INTERVIEW

暁月凛「自分のありのままの姿を受け入れる」闇も光も全てを内包する魅力


暁月凛

記者:平吉賢治

掲載:19年12月11日

読了時間:約12分

絶望のなかに希望あり、希望のなかに絶望あり

『没入time mixed by DJ和』ジャケ写

――今作のノンストップMixアルバムというスタイルを最初に聞いた時はどう思いましたか?

 ノンストップ自体は初めてなんですけど、DJ和さんのCDはデビュー前からよく聴いていました。「アニソンDJと言えばDJ和さん! だからそういう形(ノンストップ)をとってみても面白いなと思いました。DJの盛り上がる技を駆使して頂いて世界観をつくってくださるというのが凄く良いなと。曲順も起承転結を意識しながら決めて頂いて、より自分の理想像の世界観に近づけたし、ノンストップにすることによって、より没入できるようになりましたし。

――DJ和さんとの出会いでまた違う魅力が見つかったと。

 素敵なご縁、巡り合わせだと思います。

――今作の楽曲で11曲目「天野月子 / 蝶」をリードトラックにしたのはなぜでしょう?

 私の青春時代に私の精神世界を構築した曲が何曲かあるんです。「蝶」はアニソンではなくてゲームソングなんです。『零』シリーズが大好きで、私の心の中の好きな世界観というか、美しく感じる退廃的な荒廃した世界というか。

――退廃的、荒廃した世界観の美というのはありますね。個人的にも好きなのですが、なぜああいった世界観に惹かれるのかという疑問もあるんです。

 美しい、懐かしい、というわけでもなく、なにか切ないけど美しいというか…。

――なかなか言い表せない魅力がありますよね。

 何ででしょうね? 精神分析学だと人は生の本能があるだけではなくて、死の本能もあるというんです。だから新しく出来た命に満ち溢れたものを愛する本能もあれば、死に近いもの、古い建物だったり荒廃した荒地など、そういうものに魅力を感じる本能もあるんじゃないかなと思います。それこそ陰陽の図みたいに。だからバランスって大事だと思います。

――生の本能が強くて全然落ち込まない人もいますよね。

 心理的な研究によると、マイナスな表情を表現できる人のほうが心の病に罹る率が下がるそうなんです。

――ネガティブな感情を表に出す人のほうが比較的病まない?

 普段明るかった人が急に病んじゃったり…みんながそうというわけではないんですけど。傾向的に負の感情も尊重してあげたほうがメンタルヘルス的には良いという研究もあるそうです。何パターンかあると思うんです。負の感情がない人と、あるけど言えない人とか。

――負の感情がないという人も確かにいます。それでも悩みくらいあるだろうと思って聞いたら「部屋が狭いかな」というくらいだと言うんです。

 私が「部屋が狭い」と感じたら、「なんで人ってこの広い地球で自分の住処すら見つからないんだろう…」とか考えます(笑)。

――内面に「なぜ?」と深く進むのはアーティストの資質でもあるのかもしれませんね。さて、制作面のお話ですが、レコーディングはどのように進みましたか?

 ハーフサイズが多いからすぐに進むことを想定したスケジュールだったんですけど、各曲の世界観や感情の切り替えに時間を要しました。歌い方も違いますし、喉のリセットに時間がかかることもあって予定より伸びたんですけど無事に終えました。凄く余裕を持って作った感じではなかったです。

――しかし仕上がりは素晴らしいと感じました。

 ありがとうございます。闇の曲が多いじゃないですか? そういう心の不安や葛藤を表現する良いチャンスだったのかもしれません。幸せ過ぎると、表現できたものができなくなっちゃうこともあるので。だから幸せ過ぎないほうがむしろいいという。なんか闇だ(笑)。

――その考えかたはわかる気がします。「幸せ過ぎると反動がくるのでは」という思考が働くというか。

 いつか落ちるかもしれないし。人それぞれですけど。

――しかし、闇イコール悪ではないと思うんです。不安や絶望はむしろ創作に必要な財産ともとれるかと。

 そうなんですよ! 『絶望先生』というアニメが大好きなんですけど、主人公が絶望、絶望、と言っているわりにはそんなに絶望してないんです。 本当は死にたくないし希望があるんだけど、絶望は死の本能を発散することで、生きる本能が優位に立てるというか。そういうことも考えるんです。

 「闇だ」と普段は口癖のように言っているんですけど、本当に希望がないわけではないですし。希望と絶望がいつも絶妙なバランスをとっていて。絶望と思っていると、期待した通りの絶望的事態が起きないことが多いんです。もう全て終わりだと思ってしまうと、逆にそうじゃないことが自分の人生のなかでは多いんです。だから本当に陰陽のように、絶望のなかに希望あり、希望のなかに絶望あり。と思います。

――陰と陽の本能のバランスですよね。

 実生活での価値観もそうだと思うし、美的感覚、好きなものが闇の中の希望になりがちでして。例えばアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で、アスカの最後のほうの展開があるじゃないですか? ああいう、希望の中に絶望ありという、単純な希望じゃなくて絶望もあり、そのあとに希望もあり、みたいな世界観が素晴らしいと思います。

――『新世紀エヴァンゲリオン』は後半では精神世界の闇を描写するような部分もありましたね。そこが深いと感じました。

 私も終盤のほうがむしろテーマなのかなと感じたりしました。人間って結局精神世界に戻るのかなって。

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