レゲエシンガーの寿君が4日、新作『Life is Great』をリリースした。この作品は昨年に発表した『ニューレベ』に続くメジャー2枚目のアルバム。メジャーというフィールドに立つなかで葛藤を覚えながらも、それを乗り越えて得た「過去は悪いものじゃなかった」というポジティブな想いがタイトルに込められているという。今回はこの新譜について寿君にインタビュー。気力に満ちあふれた様子で取材に応じる彼は今、何を思うのだろうか。【取材=小池直也/撮影=村上順一】

過去はそんなに悪いものじゃなかった

寿君

――髪色が黒くなりましたね。

これは黒じゃなくてデニムカラーなんです。夏に変えました。ファンの人には「青鬼さんって呼んで」と言ってます(笑)。

――誕生日に行われた『ポイポイ祭り 2019-秋場所-』も盛り上がったとか。

はい。誕生日イベントをやるのは2回目だったんですが、過去最多のお客さんが集まってくれました。ケーキも用意してくれて本当に嬉しかった。前回の誕生日企画はワンマンライブだったんですけど、今回は大好きなゲストに囲まれて良い34歳のスタートになりました。

――メジャー2ndアルバム『Life is Great』が発売となります。今の心境はいかがですか。

前作「ニューレベ」は新しい場所で新しいことに挑戦する意気込みでしたが、今はどうだろうと考えた時に「過去はそんなに悪いものじゃなかった。俺のライフは最高だった」と思ったんです。さすがにグレイテストは言い過ぎなので(笑)、「Life is Great」というタイトルにしようと決めました。僕はクラブでの活動が長く、メジャー進出も遅くて、遠回りしてきた気持ちがあったんです。「大どんでん返し」を制作した時も色々な悔しさを感じてました。でも辛い時期があったから大阪の仲間の大事さが分かるようになったんです。

――あと10年早く今の状況に身を置いていたら自分はどうだったと思います?

24歳だったら、ということですよね。こんなレーベルのオフィスに出入りさせてもらって、キャーキャー言われてたら絶対に調子に乗ってました(笑)。ちょうど23歳頃に少しずつ現場に呼ばれる様になりだして、スタジオを作ったんです。お金が無くて家の家賃を払うのも苦労してたので、今でも集まるSTREET HERO RECORDSの仲間と折半してお化けが出そうな部屋を借りてました。ボーカルブースも大工さんと手作りして。

だからこそ今良いスタジオで録音させてもらったり、沖縄で制作できたりするありがたみを感じるんです。「ここまできてダラダラしてたらもったいない」と集中力を発揮できるのも、その経験のおかげかもしれません。光と影を知らなければ光がどちらなのかもわからないじゃないですか。この年齢になると、そういうことをよく考えます。

 20代の時はレゲエ界でも「まれに見るヒット」と言われて、自分が一番イケてると思ってたんです。そんな自分を諭してくれた先輩の言葉は今になって響いてきます。10年前にこんな環境が揃っていたら、起こるすべてのことに感謝もできない男になってたんじゃないですか。テレビに出たり、ドーム公演を成功させても「いや、当たり前やろ」って言っていたかもしれません(笑)。今そんなことになったら、すぐ母親に連絡したいし、一緒に部屋借りて音楽やっていた仲間たちにも見てほしい、と色々な感情が芽生えてきますよ。ありがたいものを受け入れる体制やなと思います。

――「CLEAN & FRESH」はその当時の仲間との楽曲になっているとか。

 一緒に制作したLIFE STYLEは後輩なんですよ。中学生の時にとなり街に住んでて、ヤンチャでバイクに乗って目立ってました。それからの付き合いなので、今も一緒に音楽できているのが嬉しいです。先日もLIFE STYLEのツアーファイナルが大阪であって、そこに客演させてもらったりして今も切磋琢磨してますね。あと、この曲は最近来てくれるようになったレゲエを知らないファンに「響け!」と思って書いてないんです。「俺はこれがめっちゃ好きやねんけど、どう?」という感じ。ミックスやリディムを担当してくれたのもジャマイカに住んでいる日本人ですし、自分がやりたかったことを詰め込みました。

僕は今メジャーの打席に立たせてもらってて、クラブの仲間とは来る球や狙う場所も違いますが、自分のストリート感は消したくないんです。現場で技術を培って、マイク1本たたき上げでここまで来ましたから。それがあって今みたいなリズムを刻めたり、韻を踏んだりすることを得意にできている。だからクラブでかかる様な鳴りがいい音でもかましたいんです。実際に大阪のクラブで自分の曲が流れていたのを聴けた時は安心しました。

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