わずかな腕と足指で音を奏でる、ブラジル人ピアニスト/ギタリストのジョナタ・バストスが、昨年に引き続き、スポーツと音楽の祭典『ParaFes 2019~UNLOCK YOURSELF~』(11月16日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ、日本財団パラリンピックサポートセンター主催)に出演するために来日した。2017年から3度目の来日。『ParaFes 2019』では15歳のシンガー・わたなべちひろと天才ドラム少年の酒井響希とコラボレーションする。MusicVoiceでは昨年に続いてインタビューをする機会を得た。改めてギターを始めたきっかけを探るとともに、どのような思いで演奏しているのか、ジョナタ・バストスのルーツに迫った。【取材・撮影=村上順一】

Oficina G3のギタリスト・ジュニーニョ・アフラムとの出会い

ジョナタ・バストス

――3度目の来日となりましたが、東京で新しい発見はありましたか。

 今回は電車に乗って渋谷に行ったりしました。電車の中は沢山人がいるんですけど、僕のような障害がある人も座れるようになっているのは素晴らしいなと思いました。あと、楽器屋に行けば僕が欲しいエフェクターが沢山あって楽しいです。

――さて、ジョナタさんのギタリストとしてのルーツに迫りたいのですが、どんなきっかけでギターを始めようと思ったのでしょうか。

 最初は3歳〜4歳頃にドラムから始まりました。5歳の時に祖父がピアノを教えてくれて、自分の音楽への好奇心は大きくなっていきました。本当は医者になりたいという夢があったんですけど、以前から興味があったギターを15歳の時に始めたんです。ギターをプレイしていくにつれ、医者になるという夢よりも本格的に音楽をやってみたいと思うようになりました。

 ギターの大きな衝撃を与えてくれたのは、僕の尊敬するブラジルのギタリスト、ジュニーニョ・アフラムさんの所属するOficina G3というバンドなんです。それを初めて聴いた時に自分をハッピーにさせるものがありました。そのフィーリングと同時にイマジネーションも自分に与えてくれたんです。僕は日常で教会などでギターを弾いているのを観るんですけど、彼がギターを弾く姿はそれとは全く違うものに感じました。どうやったらあんな風に弾けるんだというイマジネーションが芽生えて、どんどんモチベーションが高まっていきました。

――Oficina G3との出会いはどのようなものだったのでしょうか。

 Oficina G3はラジオで知ったんですけど、そのラジオ番組が終わってしまって、どうやってこのバンドの音楽を聴いたらいいのか、自分はまだ子供だったのでわからなかったんです。レコードショップでCDを買えば聴けるということも知らなくて…。それもあって自分の頭から薄れていったときもあったのですが、ある日、友達がCDをプレゼントしてくれたんです。そうしたら昔よりもよりロックな音楽スタイルに変わっていたんです。それはさらにインパクトを与えてくれました。

――衝撃が走って。

 バンドの中でギターが大きな役割を果たしていること、ギターが歌を歌っているように感じました。その重大な役割に衝撃を受け、もっと好きになっていきました。母がギターを持っていたので、それを使って弾き始めました。そこから、やれなかったことがエフェクターを使って出来るようになったりして、どんどんのめり込んでいって好きになりました。ちゃんと練習すれば出来るんだという自身にも繋がりましたから。

――足でギターを弾くというのは並大抵のことではないです。

 ギターは正直すごく大変でした。足の指が手の指よりも小さいので難しいし、足もすごく痛かったんです。でも、練習していくことで痛みは徐々になくなっていきました。そして、16歳の時にジュニーニョさんとコラボしたことが大きなきっかけになり、僕に大きなインスピレーションやモチベーションを与えてくれました。彼とコラボしたことによって「自分も音楽で生きていけるんだ」と知ることが出来ました。色んなミュージシャンがいるんですけど、彼が一番のきっかけです。

――ギターを弾くようになって、活動の幅も広がっていきましたよね。

 はい。自分も音楽を通して、音楽を通じて社会貢献したいと思い、自分はまずSNSやYouTubeを使ってアピールすることにしました。そこからテレビ番組やインタビューやイベントなどからお声が掛かるようになって、そこから国際的にも広まるようになりました。マーケティングをやってくれるような人がいなくても自分でやってきたんですけど、それは自分が生きている日常、現実を見せることが良いマーケティングになりました。

――ちなみに最初にギターでコピーしたのはOficina G3の楽曲ですか。

 そのうちのひとつではあります。カテドラル(英・バンド)の曲に弾きやすい曲があったので、そういった曲を最初に弾き初めました。あとニルヴァーナ(米・バンド)やガンズ&ローゼス(米・バンド)もコピーして、そこから徐々に足の指の筋肉がレベルアップしてからOficina G3にチャレンジしました。でも技術面が高い曲が多くて、ソロも速くて大変なんです。なので弾くには段階を踏む必要があったんです。

 Oficina G3で最初に弾いた曲は「Meus Proprios Meios」という曲なんですけど、このタイトルは「自分自身の道」という意味なんですけど、それは自分だけでは解決できないこともある、そういう時は神様の力を借りるとか、他の方法を探すということ歌っている曲なんです。実際に自分もこの曲を弾くために他の方法、段階を踏むことを見つけて、弾けるようになったんです。

――ジョナタさんが納得して、人前で披露できるようになるまで、ギターを始めてからどのくらい掛かかりましたか。

 始めて数カ月で自分が通っている教会や自分の障害について講演会をやっていたんですけど、そこでも演奏していました。でも、自分が納得した演奏としてはジュニーニョさんとコラボさせていただいた時なので、約1年ぐらいです。

――すごいですね。相当努力、練習されたんですね。

 ふくらはぎと足の指がすごく痛かったんですけど、1日4時間ぐらいは弾いていたと思います。最初は弾いていると足が痙攣してしまうんです…。

――その痛みの中でもギターを弾き続けてこれた原動力は?

 僕はその中でも神様に感謝が一番大きくて、信仰の力というものが僕のモチベーションを保たせてくれました。両親や祖父母もそうなんですけど、よく言っている言葉があって「信仰があるものにとっては、辿り着きたいところに辿り着ける」というものなんです。自分はそれに対する信仰も強いですし、自分はその夢に生きてみたいという想いが強いんです。ギターを始めたときも有名になりたいからとかではなく、純粋にギター、音楽が好きだったからそれを学びたいという気持ちが大きいんです。音楽に対する愛や信仰というのが僕の原動力だと思います。

――演奏する時に大切にしていることはありますか。

 音楽は神の一部という聖書の言葉があります。良い曲を弾く時にはインスピレーションがあって、そこには常に神がいるんです。その神様がいることが自分が音楽を続けるきっかけにもなっているので、音楽を通して“自分が生きている”ということを神様に伝えたいんです。それは自分は障害があっても乗り越えることが出来たという証なんです。キーワードは音楽を通して壁を乗り越えることが出来たということです。僕の場合、有名になりたい、お金持ちになりたいというだけでは、モチベーションを保つのは難しいと思うんです。

欠かせないペダルエフェクト

ジョナタ・バストス

――ジョナタさんのInstagramを見ているとエフェクターが沢山あってすごいですよね。

 2010年頃からコレクションし始めたんですけど、もっともっと欲しいんです。日本にはブラジルにないエフェクターや楽器が沢山あるのでベストプレイスです。

――その中で最近気に入っているエフェクターなどはありますか。

 買ったばかりなんですけど、BlackStarのポータブルアンプは音の質も良くてすごく気に入っています。ペダルに関しては、日本で購入したんですけど、BOSSのDD-500というディレイは、僕が持っているディレイの中でも1番と言ってもよいくらい素晴らしいです。自分のサウンドにスパイス、音をオーガナイズしてくれるような感覚があるんです。ソロを弾いている時に、自分の音に被さってこない、すごくちょうどよくディレイしてくれるので、DD-500は様々なことがこれ一台で出来るのですごくお気に入りなんです。

――龍がデザインされた赤いペダルはどこのブランドのものでしょうか。

 ブラジルのブランドでVertical FXのペダルなんです。あれはアンディ・ティモンズが使用しているJHS PedalsのAngry Charlieをリスペクト、栄誉を讃えて作られたものらしくて、メーカーの方からプレゼントしていただきました。

――ディストーションペダルなんですね。

 そうです。あと、ディストーションで僕に欠かせないペダルがあって、それはGNI PedalsのSHRED PRO/SP-1というペダルなんです。このペダルはどこに行く時でも絶対に持っていきます。

――ジョナタさんの音を形成している重要なペダルなんですね。さて、16日に武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナで開催される『ParaFes 2019~UNLOCK YOURSELF~』への意気込みをお願いします。

 また誘っていただけたことに感謝します。いつも快く迎えてくれる日本の皆さんにも感謝、いつもサポートしてくれる母や、パラサポの皆さん、関わってくれているすべての方に感謝します。パラフェスが毎年バージョンアップしていって良くなっているので、これからもそうなっていくことを願いますし、自分も出来たら参加したいですし、それに加えて成長していきたいです。

――今回わたなべちひろさん、酒井響希さんとコラボされますが、ケミストリーが生まれるといいですね。

 実はリハーサルでケミストリーは生まれました(笑)。響希くんは若くてすごく将来性がありますし、ちひろさんは今回初めてセッションするんですけど、彼女自身も才能に満ち溢れていて、すごくキレイな歌声なので本番で一緒に演奏するのが楽しみです。今回僕が一番年上になるので、僕も何らかの形で彼らに対して協力が出来たらなと思います。

(おわり)

https://www.parasapo.tokyo/parafes/

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