SING LIKE TALKINGの佐藤竹善が10月23日、EP『Don’t Stop Me Now ~Cornerstones EP~』をリリースした。竹善自身の礎となった古今洋邦の名曲を、原曲の良さを重視しながらアレンジを施し、音楽に対するリスペクト精神に溢れた人気カバーアルバムシリーズ最新作。『Cornerstones』シリーズ7作目となる今作は、クイーンの「Don't Stop Me Now」やスティーヴィー・ワンダーの「Do I Do」、オリジナル曲の「VISON」など全5曲を収録。ロックからソウル、ポップスナンバーをビッグバンドアレンジで楽曲の新たな魅力を引き出した1枚に仕上がった。インタビューでは、作品のコンセプトや選曲の意図について、シンガーに必要なことなど多岐にわたり話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=片山 拓】

人選で8割がた勝負は決まる

佐藤竹善

――今回、ビッグバンド編成の作品ですが、どのような経緯からビッグバンドの作品を制作することになったのでしょうか。

 スタッフからの提案でした。ビッグバンドは小曽根誠さんとやらせて頂いたりしていたので、以前から興味はすごくあって満を辞して出来ました。

――竹善さんのルーツにビッグバンドはあったのでしょうか。

 ジャズを本格的に聴くようになったのが90年代半ばくらいからで、それまではそれほど興味がなかったんです。最初に出会った作品がオスカー・ピーターソンの『ナイトトレイン』というアルバムで、その作品を聴いてジャズに興味が湧きました。自分の中でポップスやロックと同じような感覚になるまではジャズには手を出したくなかったんです。でも、オスカー・ピーターソンを聴いた時に、ヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法を聴いた時のような感覚がありました。

――衝撃が走ったんですね。

 それまでもジャズ自体は聴いていたんですけどね。あと、ビッグバンドというところではバディ・リッチオーケストラです。ライブ盤など沢山聴きました。自分でもなぜこんなに気に入ったのか考えたら、バディ・リッチは全ジャンルのアーティストたちが憧れるドラムだったんです。ディープ・パープルのイアン・ペイスはバディ・リッチ命みたいですから。

――ジャンルを超えてリスペクトされているんですね。今作の選曲はジャズのスタンダードからではなく、幅広いジャンルの楽曲で構成されていますが、どういった作品にしたいと思ったのでしょうか。

 僕らしいアプローチという観点から、普通にジャズの曲をビッグバンドのアレンジで歌ってみました、というだけだと、インパクトが弱いと思ったので、もともとがジャズではない曲から選ぼうと思いました。曲が良ければどんなサウンドでも一人歩きしていく。僕はポップスのアーティストなので、まずはポップスやロックの曲をビッグバンドアレンジで提示してみたいと思いました。

――選曲はどのようにされたのでしょうか。

 数ヶ月の間に、思いついた曲をメモしていきました。候補曲はトータルで40曲ぐらいはあったと思います。選考基準としてはビッグバンドアレンジにしたら面白そうなもの、アレンジしたらサプライズが生まれそうな未知数な曲などです。ジャズが好きな人に、改めてロックやポップスの素晴らしさを、またその逆方向が表現できたらいいなと思いました。

――音楽の間口を広げてくれる作品だと思いました。5曲ですけど内容も濃くて。エリック・ミヤシロさんがアレンジを担当されていますが、これまで接点はあったのでしょうか。

 エリックさんは小曽根さんのNo Name Horsesのリードトランペッターなんです。そこで初めて知り合いました。アメリカ生まれで、そちらでずっと活躍していた方です。今回頼んだ理由にジャズをホームとしていつつも、ポップスなど幅広いジャンルをフラットに楽しめる方にお願いしたいと思いました。それは、選んだ楽曲がジャズの曲ではない分、サウンドはオーセンティックなジャズ目線なものにしたいという思いからなんです。

 こういった作品の場合、アレンジャーやミュージシャンを選ぶところで8割がた勝負は決まってしまうと僕は思っていて、アレンジャーには敢えて漠然としたイメージしか伝えないんです。その上で、エリックさんや宮本貴奈、TOKU、大儀見(元)が、僕が何をやろうとしているのかを掴んでくれるのが面白いところなんです。信頼感があるので出来ることでもあるんですけど。基本は好きなようにやって頂く感じです。

――制限は設けないんですね。「Do I Do feat.SALSA SWINGOZA」は7分という曲長ですが、この長さに収まったのはどういった経緯でしょうか。

 スティーヴィー・ワンダーのオリジナルの方は12分くらいあるんですけど、シングルバージョンは5分位と短いですよね。今回ダンスミュージックのサルサということもあって、またシングルでもないので、長さは自由に任せました。ライブではエリックさんにビッグバンドアレンジに書き直してもらう予定なので、また違った感じになるんじゃないかなと思います。

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