歌手の安田レイが7日、東京・EX THEATER ROPPONGIで『安田レイ LIVE 2020「Invisible Stars」』公演をおこなった。本公演は安田レイとして初のフルバンドスタイルでのワンマンライブ。本編15曲は様々なカラーのアプローチで鮮やかに披露され、本公演のために作ったという1曲もアンコールで披露された。公演中に今年の攻めの姿勢を言葉としても表した安田は、7月のワンマンライブの開催と3rdアルバムリリースもアナウンス。「見失っているもの、忘れてしまっている大事なものを発見しよう」というテーマの本公演はスタンディングオベーションで締めくくられる大盛況の一夜となった。【取材=平吉賢治】

フルバンドスタイルで映える安田の歌唱力

安田レイ

 この日の東京・EX THEATER ROPPONGIのステージは上方に広がるカーテン状の布がオーロラを模すような美しいセット。バンドセットはドラム、ベース、ギター、キーボードの4人編成。照明が落ち、青い光に包まれるなかバンドによる前奏が鳴り響き、数秒するとワインレッドを基調とした衣装に身を包んだ安田レイが登場。

 オーディエンスからの拍手を浴びながら、生命力あふれる声量と艶やかな歌声で「Not Enough」からライブスタート。安田は静と動のセクションにわかれるような展開の楽曲をエモーショナルに歌い、「みなさん今日は楽しんでいきましょう!」と、笑顔を咲かせた。

 茜色と紫のライティングが「over and over」のノスタルジックなメロディを映えさせ、安田のボーカルが心地良く浮遊した。会場の抜群の音響で生で聴くと、改めて安田の歌唱力の高さに驚かされる。肩をナチュラルに揺らしながら歌声と共に元気を振りまくその姿、音楽を浴びると、極寒だったこの日の東京の空で冷え切った体の温度はどんどん上昇していく。

 「up to ME」のエレクトロビートが走り出すと安田は低音域からのしっかりとした歌唱、そしてセクションが変わるとリズミックなボーカルと、開始から3曲で様々な歌のカラーを広げた。そして「きっとこの曲がきっかけで私を知ってくれた方もいると思います。Clap!」と客席に放ち、「アシンメトリー」を披露。

 安田レイと四つ打ちビートのマリアージュが存分に味わえるこの楽曲のライブテイクは、ファンでも初見のオーディエンスでもたっぷりと楽しめる。それはオーディエンスの様子に目を向けると一目瞭然だった。以前安田が、「私のライブが人生初ライブ、という方がなぜか多いんです」と語っていたのを思い出した。終演後のことだが、後席の方々の会話に耳を傾けると「今日、人生初ライブなんです」と言っている方々が実際にいたことが確認できた。安田には確かにライブの楽しみを引き寄せる力があるのだろう。

メドレー、アコースティック、魅せる様々なカラー

安田レイ

 MCでは「過去にあった曲があっての今の自分だから、全てにありがとうという意味でちょっと過去の曲も」と、ウェストコーストなテイストが光るギターカッティングを挟み「キラメキmoonlight」からメドレーで3曲を連ねた。16ビートで刻まれるバンドの生演奏の上を安田の歌が華やかに駆け抜け、「You’re the one」ではオーディエンスはスタンドアップ&クラップの好反応でライブの熱気を膨らませる。そして「Just for You」のしっとりとしたムードのなかメドレーは華麗に着地。

 水面に美しく滴る雫のようなピアノの音色で曲間は繋がれ、ピアノと歌のみの編成で「Regret」が響き渡った。シンプルな2パートで際立つ安田の歌声は、ブレス、豊かな声の倍音と、ボーカルの成分がくまなく耳に染み渡ってくる。続く「One Last Word」はアコースティックギターにアップライトベース、ドラムという編成でムーディーに奏でられた。

 安田のボーカルの魅力は、声量、ピッチの正確さ、メロディの抑揚はもちろんだが、特筆すべきはバラード調の楽曲でも揺るがないグルーヴ感ではないだろうか。それは、こういった曲調だと「聴き入る」という反応がほとんどなのだが、バラードでも体を揺さぶられていることでそのポイントに気づくことができた。その点は、ハーフシャッフルの楽曲「bring back the colors」でさらに際立ち、“Invisible Stars”が照らすグッドフィーリングな世界にオーディエンスをいざなった。

 ピアノとハウスビートの清涼感がたまらない「Let it Snow」、後奏でのロングギターソロで背中合わせの情熱的なパフォーマンスを見せた「Mirror」、心に寄り添うようなボーカルで「きみのうた」を披露すると、安田は「まだまだライブは続きます!」とオーディエンスへ向け、再びアップテンポの「Brand New Day」へと突入。安田とオーディエンスの右手はシンクロして左右に振られ、会場中が一体となる景色を見せた。

見失っているもの、忘れてしまっている大事なものを発見しよう

安田レイ

 ライブ終盤を前に安田は「今日のライブもけっこう攻め攻めですけど、安田レイは2020年もどんどん攻めて行きます!」と、今年の攻めの姿勢を高らかに宣言。そして「色んな楽しいことが待っている」と、7月10、12日の東京、大阪でのワンマンライブ開催、さらに3rdアルバム『Re:I』3月18日リリースをアナウンス。会場からは全員買って全員ライブに行くのではないかというほどの盛大な拍手が沸いた。ニューアルバムには自身作詞作曲の楽曲が2曲加わるという。それらは「みんながびっくりするような世界観の曲、私からいつも応援してくれているみなさんに向けた曲を作った」と、安田は期待感高まるメッセージを投げかけた。

 そしてライブはパワフルなキックとシンセサイザーのサウンド、そこに乗る安田の艶やかなメロディがダイナミックに舞う「fortunes」から本編ラスト曲「Best of my Love」まで走り抜けた。最後はオーディエンス総立ちとなって響き渡るクラップの拍が曲中で鳴り止むことはなかった。終曲後、「今年はどんどん攻めて新しい安田レイを見せて行きます!」という頼もしい一言でライブの幕は閉じられた。

 アンコールに応えて再登壇したのはメンバー全員ではなく安田レイ一人だった。安田が「実はこのライブのために1曲作りまして」と告げると鍵盤の前に移動し、弾き語りで本公演のための楽曲「Blank Sky」を披露した。

 <きみにあげたいものは 目にはみえないものさ>という導入のこの楽曲は、切なくとも美しさを含んだ和音進行で優しく進み、スローなテンポで聴き手を温かく包み込むように歌唱された。吐息混じりのボーカルからハイトーンにロングトーンと、安田の歌の魅力が凝縮されつつもストレートに、音としてメッセージとして心に染み渡ってきた。何もない空を見上げた時に、本当に大事なものが見えるような心境が歌から滲み出ていた。

 本公演『Invisible Stars』のテーマは「見失っているもの、忘れてしまっている大事なものを発見しよう」というもの。そう安田は言葉にした。本公演で発見したものがどれだけのことだったかということは、アンコール楽曲を着座で聴いていたオーディエンスがスタンディングオベーションで応えたことが、何よりも物語っていた――。

この記事の写真

記事タグ