INTERVIEW

BRIAN SHINSEKAI「境界線を越えること」世界的視野が捉える音楽の可能性


記者:榑林史章

写真:BRIAN SHINSEKAI(撮影=榑林史章)

掲載:19年10月01日

読了時間:約10分

 アーティストのBRIAN SHINSEKAIが9月18日、新曲「SUBURBIA」をデジタル配信した。2009年、彼が17歳の時に十代のミュージシャンによるオーディション『閃光ライオット』に出場し、ファイナリストになったことから本格的に音楽活動をスタート。2017年からBRIAN SHINSEKAI名義で活動を開始し、昨年1月にアルバム『Entree』でメジャーデビューした。公開中の映画『HELLO WORLD』のサントラ盤に参加するなど活躍している。今年5月から多国籍ポップミュージックシリーズと題した楽曲を発表しており、「SUBURBIA」は同シリーズの最新作で11月にはそれらをまとめたEPをリリースする予定。国籍もジャンルも多彩な音楽から影響を受けてポップミュージックとして昇華させる、BRIAN SHINSEKAIの軸にあるものとは。【取材・撮影=榑林史章】

BRIAN SHINSEKAIは、やみつきになるカレー

「SUBURBIA」ジャケ写

――11月にEPを出すにあたり、「SUBURBIA」はそれに向けた先行シングルとのことですが、EPには何かコンセプトがあるのでしょうか。

 2018年にアルバム『Entre?e』を出してから、自分なりの「これだ」というものを見つけたくて、いろいろな音楽ジャンルを取り入れながら模索していきました。その上で最初に作ったのが「ATTACHMENT」という曲で、そこからビジョンがぼんやり浮かんで、EPに向けて作り始めた感じです。

――もともと、いろんなジャンルが好きなんですか?

 今までいくつのジャンルやったのか、自分でも分からないくらい、その都度いろんなジャンルをやってきました。クラブミュージックを軸にするようになったのもここ3年くらいで、その前はずっとロックバンドをやっていて、どっちかと言うとプログレッシブロック色が強かったかもしれないです。

――そこからクラブミュージックとは、急ハンドルを切りましたね。

 でも、もともとはデヴィッド・ボウイが好きで、そこからペットショップボーイズが好きになり、ニューウェーブのエレクトロ系もたくさん聴いていて。ロックバンドをやっていたけれど、クラブミュージックも好きで並行して聴いていたんです。それでソロでやっていくと決めた2年半前から、今のようなクラブミュージックを軸にした音楽をやるようになりました。

――今の音楽性でもっとも重要視しているのは、どういうものですか?

 自分はメロディメーカーだと思っていて。圧倒的にメロディに比重を置いて作っています。サウンドは、そのメロディに対して最適なものは何かを探していく形です。

――メロディは鍵盤で作るのですか?

 ほとんど鍵盤です。8、9割が鍵盤で、たまにアコギで作りますけど、エレキギターを弾きながら作ることはないですね。コードを弾きながら鼻歌でメロディを考えて、メロディとコードは同時進行です。

――BRIAN SHINSEKAIのメロディは、印象的で耳に残ります。キャッチーさとか、クセになるようなメロディという部分は意識しているんですか?

 そうですね。何回も繰り返し聴きたくなるようなものが僕自身も好きなので。それに僕は聴く側として、人生の岐路に立った時にふっとある曲のメロディや歌詞が出てきて、それに背中を押された経験が何度もありました。だから僕の曲を聴いてくれる人にとっても、そういうものでありたいと思って、ワンフレーズごとにそういう気持ちを込めて作っています。

――メロディラインという部分では、どういうアーティストから影響を?

 メロディは、フレンチポップからの影響が大きいかもしれません。例えばエールとか。繰り返すメロディが印象的で、歌詞の和訳を読むとけっこう哲学的なことをさらりと歌ったりしていて。独特の浮遊感もあって。メロディはシンプルだけど、全体を見ると決してシンプルではないという、そういうギャップに心惹かれますね。

――ひと筋縄ではないと言うか。

 はい。咀嚼しないと飲み込めないけど、メロディはサラッと入ってきて後味が残る感覚が好きなんです。すごく食べやすくてどんどん食べちゃうけど、あとからスパイスが効いてくる。それで一度ハマったら、あの店のカレー以外食べられないみたいな(笑)。

――「SUBURBIA」も、そうしたやみつきになるカレーの要素が満載だと思いました。サウンド感としては、南国っぽい雰囲気もあって。タイトルは、「郊外」という意味とのことですが。

 直訳では「都会から外れた郊外」といった意味ですけど、僕としては「今いる場所から遠く離れた世界」といった意味で「SUBURBIA」と名付けました。ただ、サビの歌詞では<SUBURBIAの向こうで>というフレーズが繰り返されていて、実際には郊外よりもさらに遠くの境界線を越えたところをイメージしています。

――ジャケットは、ボルダリングの壁をバックに、バドミントンのシャトルを咥えていて。それもタイトルや歌詞とリンクしているそうですね。

 「SUBURBIA」の歌詞に、折れた羽根で壁の向こう側に行くということを表現している部分があって。よく見ると、シャトルの羽根が折れているところがポイントなんです。

――そういう歌詞を書こうと思ったきっかけは、何かあったのですか?

 昨年1月にアルバムを出してから、これからBRIAN SHINSEKAIとして、どういうメロディやサウンド、どういう見せ方をしていけば、自分の魅力や他にはないものが表現できるのだろうと葛藤して、悩んでいた時期が1年くらい続いていました。そんな中、「Entree」とは違う角度から、ライブを意識した派手なディスコチューン「三角形のミュージック」や「ピクチャー・オブ・ユー」などを作ったりしていたのですが、昨年末「ピクチャー・オブ・ユー」をリリースした直後に「ATTACHMENT」の原型みたいなものが生まれて。そこから現在の「多国籍ポップ・ミュージック」の作風が一気に見えてきて。BRIAN SHINSEKAIはこういうサウンドで、こういう歌詞で、こういう歌い方とビジュアルイメージでというものが、一気に頭の中に広がって。今年に入ってから、一気に目の前が開けました。

――何が良かったんだと思いますか?

 自分の軸が、バシッと決まったことじゃないでしょうか。それによって世界の見え方が変わったり、それまでとは違うところに飛び込んでみたくなって、それが境界線を越えたところにいくことに繋がったり。いろんなことを思い出したし、亡くなった人の言葉がふっと甦って…。自分の軸を見つけて、そこから旅をしていこうと決めたときに、こういった歌詞が出てきました。

この記事の写真

記事タグ

コメントを書く(ユーザー登録不要)