ロックバンドのWANDSが19年ぶりの再始動を発表。柴崎浩(Gt)、木村真也(Key)、そして新ボーカリストの上原大史を迎えた第5期WANDSに注目が集められている。WANDSは、新曲「真っ赤なLip」の2020年1月29日リリースを発表し、始動発表から4日後の11月17日、大阪でおこなった無料ライブイベント<DFT presents 音都 ONTO vol.6>が第5期第一弾ライブとなり、新たなスタートを切った。ここでは、1990年代のシーンを席巻したWANDSの音楽的魅力を改めて振り返りつつ、上原を加えた第5期WANDSの展望に迫りたい。

1990年代のシーンを席巻したWANDSの数々のヒット曲

 1990年代に日本の音楽シーンで絶大な支持を得たWANDSというバンド。活動時期は1991年から2000年にわたり、第3期活動中の2000年に“解体”という形で活動休止となった。

 彼らが精力的に活動した1991年から1996年までの第1期、第2期にフォーカスすると、「もっと強く抱きしめたなら」「世界中の誰よりきっと(中山美穂&WANDS)」「時の扉」「愛を語るより口づけをかわそう」「世界が終わるまでは…」など、他にもWANDSの代表曲は非常に多く、どの楽曲も親しみやすさと力強さを兼ね備えていた。そして先述の5曲は全てオリコンチャート最高位1位と、セールス的にも驚愕の記録を残した。

 この度の再始動は、ミュージシャン、俳優、タレントのDAIGOが2018年に「もっと強く抱きしめたなら」のカバーを披露し、話題を集めたことがきっかけの一つともされている。この楽曲に限らず、WANDSの代表曲は20年以上前の作品が多いなか、いまも色褪せずに輝きを放っている。

第5期では「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」も

 WANDSの新作「真っ赤なLip」には、“〜WANDS 第5期 ver.〜”として、WANDS第2期の2曲が収録される。(通常盤、タイアップ盤に各1曲ずつ)

 そのうちの1曲、「もっと強く抱きしめたなら」は、メロディや和音進行が密に練られた楽曲を力強く、少し陰のある色気を含んだ上杉昇の歌唱、そして柴崎浩のテクニカルなギタープレイに芳醇なサウンドメイク、ポップで鮮麗なセンス溢れる大島康祐の鍵盤のプレイと、ポップ性、ロック色、美しいメロディのバランスが秀逸な爽快感溢れる作品だ。この楽曲は広くリスナーに受け入れられ、当時ミリオンヒットを記録した。

 特筆すべき点は、上杉昇の唯一無二ともいえよう個性で歌い上げるたくましい歌唱に色気と、どこか儚さを含んだ叙情感、深い人間味が滲む歌唱だろうか。比較的高低差の激しいメロディを悠々と堂々と歌い上げる歌唱力には当時も現在でも定評がある。

 もう1曲、「時の扉」は、曲のタイトルのイメージを具現化したような柴崎浩によるイントロのギターフレーズが印象的だ。ロックなアプローチにとどまらず、軽快なカッティングや煌びやかなアルペジオフレーズが織り込まれたポップなギターアレンジは、柴崎浩の音楽的バックボーンの深さが滲み出ている。「時の扉」に限らず、木村真也らのハイトーンコーラスがサビの輪郭を明瞭に輝かせるという点も、WANDS楽曲の魅力のひとつだろう。

 そんな「時の扉」がタイトル曲となった2ndアルバム『時の扉』には、「もっと強く抱きしめたなら」、上杉昇がリードボーカルバージョンの「世界中の誰よりきっと」、シングルカットされてもおかしくなさそうな楽曲「星のない空の下で」などが収録されている。第2期WANDSの魅力が溢れんばかりの作品だ。

世界中にはばたく「世界が終わるまでは…」

 その後1994年に発表されたシングル「世界が終わるまでは…」(作詞:上杉昇、作曲:織田哲郎、編曲:葉山たけし)は、バスケット漫画『SLAM DUNK』のアニメテーマソングとなり、バスケットファン、アニメファン、原作ファンならずとも楽曲をより多く世に知らしめ、大ヒットを記録した。

 作曲者の織田哲郎は、自身のYouTubeチャンネル「オダテツ3分トーキング」でこう語っている。「メロディも凄く気に入っているし、何しろ上杉君がすごくいい詞を書いてくれて、アレンジも良かったです。演奏も良かったです。そして、歌最高です」と、「世界が終わるまでは…」に対しての想いをあらわにし、「アニメ『SLAM DUNK』で使って頂いたおかげで、このメロディが世界中で愛されるようになった。曲を送り出した身として作曲家冥利に尽きる。すごくありがたい」と、この楽曲がワールドワイドな楽曲であることを感慨深く述べている。

 今年、「NBA Japan Games 2019」の会場で上杉昇が「世界が終わるまでは…」を熱唱したのは記憶に新しい。この映像に寄せられたコメントには、いまでも色褪せない楽曲の魅力、上杉昇の歌唱を絶賛する声が多く上がっている。主観的にも客観的にも、上杉昇は日本を代表するボーカリストと言っても過言ではないだろう。

 そして、「世界が終わるまでは…」収録のアルバム『PIECE OF MY SOUL』あたりから、WANDSは色濃いロック色へと向かう変化を見せ、上杉昇と柴崎浩はal.ni.coでの活動へと進み、その後、上杉昇は猫騙などのバンドを含むソロ活動へと向かった。第5期ボーカリストとはならなかったが、現在も上杉昇は精力的に、色褪せない歌唱と制作で活躍中だ。

 WANDSは、1990年代という音楽シーン激戦とも言える時代のトップラインを駆け抜けたバンドだ。2019年のいま、当時の音源を聴き返しても、楽曲としてのクオリティの高さ、演奏の技術、アレンジの完成度、歌詞の人間味深さと、作品としての魅力をいまでも放ち続けている。

 WANDSの楽曲は心に刺さり続ける。詩的な言葉の情念が歌詞となり魂に響く。捉えやすいメロディが瞬間的に全身を覆うようにして記憶に染み付く。受け入れやすい楽曲のアンサンブルと演奏は、いつの時代で聴いても深い想いを再生させてくれる。

 WANDSの魅力は、深さ、鋭さ、受け入れやすさを兼ね備え、それら3点全てが突出しつつも、人間味溢れるピュアな心情が音楽として滲み出ている点ではないだろうか。

上原のWANDSリスペクト心と“新生WANDS”としての個性

 19年ぶりの再始動という時の扉が開かれたいま、新たなボーカリストである上原大史を加えた新生WANDSに大いなる期待が寄せられている。

 上原は「WANDSは子供の頃から大好きで、ずっと憧れの存在としてリスペクトしていました。そのWANDSにまさか自分がボーカルとして加入する事となり、柴崎さん、木村さんと一緒に音楽制作をしてステージに立つとは思いもしませんでした。自分に務まるか不安はありますが、やるからには覚悟決めてやらせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します」と、コメントしている。

 再始動に先立って発表されたティザー映像の「もっと強く抱きしめたなら」「時の扉」の歌唱からは、上原のWANDSに対するリスペクトが滲み出ており、往年の名曲を現代バージョンとして堂々と歌い上げる姿が印象的だ。

 新曲の「真っ赤なLip」(作詞:上原大史 作曲/編曲:大島こうすけ)からは、クールで伸びやかな声質、色気と繊細さを含んだ歌唱から、第5期ボーカリストとしての個性が光る。これまでのWANDSから新たに派生したような曲調のアプローチ、そしてメロディアスかつリズミックに楽曲に乗る歌詞はWANDSの血を引き継ぐと共に、“新たなWANDS”としてのスタイルを提示し、上原の言葉も、歌声も、輝きを放っている。

 世代的に、第1期のWANDSから親しんできたリスナーとしての視点でも、上原からは第1期からのWANDSの血を通わせつつ「令和に再始動した新時代の第5期WANDS」という新しい姿へ向かうポテンシャルを感じられる。

 “これまでのWANDSの再現”ではなく、柴崎、木村、そして上原の個性が交わる“新生WANDS”という新たな魅力を含んだ姿に、大いなる期待感を膨らませてくれる――。【平吉賢治】

(※大島こうすけの名義は、WANDS第1期、第2期は大島康佑)

この記事の写真

記事タグ