市原隼人が映画『劇場版 おいしい給食 Final Battle』(3月6日公開、綾部真弥監督)で主演を務める。昨年10月から12月に放送されたドラマ『おいしい給食』の劇場版。1980年代の中学校を舞台に、給食マニアの教師・甘利田幸男(市原隼人)と給食マニアの生徒・神野ゴウ(佐藤大志)の給食にまつわる闘いを描いた学園グルメコメディだ。ドラマでは市原の振り切った演技が話題を集めたが、劇場版でも存分に発揮している。そんな市原は、甘利田のライバルを演じた13歳の佐藤にデビュー当時の自身を重ねた。同じ年頃に映画『リリイ・シュシュのすべて』でデビューしており、その背中を親の眼差しで見ていたようだ。この作品を通して改めて演じることの喜びも感じたという市原。意識的な原点回帰にもなった本作への思いを聞いた。【取材・撮影=木村武雄】

給食シーンはほとんどアドリブ

――映画化にあたって役作りで心掛けたことは何でしょうか。

 甘利田幸男は癖があり、昭和の古き良き人物でありながらも、今では億劫になって言えない事も言えてしまう人物で、この時代だからこそ彼の言葉が響くと思います。コンプライアンスや規則が厳しくなっていく今の時代に、もう一度、人間臭さを見直しても良いのではないか。愛嬌があって子供が見ても笑えて、年を重ねた方には日本が誇る義務教育の中で与えられた、栄養バランスのとれた給食というものを思い出せる。それを実現させるために、年齢を問わず楽しめるようなキャラクターにしたいと思いました。作品自体はクオリティが高く、映画としてのバランスもしっかりとれている。ドラマも映画も自分の中で一生残したい作品になりました。

――振り切った演技が話題を集めていますが、もともとそういう設定だったのですか。

 クランクイン前から、どうしようかと悩んでいました。自然体な芝居にするのか、それともオーバーにするのか、漫画っぽくするのか、日常的な芝居にするのか、メガネを掛けるのか掛けないのかなど。現場に入る前日に綾部監督と電話していて、その中で「行くとこまでやっていきましょう。それぐらいの方が作品の色になって良いんじゃないか」と仰って。それまでは「自分だけ行き過ぎて周りと差が出てきてしまっても駄目かな」と色々と考えていましたが、監督がそう話されて改めて火が付きました。現場では、動きも含めて脚本に書いていないことがほとんどでした(笑)。足を上げるのも勝手にやっていて(笑)。

甘利田幸男(市原隼人)。振り切った演技が話題になった(C)2020「おいしい給食」製作委員会

――先ほど「一生残したい」と話されていましたが、その具体的な理由は。

 どんな方が見ても角がない、ある意味教育番組のようなものになったと思っています。食の喜び、物の大切さなど、物事の根源を教えてくれています。学びだけでなく笑いもあり、色々な要素が含まれていて、時代が変わっても間違いなく廃れない作品だと感じています。僕がもし教師だったら学校で流したいぐらいです。

――ご飯を綺麗に食べていると思いきや勢いよく頬張ったり、口を拭っていたり、そのギャップが面白くて。

 ああいうのも自分で勝手にやってしまって。監督も笑ってくれるから、乗せられてしまって(笑)。給食で食べているシーンはほとんどアドリブです。途中で踊るシーンは、綾部監督から「もう少し乗ってみようか」と言われてやっていくなかで物足りなくなってしまって。ドラマの第一話では動きがまだ小さいですが、最終回、そして映画ではもうノリノリになっていましたから。

 映画の撮影ですごく嬉しかったのは、監督が「何でも言ってください」と仰って下さったことでした。一般的には役者に気を使って、走るシーンではなるべく走らないようにしたり、シーンのカットが無駄にならないようにして下さるんですが、この作品はそういうことを求めていないような気がして。それで「使われなくてもやります。役者としてもそれが醍醐味です」と伝えました。結果、全く映っていないシーンもありましたが、例え使われなくても何かに挑戦できる環境を与えて下さったことは嬉しくて。素敵な現場でした。

――食べるシーンはライブ感がありましたが、何回かに分けて撮っているんですか?

 長回しで1回完食します。それで、部分部分を細かく撮るためもう一回食べます(笑)。なので、2回は必ず食べていました。それにプラスして生徒たちよりも量が多くて…いっぱい食べているところを撮るために…。でも、本当に美味しくて。「パンと牛乳がこんなにも合うんだ」とか、きなこパンが出てきたときは「昔は待ち遠しかったな」と思ったり、冷凍みかんはただ冷凍しているだけかと思ったら手間暇かけて作られていたことが分かったり、繊細なことですが、食のありがたみを改めて考えるきっかけにもなった作品でした。

(C)2020「おいしい給食」製作委員会

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