『幸福路のチー』

 コンサート、映画、舞台など、大人も楽しめる日本の良質なエンターテインメントをおススメする新感覚情報番組『japanぐる〜ヴ』(BS朝日、毎週土曜深夜1時〜2時)。11月23日の放送では、映画評論家の添野知生と松崎健夫が、映画『幸福路のチー』と『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』を紹介。

ソン・シンイン監督は『ちびまる子ちゃん』から影響

『幸福路のチー』

 添野は、台湾初の長篇アニメーション映画『幸福路のチー』を紹介。この映画は、台北郊外にある「幸福路」という名前の通りを舞台に、主人公のチーと下町に生きる人々の姿を描いた、ソン・シンイン監督の半自伝的作品。ソン・シンイン監督はこの作品のために自らアニメーションスタジオを設立。素朴で温かみのあるタッチと技巧を凝らしたファンタジックな映像が注目を集め、東京アニメアワードフェスティバル2018でグランプリを受賞した他、さまざまな国際映画祭で賞を受賞、2019年アカデミー賞(R)長編アニメーションの25作品にエントリーされるなどで話題を集めている。

 アメリカで暮らす主人公のチーは、祖母の訃報を聞き故郷の幸福路に帰る。そこで、子どもの頃の記憶と現在の自分を照らし合わせながら、人生の大きな決断を下す。添野は「学生運動、民主化、台湾大地震なども描かれ、私小説であると同時に、台湾の現代史が並行して描かれている。それは野心的な試みで、それを可能にしたのは物語と絵作りの工夫」だと話す。

 「一つは、チーは大きな悩みを抱えていて、それを解き明かすことが物語を進める原動力になっているということ。もう一つは、作画監督が二人いること。現在のパートと幻想パートで、描き分けているのが面白い」

 また添野によれば、ソン・シンイン監督はこの作品を作るにあたって『ちびまる子ちゃん』から影響を受けていると話す。「作者のさくらももこが育った1970年代の日本をシンプルで丸っこいデザインで描いた方法論から影響を受けている。ソン・シンイン監督は、『ちびまる子ちゃん』のようなものを作りかったのだろうと、想像ができる」。

 1975年生まれのソン・シンイン監督の世代はもちろん、その子どもにあたる若い世代、台湾のことを知らない日本人。タピオカなど台湾ブームの今、ぜひ観てほしい1本だ。

フランス版『シティーハンター』実写版はどう観るか?

『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』

 松崎は、フランス実写版映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』を紹介。ご存じ日本の漫画/アニメの金字塔『シティーハンター』を、フランス人の配役で実写化したもの。

 日本の漫画/アニメ文化が浸透しているフランスでは、『シティハンター』はフランス語版コミックが発売され、『ニッキー・ラーソン』というタイトルで、アニメ放送されていた経緯がある。また、1993年にジャッキー・チェンによって実写化されているが、今回はそれとは異なり、限りなく原作に寄せたものになっているそう。

 「冴羽獠役で主演/監督務めているフィリップ・ラショーが原作の大ファンで、大好きすぎて、自分で書いたオリジナル脚本を原作者の北条司さんに読んでもらって、お墨付きをいただいた作品」

 松崎がポイントに挙げたのは、日本では日本語吹き替え版のみの公開であること。「日本ではアニメの『シティーハンター』が定着している。まるでアニメを観ているかのように観てほしいという意図がある」。

『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』

 日本語吹き替えには、主人公の冴羽獠をエディ・マーフィやウィル・スミスの吹き替え、『アラジン』のジーニーで知られる山寺宏一が担当。獠とバディを組む槇村香を、『ルパン三世』の三代目・峰不二子などで人気の沢城みゆきが担当している。他に玄田哲章、田中秀幸、一龍斎春水など、アニメシリーズでお馴染みの声優陣がアニメと同キャラクターを演じているのもポイントだ。

 漫画/アニメファンにとって、人気作の実写化は賛否両論の的。果たしてこの実写化は? その目で確かめて欲しい。【文=榑林史章】

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