柳ゆり菜(25)が、10月11日公開の映画『東京アディオス』(大塚恭司監督=「塚」は旧字体が正式表記)でヒロインを務める。「地下芸人の帝王」とも称される横須賀歌麻呂の半生を描いた作品で、横須賀は本人役で出演。過酷な生活環境のなかにあっても自身の芸を貫く芸人の姿を描く。劇中で横須賀の創作意欲を支える女性ファンほか横須賀の高校時代の同級生・エリカ役を務めた柳は、演じるにあたっては「母性」を意識したという。奇しくも今夏にテレビ朝日系ドラマ『べしゃり暮らし』でお笑い芸人・江草はるか役を演じた。大の音楽好きで「人間くささ」に魅力を感じる彼女は本作にどう向き合ったのか。【取材・撮影=木村武雄】

意識した母性

――かなり攻めた映画ですが、出演を決めた理由は?

 最初の印象は「攻めた作品だな」と思いましたが、監督が「真剣に作りたい」とおっしゃっていて、ある種、人が触れたくない影の部分というか、そこにエネルギーを注げるのはすごいことですし、面白いと思い出演を決めました。私の役どころは、横須賀さんの創作意欲を支える「理想の人」です。これまで誰かの「理想の人」という役を演じてこなかったので不安もあったのですが、救いになるような役にしてみたいと思いました。

――演じるにあたって苦労された点は?

 苦労したということではないのですが、高校時代の同級生のエリカや「あの人」としてセクシービデオに出ている子だったり、横須賀さんのなかでいろんな人に変換されていく子を演じないといけなかったので、何が妄想で何が現実なのかを自分のなかでも整理がつかなくなることもありました(笑)。ですので、1回1回、「これは妄想ですよね」と監督に確認しながらやりました。

 面白いのは、全編モノクロなのに、私が出てくるときなどはカラーなんですよ。本当に脳内というか、私が出ているシーンは、普段厳しい現実を見えている横須賀さんにとっては存在しない明るい世界というか。そういう使い分けをしているところが愛おしくて。男の子の脳内を覗いているような、いつまで経っても性のことや仕事でうまくいかないというところを悶々と抱えて生きている感じが人間らしいなと。

――役作りという点ではどうでしたか?

 最終的に私は観音様になるんですけど(笑)、とにかく男性の理想を崩さないというか、「母性」がすごく大切だと思い、そこを重点に、私が持っている全てを出せるように心掛けました。

 それと彼女のバックボーンについても深く考えました。横須賀さんの女性ファンが「あの人」、高校時代の同級生が「エリカ」ですが、エリカはすごく母性があると思います。悪い人たちと付き合いながらも横須賀さんを気にかけるような優しい女の子です。その子への思いから派生して「あの子」が出てきて、その子はセクシービデオに出ていたり、キャッチをやったり、いろんなところに派生していくけど、その子自身も妄想の中ではあるけど、つらい経験をしてきているんだろうなと。そういった影の部分を自分なりに作り上げました。

 逆に、横須賀さんのファンの「あの子」は「性」に興味がないから下ネタでも芸として笑える。笑えている自分自身が嬉しくて横須賀さんのことを好きになったのかなとか。好きになった理由もすごく考えました。

――高校時代のエリカはかなり母性が出ていましたね。

 本当ですか? そう言ってくださると本望です。母性のある理想の女性を演じたので、嬉しいです! 横須賀さんは高校時代の衝撃で、その後の「彼」を作り上げているので、彼のすべてを受け止めてあげる気持ちで挑みました。助けてあげられない「ごめんなさい」という気持ちと、すべてを包んであげようとするところが大事だと思って演じました。

――あそこまで役に入り込めていることに驚いたのですが、スタートがかかる前はどういう心持ちでいたのですか?

 彼がいじめられている一部始終を現場で見ていましたから。お芝居だと分かっていても、本当にかわいそうだなと思いました。社会的にもいじめで溢れているじゃないですか。それを傍観している人たちも悪質だなと思いました。そういったところで一人の人にトラウマを植え付けてしまうことへの非情さをエリカはきっと分かっていたんだろうなと。傷を負わないように…という気持ちでいました。

場面写真(C)2018映画『東京アディオス』製作委員会

場面写真(C)2018映画『東京アディオス』製作委員会

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