音楽を聴く際、各パートの奏法に注目して楽しむのも一興だ。今回はベースやギターの「スラップ奏法(スラッピング)」を取り上げたい。

 スラップ奏法で出されたサウンドは、ファンクやダンスミュージック、フュージョン、ロックなどで耳にすることが多い。楽曲全編にわたってスラッピングされる場合もあれば、ソロパートで飛び道具のようなアプローチをする時もある。パーカッシブなサウンドのスラップ奏法は、独特の倍音が鳴る特徴的なプレイだ。

 主にエレクトリックベースで使用されることが多いスラップ奏法だが、ギターのスラップ奏法もある。本来であれば、スラップ奏法の名手のベーシストを紹介するべきかもしれないが、ここではスラッピングサウンドが顕著であることから、特殊な例としてギターのスラップ奏法が華やかなアーティストのMIYAVIに注目する。

【MIYAVI vs KREVA ー STRONG】

 スラップ奏法が視覚的にもわかりやすい例として、MIYAVI vs KREVAの「STRONG」を挙げる。MVではMIYAVIが右手の親指で弦を叩き、人差し指や中指で弦を引っ張るスラッピングの様子が明瞭にわかる。ピックを使用したり指でつま弾くという、通常の奏法とは異なるテクニックが必要なスラッピングは難易度が高い。

 MIYAVIは、このスラップ奏法をさらに進化させた演奏をする。アコースティックギターのスラッピングに、ボディアタックや弦のグリッサンド(音を一音一音区切らずに滑走音を出す)を加えてパーカッシブに鳴らす手法は、MIYAVI独自の演奏スタイルだ。これらの奏法をしながら歌うというスタイルは超絶技巧と言えるだろう。

 また、近年ではスラッピングしたフレーズをルーパーやサンプラーに取り込み音を重ねて同時演奏することもある。MIYAVIの演奏スタイルも含め、これらはスラップ奏法の進化系ともいえるアプローチだ。

スラップ奏法の源流とは?

 MIYAVIはギターでスラッピングをするが、スラップ奏法の源流はベースでの演奏だ。諸説あるが、スライ&ザ・ファミリー・ストーン(米・ファンクバンド)に所属していたベーシストのラリー・グラハム(Larry Graham)がスラップ奏法の第一人者という捉え方が多い。

 さらに「弦を引っ張る、はじく」という奏法の歴史を辿ると、クラシック音楽でのバイオリンのピチカート奏法もスラップ奏法に近いので、元祖がどれかという厳密な定義づけは難しい。

 ファンクで一般的に広まったスラップ奏法はロックやポップス、R&Bなど様々な音楽でも積極的に使われるようになった。ベースの大胆なスラッピングをロックシーンでメジャーな奏法として世に広めたミュージシャンとしては、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(通称=レッチリ)のベーシスト、フリー(Flea)が有名だ。

 「影響を受けたアーティストは?」というインタビューでの質問に対し「レッチリのフリー」と答えるベーシストは数多くいる。それほどフリーのスラップ奏法は強烈なインパクトがある。

 映像やライブなどを観ていてベースがバキバキと鳴り出したら、ベーシストの手元に注目すると、スラップ奏法の華やかなビジュアルが楽しめる。なお、スラップ奏法は“チョッパー”と呼ぶこともある。

 最後に、個人的にチョイスした「スラップ奏法が取り入れられている楽曲」をプレイリストで10曲紹介したい。「弦楽器のアタック感」という点に注目すると、カチッとビートに馴染むもの、テクニカルかつ複雑なもの、印象的なリフと、様々な表情のスラップ奏法が楽しめて、音楽のさらなる味わいが広がるかもしれない。【平吉賢治】

・「Slap It」 MIYAVI
・「大嫌い」 MUCC
・「SCARS」 X JAPAN
・「DONEKY BOOGIE DODO」 ストレイテナー
・「SEXY BODY」 OKAMOTO’S
・「Free! Free! Free!」 竹内アンナ
・「Higher Ground」 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)
・「Thank You(Falettinme Be Mice Elf Agin)」 スライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly & The Family Stone)
・「Get The Funk Out Ma Face」 ザ・ブラザーズ・ジョンソン(The Brothers Johnson)
・「Power」 マーカス・ミラー(Marcus Miller)

【ウェブで聴く】
https://open.spotify.com/playlist/2l3ByzBLWfevmPKmBqTUVk

平吉賢治 東京都在住のライター。音楽専門学校卒業後、楽曲制作に携わる。5年前にライターとしての活動を始める。これまでに執筆したコラムのなかには、ヤフーのトピックスに掲出されたこともある。得意分野はロックやエレクトロミュージックなど。普段はギターや鍵盤を弾いていることもあって歌詞よりも音にフォーカスしがち。エレカシ宮本浩次氏や上杉昇氏をリスペクト。洋楽では90年代の作品が特に好き。

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