シンガーソングライターの近藤晃央が10月26日、東京・渋谷WWW Xでワンマンライブ『近藤晃央 LIVE 2019 賢者はジャッジメントに踊りだして~最終話・下~ 』のツアーファイナルをおこなった。昨年の4月に活動を休止し、2019年に再始動。ツアーは1月6日の名古屋ボトムラインを皮切りに、10月26日の東京までおこなうというもの。未発表の新曲も投入され、約10カ月にも及んだツアーの幕は閉じた。ツアーファイナとなった東京公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

新しい始まりを今日ここから始めたい

近藤晃央(撮影=森好弘)

 開演時刻になりSEが流れる中、ゆっくりと近藤晃央がステージに登場。しっとりとしたバラードナンバー「涙腺」でライブの幕は開けた。間奏で近藤は「新しい始まりを今日ここから始めたいと思います」と告げ、情感を込めた歌声が会場の隅々まで響かせる。情感を込めた歌声は我々の心へゆっくりと浸透していくかのようで、オーディエンスもその歌声をしっかりと受け止めるかのよう。聴かせる曲で始まる近藤らしいスタートだった。

 「みんなのおかげでここまで来ました。本当にありがとう。規模を落とさずに、一人でも大丈夫という気持ちで各地を回ってきました」とこのツアーに臨んだ想い話し、前回の名古屋公演で初披露された、消去法で“YES”を探す今の風習を描いた新曲「NEW YES」を披露することに。近藤は演奏前にこの曲でオーディエンスにやってもらいたいことがあると、クラップやサビでのリズムに合わせた手の振りを自らレクチャーし、一緒に盛り上がる準備は万端。リズムに合わせた精妙なライティングが楽曲を後押しするなか、心地よい一体感を演出した。

近藤晃央(撮影=森好弘)

 そして、ブラックミュージックの雰囲気を感じさせる初披露の新曲「愛などくだらないか」や、4月28日の東京・キネマ倶楽部公演でも披露された、傷つけられたら傷つけ返す、目には目をの意味と、文字の見た目から“傷=傷”というダブルミーニングを持つ「メニメ」、MCを挟んで、歌詞とサウンドの良い意味でのミスマッチさが印象的な「無知」と、“今の近藤晃央”を表す楽曲で会場の熱量を上げていく。

 そして、谷崎舞(Vn)によるバイオリンの叙情的な旋律から突入した「ブラックナイトタウン」、ギアを上げアクセル全開といったロックな一面を魅せた「理婦人ナ社会」でオーディエンスを煽情させる。続いて、幡宮航太(Pf)によるピアノの切ない音色が悲しさを際立てていた「ベッドインフレームアウト」、新曲のミディアムバラード「あたしごとき」といったナンバーを、情感豊かなドラマチックな歌声で紡ぎ、感情を揺さぶりかける。目を閉じれば情景がそこに広がっていくような歌唱に、オーディエンスも静かに耳を傾けていた。

 MCでは、近藤がダイエットをしている話題や、今のライブに対する姿勢など語った。「この一つの空間、会場に誰と来た、一人で来た、そんなのは関係ない。今どこにいる、ここにいる。俺は今ステージの上に立っている。(このライブは)その一つの空間を作ってきたあなた達の集大成でもあるんだよ!」と力強い声で投げかけ、盛り上がり必至のナンバー「ビビリーバー」へ。オーディエンスによるイントロでの圧巻の掛け声。その一体感は凄まじいものがあった。立て続けに披露された情熱的な「テテ」によるエキサイティングな空間は、ロックシンガー近藤晃央のアグレッシブなパフォーマンスに、拳を掲げずにはいられない、そんな衝動にかき立てられた。

もっと幸せに出来たら…

ライブの模様(撮影=森好弘)

 本編ラストの曲に行く前に近藤は、「今までと同じ規模でライブをやるということはすごく勇気がいることだった。(活動休止前と)同じ規模で観れない人がいないようにしたいと思いました。こんなにすぐに戻ってこれたのはメンバーやスタッフさんのおかげで、ツアーファイナルをここでやることに意味があると思いました」。

 さらに続けて「ここにいる人達を幸せに出来ないで、誰を幸せに出来るの? と思っています。今いる人達を幸せにするというのは、皆さんが自慢できるようなアーティストになりたい。あとは自分が信じている音楽、自分がいいなと思うものを聴いてもらうだけです。素直に好きだと思っていることを皆さんが面白いと思ってくれたら最高です」。

 「あなた達をもっと幸せに出来たらいいなと思います。最後にここ(渋谷WWW X)に置き忘れてしまった、全然歌えなかった曲を届けます。(ツアーは)みんなのためにやってきたことが、自分のためになったような時間でした。そんなキャッチボールをこれからもしていけたら――」と今の正直な想いを話し、披露された楽曲は、2018年の活動休止直前のライブで号泣してしまったという「らへん」。この由縁の地から新たなスタートを切る、この曲をしっかりと歌い上げなければ前は進めないと言った気概が、言葉を噛みしめるように歌う近藤から伝わってきた。

 アンコールに応え、再びステージに近藤とサポートメンバーが登場し、新曲の「類似」を披露。夜を濡らすようにしっとりと会場を包み込んでいく。「沢山失敗してきました。色んな人に助けられてここ東京に帰ってきました。本当にありがとう、次は俺があなた達を音楽で助けると思うよ」と感謝を述べ「存在照明」へ。眩い光がステージを包み込むなか、オーディエンスによるシンガロングの一体感が、この日をさらに特別なものへと変えていく。音で満たされていく、そんな恍惚の瞬間がこの曲にはあった。

 サポートメンバー送り出し、近藤が1人ステージに残る。このツアーでいつも最後に歌っていたという「相言葉」。「この曲を歌うときっとこのツアーのことを思い出すんだろうなと思います。今の自分は何ももたらせないけど、一緒に探していくことだけでも幸せだなと思って、泣きそうになりながらこの曲を歌っていました」とこのツアーを振り返りながら、アコギの弾き語りで最後に「相言葉」を届けた。ギターと声のみという最小限のツールで、優しく歌い紡ぐその姿をオーディエンスはしっかりと見届け、『近藤晃央 LIVE 2019 賢者はジャッジメントに踊りだして』の幕は閉じた。

『近藤晃央 LIVE 2019 賢者はジャッジメントに踊りだして~最終話・下~ 』(撮影=森好弘)

 「誰よりも楽しんじゃった気がする」と最後にポツり。

 今年の1月から始まったツアーもこの日でフィナーレを迎えた。新たな一歩を踏み出すためのツアーで、ライブごとに新曲を投入していった。そして、楽曲の届け方や伝え方による変化を感じさせてくれた。これまでの近藤晃央とは一味違うステージに期待感しかなかった。近藤は11月24日に愛知・Blue Note NAGOYAで『近藤晃央 BLUE NOTE LIVE 2019「utmost」』、12月1日に東京・BLUES ALLEY JAPANで『近藤晃央LIVE 2019「utmost in Tokyo」』をおこなう。

Member
近藤晃央(Vo,Gt) 幡宮航太(Pf)、谷崎舞(Vn)、和田健一郎(Gt)、高間有一(Ba)、ターキー(Dr)

セットリスト

『近藤晃央 LIVE 2019 賢者はジャッジメントに踊りだして~最終話・下~ 』

10月26日@東京・渋谷WWW X

01. 涙腺
02. エーアイ
03. NEW YES(新曲 / 未発表曲)
04. 愛などくだらないか(新曲 / 未発表曲)
05. メニメ (新曲 / 未発表曲)
06. 無知 (新曲 / 未発表曲)
07. ブラックナイトタウン
08. 理婦人ナ社会
09. ベッドインフレームアウト
10. あたしごとき(新曲 / 未発表曲)
11. ビビリーバー
12. テテ
13. らへん

ENCORE

EN1. 類似(新曲 / 未発表曲)
EN2. 存在照明
EN3. 相言葉

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