半崎美子「芯の部分をこれからもしっかりと」上京20年の“布石”に迫る
INTERVIEW

半崎美子「芯の部分をこれからもしっかりと」上京20年の“布石”に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年03月31日

読了時間:約12分

 シンガーソングライターの半崎美子が3月11日、シングル「布石」をリリースした。今作の表題曲である「布石」は、自身が上京して20年の想いと、スポーツや介護などジャンル問わず一つのことを続けていくことの素晴らしさを肯定してくれる1曲。「サクラ~卒業できなかった君へ~」でアレンジを担当した亀田誠治と約3年振りにタッグを組み制作された。

 シングルには2011年3月11日に発売することが決まってから書いた新曲「朝凪」や、復興コンサート『つながる心 つながる力 みんなでつくる復興コンサート 2019』で出会った1曲で半崎にとって初のカバー曲の収録となった「わせねでや」、恒例となっている合唱バージョンには仙台南高等学校音楽部合唱団が歌った「サクラ~卒業できなかった君へ~ 合唱 ver.」の全4曲を収録した。インタビューでは楽曲に込められた想いから、無意味だと思えることでも未来への布石になるという、その言葉の真意を聞いた。【取材=村上順一】

失敗の経験が未来への力に変わる

「布石」ジャケ写

――上京されて20年経ちますが、当時はどのような気持ちでしたか。

 東京に来たのは良いものの、どのように音楽活動をしていけば良いのかというのをすごく考えていました。音楽活動するためのツテも全くなかったし、一人暮らしも初めてで、住み込みで働いていた、慣れないパン屋の仕事にも追われて、当時は生きていくのに精一杯でした。

 パン屋のお仕事が慣れてきて、音楽活動をどうしようかという時に、タウンページがあったので、それで事務所やレコード会社を調べて直接デモを持っていくということをしていました。それと並行してクラブにデモを持って行って、そこで歌わせて頂いたり。

――そういった活動も思い出しながら「布石」の歌詞を書いて。

 そうです。でも、私の事だけでは留まらないというのがあって、一人称ではなくて「あなた」という言葉で展開しているんです。一つのことを続けている人は音楽やスポーツだけではなくて、仕事や介護や育児など沢山あります。それぞれの布石に出会えるように書きました。

 ショッピングモールのライブ後にサイン会で、皆さんと対話している中で、介護に奮闘されている方などの胸の内を聞かせて頂くこともあります。それでも続けているということの強さ、そのことに力をもらいました。そういった方たちを讃える意味もありますし、自分の20年という意味もあります。

――ショッピングモールで歌った後に、皆さん涙しながら半崎さんに話しかけている姿を見たことがあります。

 本当に、皆さん私に色んな話をしてくださるんです。そうやって打ち明けてくれる事に感謝しかないです。

――そこは半崎さんだからこそだと思います。歌を通じて、半崎さんになら話したいと思わせる何かがあるんじゃないかなと思います。一つの事を続けていく事はすごく大変ですよね。

一つの事を続けていくことは、それ以外のいろいろなものをあきらめたり、手放すことだと思います。それはとてもかけがのないことだと思っています。私自身に置き換えてみても、これまでの日々の様々なできごと、報われないことや、失敗の連続なども今日に繋がる布石だったと思います。今現在「こんな事をやって何になるんだろう」ということでも、それは未来に繋がる“布石”になんだと思えるように、肯定的に歌詞を書き上げました。

――すごくポジティブな半崎さんですが、過去には後悔されたことも?

 もちろん後悔したことはあります。でもそれは瞬間的なことでずっと引きずることはないんです。それも意味があったと思えるようになっています。

――そう思えるようになるには?

 過去の布石、私の場合は上京した時の大変だったことなどを思い出すと、今の失敗は大したことじゃないと思えることがあります。誰かと比較するのではなくて、自分自身と比較してその過去の経験というのは例え失敗であっても未来への力に変わることもあるんです。

――失敗の連続すらも宝物みたいになっていて。

 まさにそんな感じがあります。

亀田さんと一緒に歌っているような感覚があったREC

――「布石」は亀田誠治さんがアレンジ、プロデュースで参加されていますが、久しぶりですね。

 そうなんです。「サクラ~卒業できなかった君へ~」以来なので3年振りでした。今回、亀田さんにアレンジしていただけると聞いてから楽曲を制作していたんですけど、もう作っている最中から亀田さんのサウンドが頭にイメージとしてありました。なので、亀田さんのサウンドにも引っ張られるようにメロディが生まれた感覚もあるんです。

――イメージから引っ張られるというのは面白いですね。

 最後の畳み掛けのところも、亀田さんがアレンジしてくれると知らなかったら、違った感じになっていたんじゃないかなと思います。亀田さんとの相乗効果みたいなものが、メロディを作っている段階からあったような気がしています。

――半崎さんの曲と亀田さんのアレンジの相性もすごく良いなと感じました。私の中では音楽に対する思考も似ているような感覚があって。

 亀田さんが主催されている『日比谷音楽祭』のスタンスもすごく共感できました。私の音楽に対するスタンスも亀田さんと同じような感覚があります。私はショッピングモールというのがそのような場所ですけど、ボーダレスというのは同じだと思います。

――あと、バックを支えるミュージシャンもすごい豪華です。亀田さんのベースを始め、ドラムに山木秀夫さん、ギターに小倉博和さんと西川進さん、ピアノに皆川真人さん、今野 均ストリングスが参加されています。

 レコーディングも感動でした。ストリングスの情感も素晴らしくて、イントロからアウトロまでの音が織りなすストーリーにも注目していただけたらと思います。

――生の躍動感が楽曲をさらに引き立てていますよね。歌に関して亀田さんとのレコーディングはどんな感じでしたか。

 亀田さんはアーティストの思いをいつも尊重して下さいます。自由度も高く、「今の良かったよ」とか、歌声と会話してくれていて、亀田さんと一緒に歌っているような感覚がありました。亀田さんが楽器をレコーディングしている時も、音楽を心から愛しているというのがすごく伝わってきます。ミュージシャンの方々も大御所ですが、音楽が楽しいという新鮮さがすごく感じられました。そして、私自身も健やかに自由に伸び伸びと歌わせていただきました。

――音楽愛に満ちた空間で。

 それはすごく感じました。長年音楽に携わってこられた方々が、何十年も変わらずそういった気持ちを持たれていることは希望になりましたし、このような方々と一緒に制作出来ることが本当に光栄です。

――楽曲の制作方法はメジャーデビューされてからの3年間で変化された部分もありますか。

 基本的には変わっていないです。スタジオでピアノに向かって溢れ出たものを落とし込む感じです。変化とはまた違うかもしれないんですけど、最近校歌を作らせて頂いたり、天童よしみさんに楽曲を提供させていただいたりして、以前より幅が広がったと感じています。

――校歌を作ってみていかがでしたか。

 佐賀県にある佐賀星生学園の校歌を作らせていただきました。「それぞれの星」という曲です。自分の曲を作るのとはまた違った難しさがありました。制作にあたって、生徒さんにお話を聞きにいったりもして、それが大きく曲に反映されているので、そういったところで変化した部分はあるかもしれません。

――天童よしみさんが昨年末の『第70回NHK紅白歌合戦』で「大阪恋時雨」を歌唱された時はいかがでした?

 もう、紅白に自分の名前が出たときに感動して泣いてしまいました。次は自分自身が出れるように頑張りたいです。

――天童さんの歌から影響を受けたりも?

 純粋に天童さんの歌の圧倒的なパワーをただただ感じていました。感動とともに、背中を押してもらいました。影響と言いますかそういうのとはまた違った目線で見てしまっている自分がいて、ファン目線なんです(笑)。歌唱力、表現力、声のふくよかさ全てに心が震えます。

――他にもどのような時に歌や音楽の力を感じる時がありますか。

 今『あなたの学校へ歌いに行きます!』という企画をやっていて、訪れた学校の生徒さんが「明日への序奏」を歌ってくれたんです。子どもたちのエネルギーによって、自分では表現できないものになっていました。そこから受けた刺激は大きかったですし、強い力を感じました。テクニックや技術ではないところに、人を感動させる力がすごくあるんです。歌にもスポーツにもそういったものはきっとあると思います。

――それこそ今作に収録されている「サクラ~卒業できなかった君へ~ 合唱 ver.」もそうですよね。

 心に響くものがありました。宮城に行ってレコーディングにも立ち会わせていただいたんですけど、本当に涙が止まらなかったです。仙台南高校の皆さんに歌ってもらえたことにもすごく意味があると思いましたし、その後、生徒さんからメッセージを頂き、なおさらその意味を実感しました。

――どのようなメッセージを?

 歌詞にある<あなた>は、私は津波で亡くなってしまった同級生のことを思って歌いましたが、聴いた人それぞれの“あなた”に届くように歌いました、とメッセージを下さって。仙台南高等学校音楽部合唱団の皆さんが楽曲をすごく深いところまで受け止めてくれて、レコーディングに臨んでくれたのがすごく伝わってきました。東日本大震災を乗り越えて、子どもたちがたくましく成長しているんだなと歌を通じて思いました。

自分というよりも誰かの想いを歌にしている

『「うた弁2」発売記念コンサートツアー2019 』DVDジャケ写

――さて、カップリングの「朝凪」は、今作が3月11日のリリースということもあって作った1曲とのことで。

 はい。この曲も溢れ出た感情をそのまま歌にしました。ピアノのイントロから引き寄せられるものがあって、間奏の演奏も希望に満ちていて。タイトルにもありますが、曲も静かに漂うような、凪をイメージして作りました。

――朝凪というタイトルが全てを表現されていますよね。もう一曲の「わせねでや」は宮城県の避難所で生活をされていた方の原詩から生まれた歌だとお聞きしました。

 そうなんです。「わせねでや」は“忘れないで”という言葉なんです。昨年の復興コンサートでこの詩に出会いました。その時に仙台フィルや仙台南高等学校音楽部合唱団の皆さんとご一緒させていただいて歌ったんです。その時に歌の源流に触れた感覚がありました。誰しもが書けるものではなく、そこで営み、生活している方にしか書けない詩で、歌というものは本来そういうものなんじゃないかなと思いました。これまで自分の作品に自分の曲以外の歌を入れたことはなかったんですけど、初めてカバー曲を収録しました。

――源流に触れたという言葉を聞いて、半崎さんの歌にはブルースを感じるんです。この詩に惹かれたのもそこも関係しているんじゃないのかなと思いました。

 ありがとうございます。ブルースは好きなのですごく嬉しいです。

――カバーだと歌う意識はまた違ったものになるんですか。

 いえ、変わらないです。自分の曲でも他の方の曲でも詩に込められた想いを、自分なりに受け取ってそれを描きながら歌うので、自分の曲を歌う時と大きくは変わらないんです。

――ジャケット写真も印象的です。メジャーデビューされてからご自身が登場することがなくなりましたが、そこはなにか考えがあるのでしょうか。

 漬物石ですね(笑)。そう言われてみれば確かにそうですね。それは自分というよりも誰かの想いを歌にしているという感覚がすごくあるからかもしれません。なので様々な人に重ねらるようにというのが、ジャケット写真にも出ているのかなと思います。深く考えたわけではなく、それは自然とそうなっていきました。

――2020年も4分の1が過ぎ去ろうとしていますが、半崎さんがこれからやっていかなければならないと思っていることはありますか。

 自分が今までやってきた活動というものが、ショッピングモールでの活動や学校での活動だったり、それぞれの根を深くしていくということがすごく大事だと思っています。いろんなことにチャレンジするのはすごく大事なんですけど、それよりも芯の部分をしっかりと続けていきたいと思っています。

――6月から『上京20年記念 半崎美子 集大成コンサートツアー2020』もありますが集大成ということで、どのようなステージになりそうですか。

 まだ細かいところは決まってはいないんですけど、これまでは東京のみだったり、大阪と東京2公演だったのですが、今回は集大成ということで6会場で行います。映像を駆使しストーリーを紡ぐというのは変わらずにやりたいなと思っています。上京して20年の集大成なので、自分の想いもそうですけど、この20年で出会った方達、その方々が私をここまで導いてきてくれたという思いがあるので、一緒に作っていくコンサートになると思います。是非、遊びに来ていただけたら嬉しいです。

(おわり)

作品情報

半崎美子
●シングル「布石」
2020年3月11日発売
CRCP-10442 1091円+税
※ 「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」合唱譜付き

1. 布石
2. 朝凪
3. わせねでや
4. サクラ〜卒業できなかった君へ〜 合唱 ver.(歌唱:仙台南高等学校音楽部合唱団)

●LIVE DVD『「うた弁2」発売記念コンサートツアー2019 銀河鉄道39 ★きらり途中下車の旅★』
2020年3月11日発売
Blu-ray CRXP-10006 4091円+税
DVD CRBP-10065 3182円+税

収録内容
01.明日を拓こう
02.稲穂
03.お弁当ばこのうた〜あなたへのお手紙〜
04.ぼくはぞうきん
05.時の葉
06.深層
07.心の活路
08.大阪恋時雨
09.明日への序奏
10.母へ
11.最後まで
12.明日へ向かう人
13.満ちていく明日
14.灰汁
15.歓びのうた
16.サクラ〜卒業できなかった君へ〜
17.一緒の星
18.次の空

Encore
01.永遠の絆
02.感謝の根

※2019.11.14 @Bunkamura オーチャードホールでのコンサートを全曲収録

・半崎美子、北海道ツアー第2弾 開催決定

HBCラジオ「ハンザキラジオ」スペシャル
半崎美子 明日を拓くコンサート 北海道ツアー2020

8月29日(土)富良野市:富良野文化会館
14:30 開場 15:00 開演

8月30日(日)幕別町:幕別百年記念ホール
14:30 開場 15:00 開演

9月1日(火)釧路市:まなぼっと幣舞
17:30 開場 18:00 開演

9月5日(土)稚内市:稚内総合文化センター
14:30 開場 15:00 開演

9月7日(月)士別市:士別市民文化センター
17:30 開場 18:00 開演

9月9日(水)札幌市:カナモトホール
17:00 開場 18:00 開演

前売リ:4500円 当日:5000円(税込、全席指定 未就学児入場不可)

・半崎美子、2020年集大成コンサートツアー開催決定!

「上京20年記念 半崎美子 集大成コンサートツアー2020」

6月6日(土)大阪・NHK大阪ホール
16:30/17:30

7月5日(日)名古屋・名古屋市公会堂
16:30/17:30

7月11日(土)高松・レクザムホール小ホール
16:30/17:30

7月23日(木・祝)福岡・国際会議場
16:30/17:30

7月26日(日)仙台・トークネットホール仙台大ホール
16:30/17:30

8月16日(日)東京・Bunkamuraオーチャードホール
16:00/17:30

前売り 全席指定(大人)7000円(税込) / 全席指定(小人) 2000円(税込)

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