全国を旅しながら芝居をおこなう旅一座・劇団美山が1月15日、東京・浅草木馬館で芝居『釣り忍』と舞踊ショーを行った。公演は2019年12月30日から2020年1月30日まで同場所で行うというもの。この日は2部構成で、ゲストに沢田ひろし、紅劇団の総座長・紅大介を迎え、第1部に芝居『釣り忍』、第2部は舞踊ショー。この日のラストショーは昨年9月25日に発売された映像作品(ブルーレイ/DVD)と写真集が一体化した初メジャー作品『The劇団美山』に収録された「焔乱」を披露。この公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

笑いあり、涙ありの『釣り忍』で見せた夫婦の絆

『釣り忍』(撮影=冨田実布)

 大衆演劇とは日本全国の様々な街に移動しながら一定期間劇場に滞在し、芝居や舞踊で多くの観客を楽しませる。チケット料金もリーズナブルで気軽に足を運びやすいのも魅力のひとつだ。毎日変わる演目、人を楽しませたいというスタンスから生まれる、昔から変わらずにあるエンターテインメントで、劇団美山は昼の部、夜の部と休憩をはさみ合計8時間以上演目を行い、それらが終了してから、次の日の演目のリハを行うという過酷とも言えるスケジュールで敢行。

 15日は人情時代劇で夫婦の絆を描いた『釣り忍』を披露。里美たかし演じる定次郎、紅大介演じるおはんとのシーンから幕は開けた。そして、里美たかしが登場すると大きな拍手が迎える。アドリブを交えたユーモアのある芝居に、会場からも笑いがこぼれる。2人もやり取りをすごく楽しんでいることが伝わってくる舞台に、観ているこちらもグイグイと話に引き込まれていく。

『釣り忍』(撮影=冨田実布)

 中盤からは一転してシリアスなシーンへ。着物から紋付袴へと着替えるシーンは無駄のない手さばき、勘当された家に戻ることへの決意を感じさせる見どころの一つだった。そして、DREAMS COME TRUEの「LOVE LOVE LOVE」や星野源の「恋」など要所に音楽が挿入され場面を盛り上げながら、後半では定次郎の実家である「越前屋」に本家の仁兵衛が登場。この仁兵衛がなかなかの曲者で、終始笑いを誘いながら、ストーリーは感動的なラストシーンへと紡がれていく。笑いあり、涙ありの芝居で約90分間を一気に駆け抜け1部を終了した。

音楽と舞で魅せる舞踊ショー

舞踊ショー(撮影=冨田実布)

 前口上(実演・実技などの始まる前に述べる口上)を挟み、第2部は出演者それぞれをフィーチャーした舞踊ショーへ。オープニングを飾ったのは山本リンダの「どうにもとまらない」をバックに総勢8人によるステージ。華やかにステージを彩った後はソロでのパフォーマンスへ。

 月間特別ゲストである劇団妃咲の座長・妃咲鐐による美麗な踊りや、ヴィジュアル系バンドのようなモダンな和装で魅了した紅大介、劇団美山座長・里美たかし、若座長・里美こうた、花形・里美京馬それぞれの個性が出たパフォーマンス。女形の流れるようなしぐさ、美しさは観客の目を奪い、観客も推しの演者が登場するとプレゼントを渡したりお花(おひねり)をつける。ステージと客席の境界線がなくなるような瞬間が何度もあった。

 「浪花節だよ人生は」が流れるなか、里美こうた、里美京馬、里美花太郎、中村美嘉、中村あおいの5人でのダイナミックな群舞、里美祐樹は軽やかなステップで和傘を使用したパフォーマンスと楽しませた。

 里美花太郎のソロは刀を使用した男気あふれるクールさに溢れ、里美京馬が纏っていた花札の猪鹿蝶があしらわれた着物は艶やかでインパクト大。沢田ひろしは千昌夫の「津軽平野」をバックにメリハリのある舞踊、鮮やかなターンで観客を魅了。

 ショーも後半戦へ。吉幾三の「男酔い」をバックに里美たかしの威風堂々としたステージは、気品と気高さにあふれていた。客席を見つめる瞳の力強さは、ステージ後方で存在感を放つ菩薩と仁王のバックドロップ(幕)に負けない迫真のパフォーマンスだった。

 里美こうたは客席から登場。村下孝蔵の「初恋」が会場に響き渡るなか、紫の着物で洗練された仕草。客席からも手拍子で盛り上がった。それとは対象的だったのは沢田ひろしの太鼓のバチを使い所狭しとパワフルなアクション。それを引き継ぐように里美たかしの華麗な舞踊と目の離せない流れだった。

舞踊ショー(撮影=冨田実布)

 最後を締めくくるのは『The劇団美山』に収録された「焔乱」。東京初披露となった「焔乱」は里美たかし、里美こうた、里美京馬、里美花太郎、中村美嘉の5人による圧巻の乱舞。美山のために書き下ろされたハードなロックサウンドに乗って魅せる、鮮やかな殺陣など5人の個性が一つになった、重厚感のあるパフォーマンスで舞踊ショーはフィナーレを迎えた。

 最後は出演者が全員揃ってのトーク。この日訪れた観客に全員で感謝し、折返しとなった公演の幕は閉じた。初日から大入りが途切れていない劇団美山は1月の公演を終えると2月に茨城・つくばYOUワールド、5月に再び東京・十条篠原演芸場まで関東を回る。大衆演劇、劇団美山の魅力、楽しさが大いに詰まった公演だった。

劇団美山 今後の公演予定

2月 つくばYOUワールド(茨城県つくば市下原370-1)
3月 横浜三吉演劇場(横浜市南区万世町2-37)※初乗り
4月 川越湯遊ランド「小江戸座」(埼玉県川越市新富町1-9-1)
5月 十条篠原演芸場(東京都北区中十条2-17-6)

1月~5月まで関東公演

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