シンガーの安田レイが11月27日、13thシングル「アシンメトリー」をリリースする。デビュー6周年を迎え、「安田レイ第二章」と位置付けたという前作から約4カ月。「似たようで似てないような2つの感情を表現した」という本作に込められた想い、そこに対する心情や葛藤、そして深みと精神性が増した歌唱面、サウンド面でのさらなる進化についてなど、現在の想いを聞いた。【取材=平吉賢治】

「アシンメトリーな気持ちというのは凄く人間らしい」

「アシンメトリー」通常盤 ジャケ写

――今作「アシンメトリー」というタイトルの意味は“非対称”、“不均衡”という意味ですが、何故これを題材にしようとしたのでしょうか?

 自分のなかにある、“似たようで似てないような”という、2つの感情を表現したくて。作っていくなかでわりと早く「『アシンメトリー』でいこう」と、曲が出来上がる前にタイトルができたんです。自分の思っていることと行動がうまくシンクロしないという、むずがゆい感じを一言で表現するのに「アシンメトリー」っていいなとスタッフ全員で合致したんです。想いを全部一言で伝えるためにこのタイトルをつけました。

――思っていることと違う行動をとる、ということはありますね。 “自分の中に天使と悪魔がいる”というような感じで真逆の感情があるような。

 そう、天使と悪魔の囁きが! 小さい頃から自分の心の奥底にあるリアルな感情を言葉にして伝えるというのが実は凄く苦手だったんです。いまはラジオのパーソナリティなど、話すお仕事もやらせて頂いているんですけど、それが不思議に思ってしまうくらい不器用でシャイな自分が本当の姿だと思っているんです。でも、そういうときに自分の感情を代弁してくれていたのが、その時に聴いていた色んな音楽だと思うので、不器用だからこその音楽スタイルになっているのかなと常に思っています。

――小さい頃はシャイだったとのことですが、こうしてお話しすると逆に凄く明るい方という印象なのですが。

 頑張っているだけなんです(笑)。でもそういう葛藤が常にあるからこそ、歌が歌えているのかなと思って。たぶん音楽が好きな人やミュージシャンってめちゃくちゃ器用な人ってあまりいないと思うんです。なにか足りていない部分があって、そういう葛藤があるからこそ歌えるところがあると思うので。

――「もしかしたらちょっと足りていないな」という風に自分では思うところを補完するような感じでしょうか?

 やりかたを変えて歌とかにすると意外とナチュラルに出てくるのかなって。この曲の中にある葛藤というのは、無いほうがいいというわけではなく、あったほうが人生豊かになるのかなって私は思います。

――そういう葛藤やコンプレックスは自身でもあるのですが、意外な部分で真逆な表情を見せるときがあります。それも「アシンメトリー」?

 そうですね。私自身も2つのラジオで喋っていて、まさかこんなに言葉を使う仕事に就くとは思っていなかったので…20歳の頃にデビューをして、その時のインタビューとかも反省するところばかりで(笑)。言いたいことの5%も言えてなかったような。それがいつも悔しかったんですけど、回数を重ねていく毎に自分も心を解放することができてきていると思うんです。でも、葛藤というのは常にあることだし、きっと自分の心の奥底にある思いを言おうと思うと頭がこんがらがっちゃたり。思っていることと言っていることがちぐはぐになりがちというか。

――正に本作のテーマにかかっていますね。

 そう。正にこの曲の主人公であり、私であり、この曲を聴いている人の気持ちでもあり、きっとたくさんの人に共感してもらえる部分だと思います。ベースはラブソングなんですけど、恋愛に限ったことではなくて、色んなところでみんな葛藤しているというか。余計なことを言って悪化してしまったり。「きっと世の中の人全員が思っていることを素直に言えたら本当にピースになるのにな」と、思うんですけど、それができないのが人間で、人間臭い良いところなのかもしれないですね。

――<「いいね!」は気軽につけれるのに 目の前のキミには何も言えない>という歌詞は非常に受け入れられやすくそれを表していると感じます。

 時代的にこういうパターン多いですよね。ツールを通してだと意外と言えたりとか。Twitterなどは正に自分の言いたいことをどんどん上げているけど、実際本人に直接伝えようと思うと「どうやって伝えればいいんだろう?」とか。あるいは逆のことを言ってしまって、時には誰かを傷つけてしまったりとか。そういうちぐはぐな葛藤は常にあると思います。

――そういった葛藤が可視化された時代になったともとれそうですね。

 SNSのような場所があると、普段出せない感情を出すことができることによって少し気が楽になれるという気持ちはわかりますね。本当だったら本人に言うのがベストなんでしょうけど。でも難しいんですよね…。

――“アシンメトリー”の対義語は“シンメトリー”ですね。釣り合いがとれているほうが良い場合もあるのでしょうか?

 “シンメトリー”があるからこそ“アシンメトリー”がわかるというのがあると思います。今作のMVでも、シンメトリーなシーンもあって、だからこそちょっとのズレとかに気づけるというか。そこが面白い映像になっていると思います。この曲のなかで歌っているモヤモヤしている感情を表現しています。

――確かに、ズレやモヤモヤした感情がないと何が正解かということに気づけないというか。そういった意味ではアシンメトリーな感情はあったほうが良いのかもしれませんね。

 そうなんです。だから決して悪いことではないと思うし、アシンメトリーな気持ちというのは凄く人間らしいし、みんながきっと葛藤していると思うから、この曲を聴いて「私だけじゃないんだな」という風に勇気付けられたらいいなと思っています。

――歌唱面でも葛藤を感じることはありますか?

 常にそうです。100%満足するということは絶対にないので、そういう瞬間が来て欲しいけど来ないという葛藤はあって。どの職業でも100%満足という瞬間というはないと思うんです。私もいつも自分が完璧な歌を歌っている姿を想像しながらステージに立ったりしているんですけど、実際に自分がステージに立っている姿って直接観られないじゃないですか? でも映像でチェックするときに「これは自分が思っているのと違う歌になってしまっている」とか、ラジオの音源を聴いたときも「これじゃないんだよな…」とか、そういう葛藤は常にあってとても悩まされているんです。

――前回のインタビューで“「安田レイ第二章」という位置づけ”というのがありましたが、そういった葛藤があってこその進化でしょうか?

 葛藤があるからこそ、どんどん上にという積み重ねで大きくなれていると思います。その葛藤がなくていまの現状で満足したら多分全てが終わってしまうというか、それより上にはたどり着けないと思うんです。だから葛藤している時って本当に苦しいし、周りが見えなくて真っ暗な時もあるんですけど、だからこそ次があるかなと思います。だから悪く考えないようにしています。恋愛をしているときでも自分のライブの時でも、アシンメトリーな感情は大事にしていきたいと思います。

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