INTERVIEW

佐藤竹善「音楽は自由で楽しい」ビッグバンドアレンジで伝えたいこと


佐藤竹善

記者:村上順一

掲載:19年11月11日

読了時間:約13分

喋るのとはまた違う歌としての英語

佐藤竹善

――ライブも楽しみです。さて、オリジナルの新曲「VISION」も収録されていますが、この曲はいつ頃に制作されていた曲でしょうか。

 選曲やエリックさんにお願いすることが決まって、ビッグバンドのイメージが固まってきたところで書き始めて、レコーディングする一カ月前くらいに完成しました。曲自体は1日で出来ちゃったんですけど。

――早いですね。

 でも、僕の場合は大体そうですよ。長い時間をかけて書くことはあまりないんです。書く前のどういう曲にするかとコンセプトを考えている時間の方が長いですね。曲書きに入るのは漠然としたイメージが出来てからで、今回は断片的なメロディとかも出来ていない状態からはじめました。

――短時間で出来た曲の方が上りとしては良いのでしょうか。

 僕の場合はその方が良いことが多いです。過去に時間を掛けた曲もありましたけど、それは組曲だったので、必然的に時間が掛かってしまって。SING LIKE TALKINGの「Spirit Of Love」は3時間ぐらいで出来た曲でしたし、「LA LA LA」は20分ぐらいで書いた曲でしたから。お蔵入りも多々ありますが…。

――そのお蔵入りもファンの方はすごく聴きたいと思います。いずれ何らかの形でリリースして頂けたら嬉しいです。

 全部取っておいてあるので、僕が死んだら自由に出していただいて良いですよ(笑)。僕はアウトテイク集に関しては肯定派で、それがなぜボツになったのかということも含めて興味深いです。例えばスティーヴィー・ワンダーのアウトテイクなど、そのほとんどがすごい曲なのに、お蔵にした理由なんかを妄想するのがまた楽しいんです。

――確かに面白いです。さて、「VISION」のお話に戻るのですが、作詞はSHANTIさんですね。

 英詞はいつもSHANTIにお願いしています。彼女はジャズ系のシンガーとして沢山の作品を出しているんですけど、英語はネイティブなので、世界観を伝えるだけで、英語詞の素敵な表現にしてくれます。それは、彼女自身もシンガーなので、メロディに乗った時の語感などすごくよく分かっているというのも大きいです。今回、SHANTIに伝えたことは、とにかくハッピーで元気になる曲ということでした。ハッピーなんですけど、僕の曲は必ず影が漂っているので、単純にハッピーだけでは終わらないんですけど。

――影ですか?

 僕の声はそう感じさせないのですが、メロディはどこか影があると感じています。ブルージーな要素が入っていて、それは、ぼくにとってはメロディーのリアリティなんです。爽やかで楽しいだけではない、現実の中でのハッピー感。そういうものが表れてさえいれば、歌詞は自由に書いてもらって大丈夫と思っていました。

 僕はコードでもディミニッシュとか好きなんです。ゴスペルの影響も大きいですし、スティーリー・ダンやセロニアス・モンクのような捻くれたものも好きなので、その趣向がメロディに出てきていると思います。

――竹善さんの英語の発音がいつも素晴らしいなと感じるのですが、竹善さんはどのように言語というものを捉えていますか。

 言葉というところで、例えば日本語でも桑田佳祐さん、佐野元春さん、由紀さおりさん、皆さん発音は全然違うんですけど、自分のスタイルを持っているからこそオリジナリティーに溢れているんだと思うんです。僕の英語はどれぐらいちゃんとしてるのかはわかりませんが、世界でも標準語の英語の歌というのはほぼないのではと思います。標準はなにかって話しにもなるんですが。ザ・ビートルズは4人とも違いますし、強いて言えばカーペンターズは教科書通り的な英語で歌っているのではと思います。

 僕は音楽として一番気持ちよく響いていたいと考えていますが、ちゃんと意味が伝わらなければいけないですし、違和感があってもダメで、それを判断してくれるのがSHANTIなんです。喋るのとはまた違う「歌としての」英語を判断してくれます。自宅で僕が録ったものを送って、直して欲しいところを指摘してくれて、それを5往復ぐらいしました。昔は10往復ぐらいしてましたけど(笑)。

――竹善さんの英詞の歌がすごく気持ちよいのは、そういった細かいところまでこだわっていたからなんですね。

 そう感じてもらえて嬉しいです。そこにある音楽にフィットすれば、例えば東欧なまりやアフリカなまりの英語が良かったり、カタカナ英語でも良かったりするのが、音楽の面白いところだなとも感じていますけど。

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