う気持ちをアイリスらしい気持ちで歌詞を書いていきたいと思いました。遠くにいるけど、その人が困っていたら守りぬきたい、この人のためなら何でもできるという気持ちです。

――「光と闇」というテーマは、13thシングル「アシンメトリー」の「非対称」というテーマとの繋がりを感じます。こういったテーマには人間の心模様が深く表れている?

 そうですね! 「光と闇」って凄く遠くにある存在のように思えて、お互いが求めあっているところもあると思うんです。世の中にはよい人とそうでない人がいて、それで上手くバランスがとれていることがあると思って。

 自分の中の「よい自分」「悪い自分」でバランスが成り立っていたりするので、どっちも必要な要素なのかもしれないという考えにたどり着いたんです。例えば白ばかりだと黒が見えないというか…どっちもあって。確かに「アシンメトリー」とリンクする部分もあります。

――凄く深いテーマだと思います。常にそういうことを考えている?

 そうです。今回「光と闇」をテーマにすることで、色んなことを考えるようになりました。普段は「光と闇とは?」とかそんなに考えていなかったけど、やっぱりどっちも大事な要素なのかもなって。どうしても「光がよい」と、よい所ばかりに人間はクローズアップしがちですけど、闇の部分があって人間の個性などが生まれるし、世の中のバランスもとれるんじゃないかなって思うし。片方を否定して生きていくのも何かおかしいなとか、色々考えました。

その人の嫌な部分も全て込みで愛せることが本当の愛

――歌詞の<あなたの 暗闇 触れたい その向こう側 その真実>という部分が印象的です。闇の向こう側に人間の真実、本質が見えるという解釈でしょうか。

 恋愛をしていると、その人の嫌な部分が見えたりするじゃないですか? そこで嫌いになっちゃったら、それは恋愛ではないと思っているんです。その人の嫌な部分も全て込みで愛せていることが本当の愛だと思っています。その人が本当に闇の中で困っていたりしたら、本当にその人を愛する気持ちがあれば、「何かしたい」と思うのがナチュラルなことだと思うので。“愛”という部分でそこは歌っています。

――たとえばですが、恋愛対象が闇の部分を見せてくれない場合は率先して見ようとする?

 最初は闇の部分を隠せても、次第に見えてくるものだと思います(笑)。

――自分の闇の部分をちゃんと見せるということも大事なのでしょうか。

 私もどちらかというと好きな人に自分の弱い部分、ダメな部分を見せたくない、いつも完璧な自分でいなきゃって思うんですけど、結果的に隠しきれなくて出ちゃって、「そういうところ、もっと見たいよ」と言われてハッと気づくという。だから自分の闇の部分は好きな人に見せていいのかなって。そこに強い気持ちがあったら、それで嫌いになることはないと思うので。というのは信じるようにしています(笑)。

――闇の部分を隠さないほうが人間関係が上手くいくような気もしますね。

 私もそう思います。「人にダメな部分を見せてもいいんだ」と、気付けるようになったので。仕事でも完璧にやろうと思うと面白みがなくなるというか…たぶん“らしさ”みたいなのが出なくなるのかなって。最近は「失敗してもいいや」って思うようにしてます。

――本作についての安田さんのコメントの一部に「他の誰にも触れられない2つの強い『愛』という感情があれば、どんな闇も抜け出せる。私はそう信じてます」とありますが、正に今お話されたことですね。

 2つの強い繋がりみたいなのがあれば闇も抜け出せると思うんです。もし片方が闇の中にいたらもう片方の光が見つけて救い出して、というメッセージなので、愛している人がもし困っていたらいつでも動ける状態でいたいと常に思っています。

――とても広い視点でのラブソングとも捉えられますね。

 そうですね! サウンドも壮大だしメッセージ的にも遠距離ラブソングでもあるけど、そういう風にもキャッチして頂いたら嬉しいです。

――サウンドはワールドワイドな音像ですね。

 プロデュースしてくれたJeffさんがR&BやK-POPなど、海外要素が強いものをやられている方なんです。音数が少なくてサビで爆発力があるという楽曲で凄く気に入っています。こういう世界観でこれからいっぱい勝負していきたいなって感じています。

――安田さんのボーカルのエディット感も印象的でした。比較的海外の音楽で聴くことが多い手法だと思うのですが、安田さんのボーカルと凄く合っていると感じました。

 各セクションもそうですし、最後のサビとかもめちゃくちゃいっぱいコーラスなどを重ねて…凄く楽しかったです。Jeffさんの頭の中で完成図が出来上がっている状態みたいで、「4回『ハァッ』って歌って」とか、そういうディレクションがあったんですけど「これが曲と合わさった時、はたしてどんな風に聴こえるのかな?」とワンダーランドを歩いているような感覚でした。それで最終的に聴いたら「ここであの声が合わさって…気持ちいいな!」と思いました。初めてこんな不思議な歌いかたをしたというパートもあったりして面白かったです!

――「安田レイ第二章」の最新作にふさわしいアプローチですね。

 こうやって色んなクリエーターの方々と一緒にやっていきたいなと、Jeffさんとやらせて頂いて思いました。何よりディレクションが面白いというのが素直な感想です。「とにかくレイちゃんは上手く歌おうとしないで」と言われたんです。

――変わったディレクションですね。

 そんなに意識的に上手く歌おうと思っているわけではないんですけどね。細かく「ここはビブラートを入れて…」とか考えながらレコーディングをしているので、そういうテクニックとかは全部ゼロにして「レイちゃんは今5歳だから。5歳だったらどうやって歌う?」と言われたんです。

 「もっと真っ直ぐ素直に歌えると思うんだよね」というのが初めてのディレクションだったので、最初は戸惑いもあったんですけど、アイリス目線の真っ直ぐな気持ちってたぶんこれが正解なんだなと思いました。特にワンコーラス目のAメロは「5歳、5歳…」って思いながら歌って(笑)。真っ直ぐに歌うというのは意識してやりました。

――Jeffさんは「生身の安田さんを出したほうがいい」と思ってのディレクションだったのかもしれませんね。

 凄く言われたのが「いつもと違うことやろうよ」ということなんです。「今までの作品もめちゃくちゃいいよ! でも今回一番いいのを作ろう。そのためには今までと同じ歌いかたをやっちゃいけないよね」とも言われて。だからとにかく削って削って、自分のコアの部分みたいな「5歳の頃の記憶や景色を思い出して素直に真っ直ぐ歌って」と言われたのが面白かったです。

――「自分のコアの部分」という核がしっかりと出ているからこそ、ボーカルエディットも装飾にはならずに一体感を感じます。そこは今作で重要な部分ではないかと。

 聴いて頂いた方のコメントを見ると「いつもと歌いかたが違う」とか、「新しいレイちゃんだね」とか凄く色んな方々からメッセージが届いたんです。新しい扉が開いたかなって思いました。

相手に対するリスペクトの感情があれば光もみえる

――カップリング曲「true colors」も作詞をしていますね。

 この歌詞は何年か前に書き溜めていたメモから組み立て直して書きました。「籠の中に閉じ込められた私」というテーマです。その頃は色々と悩んでいたようなんですけど(笑)。籠の中に閉じ込められているというのは人それぞれ理由があると思うけど、それが家族、友達、恋人の影響なのか、もしくは自分なのか…窓があって外の景色を見ている状況だけど、籠から抜け出せないというフラストレーションを最初は書いていました。本当は飛べる力があるにも関わらず、誰かによって閉じ込められているという。

 「君にはそれはできない」という言葉で外に出られないのか、「自分にはできない」と決めつけて外に出られないのか、人によってバラバラだと思うんです。そんな中で勇気を振り絞って籠から脱出して新しい街に向かって飛んで行って、聴いたことのない色んな音を体で感じて心が踊るという、そういうサビになっています。

――確かに籠から抜け出せないという葛藤は様々ありそうですね。

 色んなパターンで悩んでいる人が多いと思います。学生の頃は特にそうだと思うし、たとえばシンガーになりたいけど誰かに反対されていて「そんなの無理だ」とか「不安定だからちゃんと大学に行きなさい」とか。色んな世界でそれぞれみんな悩みながら自分の人生を選んでいると思うんです。でも私の場合は反対意見もあったけど、やらないでいたら後悔していたと思うし、やってから後悔したほうがまだましかなと思って。「まずは自分の小さな世界から飛んでみて景色を見てみようよ」というテーマです。

 ベースは自分のダークな部分もあるんですけど、何回か書き直して新生活に向けたポジティヴな楽曲にしました。時期的にも新しい世界に飛び込むのに悩んでらっしゃる方もいると思うので、そういう方にとって何かポジティブなヒントになってくれたら嬉しいと思います。

――この曲もそうですし、安田さんは色んな楽曲で相当深い部分まで考えて、それをわかりやすく作品にしていると感じます。

 書き直していて思ったのが、そのままだとヘビーすぎるなって。いつも第一弾の段階では自分の闇が出すぎちゃってることが多くて(笑)。ポジティヴな楽曲にしたいんです。

――深い闇を知らないと、なかなか光がみえないという部分もあるかなと思うんです。

 その通りですね。

――ところで「through the dark」のMVですが、壮大な大自然のシーンが印象的です。今作の世界観を表すのに大自然が合うというコンセプトがあったのでしょうか。

 楽曲が凄く壮大だし、「光と闇」というものをスタジオでMVを撮るのも違うかなと思って。「壮大な映像を撮りたいね」というのはみんなと話し合ってあったコンセプトです。2月の撮影だったんですけど、こんなに寒い撮影は初めてというくらいでした。全集中力を使って体の震えを止めるのにパワーを使うんですよ(笑)。でも凄くアドレナリンが出ている状態だったのでその時は不思議と疲れなかったし風邪も引きませんでした。

――大変な撮影だったのですね。

 でも、そのおかげで素晴らしい映像が撮れました! クルーのみんなも誰も弱音を吐かずに協力し合って出来て「みんなプロだな」と思いました。あと、動きにこだわりがあるんです。光と闇の2パターンの衣装とメイクでやったんですけど、シーンによって動きがリンクしているので、それを是非見つけて頂きたいと思っています。光と闇は共存するという話をさっきしましたけど、「近くにいて2つがあっての1つ」というのを、動きのリンクで表現しました。

――人間関係において、光と闇が共存するために必要なことは何だと思いますか。

 「その人のことを知りたい」という気持ちがあったら嫌な部分も受け入れられると思います。その人に対しての興味が1ミリでもあったら、合わない部分が山ほどあったとしても何かリンクする部分を見つけられる努力ができるのかなと。会社の人間関係も恋愛もそうだと思うんですけど、相手に対するリスペクトの感情があれば光も見えるし、わかり合えると思います。

――答えはシンプルといえばそうですけど、その考えにたどり着くまでは光も闇も、正面から向きあうことが大切そうですね。

 そうですね。色々悩んだけど結果それでしたね。リスペクトと愛情です。

(おわり)

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