6人組アコースティックバンドのOAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)が12月5日、東京・国際フォーラム ホールCで全国ツアー『Tour 2019 -A Better Life-』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは9月4日にリリースされた“OAU"となって初となる通算4枚目のアルバム『OAU』を引っさげて、9月28日の石垣島を皮切りに、東京まで全国15公演をおこなうというもの。ライブは『OAU』の楽曲を中心に「A Strait Gate」や「帰り道」などアンコール含め全19曲を届けた。幅広い音楽性、1曲1曲に込められたメッセージ性が詰まったツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

あなたの善きものが一つでも見つかったら...

OAU(撮影=KAZUYAKOSAKA)

 メンバーがステージに登場するとTOSHI-LOW(Vo,AG)は「よい暮しとか、お金が沢山あったらいいなあとか、豪邸に住みたいとか色んないいながあって。現実はすごく便利になっているのに、俺らはどんどん時間がなくなって、インターネットで世界中と繋がっているのに、隣の国といがみ合っている。スマホはなんでも教えてくれるのに、大事な人を大切にする術は教えてくれない――」。

 「ライブが終わるまでにあなたの善きものが一つでも見つかったら光栄です」と、想いを話しツアーは「A Better Life」で幕は開けた。美しいアコースティックギターのアルペジオがホールに響きわたる。それぞれの善きものを探す旅がここから始まった。

 MARTIN(Vo,Vn,AG)がメインボーカルをとる「Midnight Sun」は軽快なリズムがカントリーを感じさせ、クラップも巻き起こった。2009年にリリースされたアルバム『New Acoustic Tale 』から懐かしい一曲「A Strait Gate」、そしてニューアルバムからグルーヴィな「Americana」ではワールドワイドな一面を演奏と歌で届け、序盤からOAUの世界観を楽しませてくれた。

 爽やかな風を運んできた「Black and Blue Morning」、MARTINによるバイオリンの調べが語りかけてくるような「All I Need」、続いて2006年にリリースされたアルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』から演奏された、日常のBGMのような温かいサウンドが印象的な「Thank you」ではオーディエンスのクラップも軽快に、楽曲を彩った。MARTINは「もう一回行ける?」の声に、エンディングでのテンポアップしていく様は生き生きと、ライブならではの躍動感を届けてくれた。

 TOSHI-LOWは先日、国際フォーラム ホールAでおこなわれたthe HIATUSのライブを観たとき、ステージからの景色が10年のご褒美とMCで言っていたことを受け、「自分も15年やったご褒美だと思います」と共感。

 続けて「自分が好きなことをやっているのに、やめてしまおうという瞬間があって、この曲をちょうど作っていた時に何もかもがうまくいかない、簡単にやめてしまおうと思って、最後だからちゃんと歌詞を書こうと、終わりの歌みたいな曲を書いたんだけど、15年続けてきて夢というのは叶うことが大事ではなく、続けていくことがすごく大変で、それが大事なことで…。その先にはこんなことが待っているなんて思ってもいなくて、でもこの曲を歌っていると、ここから先の風景が見えてきます」と「夢の跡」を届けた。

 そして、「Akatsuki ( 冬が始まる日の暁に降り立つ霧の中に現れた光の輪)」ではKAKUEI(Perc)による笛の音色がノスタルジックな感情を呼び起こす。そこに絡むMARTINのバイオリンとのシナジーは、この楽曲が持つ情景を目の前に映し出し「Where have you gone」へと紡がれていく。アルバムでもこの2曲はセットで、必然の流れを感じさせてくれるものだった。

どうぞご無事で、いってらっしゃい

OAU(撮影=KAZUYAKOSAKA)

 ここでMARTINがTOSHI-LOWに「ちょっと休憩していいですか?」と尋ね、MAKOTO(Ba)とKOHKI(AG)とともにステージを後にした。ステージ上に残されたのはRONZI(Dr)とKAKUEIとTOSHI-LOWの3人。この3人でトークセッションをおこなうことになった。RONZIは大好きなラーメンの話、KAKUEIはこのツアーで挑戦したことなど、ざっくばらんなMCを展開。約15分間をトークで楽しませ、3人でアグレッシブな南米のリズムが熱くさせるインストナンバー「Banana Split」でホールを沸かせた。

 そして再び全員が集合し、2014年リリースのアルバム『FOLLOW THE DREAM』に収録されている「Making Time」へ。透明感に溢れ、心晴れ渡る一曲で後半戦へ突入。続いて、2007年にリリースされたEP『all the way』から、ケルト音楽の香りが強い「Bamboo leaf boat」でオーディエンスを煽情し「Again」へ。イントロの情感を込めたTOSHI-LOWの歌声がホールの隅々まで響き渡っていく。そして、楽曲はドラマチックでアッパーな展開へ。ギターとドラム、パーカッションのソロパートも見せ場となり、会場を盛り上げた。

 『OAU』に収録された「こころの花」について、TOSHI-LOWはこう語った。最初、MARTINが持ってきたデモの仮タイトルは「FESTIVAL」で、OAUが主宰する『New Acoustic Camp』の10周年のことを書くと決めていた。そして、フェスのオーガナイザーとしての役割を改めて考え、普段は見過ごしてしまうような小さな花から彼はヒントを得た。誰かがつまずいた時や辛い時に、明日も頑張れると思えるような歌、名もなき花のような歌を歌ってみたいと思ったという。「もし歌っている時にそんな花が咲いていてくれたら嬉しいです」と話し「こころの花」を熱唱。

 ライブも佳境に。アメリカのコーラスグループ、ザ・ドリフターズのオリジナルナンバーで、日本ではシャンソン歌手・越路吹雪がカバーした「ラストダンスは私に」を届け、本編ラストはアルバム『OAU』でもラストを飾る「I Love You」。子供を想う愛を歌った1曲で、ステージを後にした。

 アンコールに応え再びメンバーがステージに登場。MARTINが日本語で歌唱し、アットホームな空間を作り上げた「Traveler」。TOSHI-LOW はKAKUEIとともにパーカッションパートを演奏。KAKUEIの頭にベルを乗せて、絶妙のタイミングで「チンッ」と奏でるTOSHI-LOWに、会場からは笑いが起こった。MARTINは「これで終わっちゃうけど、ずっと付き合ってください」と嬉しい言葉を投げかけ、ラストはテレビ東京系ドラマ24『きのう何食べた?』オープニングテーマ曲の「帰り道」を届けた。これを丁寧に歌い上げTOSHI-LOWは、最後に「また会えたら嬉しいです。どうぞご無事で。OAUでした。“いってらっしゃい”」と言葉を残し、『Tour 2019 -A Better Life-』の幕は閉じた。

 良質なアコースティックサウンドに乗せて届けられたメッセージは、この場にいたそれぞれが“Better Life”を見つける手助けになったのではないだろうか。我々の心に寄り添うような音楽は、現代にとって最も必要な存在だと感じさせてくれたステージだった。来年にホールツアーを控えているOAU。このツアーで得たものをブラッシュアップして、さらなる進化を見せてくれるだろう。

セットリスト

『Tour 2019 -A Better Life-』
12月5日@東京・国際フォーラム ホールC

01.A Better Life
02.Midnight Sun
03.A Strait Gate
04.Americana
05.Black and Blue Morning
06.All I Need
07.Thank you
08.夢の跡
09.Akatsuki ( 冬が始まる日の暁に降り立つ霧の中に現れた光の輪)
10.Where have you gone
11.Banana Split
12.Making Time
13.Bamboo leaf boat
14.Again
15.こころの花
16.ラストダンスは私に
17.I Love You

ENCORE

EN1.Traveler
EN2.帰り道

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