シンガーソングライターの蘭華が12月13日、東京・自由が丘LaMandAで『蘭華 Christmas Special Live 2019』を開催した。ライブは2部構成で、1部は昨年リリースされたアルバム『悲しみにつかれたら』の世界観を再現し、2部でクリスマスメドレーや出来たばかりの新曲「愛を耕す人」などアンコール含め全12曲を披露し、訪れた観客を魅了した。以下にライブの模様をレポートする。【取材=村上順一】

ドラマーの山下政人が急遽飛び入り

蘭華

 ワンマンライブは、バースデーの日に年に一度という例年の流れがあったが、今年は初となるクリスマスライブを開催。会場となった自由が丘にあるLaMandAはシャンソンをメインとしたライブカフェで、蘭華のいきつけの店だという。趣のある内装がリラックスさせてくれる心地よい空間が広がっていた。

 ドリンクを飲みながら開演を待ちわびる観客の姿。定刻を少々過ぎたところで、サポートメンバーの松下福寿(Pf)と、今回急遽3曲ほど飛び入りの参加となった、高橋真梨子(「高」ははしご高が正式表記)などのドラマーとして活躍する山下政人(Dr)をカホンに迎え、「メランコリック」でライブはスタート。蘭華は黒いドレスで、愛の終わりを悟った恋愛模様を描いた1曲を、叙情的な歌声を響かせ観客を魅了していく。

 続いての「悲しみにつかれたら」はジャズとレゲエのテイストがあり、絶妙にバウンスしたアレンジだ。そのリズムも相まって、蘭華の凛とした歌声も力強く、聴くものを前向きな気持ちにさせてくれた。続いて、スウィングしたリズムが印象的だった「ルージュ」は、どこか懐かしさを感じさせてくれるメロディに魅了された。

 急遽参加となった山下との出会いの経緯を蘭華が説明。初めての出会いは蘭華が担当していたラジオ番組「スナック蘭華」の企画イベントに、山下が来てくれたのが最初だったという。その時に「いつか一緒に演奏したい」と話していた事が、この日に実現。蘭華は「言霊って大切ですね」としみじみ。

 ここで松下のピアノソロでジャズのスタンダードナンバーから、蘭華のお気に入りの曲「My Favorite Things」を演奏。躍動感あふれるピアノ演奏でライブを彩った。このインストコーナーのエピソードとして、候補曲にナット・キング・コールの「ネイチャー・ボーイ」などもあった事を明かした。他にも9月28日に東京・目黒ブルース・ アレイ・ジャパンでおこなわれたバースデーライブ『蘭華 Birthday Special Live』の模様を、蘭華本人が監修し収録したDVDをリリースする事を発表した。

 続いてはこのLaMandAで一際映える一曲、フランスのシャンソン・バーで演奏するアコーディオン奏者の老人の人生を描いた「懺悔の裏窓」を披露。蘭華は悲しそうな表情でストーリーを紡ぎ、情景を映し出すようにシリアスに歌い上げていく。会場の空気感を変えた1曲だった。

 第1部のラストに届けられたのは、有線のランキングも上昇し、じわじわと認知度が高まってきている1曲「愛の遺産」。島根県にある世界遺産の石見銀山で生まれたというメロディに、蘭華の第2の故郷でもある島根県出雲市で歌詞を紡いだ楽曲。出雲に住む102歳の祖母の愛の歴史と人生を綴ったこの曲を、蘭華は情感を込め歌い上げ、ステージを後にした。

いつか恩返しして喜ぶ顔が見たい

蘭華

 暫しの休憩時間には、一足早くバースデーライブのDVDをスクリーンに投影。第2部の蘭華はピンクの衣装で登場。本当はクリスマスらしく赤い衣装で登場予定だったが、肩紐が壊れるという、まさかのアクシデント。蘭華は「何か起こるかも」と事前に用意していた衣装で第2部を行うことに。1曲目は蘭華が曲を書き始めた頃に作った失恋の曲「四年前」を披露。松下のダイナミックなピアノの演奏をバックに、切ない感情を声で表現していく。

 蘭華はこの日のセットリストを振り返って、「クリスマスライブなのに失恋の曲が多い…」とポツリ。続いては一途な片思いを描いた「温もり」を届けた。ピュアな想いが反映された歌詞にじっくりと、耳を傾け聴き入る観客。蘭華は歌唱後に「歌いながら当時のことを思い出しました」とポツリ。

 新曲を届ける前に、今年ショックを受けた、心に残った出来事があったと話す。それは12月4日にアフガニスタンで亡くなった医師の中村哲さんのことだという。新曲は当初「聖夜」というタイトルで明るいクリスマスソングにしようと制作していたが、この事件を知って中村さんに1曲捧げたい、と歌詞のテーマを変更。タイトルも「聖夜」から「愛を耕す人」に変わり、ライブ当日のお昼に歌詞が完成した。中村さんへの思いがひしひしと伝わってくる楽曲で、切なさの中にも一筋の希望を感じさせるこの曲を、蘭華は言葉を噛みしめるよう丁寧に歌い上げた。

 蘭華はここ数年、シャンソンが好きになったと話し、昨年の秋にシャンソンコンクールに参加したことを明かした。最終審査まで残ったコンクールで歌唱したという「パリの空の下」を含むシャンソンメドレーを披露してくれることに。蘭華の豊かな低音が会場を包み込んでいくなか、メドレーラストの「オー・シャンゼリゼ」では、観客から手拍子も起こり、フランスの街を軽快な足取りで歩く姿が見えるようだった。

 「素敵なクリスマスになりますように。そして今年が良い年だった人も、まだまだやり残したことがある人も、幸せな年越しと、良いお年をお迎え下さい」と話し、2部のラストは「クリスマスソングメドレー」を届けた。「赤鼻のトナカイ」やしっとりと「Silent Night」など、クリスマス定番曲で会場を彩った。

 アンコールの手拍子に応え、再びステージに蘭華が登場。蘭華のメジャーデビューシングルで、恩師に捧げる大切な1曲「ねがいうた」を届けた。恩師への想いを馳せながら、感謝の思いを届けていく蘭華。透明感のある真っ直ぐな歌は、観客の心を揺さぶり続けた。

 蘭華は最後に「これまで音楽を続けていく中で、応援してくれた亡き父や前事務所の社長、今は一緒に夢を追い求める事が出来なくなってしまった方たちに、まだ夢の途中の私が地道に活動を続けることで、いつか恩返しをして喜ぶ顔が見たい。それがたとえ遠い場所や天国だとしても、きっと叶えたい」と語り、『蘭華 Christmas Special Live 2019』は大団円を迎えた。

 来年の1月10日〜19日にかけて東京ドームで開催される『ふるさと祭り』のステージに14日に立つことが決定している蘭華。音楽への想いは日に日に増しているようにも感じたライブで、この日ならではのメドレーで蘭華の新たな一面も堪能できた。彼女の道のりは険しいが、夢を叶えるための旅はまだまだ続いて行く。

セットリスト

『蘭華 Christmas Special Live 2019』

12月13日@自由が丘LaMandA

01.メランコリック
02.悲しみにつかれたら
03.ルージュ
04.My Favorite Things
05.懺悔の裏窓
06.愛の遺産

第2部

07.四年前
08.温もり
09.愛を耕す人(新曲)
10.シャンソンメドレー(パリの空の下〜愛の讃歌〜オー・シャンゼリゼ)
11.クリスマスメドレー(赤鼻のトナカイ〜サンタクロース・イズ・カミング・トゥタウン〜Silent Night)
12.ねがいうた

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