「イエスタデイ」

 コンサート、映画、舞台など、大人も楽しめる日本の良質なエンターテインメントをおススメする新感覚情報番組『japanぐる〜ヴ』(BS朝日、毎週土曜深夜1時〜2時)。10月12日の放送では、映画評論家の松崎健夫が『イエスタデイ』(公開中)、添野知生が『アップグレード』(公開中)を紹介した。

“もしも”の妄想が生み出すドラマ

「イエスタデイ」

 松崎が紹介した映画『イエスタデイ』は、『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカー監督の仲間入りを果たしたダニー・ボイル監督と、『ラブ・アクチュアリー』や『ノッティングヒルの恋人』、『ブリジッド・ジョーンズの日記』などで知られる脚本家のリチャード・カーティスが、初タッグを組んだことでも注目されている作品。

 売れないシンガーソングライターの主人公・ジャックは交通事故に遭い、目を覚ますと世界には、史上もっとも有名なバンド=ビートルズが存在していなかった。ジャックは記憶を頼りにビートルズの曲を歌って有名になり、メジャーデビューの夢を叶えていく物語なのだが…。

 ジャックがビートルズの歌詞をうろ覚えで原曲とは微妙に違っていたり、エド・シーランが本人役で出演してビートルズの曲に嫉妬するシーンがあるなどユーモアもたっぷり。しかし、ただジャックがビートルズの曲を使って成功を収めるだけの単純な物語ではない。松崎は、一筋縄ではいかない脚本の素晴らしさを賞賛した。

 「リチャード・カーティスは、人生は一度きりでどう生きるかが大切だということを一貫して描いてきました。この『イエスタデイ』でも、人生は一度きりで何かを決断したりどちらを優先するかは、その時にしか決められないことを描いています。ご覧になったみなさんが想像するものとは違う話になっていくので、そこを楽しんでいただきたいです」(松崎)

 ビートルズの曲がいかに人々の人生を豊かにしてくれてきたのか、改めてビートルズの偉大さや曲の素晴らしさを実感する。ビートルズのファンはもちろん、ビートルズを知らない人でも、ビートルズの曲を聴きたくなる映画だ。

低予算をアイデアでカバー

「アップグレード」

 添野が紹介した映画『アップグレード』は、『ゲット・アウト』や『セッション』などを手がけるプロデューサーのジェイソン・ブラムと、映画『ソウ』シリーズで脚本や出演を務めるリー・ワネルがタッグを組んだ作品。監督はリー・ワネルが務め、劇場映画の監督はこれが2作目になる。

 最愛の妻を謎の組織に殺され、自身も全身麻痺になった主人公グレイが、AIチップ「STEM」を身体に埋め込み、人間を超越した身体能力を手に入れて、妻を殺した組織に復讐していく物語。

 これは映画『アド・アストラ』の26分の1くらいの低予算=300万ドルで制作された作品とのことで、「これぞSF映画。知恵と勇気とそのジャンルへの愛情があれば、低予算でも見事な作品が作れる見本です」と、添野はアイデアを賞賛した。

 「ほんの少しだけ未来の世界のお話なのですが、自動車のデザインだけで、その世界がどうなっているのか背景が分かるようになっているのがすごい。そこにSFとしての説得力があります。わずかな日常描写だけで、いかにその世界で人々はどういう暮らしをしているかを分からせるか。SFを描くコツ分かっている作品です」(添野)

「アップグレード」

 主人公がいわゆるサイボーグになって戦うSF作品であり、犯人捜しのミステリーもあれば、復讐の物語など、さまざまな側面を持った作品。添野によれば、「さらに、もうひとひねりあります」とのこと。『ソウ』の脚本を務めたリー・ワネルの監督作品であるだけに、予想の斜め上を行く結末に期待が高まる。【文=榑林史章】

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