ダンスロックバンドのDISH//のリーダー北村匠海(Vo/Gt)が歌唱する「猫」のアコースティックアレンジ動画が注目を集めている。YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」の、この動画の再生回数は3月20日の公開から10日間で約300万回再生され、4月上旬の現在では公開から1カ月足らずで再生回数800万回超えと急上昇中だ。そこで、大反響を受けている「猫」という楽曲の詳細、魅力と秘話について触れたい。

ほとばしる情念が存分に味わえるアコースティックバージョン

 楽曲「猫」は、2017年リリースのシングル「僕たちがやりました」のカップリング曲。ストリングスの導入から広がる哀愁漂うテイストの温かく煌びやかなバラードソングで、ファンの間で最も人気の高い隠れた名曲という。

 「猫」のアコースティックアレンジバージョンの動画を公開している「THE FIRST TAKE」は、2019年11月15日に開設された一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取るYouTubeチャンネル。スタジオに置かれた一本のマイクと向き合い、一発撮りのパフォーマンスをするという内容のもの。

 ピアノ、アコースティックギター、パーカッションという編成でアレンジされた「猫」のトラックを北村がヘッドフォンで聴きながら歌唱。北村の歌唱力と表現力が広がるようにピュアに表されている。

 アコースティックアレンジの場合、エレキギターやシンセサイザー、ストリングスなどが加わるフルアレンジに比べて、音数が少ないぶんアンサンブルにおいてある種の“余白”が生じる。その余白を北村が自身の歌唱の魅力で埋め尽くしたという部分が、このテイクの魅力ポイントの一つではないだろうか。

 アンサンブルに滲む北村の色気あふれる情念、艶やかで生々しい発声のニュアンス、ボーカルのダイナミズム、ほとばしる情念が存分に味わえるのはアコースティックバージョンならではだ。

 それは、「歌(メロディライン)と最小限の数の楽器」だけで表現されたアレンジは、旋律、リズム、ハーモニーという音楽的に核となる三大要素が非常にわかりやすく感じられるという理由があると考えられる。

初めて味わう空間(北村匠海)

 情念を表すことに特化したメロディラインと細かい歌い回しの要素はより感じやすくなり、サビのハイトーン部分でいっぱいに広がるエモーション、アコースティックアレンジでさらにクッキリと浮き出る北村の声の倍音成分(音数が少ないぶん北村の声の周波数を広く聴き取りやすい)、原曲音源テイクでは聴けないボーカルフェイクにファルセットボイスの披露――そして“一発録りのパフォーマンスの緊張感”が、楽曲と歌詞、歌唱の生命力あふれる世界観を表し、聴き手を没入させてくれる。

 北村はこの動画に対してこのようにコメントしている。「ライブでもレコーディングでもない、本当に初めて味わう空間でした。緊張しましたが、メンバーがアコースティックバージョンで良い音を録ってくれたので、その音に助けられながら楽しく歌うことができました」。

 作詞作曲を手掛けたあいみょんは動画を見て「猫、私の大好きな曲! いつも大切に歌ってくれてありがとう。曲作れてよかったと毎回思います」と、自身のInstagram(ストーリー)でコメントを寄せた。

 さらに、この動画のテイクを聴いたあとに原曲アレンジのバージョンを聴くと、「このメロディありきのこのアレンジか!」というような色々な発見があるかもしれない。北村の一発録りパフォーマンスと秀逸なアコースティックアンサンブル、これらにより楽曲の持つ魅力がより明瞭に生々しく表れている。そして、そのなかで北村の歌唱がより鮮明に、エモーショナルにフルブーストされていることをストレートに感じられることが、この動画のテイクの魅力として挙げられるのではないだろうか。【平吉賢治】

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