4ピースバンドOfficial髭男dism(通称ヒゲダン)が2月12日、Newシングル「I LOVE...」とLIVE DVD&Blu-ray&CD『Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館』を同時リリースした。LIVE DVD&Blu-ray&CDは2019年7月8日に開催された自身初の日本武道館公演の映像が収録された作品。この公演では観客12000人を動員。2019年第70回NHK紅白歌合戦出場も記憶に新しいなか、ここでは武道館公演を実際に観戦した視点も含み、ヒゲダンのライブの魅力に迫りたい。

時間軸と空間をグルーヴさせる表現力

 彼らのライブの魅力として「ライブそのもののグルーヴ」に注目したい。それは、楽曲演奏の独自のグルーヴ感に加え、公演での“間”や“流れ”などから「心地良く吸い込まれる」という魅力を感じることができたからだ。

 昨年7月8日の武道館公演では、360度囲まれたステージにヒゲダンの4人に加えてホーンセクション3名、パーカッション、鍵盤・マニピュレーターというバンド編成。厚み十分のアンサンブルであらゆる曲調の楽曲を披露してくれた。

 ロックにブラックミュージック、ダンスミュージックなど数々の音楽性で表現される彼らの世界観は豪華編成で生々しく、そして軽快に情熱的にパフォーマンスされていた。ポップ感溢れるナンバーからバラードチューン、ビートの効いた楽曲と、様々な音楽性の楽曲を聴かせ、オーディエンスを1秒たりとも退屈にさせることはなかったように感じた。

 なぜそう感じたかというと、カラフルな楽曲やパフォーマンスの素晴らしさもちろんだが、とにかく曲間が絶妙で、全編を通して体感的に心地良かったことが理由だ。実際には演出でもパフォーマンスでもない点なのだが、披露する曲目の“間”、MCの箇所と尺、煽るタイミングなどは、ライブにおいて非常に重要な点ではないかと思える。

 「このタイミングで来て欲しい」「ここで一息欲しい」という場面で、メンバーとオーディエンスと呼吸を合わせるように、常にベストタイミングのアプローチでライブを展開していた。

 別の分野で例えると、漫才やコントの場合、どんなに秀逸なネタでも“間”が微妙だったりすると、どうも笑おうにも笑えなかったりする。逆に間が絶妙だった場合は、たとえ噛んだりしていても勢いで爆笑することもある。その呼吸感のような領域を狙ってやるということは、非常に難しい点だと思われる。

 YouTubeなどの動画コンテンツだったらカットの割合やテロップの頻度など、生々しさとエディット感のバランスが生み出す「意識が気持ち良く入り込めるタイミング」がある。彼らのライブの場合だと、楽曲や演奏、そして「演奏以外の部分」の流れも非常に気持ち良く、ライブ空間に終始没頭できるのである。

 それを物語っていたのか、武道館公演での藤原聡(ボーカル・ピアノ)の歌唱のブレイク部分で大歓声が上がったのは印象的だった。演奏自体のクオリティの高さはもちろんだが、そのあたりにも意識を向けるとより一層、ヒゲダンのライブの楽しみが増すかもしれない。

間口の広い音楽性と様々な“フック”

 そしてヒゲダンの作品の魅力の一つとしては、「間口の広さ」による受け入れやすさがあると感じられる。歌詞もサウンドも楽曲展開も、老若男女誰もが受け入れられる懐の深さと華がある。

 それは、「Pretender」や「Stand By You」など数々のキラキラと輝く楽曲や、歌詞の世界観からもうかがえる。どの楽曲にも音楽的アプローチ、歌詞のフレーズに色とりどりのフックがあり、多くのリスナーがどこか一つ以上は刺さるポイントがあるのではないかと考えられる。

 ちなみに、個人的に最初にヒゲダンで刺さったポイントとしては、「Pretender」の歌詞の一節<否めない>という部分だった。これは、サビの<グッバイ 君の運命のヒトは僕じゃない 辛いけど否めない でも離れ難いのさ>という部分なのだが、「この曲調で“認めたくない”というような感じのサラッとした言葉を選ばず、“否めない”というフックともなる言葉をチョイスしたことに意外性と独自の感性を感じた」という風に、そこから彼らの魅力に引き寄せられた。 

 そうなってくると、「誰もが入りやすい」という点に繋がってくるように思える。フックの豊富さという点が広く分布されながらも、ヒゲダンの楽曲は独自の統一性でカラフルに仕上がっている。それは、最新曲の「I LOVE...」からも十分に感じることができた。メロディ重視で聴く場合も歌詞重視でも、サウンドの心地良さを求める場合も、ビート感に敏感であっても、リスナーがどの角度からも入り込めるポイントがあるように思える。

 個々がフォーカスする楽曲のポイントに対しての間口は広く、ここぞという場面ではライブで一斉に会場一体となれる。そしてその間口の広がりは、ライブでの呼吸感で増幅する。一度入れば、そこにはヒゲダンの色鮮やかな魅力が待っている。

 間口が広く独自の統一性のある音楽性を持ちつつ、ライブにおいて人を惹きつける「時間軸と空間をグルーヴさせる表現力」という魅力がある。生身の人間がその瞬間瞬間で放つ “ライブそのもののグルーヴ”を孕んでいることが、全世代に響く彼らの音楽の魅力の一つなのかもしれない。【平吉賢治】

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