ACIDMANが10月30日、メジャーデビューアルバム『創』のアナログLPをリリースした。ファンの中でもデビュー作にして名盤と言われる今作。リリースされてから17年という月日を経て、アナログテープでレコーディングされた作品が、いまLPでリリースされるという、収まるべく器に収まった感覚が強い1枚となった。インタビューではなぜこのタイミングでのリリースとなったのか、その理由について聞くとともに、アナログレコードの魅力や『創』がリリースされ、目標を超えてしまい複雑だったという心境について、フロントマンの大木伸夫(Vo&Gt)に話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=片山拓】

当時は気持ちが対応できなかった

大木伸夫

――何故このタイミングでLPをリリースされたのでしょうか?

 いつか出したいなと思っていて。数年前からアナログにハマりだして凝るようになってきたんです。きっかけとしては明らかに音が良くて。CDも良いんですけどアナログならではの音の素晴らしさにこの数年気づいてしまいました。

 それと同時にこのアルバムを出した2002年当時のツアーではあまり大きな所でライブをやれていないんです。ありがたいことにアルバムがヒットして、大きな所でやれることになり、時を経ていまだにバンドを続けていられる実感があったときに、このツアーを観られなかった方は多いと思うので、もう一度大きな所でライブをやりたいなと思いました。

――このアルバムが出た後にファンになった方もいると思いますから。

 ライブも500人のキャパくらいだったので、その時に買った方でも来られていないと思うんです。再現ツアーをやりたい、アナログを出したいなというのもあり、よく考えたら『創』のアナログを出してレコ発みたいにすれば両方できるなと思って。

――LPの発売日が2002年の時と、同じ日ですね。

 ちょうど10月30日にZepp Tokyoが空いていたので決まりました。そこが空いていたからこそできたという感じです。

――この『創』が完成した当時はどんな感情だったか覚えていますか?

 僕が凄く屈折していて、音楽でちゃんと成功したいという欲望はあるんだけど、もの凄く売れて自分が芸能人になってしまうことが凄く嫌だったんです。だから僕らの顔もわからないまま、音楽は一人歩きして、というのが憧れだったりしていて。でも掲げた目標よりも何倍も売れた結果になって、いまではありがたいんですけど、当時はちょっと気持ちが対応できなくて…。いまでは本当に申し訳ないなと思うんですけど、レコード会社の方々も「おめでとう」と言ってくれていたんですけど、みんなに「いや、おめでとうじゃないんです。こんなつもりでやっているんじゃないんです」と、全員のテンションを下げてしまって(笑)。

――大木さんのなかではそんなに喜ばしいことではなかったと(笑)。

 そうなんです。芸能人になってしまうと思ってたんですけど、実際はそんな風にならなかったので良かったんですけど。当時のディレクターには20位を目標と言っていましたから。僕らは20位より上には行きたくないという、何とも贅沢なことを考えていて(笑)。

――ロックだなと思いますが(笑)。

 若さゆえだと思います(笑)。今は何位だろうがとにかく上に行かせてもらって色んな人が関わってくれて、色んな人に聴いてもらうというのが一番の幸せだなと思います。僕がロックスターのような感覚で「みんな俺の音楽を聴いてくれ!」というタイプだったら、もっと華やかになって盛り上がったと思います。もし、タイムマシーンがあるなら「よっしゃ!」って言いに行くんですけどね(笑)。

――気持ちが変わったのはどこからですか?

 本質的にはいまも変わっていないです。ACIDMANとして人気は欲しいけど、芸能人的に扱われてしまうのは僕は対応ができない。お金のために音楽は作れないけど、結果的にお金は必要ですから。そういう意味では結果は出したい。各ライブ、フェスに出る度にみんなが盛り上がってくれたり、ずっと求められていたいという欲望はあります。

――そこは20年以上変わらず持ち続けているのですね。

 ありがたいことです。なのに、「売れたくない」と言って。発想としてひねくれているんです(笑)。

――このアルバムが売れたことによって変わったことは何でしょうか?

 メンタル的には変わっていないかもしれないです。その数年後に考え方が変わってきたと思います。もっとポジティブに切り替えていったんです。最近これをマスタリングの時に聴いて、何かに絶望して諦めているんだけど、諦めきれずに希望を掴もうとしていて、きっとこの世界はもうちょっと良くなるかもしれないと思っていたんじゃないかなと。

――ちょっと俯瞰するとそういった思いなのですね。

 そう、僕なんですけど、そういった気持ちの変化がありました。もっと良い歌を歌っていきたいし、もっと自分の思いをシンプルに歌いたいと変わっていきました。

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