岩淵紗貴(Vo&Gt)と一瀬貴之(Gt)によるバンドMOSHIMOが3月18日、アルバム『噛む』をリリースした。MOSHIMOは福岡で結成され、2016年5月にデビューシングル「猫かぶる」をリリース。日常生活で抱く様々な不安、困難、フラストレーションを全てポジティブへと変える熱いパフォーマンス、パワフルな歌声、ポップかつ骨太なロックサウンドで人気を博している。本作は下北沢老舗レーベルKOGA RECORDS内にMOSHIMOプライベートレーベル「Noisy(ノイジー)」を設立しての記念すべき第一弾作品。現体制となっての心境や本作について、そしてこれからの展望を2人に語ってもらった。【取材=平吉賢治】

MOSHIMOのターニングポイントとなる本作

――バンドの体制が1月から2人になりましたが、率直にどんな心境でしょうか。

岩淵紗貴 「やるしかなくねぇ?」という。自分のやりたいことをちゃんともっと出して突っ走って行くしかないと思います。

岩淵紗貴

――新たなメンバーを迎えず2人体制でやることになった経緯は。

一瀬貴之 バンドの調子は良くないわけではないんです。フェスもいっぱい出たり、ツアーも決まってバンドの調子は良くなって応援してくれている人も増えている中なので、これでバンドを辞めるのは変だなと思って。だったら2人で会社を作ってやっていこうとなって今の体制になっているという感じです。

 Noisyというレーベルが自分達の会社なんです。そこでやろうとなって、下北沢のレコード会社と相談して一緒になって、そのあとに岩淵が仲良くしているファッションブランドの方に紹介して頂いたコロムビアの方が「また一緒にやろう」と言ってくれて今のチームになっているんです。

――ご自身のレーベルでやるという体制になって変化はありますか。

一瀬貴之 逆に、みんなに凄くお世話になっているので、自分達でやっているけどみなさんが助けてくれることに対しての感謝が大きくなりました。自分達でやるようになったことによって「こんなに色々大変だったんだ!」とか、いろいろ見えるようになって凄く感謝しています。

岩淵紗貴 何でも自分でやらなきゃとかあったんですけど、誰かにお願いできる環境があるし、より自分のエゴだけではなく感謝しながらやれるようになったと思います。逆に、もっと引っ張れる人にならなきゃという責任感も凄く生まれました。

――体制もレーベルも変わって、転換期というタイミングでもある?

岩淵紗貴 それこそターニングポイントだったので、この世の中に噛み付いていきたいと思って今作には『噛む』というタイトルをつけました。CDを作ろうとなったタイミングで書いた6曲なんです。転換期の気持ちが詰まった6曲になっています。

――タイムリーな想いが込められた作品なのですね。全曲の作詞作曲が岩淵さんと一瀬さんのクレジットですが、制作はどのように進んだのでしょうか。

一瀬貴之 0から1にする時は、メロディと歌詞が同時に出てきて、そういうのはお互いネタとして持っているんです。そこからに枝をつけて広げていく形です。アレンジは僕がだいたいメインでやるんですけど、歌詞はだいたい岩淵がメインという作りかたです。

――各曲についてですが、「もっと」の歌詞面ではどのような想いを込めましたか。

岩淵紗貴 これはこのアルバムの中でもリード曲、代表曲になっています。MOSHIMO=岩淵紗貴、私自身というのにちゃんと繋がるようになりたいと思ったんです。いち女性として女の子として、心と体は一つだし、「MOSHIMOって何なの?」と言われた時に、オリジナリティをもっとしっかり追求して出していきたいと、自分自身表情豊かな人でいたいなと、いろんな想いが詰まった曲だと思います。だから<アタシらしく>と書いているんです。

――「熱帯夜」はどのような着想から出来た楽曲でしょうか。

一瀬貴之 これはアルバムの流れを考えて、2曲目にしたいということで作ったんです。けっこう歪ませた音のAメロからサビで広がっていく感じにしたいなと思っていて。岩淵が出してきた歌詞で<熱帯夜>というワードが最後にあったので、そこがフックだなと思ってタイトルにしました。

岩淵紗貴 これは歌詞優先でメロディを作っていった面もあるんです。共作なんですけど、2人とも歌詞とメロディが一つフックになるところから広げて作っていくことが多くて。だからキャッチーさみたいなのは凄く重視して作っています。

――この曲だと、どこから出来たのでしょうか。

岩淵紗貴 「熱帯夜」は<踏んだり蹴ったりそんな感じ>という部分です。ツルッと出来ました。

――「TOKYO」はミドルテンポで、歌詞にもありますがエモい楽曲ですね。アルバムの位置付けとしてはどのような感じの楽曲でしょうか。

岩淵紗貴 東京という街をわりとポジティブに捉えて、それこそ転換期の時に作ったんです。前のメンバーが抜けるとなって、凄く不安でどうしようとなった時に、バンドの仲間と飲みに行ったり色んな話をして、気持ちの面も前向きになったりした面もあったんですけど、渋谷を歩いている時に凄くたくさん人がいると思ったんです。

 ちょうどそのタイミングで高い場所から人を見たらめっちゃ小さくて全然わからなかったんです。「これだけ人がいてミジンコみたいな感じにしか見えなくて…」と思って。私がどんなに悩もうがどこかでのたうちまわって死のうが、たぶんその多くの人達からしたらわからないし、痛くも痒くもねえなと思ったんです。ということは、私の悩みや思っていることは、別に世の中からすると凄くどうでもいいことで。それならこの人達に振り向いてもらえる何かを作っていくほうがよっぽど前向きだと思ったんです。そう思って作った曲です。

――確かに、関わりのない大勢の人からしたら…という考えかたもありますね。

岩淵紗貴 悔しかったり恥じらいだったりプライドが傷付くこともあったし、色んなことがグチャグチャしていたんですけど、それすらも周りからしたらどうでも良くて。悲しみだとか苦しみだとか…じゃあ「面倒くせっ」と、考えるのをやめたと思って作った曲です。

――それを作品としてアウトプットできるのが素敵ですよね。

岩淵紗貴 そういう環境にいられるのがありがたいと思うんです。

――「シンクロ」についてですが、この楽曲のテーマは?

岩淵紗貴 気持ちは一つだと思っていたけどそうじゃなかった、という。「絶対にこいつだけは許さん」と思って作った曲です(笑)。

一瀬貴之 悪魔みたいな笑いかたするなよ(笑)。

一瀬貴之

岩淵紗貴 マジで許さん!

――実際にそういった感情が生まれた対象がいた?

岩淵紗貴 一度は許したけど二度と許さんと思いました。女の子が「ムカつく!」とか言ってると品がない感じに見られるし、ずっと悪口を言っている人に見られちゃうから、いざという時はグッと我慢していたんですけど。でも「言いたくなること私だってあるよ」と思った時があって。「何でこっちだけ我慢しなきゃいけないんだよ! お前らだけバンバン言いやがって」と思って作りました(笑)。何でこんなに言ったら批判されなきゃいけないんだよって。

――なるほど。「バンドマン」について“3B”というフレーズがありますね。

岩淵紗貴 あれ? あまり言わないのかな? 自分達が3Bに入ってるから気にしてわかるのかな。

一瀬貴之 けっこう普通にネタとかで言う時があります。若い子はわからないかなとも思ったんですけど。

――歌詞を読むと3Bは、美容師、バーテンダー、バンドマンの頭文字3つの“B”をとったフレーズのようですが、「バンドマン」は3Bがテーマの楽曲でしょうか。

一瀬貴之 バンドマンをメインに書いた曲なんです。

岩淵紗貴 だいたい言われがちというシンプルな理由です。

――歌詞では3Bを“ダメな”と表現されていますが、ダメだけど格好良いという解釈ですよね。

岩淵紗貴 そうです。ダメなのかもしれないけど光るものがあるからどうしても魅力的で惹かれちゃうという。決して否定しているわけではないんです。そういうこともあって、それを歌詞にした曲です。だいたい実体験が多いので。

――「誓いのキス、タバコの匂い」も実体験が含まれる楽曲でしょうか。

岩淵紗貴 はい。これはお互い好きとは言わないし、答えを求めることが全てではないということがあって、世の中と自分がかけ離れているなと、朝電車が動き出したくらいに思いながら。2人でいる時間は確かなんですけどね。ただ、それをいろいろ思って一人で書いている時に、寂しいし虚しいんですけど、もちろん何かが欲しいんですけど、でもその関係も楽だったり、それに酔ってる自分がその時いたかなと思います。

――2人というと相手は恋人だったり?

岩淵紗貴 そんな明確なものではなかったです。だから答えを出すことが全てじゃないなって。

人生を一緒に、苦楽を共にできるバンドでいたい

MOSHIMO

――お2人が影響を受けたアーティストは?

岩淵紗貴 スピッツさんが好きです。両親が好きでその影響でよく聴いていました。洋楽ではニッキー・ミナージュ(米・ラッパー、シンガーソングライター)とリトル・ミックス(英・ガールズグループ)が大好きです。めちゃめちゃ格好良いんです。

一瀬貴之 最初は弾き語りが好きでゆずさんなどを聴いていました。それでアコースティックギターを始めたんです。そこから洋楽のウィーザー(米バンド)とかオアシス(英バンド)とかグリーン・デイ(米バンド)とかSum 41(米バンド)とかを聴いていて、邦楽だとBUMP OF CHICKENさんやASIAN KUNG-FU GENERATIONさんとかをメチャクチャ聴いてました。

――最近のロックシーンについて何か思うことはありますか。

一瀬貴之 ライブが良いバンドが残っているなと思います。フェスとかが中心だったり各地で色んなイベントで若い子達とかも積極的にライブに参加することが増えているので、ライブに魅力があるバンドが伸びていると思っていいなと思います。僕は音が歪むバンドが好きなんですけど、最近は歪まないバンドもどんどん増えてきていて。そういうのもいいなって。時代がぐるぐるしていると思います。僕らが中学生くらいの時は歪んでいるバンドが流行っていたり、そこから戻ってきて歪まなかったりとか。

――岩淵さんが最近注目しているバンドは?

岩淵紗貴 後輩のバンドなんですけど、Red in Blueというバンドが格好良いですね。凄く慕ってくれています。私達はちゃんとただジャンルとか関係なく、演奏している人達のステージや言葉に何が込められているかというのを色々聴いて自分達に取り入れようとしています。でも自分達の意思もちゃんと持っていてというのは良いバンドだと思います。

――意識して自分の意思を形として出すことは難しいことでしょうか。

岩淵紗貴 意識しなくても上手くいく人もいるとは思うんです。それは才能だと思うし。どこまで自分のラインで認められたいというのがあるかだろうと思うし、結局音楽なんて聴いてくれる人がいるから成立しているものであって。聴き手が全くいないんだったらただのオナニーじゃないかという話だから。ポンポンやって天才の人は上手くいくと思うし、そうじゃない人はライブのMCだったり作る楽曲だったり、自分がどう見られてるかとかは、案外客観的に見ている人のほうがずっと生き残っていると思うし。

――どこまでのラインを、というのは大事そうですね。

岩淵紗貴 ピンとこないMCの時もあれば、全然お客さんいないのに凄く「わかる!」と思う人もいますし。難しいですよね。わけわからないことを言ってるから人は惹きつけられるのかもしれないし、逆に「そういうことあるよね」ということを言っているのに、ただのいい奴かもしれないし。どこまでのラインなのかという話しになってくるんです。最終的にはどうでもいいんですけど。ライブをやっている時は何も考えていないので。「うるせえ!」って言われたら「うるせえ!」って言うし、「楽しい!」って言われたらそう言うし。

――ライブで大切にしていることは何でしょうか。

岩淵紗貴 ライブが一番の生き甲斐だし一番大事にしています。思っていることをちゃんと言葉と歌にするというのが私の中で一番大事なポイントで。お客さんに対しては仲間と思っていて、人生を一緒に、苦楽をともにできるバンドでいたいというのが私の目標なので、それぞれ彼氏ができたり別れたり、彼女から浮気されてたとか結婚したりとか、色んなことがあると思うんです。上手くいくこともいかないこともあるから、それをライブの時にみんなで、その瞬間しかないものを楽しんでまた次の前向きな自分に繋げようっていうライブをしていける人でいたいと思います。だからこそ極力嘘をつかないようにしようと思っています。

一瀬貴之 今、お客さんとの距離がかなり近いライブをやっているんです。お客さんの話しをMCの時に聴いたり僕らの話しをしたりとか。お客さんとの絆が深いライブだと思うんです。そこは凄く大事にしています。ライブではけっこう好き勝手言っています。岩淵が「自分が彼氏に振られた」とか言ってみんなで応援したり。逆にお客さんの悩みを聞いてみんなで話をして応援するというのもあるんです。

――凄く楽しそうなライブですね。それでは最後に、これからの展望は?

一瀬貴之 自分達の中のツアーのキャパシティで言うとZepp DiverCity TOKYOでやるのがひとつの節目になると思うので、そこを成功させるためにクオリティを上げてお客さんの温度感を上げていけるような楽しいことを考えていければいいなと思います。

(おわり)

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