HUMAN LOST 人間失格

 コンサート、映画、舞台など、大人も楽しめる日本の良質なエンターテインメントをおススメする新感覚情報番組『japanぐる〜ヴ』(BS朝日、毎週土曜深夜1時〜2時)。11月30日の放送では、映画評論家の添野知生氏と松崎健夫氏が、映画『ドクター・スリープ』と『HUMAN LOST 人間失格』を紹介。『HUMAN LOST 人間失格』のストーリー原案と脚本を務めた脚本家・冲方 丁氏に添野氏がインタビューした様子も放送された。

『ドクター・スリープ』は、2つの『シャイニング』のハイブリッド

ドクター・スリープ

 松崎氏が紹介した『ドクター・スリープ』は、ホラー小説家のスティーブン・キングが1977年に発表した『シャイニング』の続編として、その40年後を描いた同名小説が原作。雪山のホテルでの事件で生き残ったダニーは、当時の体験からトラウマを抱えて生きていた。しかしダニーの周りで、再び不可解な事件が起き始める。ダニーはアブラという名の少女と出会い、事件の真相を探るため再びホテルに向かう…。

 『シャイニング』は1980年に巨匠スタンリー・キューブリックの監督で映画化され、ジャック・ニコルソンの狂気的な演技が話題となって、今もホラー映画の傑作として高い評価を得ている。しかし、原作者のスティーブン・キングは原作との違いに怒り、自らの脚本で1997年にテレビ版を制作した経緯もある。松崎氏は、2つの『シャイニング』をどう捉えているかに注目した。

 「2つの『シャイニング』は、主人公のジャックの気が変になるのは同じだが、なぜそうなるかの理由が違い結末も違っていた。『ドクター・スリープ』は、そこをどうするか。実は、どちらの解釈も取った続編になっている。またこの映画は、過去のことを思い出す回想シーンで、『シャイニング』の名シーンを再現しているところも素晴らしい。キューブリック版とキング版をハイブリッドにして、どっちもが納得するような続編にしているのが見どころ」

 『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』に続き、またしてもスティーブン・キング原作の続編。『シャイニング』とあわせて楽しみたい。

『HUMAN LOST 人間失格』は新しいヒーロー文学

HUMAN LOST 人間失格

 添野氏は、劇場アニメーション作品『HUMAN LOST 人間失格』を紹介。太宰治の小説『人間失格』を原作に、近未来SF映画として制作したもので、昭和111年の日本、ナノマシンによって人間が120歳まで生きる超高齢化社会が舞台。

 ドラマ『踊る大捜査線』やアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』を手がける本広克行をスーパーバイザーに迎え、ストーリー原案・脚本を、『PSYCHO-PASS サイコパス』や『攻殻機動隊ARISE』などの冲方丁氏が手がけた。添野氏が、冲方氏にインタビューした。

添野知生氏と冲方丁氏(右)

添野:太宰治の『人間失格』をSF化するアイデアは冲方さんから?

冲方:『人間失格』をジャパニメーションで、ダークヒーローで、SFにしたいと。最初は「何を言っているのだろう?」と思ったと同時に、組み合わせの突拍子のなさに面白さを感じました。

添野:原作と現代に通じるものがあると?

冲方:主人公の大庭葉蔵の人物造形が大きい。確たる自己がない人物で、極端なことを言えば、よりよく生きようとすればするほど泥沼にはまって破滅する。SNSやネットニュースなど情報の洪水に日々翻弄されている我々に、近しい人物像なんじゃないかと。

添野:医療と長寿をモチーフにしたのは?

冲方:太宰治作品で避けては通れないのが、濃密な死の影をどう作品に反映させるか。悲劇的ではなく、希望が持てる形でどう描けるかを議論して、結論として、死のない世界を描くことで死を浮かび上がらせようと思いました。

添野:東京を舞台にした理由は?

冲方:もともとコンセプトとして、世界の方にも楽しんでもらえるジャパニメーションを作ろうというのがあって。海外の方から見れば、東京は一風変わった他にはない面白い都市。ロケーションとして、我々のアドバンテージは東京にいることです。それにあまり注目されないですが、実は貧富の差がはっきりあり、環状道路の外と内で家賃相場が1.5倍くらい違ったりするところもある。環状道路の円の内側に富裕層がいて、それをインサイドとアウトサイドという分かりやすい言葉で描いています。

添野:どんな作品になったと思いますか?

冲方:しいて言うなら、“新しいヒーロー文学の1つ”であると言えるんじゃないか、と。ただ、この説明自体が古い言葉で説明していますので、ご覧になった方が、何かの拍子に新しい言葉を見つけて、名付けてくれることを期待しています【文=榑林史章】

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