斎藤工が主演を務め、齊藤工名義でお笑い芸人の永野と企画・プロデュースした映画『MANRIKI』(清水康彦監督)が11月29日に公開される。ファッションイベントに出演した際に得た違和感から着想した永野の原案・原作をもとに、斎藤、永野、清水に金子ノブアキを加えた映像制作プロジェクトチーム「チーム万力」が制作した長編映画第1作となる。駆け出しのファッションモデルが仕事欲しさに美容クリニックで小顔矯正施術を受けたところから展開されていくブラックコメディ。斎藤は美容クリニックを営む美しき整顔師を演じ、永野はその助手でありながら謎の人間を演じる。斎藤と永野は互いに尊敬し合っており、永野は斎藤監督作『バランサー』(14年)や『blank13』(17年)にも出演している。互いに共通するのは感性だといい、斎藤は永野を「世界に通じる才能がある」と高く評価している。そんな二人の対談が実現。互いの印象やその才能が溢れた本作について語ってもらった。【取材・撮影=木村武雄】

互いの共通点、惹かれるダーク

永野

永野

――永野さんは斎藤さんの監督作にも出演されていますが、それぞれの共通点、魅力を教えてください。

永野 『MANRIKI』自体もそうですが、あまり見たくない闇、負みたいなものってあるじゃないですか。僕は世に出だす前からそれを表現するのが得意だったんです。でも、それは世間的には出してはいけないだろうなと自制していたところがあって。ラッセンのネタもバカにしているような内容なのに、それを明るい形で勘違いしてもらえていて(笑)。

 話していくうちに最近になって気づいたことですが、盛り上がるのは、絶対に避けられないコンプレックスや闇、負の部分を面白く笑い飛ばしているようなところで。シニカルとか。そういうのがこの『MANRIKI』で開花したんですよ。僕は昔から噂話が大好きだし、影なところも大好き。でもそういうのは世間的にはあまり良いと思われない。「前向きにみんなでやろうよ!」というのが推奨されるけど、でも負が気になって仕方がない(笑)。そういう“色”で言ったら、斎藤君もダークな一面があって、僕のそういう負のところに面白さを感じていて、惹かれているんだろうなと思うんです。それを最近気づきました(笑)。「イエーイ!」という空元気というか、そういうノリが好きじゃないんですよ。

 この前、でんじろう先生(サイエンスプロデューサー)と番組で共演してある実験に参加して、それまでのイメージとは違っていてマッド感がすごい(笑)。ムツゴロウ(畑正憲)さんにも重なる点があって。子どもの頃、ムツゴロウさんの動物愛はすごいと感動していたけど、ある時からその愛情に狂気を感じて(笑)。だってライオンとのじゃれ合いすごいじゃないですか(笑)。それと似たようなところがでんじろう先生にも見えて。人工のマグマが飛んでも怖がらない、むしろ楽しんでいるところがあって。少年のような心を持っているとも言えるけど。そのマッド感が斎藤君にも感じられて。もちろん僕にもあるけど。それが彼の好きな所です。

 斎藤君は、セクシーな一面も出している。でも、それがエロスではなくダークなんですよ。人の見方によっては異なるかもしれませんが、僕はそういうふうに見えている。『MANRIKI』も似たようなところがあって、でもそれは万人受けするものではなく、一部の人。でも、人もこの作品も一緒でハマったら心にすごく残る。その人を大事にしてくれる作品だと思います。

斎藤工

斎藤工


――斎藤さんはいかがですか。

斎藤工 永野さんとはひっかかる部分が近いと思っています。あと、『MANRIKI』で言うと、完成までに3年かかったことが良かったと思います。それは役作りという方向ではなくて、永野さんの精神世界に寄り添えたというか、浸らせてもらっていた期間でもあって。『MANRIKI』のキャラクターは全く助走が必要なかったと言いますか、永野さんの近くにいたことで、そのまま映画製作の期間、難航していた期間も含めて、向かっていく方向はずっと同じでいられた。だからそれをそのまま体現した気持ちです。

 ずっともっと内側的なものですが、永野さんとイコールな瞬間、同化した瞬間みたいな時が、役を通じて、『MANRIKI』プロジェクトの全期間を通して何度かありました。

 僕は、最初は役柄に対して、作品に対して俯瞰で冷静に見ていました。けれど、どこかのタイミングで永野さんの中に自分を見ている瞬間があって。それは、僕が好きな、今まで見てきた映画でも感じる感覚でした。例えば、外国の映画で、その中に出てくる人物に対しても共感する感覚があるのですが、そういう共感する瞬間を、僕は、永野さんのネタの中にも感じる時があるんです。

 永野さんのネタを見たときに、ハッとしている自分がいて、そういう時、「永野さんは自分なんじゃないか」と思う瞬間が多々ありました。

永野 僕自身もそれをたくさん感じました。自分を見ているようで笑ってしまったり。もちろん見た目は全然違いますけどね(笑)、雰囲気が似ているなとか。3年という期間があったからそうしたものに気づいたのかもしれないですけどね。この作品自体も、撮影中に「あれ、自分の事が映画になっている」と気づいて。早く気づけよ! という話ですけどね(笑)。最初はB級映画っぽかったんですけど、最終的に自分自身の私小説になってしまって(笑)。物語の導入こそ、「女性の小顔」なんでけどね。

永野、斎藤工

永野、斎藤工

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