シンガーソングライターの向井太一が14日、Zepp Tokyoで『ONE MAN TOUR 2019 -SAVAGE-』をおこなった。本ツアーは3rdアルバム『SAVAGE』のリリースツアーで、10月18日の愛知・THE BOTTOM LINE公演を皮切りに大阪、福岡、仙台、札幌、そして東京・Zepp Tokyoまで全国6会場で実施され、本公演がファイナルとなった。エレクトロ、アンビエント、R&B、様々な音楽性を示しつつ“向井太一”というアイデンティティが音となり広がった一夜となった。【取材=平吉賢治】

「このツアーで溜めてきた想いを今日は全力で――」

向井太一(撮影=Yosuke Torii)

 アンビエントなサウンドに包まれ、ドラム、ベース、ギター&キーボード&マニュピレーターのメンバー3人、そして向井太一が颯爽と登場。ライブは「Dying Young」から走り出した。エレクトロサウンド含みのビートが刻まれるなか、徐々に広がる楽曲の展開に、会場はジワジワと温まってくる。

 向井は「東京お待たせしました!」と明るく一言添え、ラップ調のバースからの「Savage」を披露。「Everybody hands up!」という向井の煽りに応えたオーディエンスは一斉に挙手、小気味良いHIP HOPビートのなかダンス混じりに清涼な歌声で軽やかにパフォーマンス。続く「Runnin’」ではスクリーンに幾何学模様のビジュアルアートが映し出され、楽曲の世界観が視覚的にも広がる。

 「みんなこの曲知ってるよね? よかったら一緒に歌ってください!」とオーディエンスを誘う向井は「Crazy」をファルセット混じりに歌唱。よく聴くと技術的に非常に難しいと思われるメロディラインや歌い回しを涼しげな表情で歌い上げる向井の姿が印象的だ。

 MCでは「いままでアルバムに込めた想いや、このツアーで溜めてきた想いを今日は全力で心を込めて出して歌っていきたいので最後まで楽しんでいってください!」と、公演に対する意気込みをオーディエンスへ投げかける。そして、「次の曲は僕がこの数年間の、スタート地点に立つきっかけとなったこの曲です」と、「SLOW DOWN」を披露。グッドフィーリングなビートに絡むシンセサイザーのアンサンブル、リズミカルかつメロディアスなボーカルが会場を包み、心地良いゆらぎの空気感を醸し出した。

 高周波のシャワーのようなシンセの音、そして4つ打ちのビートにバンドの“キメ”の強拍と、様々な変化をみせる「SPEECHLESS」、スロービートにソウルフルなボーカルに貫くようなハイトーン歌唱が存分に味わえる「Can’t breathe」と、ライブはテンポ良く進行し、ツアー最終日でのライブの仕上がりっぷりを存分に堪能させてくれる。

 その後も語りかけるようなボーカルがセクシーな「Confession」ではチルな世界観を、ギターアルペジオからベース、深いLowの効いたキックとアンサンブルが重なっていく「君へ」では、会場中に透明感のあるボーカルを漂わせた。

『SAVAGE』、そしてオーディエンスと仲間への想い

向井太一(撮影=Yosuke Torii)

 「僕が自分を信じられなくなった時とか誰かを妬んでしまったりとか、自分がわからなくなった時に心の中でずっと言い聞かせてきた言葉を歌にしました」という向井のイントロダクションで入った「最後は勝つ」、そしてスクリーンにアンバーなカラーが流線状にうねるアートが映し出された「リセット」と、向井は身振りを交えながらソウルフルな熱唱を魅せた。

 会場のテンションはというと、向井の「東京、調子はどう?」という問いかけに一斉に歓声で応えるオーディエンスがその熱さを物語っていた。そしてギターのイントロでさらなる歓声が沸いた「FLY」では向井はアグレッシブなボーカルを放ち、オーディエンスは手を左右に揺らしながら会場一体感を示した。

 赤、黄、青、紫、緑、橙色とフレキシブルに輝く照明のなかで披露された「ICBU」では、向井の「みなさんジャンプできますか?」という煽りにオーディエンスは拳を掲げながら一斉にジャンプ。ライブ開始のアンビエントな空気感からここまでの上昇感がたまらないダイナミズムをみせた。その勢いを止めんとばかりに曲を繋ぐように「Great Yard」へ。交差するブルーの光が楽曲の世界観とマッチし、清涼感溢れるボーカル&演奏をたたみ込み、ラストは「I like It」。ソウルにR&B、チルと、様々なサウンドアプローチとビートが織り交ぜられた音楽空間のライブを楽しませてくれた。

 鳴り止まない拍手とアンコールのなか、再び向井とバンドメンバーが登場。アンコール曲の前に向井は「Zeppでワンマンをすることを目標にしていました。本当にありがとうございます」と、感謝の言葉をオーディエンスに伝えた。そして、ツアーを共にしたバンドメンバーの村田シゲ(Ba)、George(Gt/Key/Machine)、Satoshi(Dr)を紹介。そして今回のアルバムについての想いを語った。

 「『SAVAGE』というアルバムは僕の抱え込んでいた悩みだったり、もどかしさ、悔しさ、人に対しての嫉妬だったり、そういう隠したくなるようなネガティブな感情が凄く自分の心の中で渦巻いていた時期に作りました」と、心中をあわらにした。

 そして、「アルバムを作ろうとなっていたから、何を歌いたいかと自分自身を見つめ直したんですけど、ある日、そのまま僕が悩んでいることだったり、今抱えているこの気持ちをアルバムにしようと思って、僕が失いかけた音楽家としてのアイデンティティとか自信とか、自分自身に対しての想いだったり、そういう悩んでいることを歌うことによって、それを聴いてくれた人達がいて、聴きに来てくれるみなさんがいて。自分自身の弱さだったり、ネガティブな感情もひっくるめて好きになれるんじゃないかなと、そんな風な気持ちで作りました」と、『SAVAGE』制作にあたっての心境をオーディエンスへ伝えた。

 「僕の中ではもの凄く命を懸けて作ったアルバムでした。だから本当にいつも応援してくれて、このアルバムを聴いて会いに来てくれて、メチャクチャ嬉しいです。本当にありがとう」とオーディエンスへ伝え、温かい拍手に包まれた。そして、「僕が一番つらい時に支えてくれたバンドメンバー、チームのみんな、本当にいつもありがとう。本当に感謝しています」と、真摯な表情で想いを伝えた。

 最後に向井は、「これから僕とみなさんと一緒に歩む道につながるように」と言葉にし、「道」を披露した。向井は一つ一つの言葉に想いを込めるように、伸びやかな声で歌い上げた。ツアーラスト曲目は「空」。ハッピーな空気感のなか、情熱的なボーカルフェイクを会場いっぱいに響かせ、オーディエンスのクラップに包まれながらのコール&レスポンス、そしてフィニッシュの会場一致のジャンプで締めくくった。

 エレクトロサウンドと同期する生バンドに、様々な音楽テイストが融合した洗練されたサウンドのライブ。向井太一の新たな“道”が拓かれたこと、そして「命を懸けて作ったアルバム」という言葉の真髄が味わえた公演だった――。

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